テロ組織xelken.valtoalの朝は早い。6時には全員が起きて、朝礼をする。そして全員が集まって古リパラインを神の言語とする祈りをささげる。あとは各自で朝食を済ませて、各々が作戦に入る。なかでも古リパライン語の相続者の教育には力が入っている。
子子孫孫、孫の代、その孫の代まで古リパライン語を残す。一方で新理派や反理派の駆逐を行う。今は新大陸デュインの植民地化を進めている。
私は今xelken.valtoalの古リパライン語の教育を王国より拉致られたものと共に受けていた。今周りにいる反理派も早く古リパラインについていけばいいというのに。
“そうだ。お前はアロアイェーレームをもっているのか?”
“持っているけれど、もう禁じ名です。本当は新しいアロアイェーレームを求めているところです。”
“ふむそうか。では、名付けてもらう必要がありそうだな。”
何かの打ち合わせの結果。Tarf.lavnutlartという名がついたようだ。
“よし、lavnutlart、十分はお前は立派なxelken.valtoalの一兵になった。”
“本当ですか!?ありがとうございます!”
なんとうれしい限りであろうか。xelken.valtoalの一兵にまでなれた。夢を見ているようだ。
“まずは、君の身体能力を計って戦闘員向きかを判断する。それまでは古リパライン語の存続の為に教育係に移ってもらおう。”
“はい!光栄です!”
xelken.valtoalの人たちはいい人ばかりだ。皆自分の通すべき筋を通している。しかもそれが正しい。xelkenにいてよかった。リパライン語をやっててよかった。
そうして私は古リパライン語を後世に語り継ぐために教員となった。
もう教員をしてから2週間になる。意外と早い。おかげで生徒たちの扱いもわかってきた。どうしても生徒が従わないというときは再教育を行使してもよいらしい。当然であろう。古リパラインに従わないものなんて人生を損している。ならばいっそそうしたほうがその子の人生のためにもなる。
そして、古リパラインを通しての労働。xelkenの軍備は日々進化している。それをこなせるということがいかに素晴らしきことか、生徒たちに理解させるのだ。もちろん軍備だけでなく、xelkenを運営していくうえで重要な雑務もすべて任せている。
そして今日も異世界から拉致ってきた者達をxelkenとするため、授業を始める。
“さあ、リパライン語の授業をはじめるぞ!”
“椅子なんて贅沢なモンはねえ!地べたでやれ!”
今日は何人かの者がはむかってきた。
「こんなところでやっていけるか!」
どうやらハフリスンターリブのところから来たやつらのようだ。こんなものなんてことはない。ウェールフープの発動をしようとする。と、そこで横にいたAles先輩に制止される。
“やめろ。こいつもまた貴重な人材だ。再教育にかけたりとか、他にもやりようはある。”
それもそうだった。なんということだ。xelkenとして恥ずかしい。
“そうですね。Ales先輩の言う通りです。”
“わかればいいのさ。新人よ。こういう輩はちゃんとリパライン語の神聖さというものを身に染みて感じて初めて治るもんだ。”
“なるほど。すばらしい”
私は感心した。さすが、xelken歴50年にもなる人は違う。今日は古リパラインの歴史の一部を教えた。FAFS.sashimiがADLPを作った時の話だ。私もこの話をするのは好きだ。リパライン語の歴史の中では。
そしてxelkenの一軍人としての訓練を受ける。xelkenの基地内では基本的なウェールフープの制御の練習。ウェールフープライフルの取り扱い。幹部に関してはNZWPの取り扱いまでも練習ができる。
今日の任務を済ませたのでxelken基地の休憩所に入ってきた。xelkenデュイン指令室のロビーにはコーヒーサーバーがついており、組織の一員であればただで飲める。また、xelkenは一般企業としての事業展開もしており、xelkenの資金の一つともなっている。主に牛乳の生産を行っているらしい。
と思いつつ椅子に座ってコーヒーを飲んで一服していた。
刹那、基地の正面玄関で謎の警告音が聞こえた。
“!?”
どうやら外で誰かが暴れているらしい。見てみることにした。
“どうやら、拉致をしてきたハフリスンターリブのところから来た女性が騒いでいるようだ”
同志のXelken tarf eliだ。私と同時期にxelkenに入ってきた同期だ。
“基地内での反逆か?ずいぶんと命知らずだな。”
“まったくだ。ここは我々の巣だぞ。”
早速現場に駆けつけてみる。
中央回廊に出ると、そこにはナイフを数本持ったハタ人女性がいた。
“ラヴヌトラート、前に俺は聞いたことがあるぜ。”
“え?”
“ハタ王国という国にはウドゥ・ミトと言う名の国技があるんだ。おそらく彼女はそれの使い手か何かだろう。”
“へー。ずいぶんと原始的な方法で戦うんだな。”
“まあ、伝統なんだろうな。”
“具体的にウドゥ・ミトはどんな感じなんだ?”
“それは私も見たことはない・・・しかもこれはユーゴック語らしいから全くどんなんなのか想像できないな・・・”
ウドゥ・ミトの使い手であるその女性は再び暴れ始めた。彼女はナイフを投げてガラスをまず割り、破片を拾ってさらにそれを四方八方に投げた。すると彼女を取り押さえようとしたxelkenのネートニアーの兵士が全員駆逐された。
“つ、強い・・・”
私は思わず感心してしまった。
“なるほど、始めてみたが、ようするにナイフ投げなのか・・・!”
中央回廊の奥からさらに三等兵の兵士が女性に向かって攻撃をしてくる。20人くらいはいるだろう。一人の女性相手に何人がかりでやっているのだろう。
それを見た女性はどこからか棒を取り出した。その棒は直径5mmくらいであり長さが30cmくらいだった。女性はジャンプをしてその一人の兵士の頭の上に着地した。乗っかられた兵は首を折ってその場で倒れてしまった。兵士たちが同心円状に引きさがり、彼女から距離を置く。女性はある兵士がいる方向へ棒を向けた。
「死ね!」
すると、その方向へ何かが飛び、そこが吹っ飛んだ。兵士たちが倒れる。
“!?”
“WPライフルかなにかか!?”
私も驚いていた。ウェールフープ技術が王国にも伝わっていることは知っていたがまさかこれほどとは・・・
「王国の伝統工芸品と最新技術の融合、その名も『光るメシェーラ』。見るがいいわ!」
あっという間に数十人いたネートニアーの三等兵たちが倒されてしまった。私も驚いた。そしてその女性がこちらに気付く。そして、女性は持っているナイフを私たちの方向に向けてきた。しかし、しばらくたつとその手を下した。
「あなた、生きてたのね」
とつぜんその女性が私に向かって話しかけた。その顔には若干の安心するようなところがあった。彼女が私に近づく。
「あの時xelkenのやつに拉致られて拷問にでもかけられたのかと思ったわ。」
彼女は私の知らない言葉で何かを話しかけている。それはどこかで聞いたことがあるような、ないような言語であった。でも意味は分からない。
“な、なんだお前は。誰だ!”
“エリ、とりあえず落ち着け。”
“だがラヴヌトラート、こいつはおそらくxelkenがとらえているハタ王国出身の奴。容赦してはいけん!”
“・・・”
「どうしたの?ラブヌトラート、早く王国に帰りましょう?」
“・・・何を言っているんだ貴様は?”
“むかし王国にハマってユーゴック語勉強したことあったけれど、忘れたな・・・ヒヤリングすらできん”
エリは昔王国にしょっちゅう旅行に行ってたらしい。それが今では古リパライン語を教えて傷つけているという立場だ。よくわからない。
「どうしたの?奴らに何かされてユーゴック語も話せなくなったの?」
あ、今ユーゴックって言った。でもそれ以外は全く分からない。これは、攻撃した方がいいかもしれない。
“おい、私から離れ早々に部屋に戻れ。さもなくば殺す。”
「・・・!?」
“ん、通じたのか?さすが毎日古リパラインを押しつけているだけのことはあるな”
「・・・そう、もういいわ」
そして彼女はどこかへ去っていった。彼女の眼には涙があった。エリは
“おい、待て女!どこへ行く!ちゃんと部屋へ戻れ!”
と彼女を追って行った。私はその背中をずっと見て立ち尽くしていた。
なぜ私はエリとともに行かないのか。何を躊躇ってるのか。まわりにはさっきの三等兵の血と鮮やかな血に塗られたガラスの破片が散らばっているだけであった。
私は何事もなかったかのようにロビーへ戻りコーヒーをいただこうとしていた。すると、エリが彼女を連れ戻す雑務を終えてこちらに駆け寄ってきた。
“おい!お前!”
“え?”
“どういうつもりだ!俺はあの女をわざわざ部屋に戻したというのに、なに先にロビーに戻ってやがる!”
私は言葉が出なかった。
“まさか、xelkenとしての自覚が薄れてしまったか?ついにxelkenに対して反抗意識を抱いてしまったか?今まであんなにxelkenにたいして忠誠だったのに?前までのお前ならもっと激しく彼女を追い返していたはずだ”
“・・・”
“どうしたんだ!お前らしくないぞ!?”
“・・・いや”
“!?・・・もしかしてお前・・・あの女のことが...”
“なんでもないといいただろうが!”
私は怒鳴ってしまった。
“この私が!xelkenを慕い、一生をささげたこの私が!今更xelkenに反抗意識を持つか!?まだ二週間とはいえ私の筋はそんなものではない!”
するとエリは黙ってしまった。
“・・・そうか。悪かったな。煽ったりして”
“あ・・・ちょ”
エリは肩を落としながら奥へ引っ込んでしまった。
悪いことしたかな・・・そう思いながら部屋に戻ることにした。