ブレイン郡パレトコーブ
サンアンドレアスの外周を一周する高速道路。
高速道路を挟んで東側にはチリアド山と呼ばれる険しい山が聳え立っている。
反対に西側には、今回の取引に指定された場所。島の北西に位置する『パレトコーブ』と呼ばれるスキューバダイビング向けのレジャースポット。
雑草を除去した程度の駐車場とも言い難い、土肌が露出した広場。
塩の香り、崖に打ち付けられる波の音。月明りに照らされた海面を眺めながらトワは取引相手がこの場に訪れるのを静かに待っていた。
最初に気付いたのはペコラ。一拍おいて続いてコヨリ。
高速道路を通過する車両の音、そして道を逸れた車のタイヤが砂利を踏む音を聞き分けた。
暗闇の中、木々の間からヘッドライトを消して此方へ向かってくる2トンロング・ドライバンの姿を夜目の利くムメイが視認する。
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「カナタちゃん、準備は?」
「OK~大丈夫だよ!」
「ルイさんは機材を取ってから現地に向かうみたい。交渉はボスがするから私達はいつも通り護衛ね」
パン屋のエプロン姿から一転し、身に纏うのは黒のスーツ。
ミオはハンドルを握りながら、後部座席で普段着から仕事用のスーツへと着替えているカナタへ視線を送る事無くビジネスの打ち合わせを行っていく。
海岸線を走る黒塗りの
当然、現在乗っている車両も警察の指名手配がされている物ではない為、こうして堂々と道を通過できている。
『そちらは順調ですか?どうぞ』
『警察が多いようです~・・・ロスサントス方面に向かって行ってますね。どうぞ』
『でしょうね・・・おそらく数時間もしないうちに検問が敷かれる事になると思う』
『影響は?』
『街にブツを持ち込む予定は無いから問題は無いわ』
「ねぇ、ルイさん。今回の取引相手って何処のギャング?」
ボルトアクションライフル・AWMに暗視機能付き光学照準器を取り付けながらカナタは無線機を通してルイへ問う。
この島には複数の犯罪組織が存在している。
バゴス、バラス、ファミリー、ロスト、カルテル、トライアド・・・
いずれも組織が大きくなればなるほど武器調達・資金洗浄・シノギなど独自のルートを確立しており、他の組織を介して商売を行う機会は減少する。
(裏切り・密告のリスクの上昇だけでなく、他の組織と取引を行うことで仲介料が発生し、自身の組織の利益が減少してしまうから当然よね・・・)
だからこそ、カナタはこの時期に取引を持ち掛けた相手の事が気になってしまったのだ。
『取引相手の事はあまり知らない・・・だけど、この島に最近来たばかりって事は予想できるかな』
ルイからの返答を聞いたカナタは「だからか・・・」と声を漏らした。
直接ブツと現生を手渡しで行う麻薬取引とは異なり、現金の資金洗浄では取引現場で殺し合いになる可能性は低い。
それは前者が裏切り相手を殺してブツもしくは現金を手に入れることが出来るのに対して、後者に必要なのは『使えない現金を使える状態に変換する』という技術。
言わば技術者である『私達の組織』を裏切ったところで先方には何の利益にもならないのだ。
『そうね、普通ならば私達と敵対するなんて事はしないと思う』
今後、この島で活動を続けていくにあたって信頼できるマネーロンダリングのルートを潰す事は損失でしかない・・・だが、それは相手が適切にこの島の勢力を理解しているかにもよる。
『皆に集まってもらったのは保険よ』
『お使い』程度であれば幹部ではなく、日雇いのバイトでも良かった。今回、カナタやミオを招集したのは『万が一』の際に対応できる能力がある為なのだ。
すれ違う救急車両。横転した警察車両の横を通り過ぎ、州軍が常駐しているザンクード基地の下を通る長いトンネルを黒塗りのバンは走る。
「もうすぐ目的地よ。私は車を降りてルイさんと合流後に取引に向かうわ。カナタちゃんはこの車で目的地の右手にある山道からチリアド山へ向かって」
「ルイさん、目的地付近に到着しました」
「ありがとうございます。此方も後4分くらいで到着します」
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「此方カナタ、ポイントに到着」
バンを山道の岩陰に停め、狙撃銃を持ち出す。
シートを地面に引き
狙撃地点である山からパレトコーブまでは直線距離900m。視界は良好。
光を増幅する暗視装置を取り付けた狙撃銃を覗き込み、集会場を見下ろした。
「先方8名、車は4台、武装を確認。遮蔽物なし視界良好です。攻撃時には合図お願いします」
カナタの連絡と同時に高速道路から現場へと向かうルイとミオを乗せたトラックを狙撃銃のスコープ越しに俯瞰する。
使用する弾薬は338ラプアマグナム。
有効射程1500mを目標に開発された弾薬。
そしてその弾薬を使用する銃はAWM・・・2000m越えの長距離狙撃の実績を持つ優秀な銃だ。
標的の居る900mなどこの銃にとっては目と鼻の先の様にも感じる。
ハンドガンの交戦距離は0~25m程度、アサルトライフルでは200~500m程度と言われている。
私の役目は相手の射程外からの狙撃で同僚の離脱までの援護を行う事。
トラックから降り、交渉を始める同僚の姿
「まぁ、何もないと思うけど・・・」
静かに息を吐きだした。
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「貴方のボスの言うように5%でもいいのですよ?」
スーツ姿にハゲタカのマスクを被った取引相手の女性が言う。
その背後には静かに佇む黒のホッケーマスクをした黒髪の女性
一見、此方の要望へ歩み寄る様な言動だが2人からは有無を言わせぬ威圧感が漂っていた。
その2人を前にして交渉役を任せられたアキ・ロゼは一つため息。
「いいえ。当初の予定通り一割で大丈夫よ」と覆面達に伝える。
取引が揉めた要因は『苦労して手に入れた現金』を資金洗浄を行っただけで思いのほか手数料を取られるとギャング団のメンバー全員が聞いてしまったことにある。
資金洗浄を行う取引相手を『リスクも犯さずに楽な方法で大金を手に入れようとする悪党』の様に感じてしまったのだろう・・・気持ちは分からない事もない。
「貴方たちの言い値でいいわ。その代わり今後とも良好な取引をお願いできるかしら?」
手元にある現金をそのまま使用する事は出来ない。
今回襲った『フリーサ銀行』に資金を貯蓄していた犯罪組織は今頃、血眼になって下手人を探し回っている事だろう。
また、フリーサ銀行を使った資金洗浄のルートなどもっての外。
この街では情報すら金になる。
下手に値切った結果、敵対組織に情報を売られてはたまったものではない。
「タダより高いものは無いでしょ?」とアキはハゲタカのマスクへと笑いかけた。
「賢明ですね。貴女が話の分かる人で良かった」
両手に現金の詰まったバックを抱え、トラックの荷台に積まれた設備へと向かう2人組へ
「班長さんにも宜しくと伝えて」とアキロゼは手を振った
資金洗浄内約
手数料5%
口止め料3%
お友達料2%
敵しかいないロスサントスで友好的な組織は貴重と判断したアキロゼ
目標5%で交渉に入ったがミリモンが言い値で受けたことによりギャング団の評価を上げたルイ姐
一章、フリーサ銀行編は終わり!
次章は時間を頂いた後に投稿し始めます!飛行機墜落編かな!