ミリモン   作:ブルーな雛菊

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CSI:スイセイ

『My father took me to the sacred place when I was a young girl,』

 

行き交う車。通り過ぎる人影。鳴り響くサイレン。普段と何も変わらない日常。

窓の外に映る景色を眺めながら私は車内に流れる音楽に耳を傾けた。

 

『I grabbed his hand hard and asked who is conjuring this world right now.』

 

(・・・この曲、知ってる)

まるで私の人生を曲にしたような歌詞にクスリと笑みを溢す・・・

 

ルームミラー越しに運転手と視線が合う

まるで『得体の知れないモノ』を見るような視線に私は更に口角を上げた

 

そんな不躾な視線さえも気にはならない。

どうやら今日は自身が思っている以上に機嫌が良いようだ。

 

曲に合わせて声を紡ぐ・・・

 

Now where is Heaven?(天国は何処にあるの?)と・・・

 

 

慌てたようにミラーから視線を外す運転手。

私は再びクスリと嗤い、使い古した革手袋に指を通す。

 


 

『デイビスで発砲音を聞いたとの通報在り。付近を巡回中の警官は急行せよ』

 

『♪♪♪♪~』

 

携帯の着信音が車内に鳴り響く。

パトロールカーで巡回中だった『星街スイセイ』は警察無線から()()()()()()事件が発生したとの連絡を聞き流していたのだが・・・先程から自身の携帯から頻繁に鳴り響く通知や着信に嫌な予感を感じずにはいられなかった。

 

スマートフォンの履歴に目をやると画面一杯に『桜ミコ』と表示されており、同僚が()()予期せぬトラブルに巻き込まれてしまったのだろう…と折り返しの電話をする前から容易に察することが出来た。

 

「みこち・・・また何かに巻き込まれたの?」

「どどどどうしよう・・・通報のあった現場に行ったら沢山の死体が・・・」

 

 

「とりあえず落ち着きなさいな。署に連絡した後に私も向かうから」

 

~~~

デイビス

 

ロスサントスの中央(ビジネス街)より南側の貧民街。

古びた建物。

道路に無造作に捨てられたゴミ。

高架橋の下、あるいは路地裏で薬をキメているホームレスの姿が散見される。

 

主な勢力は紫色をファミリーカラーとするカラーギャング、バラス。

この地域の近辺はフランクリンやラマーの所属していたカラーギャング・ファミリーズの勢力圏とも近く、ギャング間の抗争や麻薬取引など犯罪が絶えない地域でもある。

 

スイセイがミコから助けを求められ駆けつけた頃には、同じく応援要請を受け、駆けつけた同僚達の姿が見受けられた。

 

十字路の角地にある古びた車両用ガレージ。

建物の大通りに面する場所には車両搬入用のシャッターがあり、反対側にはフェンスに囲まれた従業員用の小規模な駐車場とガレージへと続く扉。

 

双方とも現在は同僚が設置したバリケードテープで立ち入りを制限されている。

 

テープを跨ぎ建物の中に入ると

 

「先輩~ムシャクシャしてやっちゃたですか~?」

とニヤニヤしながらミコを追い掛け回す奏の姿が目に入るが・・・何も見なかった事にして副所長のボタンに声をかけた。

 

「署長は?」

「従妹の枢と一緒に空手の稽古」

 

本来なら署で部下からの報告を受ける立場の人間が、自ら現場に赴いているという事実にスイセイは首を傾げた。

 

本件が殺人事件だからか?

(今までギャング同士の抗争に警察は介入してこなかった)

 

ならば尚の事、勢力圏で起こった殺人事件にボタンが赴く理由にはならない。

 

 

「状況は?」

「盗難車両の保管・改造拠点だ・・・付近に防犯カメラは無し。目撃者も無し」

 

「警察に強奪品を差し押さえされないように隠していたのが裏目に出たのか・・・」

「星街、ここで何があったか推察できるか?」

 

スイセイは現場を見渡す。

 

「科学捜査ってやつも万能ではないの。この段階で立証できる事はあまりない。現場を見て血液がどの高さから飛び散った、どの角度から撃たれたか程度よ」

 

「だけど、ここで何があったかは()()は出来る」

 

鑑識も行われていない事件。

つまり、現状で推察は出来ても立証は無いという事。後に証拠となる物品が発見されれば現時点での予測が覆る可能性があるとスイセイが渋るが、ボタンは感じたままを聞かせろと話を促した。

 

「現時点で言える事は少ない。だから、あくまで私の予想よ・・・」

 

~~~

「まず、襲撃者は従業員用の扉から堂々とガレージに侵入した」

 

ギャングが所有するガレージ、多数の構成員が建物の内外を行き来している状況。

扉の鍵は掛かっていなかったでしょうね。・・・もっとも、ギャング構成員以外の人物が此処を訪れる事は自殺行為って事ぐらい周辺の市民は理解してたでしょう。『得体のしれない建物の窓を覗くな』ってね?

 

夜間はこの地区を出歩くな。日中でもすれ違う人に目を向けるな。何か聞こえても聞かなかった事にしろ。そうすれば、余計なトラブルに巻き込まれずに済む。

 

かつてギャングが市民に要求した暗黙の了解は、今日に限っては当人達にとって不都合となる。

 

少女はカービンと拳銃の薬室に弾薬を送り込み、閉鎖確認までの一連の動作を滞りなく行う

 

「勿論、ドアノブの指紋は後で採取するけれどあまり期待は出来ないわね」

 

通報のあった時刻から考えて14:00前後に襲撃が行われた。

窓の少ない建物。逆光で相手の姿が見えないという程ではないけど、外から差し込む光は襲撃者の姿を隠して『味方(構成員)』か『(部外者)』かの判断を一瞬遅らせた。

 

建物の入り口は右端。

「襲撃者は建物に入って右側の壁沿い、入り口に一番近い場所に居た車両を整備していた男を射殺」

 

スイセイは小銃を構え、右手に横たわる男性の亡骸へ引き金を引くかのようなジェスチャーを行った。

遺体はうつ伏せに倒れており、側頭部に銃創が出来ている。

 

「これを見て・・・コイツはガレージに立ち入った人物が()()()分からないうちに絶命している」

 

 

室内に響く銃声。運悪くその場に居合わせたバラスの構成員16名は一斉に開け放たれたままの入口と、小銃を構えたままの少女へと視線を向けた。

 

自身の仲間へと、襲撃を知らせる怒鳴り声。少女に対する罵声や恫喝。・・・そんな騒音にも意を介さず涼しい顔で次の標的へと銃口を向ける

 

「次の標的は一人目とは反対側になる左側面の壁際。襲撃犯は建物の内部構造を一目で把握して、身を隠せる場所へ向かう。その最中、カバーリングを行える場所を狙う事の出来る位置に居る敵を優先的に排除した」

 

スイセイは左足を一歩後退させた後に、体を捻りながら素早く背後へと振り返り、銃を構える。

「その後、制圧射撃を行いながら頑丈な建物の支柱へと駆け込んだ」

 

いくらボディーアーマーを着ているとはいえ、敵の目前でいつまでも身を晒している訳にはいかない。小銃の装弾数は30発。2人目を射殺した後、反撃を試みるギャング達へ弾倉に装填された残りの弾丸を撒きながら、建物を支える太い鉄骨の裏へとその身を滑り込ませた。

 

支柱に背中を預けるようにクルリとターン。花弁が咲き誇るように遠心力でロングスカートの端が膝上あたりまで持ち上がり、艶やかで毛の長い尻尾が花弁の下から顔を覗かせた。

 

「身長はおおよそ140~160cm前後、小柄。」

支柱に残された弾痕を元に襲撃犯の体躯を予想するスイセイ。

 

「勿論、ギャングの行う銃撃なんて信用出来る精度とは言えないから本当に想像でしかないけどね」

 

本来の構えから銃を90度倒したサイドグリップと呼ばれる銃の保持の仕方を好むギャングは多い。

シューティングレンジを用いて正しい撃ち方を学ぶ機会がなかったという理由があったのだろうが、それはかつての話。

ギャングをモチーフにした映画が流行してからというもの、その撃ち方が『ギャングらしい撃ち方』として定着し現在に至る。

 

「集弾率が低下する。あの構えには何のタクティカルアドバンテージもない」

フルオート射撃では水平方向に弾幕が形成されるというメリットも存在するが、少なくても『隠れた相手を狙い撃つ』には適していない。

 

「襲撃者は実戦を体験している兵隊、もしくは傭兵。戦闘訓練を受けているのは確実ね」

 

スイセイは頭の中に描いた襲撃者の動きをトレースするように・・・襲撃者が身を隠していたであろう入口近くの支柱の陰から、ギャングの死体のある場所へと銃口を向けていく。

 

車のドアを開け、盾替わりにしようとした男の死体・・・「ハズレ」

車の陰に身を潜めたまま車体ごと銃弾で射抜かれた亡骸・・・「ハズレ」

道具キャビネットの裏・・・「ハズレ」

盾替わりに横倒しにしたテーブルの裏・・・「ハズレ」

 

元よりライフル弾よりも威力、貫通力の低いと言われるハンドガンの弾丸でさえ車の車体を貫通するのに、『映画の様に』身近な物の裏に隠れば難を凌げるとでも?

 

続けてスイセイは地を這うように姿勢を低くしながら銃を構えた。

銃口を向けた先…床と棚の僅かな隙間を通す様に足を撃ち抜き、倒れこんだ後、頭部を銃撃された遺体が目に映る。

 

「ギャング達は知識がないのか・・・圧倒的に盾に選んだ物のセンスがない」

 

 

「一方、襲撃者は安全を確保した場所から最小限に身を晒した程度」

 

自身の体の大きさを理解し、肘や足先が相手から見て露見しないような立ち回りを『戦闘状態』という余裕のない状況でボロを出さずに確実に行う。

 

「知識があるだけの付け焼刃では通用しない。それこそ、何回も何回も経験し、その身に浸み込ませた様な人物よ・・・」

 

柱の後に隠れて一向に顔を出さない相手。膠着状態においてこれ程鬱陶しいものはない。自身の他にエージェントの応援は無い。一方で、時間をかければバラス側の増援、騒ぎを聞き付けた警察官が駆けつけて来る可能性がある。

 

少女は馴れた手つきでマガジンリリースボタンを押しながら手首をスナップさせて空になった弾倉を飛ばし、先端に黒の塗料の付いた弾丸が装填されている弾倉をレシーバーへ叩き込む

 

破壊されたコンクリートの支柱・・・その裏の死体・・・

「・・・この人は運がなかったみたいね。徹甲弾が使われているかもしれない」

「柱の裏に隠れるギャングへの連続射撃を行いながらの移動、相手をその場に釘付けにする事が目的ね」

 

制圧射撃。

本来、相手をその場に縫い付ける目的で行われるソレは、今回に限っては異様に殺意が高いように感じた。

 

反撃の為に顔を出せば即座に撃ち抜く。

同様に、そのまま身動きを取れずに場に留まっていても、移動を続け側面に周った襲撃者の射線に入り仕留められる。

 

「今回は柱を貫徹して殺傷してる・・・どの道、結果は変わらなかったでしょうけど」

「そして、側面に周ったことで射線に入った残りのギャング達を弾の切れたライフルからハンドガンに持ち替えて処理」

 

床に転がった45口径の薬莢を拾い上げながらスイセイの現場検証は続く。

 

 

実戦と訓練は違う。複数人で強襲を仕掛けるときには『マグフリップ』と言われる弾倉の交換は、飛ばした弾倉が味方に当たり、集団行動を阻害する恐れがある。近距離に特化した構え方であるC.A.R.システムを前衛ではなく後衛が行った場合には、敵ではなく味方の背中を撃つ可能性もある。状況に応じて最適な行動は変化すると言うことだ。

 

少女は騒音から自身の聴覚を保護する為に着用している、アクセサリーの様に毛の生えた可愛らしいイヤーマフを片耳だけ外し周囲の様子を伺う。

 

「最後はスタッフルームに立てこもった3人。部屋の入り口から死角となる場所に身を潜めていたみたいだけど・・・」

 

訓練ではカッティングパイやクイックピーク。スタングレネードを投げ込んだ後のダイナミックエントリー等で敵勢力の排除、安全確認を行う。それは、室内の状況を室外から確認する為に編み出された技術。……それらを用いても完全ではなく、突入にはリスクが伴う。

 

「本来なら敵勢力を目視し、素早く『排除する』か『確保する』か判断を行う。それは部屋の中に人質や無関係の一般市民、別の入り口から侵入した味方への誤射を防ぐため」

 

始めから自身以外の友軍は無く、その場に居る全ての人間・・・老若男女問わず標的となると分かっているのなら一番安全な突入方法は『壁抜き』で死角に潜む脅威を排除した後に突入する

 

少女はピンッと立った獣耳を再びイヤーマフで押さえつけて、壁に押し当てた小銃の引き金を引いた・・・

 

~~~

「スイセイ。残念なおしらせだ」

「当てようか・・・FIBが本件から手を引くように連絡があった・・・でしょ?」

 

「ご明察」

「もしかして副所長、自ら現場に訪れたのはこうなる事を予想していたから?」

 

確かに、いつもの様なギャング間の抗争ではなかった。此処に在ったのは一方的な虐殺。

今までの手合いと今回の襲撃者が異なる事は明確なのだが、『FIBの捜査官が現地に到着するよりも早く』此方に手を引くように申し出てくる事自体、異例なのだとスイセイは感じた。

 

「先週の強盗事件から関連性のある事件はFIBが直接指揮を執ると通達があった。そして、市警への応援内容は『現場保存を優先し、捜査官の到着を待て(余計な事をするな)』だ」

 

だから、横槍を受ける前に『通常業務』として現場検証出来て良かったよとボタンは吐き捨てた。

 

彼女にとって先日の銀行強盗犯は、『久々に楽しめそうな玩具』でしかない……そして現在、手を延ばして掴み取ろうとした矢先、後から来た糞餓鬼に横取りされたのだ。

機嫌が良いわけがない。そして、それはスイセイも同様…

 

「見る物は見た。私の推察を何週間も掛けて立証してくれるんでしょ?」

 

科学捜査は万能ではない。分かる物もあれば分からない事だってある。

現場に残った投げ捨てられた弾倉。回収されずに放置された薬莢は襲撃犯が解析された所で自身の存在に結びつく事は無いと判断した物だ。

 

彼らはその場で何が起こったか立証出来ても、肝心の『誰が行った』か迄行きつく事は無いだろう。

 

だからこそスイセイは薄く笑みを溢す。

連邦捜査局だか、FIBだか、エリート組だか知ったことではない…優秀ならば『私達よりも早く捕まえてみろよ』と。

 


 

「ご苦労だった。報酬は口座に振り込んでおく」

 

アーマーに取り付けたボディーカメラの映像を介して契約を完遂したと判断したフランクリンは、作戦終了を現地に居るエージェントへと無線で伝える。

 

「作戦遂行に不安を感じていたクライアントがオフィスに立ち寄って、カメラの中継を確認して行ったぞ」

「大喜びだったわ。契約遂行の報酬にクライアントの盗難車両をエージェントに譲渡したいと提案があったわ。ナンバーは『60WLN682』シルバーのドミニネーターGTよ。必要書類は後日、郵送される。」

 

上機嫌なフランクリンとイマニの報告に少女は首を傾げた。

 

映画スターのガンアクションの様に敵の眼前に身を晒し、全方位からの銃撃を捌きながら敵勢力を殲滅した訳でもない。

ボディーカメラから映るの映像など、身を隠していた支柱がドアップで長々と映り込み、銃声が聞こえる程度。

移動した際に無力化した死体が映り込んだ程度の派手さのない地味な映像のはずだけど?と困惑を示す。

 

「クライアントは自らの名誉を守っただけでなく、そのガレージにある盗難車両のオーナー・・・複数人のセレブに貸を作った事になる」

とフランクリンが捕捉を伝える。

 

・・・なんにせよ・・・世の中には特異な人も居たものだ・・・と少女は自身の中で結論付けた。





狼の獣人少女・・・
名前不明。
(仕事関連ではスイッチが切り替わってる為)滅多に喋らない。
小柄(アメリカ人男性平均身長177cmからすると150cm台は子供の様なもの)
黒髪ロング、黒白メッシュの毛の長い尻尾
耳が良いらしく騒音の多い町中、戦闘では常にイヤーマフで保護している。

ドミニネーターGT
元クライアントの車。カスタムもそこそこされている。
少女の体格に合わず、座席を思いっきり前にした状態で運転している。
正面から見るとハンドルと共にピョッコリと頭だけが覗いている状況(カワイイ

星街スイセイ
青髪。ロスサントス市警の科学捜査班所属。クール

桜ミコ
ピンクのロングヘアー。市民安全課。後輩曰く「先輩は汚職じゃない!少し・・・PONなだけだ!」との事

FIB
連邦捜査局。国内の治安維持を一手に担い、テロ・スパイ、政府の汚職、複数の州に渡る広域事件、強盗事件などの捜査を担当する。さらに、誘拐事件では、未解決のまま通報から24時間を経過すると、広域事件として自治体警察からFBIに捜査主体が移される。
事件発生間際にも関わらず本件に介入してきた事をボタン、スイセイ共に不審に感じた

ブラウンチップ
5.56mm通常弾 M855の改良型の弾薬。M855A1
スチールコアと銅が使用されており貫通力、着弾時の威力が向上している
「小口径は負傷させる為の物」と言われる事もあるが、近年開発されている弾薬はタンブリングやフラグメンテーションなど着弾時に人体にダメージを与えるように設計されており、寧ろ従来の物よりも殺意が高い

ブラックチップ
5.56mm徹甲弾 M955
弾頭の先端に徹甲弾を示す黒の塗料が塗られている
タングステンの弾芯が使われている

服装を真似た模倣犯ではなく、全く似せるつもりもない狼っ子ちゃんの犯行がミリモンの犯罪歴に追加されました!
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