「なんでアヤメ先輩、不機嫌ぺこ?」
何処かご機嫌斜めなアヤメに視線を向けながらペコラはコヨリに話しかけた。
「ホロライブの頭脳~~!博衣~コヨリだよ!今日は助手君の疑問に答えちゃうよ!」
良いから早く教えろと小突く兎に「せっかちですね~」とコヨリは煽るような笑みを浮かべる。
「強盗で使った逃走車両、覚えてます?先輩あの車が大層気に入ったようで・・・」
「でも、長期間あの車が手元にあると警察に発覚するリスクしかないんですよ~」
「・・・つまり、お気に入りの車を元の場所に返す事になったから不機嫌になったと?」
「みたい~。でも、不機嫌なのももう少しの間だけです。なんでもボスから重大な発表があるようで、コヨリの予想が正しければ今後の方針と新しい拠点の話だと思うんですよ~」
猫カフェ。店主がトワと話している間に楽し気に話すペコラとコヨリ
とある音を高性能な獣耳が拾い上げ、2人は顔を見合わせた。
「今、シャッター音がしたぺこ?」
見回すが人影はない。
「気のせいかな?」
『ロスサントス市警 中央署・地下留置所』
鉄格子、コンクリートで囲まれた窓のない狭い部屋。
中にはクッション性皆無の固いベットが一つだけ備え付けられており、廊下の監視カメラや守備室からは丸見え、その部屋にはプライバシーという文字は存在しない。
こんな劣悪な条件の部屋に拘置される人物はさぞかし凶悪犯なのであろう・・・
と、一般的には感じるであろうが実情は違う。
強盗や殺人を犯した凶悪犯は、高い塀とフェンス、武装した看守に囲まれた刑務所に護送され隔離される。
よって、この警察署の留置所を使用するのはもっぱら軽犯罪を犯したチンピラや酔っ払い、薬でハイになった愚民を一時的に拘束するお仕置き部屋でしかない。
現在の利用者は1名。
自慢のスーツ・シャツには皴が出来、くたびれた雰囲気を醸し出している獣耳の女性・・・
「ポルカ~。おるか~?」
「おるよ!」
WEAZEL News記者の尾丸ポルカは、警察署長の大空スバルの呼びかけに半ギレしながら唸るように応答した。
「お前何で捕まったか理解してる?」
「おかしい!私は唯、真実を伝えているだけだ!」
ポルカの脳内に過る出来事は、先日の銀行強盗を報道ヘリで生中継した一件。
「別に報道するなとは言ってないよ?だけど、立ち入り規制しているエリアに侵入し、警察の執行を妨害するのは訳が違うと思わないか?」
例えるならば洪水で流されいる市民の上空を報道ヘリが占領し、『救助隊は一体何をしているのでしょうか!未だ救助活動は行われていません』と報道するようなものである・・・大半の人は思うだろう『お前のヘリが邪魔で救助ヘリが立ち入れないんだよ』と。
「実際のところ偶然、強盗犯が逃げた進路上に報道ヘリが居ただけ・・・悪質な妨害とは捉えていないから今回は厳重注意で済ませるつもりだったんだが・・・ポルカ、お前・・・なんで拘束されて此処に居るか本当に心当たり無い?」
先日の件とは違うと言われ首を傾げるポルカにスバルは自身のスマートフォンを操作し、とある記事を表示した後にポルカの顔の前に突きつける。
この街の病院を信じるな!
当方は、記者として街を動いていたが病院の前にいざ歩いていくと、院内の人間の車に轢かれ意識を失った。更に、ピンク髪のマスクの医者に殴られ、そのまま高額の請求を受けた。病院は怪我を治すところではないのだろうか?院長はギャンブルに通じているとも噂がされている、この街の病院を本当に信じて良いのか……市民は今決断を迫られているときかもしれない。
限界大空警察、出勤
先日の銀行強盗を皮切りに、立て続けに発生している凶悪犯罪を前にし精神的な限界をむかえていた署長大空スバルのもと、警察官が動き出す。 街の平和を守るための大空警察の署長をつとめる大空スバルは早くも精神的限界に達していた。警察陣営の統率の心配をしており、近い将来に瓦解するのではないかと考えていた。 警察陣営の崩壊は避けられないか?キッザニアのような雰囲気でパトロールに向かっていく者たち……。 このままではギャングに手玉に取られてしまうのではないだろうか、はたまた市民の犯罪に転がされてしまうのではないか?検挙率はあげられるのか…!! 市民からの応援が唯一の大空スバルの救いになるのか、副署長の獅白ぼたんの動向にも目がむけられる。今後の警察の対応に注目だ。
街のメカニックは警察とズブズブの関係?
車をなおすメカニックに来てみた、そこにはまず出迎えれる看板「車を壊そう」のキャッチーな文字。ここからすでに頭のネジは外れており、頭を修理したほうがいいことがうかがえる。本当に仕事をしたほうがいいのは己の頭なのではないか? そこに現れたL警察官。「自分のパトカーを改造してほしい」まさかの市民の血税によって作られた車を自分の私利私欲のために改造願いを出していた。写真でもその様子がばっちりと撮られている……。本当に警察は大丈夫なのだろうか?先日の記事ともあいまって、更に疑念は深まるばかり……。 特に注意したいのはL警察官、子どもの遊び感覚で警察をしているとしか思えない。気をつけたほうがいい。
「ギャンブル救急」現る?
ホロスサントスでの生活が始まる前に、snsでの白上フブキの匂わせ意味深ポストが視聴者の間で大きな話題となっていた。その内容は、救急隊がただの医療従事者ではなく、裏の顔を持つ「ギャンブラー」ではないかとの憶測が拡がっているのだ。 当記者が独占取材したところ、snsでのポストでは「ギャンブルですった!あそこは詐欺だ!」などと発言しており、いくら使ったかは当記者にも伝えてはくれなかった……。 医療従事者の中でも注意したいのは、Rスタッフである。喧嘩っぱやく、自分から相手を怪我させては膨大な額の医療費を請求してくる。 やはり、一番上である院長がこの有り様だからなのだろうか……。人命救助を優先するのか、それとも到着前に患者の命を賭けたギャンブルを仕掛けるのだろうか……市民の我々にとっては、不安でしか無い。
Tきのそらとギャングの遭遇
当記者は偶然にも、巷で話題となっている強盗団の一員と思われる服装をした不審者を発見し、追跡取材を行った。追いかけた先で会ったのはTきのそら? 一体何が起こっているのだろうか、強盗団のリーダーと思われる人物はTきのそらを「プリンセス」と呼び、褒めちぎっていた。もしかすると強盗団と通じている市民のひとりなのか? だが、しかし強盗団もまだ強盗殺人の様な凶悪犯罪を働いているわけではない。いわばただの無職である。警察や救急隊が崩壊しようとしている今、市民の味方になりうるのは強盗団なのか? 当記者はこれからも身をていして強盗団を追いかけたい。強盗団は無血で誰一人死傷者を出す事は無く強盗を成功させており、その後の足取りは不明。彼らはこの街に巣食う一般的なギャングや犯罪組織の『市民は食い物』的な思想とは異なる様にも感じられる。一方的に拳で殴ってくる病院スタッフより信頼は重い罪ではないと思うが……。果たして。
「どうだ?この飛ばし記事に身に覚えはないか?」
「・・・え~でも事実なんですよ「何を事実として言ってるわけ?」写真撮ったんですけど・・・」
スバルの尋問中に割り込んできたのはラプラス。
「大体ね~この警察署にL警察官って・・・吾輩しかいないわけ!・・・分かる?」
「ラプラス落ち着け。とりあえず誤解があっただろうから後でポルカにはその件は伝えておく・・・問題なのはそこじゃない。『Tきのそら』の記事だ」
「『猫カフェ』『Tきのそら』って言ったらお前・・・誰がどう見ても・・・『ときのそら』さんの事じゃねぇえか!もう少し名前を隠す努力をしろよ!!!!!「署長!大事なのはそこでもない!」」
今度は暴走するスバルをなだめる様にラプラスが話をぶった切る。
「まぁ、記事にもあったが強盗団の情報をお宅…、もってるでしょ?この街の状況理解してる?犯罪組織やギャング達は例の強盗団と消えた大金の行方に興味津々ってわけよ」
それこそ強盗団の首に賞金が掛けられ、有力な情報にも報酬を支払うと公言するくらいに・・・
「その状況で、一般市民のお宅が強盗団の情報を持ってるって記事を出しちゃったから我々警察が犯罪組織からアンタを守る為に『保護』する必要が出来たってわけ。わかる?」
「で、どうなの?本当に情報持ってるなら我々が『保護』するし、デマならこの記事を削除してお詫び・訂正を行って」
と言いながら『Tきのそら』の記事と一緒に『L警察官』の記事を指定するラプラスに苦笑いを浮かべるポルカ。
遠目でそれらしき服装をした人物を見かけただけ。日中、雑踏の中で『プリンセス』という単語を自身の耳が拾っただけ。それだけの事で自分の命は掛けたくはないと説明すると警察官の2人は簡単に納得する。
『自身の罪は他人に擦り付ける』
他者の銃を奪い取り犯罪に使用するといった事であったり、敵対するギャングと同盟を組んでいる犯罪組織に、『変装』をした上で暗殺や破壊工作を行う事で関係悪化を狙うといったこの街ではよくある事。
銀行強盗が行われた後に同じ格好をした程度の低い模倣犯が大量に捕まっている事から、今回の記事で目撃した強盗団も模倣犯であると予想していた警官2人は『あたかも深刻な状況である』とポルカに説明し、自身の望む方向へ話を誘導する。
そして、記者が記事の誤りを認めた事実に『ニヤリ』と笑みを溢した。
・・・つまり犯罪組織からの保護は建前で、最初から本来の目的は保護ではなく、理由のある『拘束』か『記事の削除』である。
お詫びと訂正
この度は、報道した記事に一部誤りがありましことをお詫び申し上げます。当方の過失により、関係者の皆様にご不便をおかけいたしました。 今後は、確認をより厳密におこない再発防止に努めてまいりますので、何卒よろしくお願い申しあげます。 この度は、当方の不手際でご迷惑をおかけし申し訳ございませんでした。 重ねてお詫び申し上げます。
すてきなおまわりさん
この街が平和であるのは、警察のみなさんが働いているおかげです! 今日も警察のみなさんにありがとうを伝えて1日を過ごしましょう!警察のみなさんが私達をまもってくれています♪ こまったときには、すぐ通報! 頼りになる、街の警察のみなさんいつもありがとうございます!
『バインウッド北部・ガリレオ観測所』
駐車場28台。
公衆トイレ1箇所。
バインウッド北部の丘に立つアールデコ調の天文台。
ここからはロスサントスの街全体が見渡せる。
島外から訪れた観光客や、その景観から夜景を見に訪れる市民が多くデートスポットにもなっている。
天文台、駐車場、その反対側にはサンアンドレアス公園委員会が管理しているハイキングコース。
ハイキングコースの終点にはベイツリーキャニオンを一望できる眺望所・・・日中はハイカーが観光に訪れるが夜間では、街灯の無い山道、見渡せる景色は真っ黒なアラモ海、建物や車の発する照明もロスサントスの夜景に比べるとブレイン郡は散発的。夜間に労力を割いてまでこの場を訪れる価値は無い。
観光客向けの売店『ビッグオージューススタンド』も当然の様にシャッターを下ろしており、この場に居るのは
「・・・とりあえず・・・お勤めご苦労様です?」
「・・・おかしいだろ!どう考えても!はぁ?マジ意味わかんないんだけど!?弁護士呼んで来い。弁護士!」
「やばいって。マジで!この世界に報道の自由は無いのか!?」
「災難でしたね」と少女が持参し、差し出されたコーヒーをポルカは一気に飲み干した。
「落ち着きました?」
「おかげさまで・・・すみません、取り乱しました・・・今日の要件は『いつもの』?」
5000ドルで私に必要なモノだけお願いと告げる少女に暫し考えた後にポルカは話す。
「街の情勢、各勢力の状況、危険地帯の情報でしたね・・・」
まずは強盗後のギャングの状況。
ファミリーと対立していたバラス。バラスに支援するバゴスがこれまでの状況でした。
強盗後は各勢力の犯罪資金が貯蓄された口座が凍結され、抗争で消費する武器や弾薬を買う資金さえも枯渇した状況。
抗争の継続は不可能と判断し、バラスは一方的に休戦を決定。
ファミリーにとってバラスが弱っているこの状況はチャンスではあるのだが、これまでの抗争で受けた損害が大きい為、ファミリーもバラスと同様に力を蓄える様に行動する。
これまでバラスを支援していたバゴスは、自身ではない外部の組織に『例の強盗団』が居る事を把握している。
強盗団と同じ『紫色』を組のカラーとしているバラスを筆頭に、その他の犯罪組織を警戒。同盟関係を解除し、各組織の動向を注視している。
カルテルも同様。皆、強盗団がどこに居るのか。誰の手先なのか探りを入れている状況。
「そして、犯罪組織全般に言えるのは・・・警察の封鎖によって生産拠点と市場を分断され、資金にする事が出来ないという事」
貯まる在庫。不足する資金。ノルマを遂行する様に圧力をかける上層部。
「この島の物資は国際空港とロスサントスの港で賄っている。閉鎖が続きブレイン郡の物価が上昇し始めた今、市民からの圧力により警察は近い日に封鎖を解除する事になるだろうね」
「強盗団は未だに捕まってないけれど・・・模倣犯をオリジナルに仕立て上げて「犯人を逮捕した」とでも発表するつもりなのかしら?」
少女の問いに「その通り」とポルカは頷いた。
「この後に考えられるのは貯まりに貯まった在庫を売却して資金にする事。大規模な取引が予想される・・・更には、間接的にだが組織に打撃を与えられた事に激怒したバゴスは幹部を招集。主力部隊と殺し屋を引き連れて
「つまり、この島全土が戦場になる可能性があるって事?」
警察だけではなく、街を徘徊するギャングの斥候や賞金に目のくらんだ市民の密告。
町全体が強盗団を包囲している状況が出来上がっているという事になる。
少女は「また、面倒な状況になった」とため息を吐いた。
「その様ですね。なんでもこの段階でFIBも動き出したとか」
と、ついでとばかりに情報を渡すポルカ。情報の内容に対し少女は目を細めて不快を示した。
この街に住まう全ての住人が疑心暗鬼。
普段なら黙認している『副業』が露呈しやすい現状は少女にとっても息苦しく、面白いものではない。
「まぁ、このくらいの情報ならばそこら辺のチンピラでも知っている事ですけどね!」
これくらいならば他の情報屋、しいては情報を買った少女自身が既に知っていそうな情報。
何故、買う必要の無い当たり前の情報を金を払ってまで買うのか?とポルカは過去に聞いた事がある。
それに対し少女は「チンピラの噂話と情報屋の確証の取れた情報とは信用性が違う」と答えたのだ。
今まで相手にしてきた客層とは異なる反応…
彼女は既に持っている情報と照らし合わせて確実な情報を選別している風にも見えた。
(まあ、情報を買ってくれるのなら私としては文句は無いけど…)
最も、ポルカとしてはもっと価値のある情報を買ってもらった方がいいとは思っているのだが・・・例えば・・・
「ところで、件の強盗団の情報もあるけど買わない?」
「必要ないです。必要としている人に売ったらどうです?」
「こう見えても情報を売る相手は選んでるんです」
警察は『市民が協力するのは当たり前』と支払う気がない。
出たとしてもポルカの提示する金額が折り合いがつかず顧客になりえない。
強盗団を探す犯罪組織に売った場合、支払いを先延ばし踏倒すか、用済みとばかりに鉛玉で支払われる未来が容易に予想できる。
ポルカは暫く考えた後に「7041番地・・・かつて富豪が事業に失敗し、夜逃げ。一等地に建つ巨大な屋敷を最近購入した人が居るようですよ」と呟いた。
私は善良な市民の味方ですのでと笑いながら。
私は小さく息を吐いた。興味津々といった感じで此方の様子を伺う情報屋の目。
提示された情報に驚くのか、それとも既に知っていると受け入れるのか・・・現時点でおそらく、私と情報屋しか知りえない情報。
これから先、私が漏らした情報により、どの勢力が強盗団に接触するのか・・・どうやら強盗団も含め、私自身の情報も彼女にとっては興味をそそるものだったらしい・・・
『価値のある情報』、皆が知っているからこそ『利益にならない情報』、買い手を選ぶからこそ『利益になるがリスクを伴う情報』・・・
厄介な情報を押し付けられた私は、冷めた珈琲を口に含み、顔を顰めた・・・
報道局、兼情報屋ポルポル回ー!
*住人としての視点と観測者として街全体の様子を見ている情報屋では見えてるものも違いますし、自身の情報と統合させると見えてくるものもある