ミリモン   作:ブルーな雛菊

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天気予報

~サン・チアンスキー山脈~

 

 

「全国の天気予報を紹介します。今晩から明日にかけてサンアンドレアス島全土に湿った空気が流れ込み、分厚い雲が成形されています。気温は26℃。明日未明から早朝にかけて、激しい雨が降る恐れがあります」

 

無線機越しに響く妹の声にカナタは苛立ちを覚えた。

 

「コナタ!最新鋭の設備を利用して何、天気予報なんかしちゃってるのさ!?」

 

ブレイン郡、サン・チアンスキー山脈。

東側には太平洋、西側にはブレイン郡・アラモ海やセノーラ砂漠が広がっている。

付近(といっても1km先)の施設はヒューメイン研究所のみ。

道路も研究所へアクセスする為のものが1つだけ。

 

観光名所のチリアド山とは違い、手つかずの自然が広がっている。

付近を照らす照明もなく、見渡す限り漆黒の闇。

そんな中でパン屋の娘、カナタはクソ重いライフルを引きずりながらやっとの思いで周囲を見渡せる稜線まで這い上がった。

 

「途中までヘリで送ってもらったとしても・・・なんで僕がこんな肉体労働しないといけないのさ!?」

『だってぇ~わじゃちゃんたぃし~』

 

無線から聞こえてくる妹の声が近づいたり、遠のいたり・・・

 

「マイクの前で、その無駄な脂肪の塊を揺らすな!!」

『実際、狙撃とか大変なんだよ~?伏せ撃ちとかしにくいし~だから班長さんにお願いして、安定した射撃が出来るお姉ちゃんに狙撃役変更してもらったの~』

 

僕がこんな面倒な役回りをする羽目になったのは()()()()()()()()()()!という感想よりも、カナタの耳にどうしても聞き捨てならないワード(言葉)が入った。

 

「あ?誰がぺらぺら?」

 

()()()()()()()ターゲットを捕捉したよ!』

 

 

クソ重い銃・・・とも言えない・・・

対空トレーラーに搭載されている機関砲を取り外し、人が保持できるように無理やりストックを取り付けたかのようなデザインのライフル。

そして、専用の光学照準器から伸びているケーブルの先には衛星通信用のアンテナとPC。

 

トレーラー型のテラーバイト(電子戦機)が各所から入手した気象情報や風向き・ターゲットの現在地等を統合し、最適な偏差射撃位置を光学機器の照準に反映させる仕組みだ。

更に、次弾発射時には初弾と目標物の差を自動的にフィードバック、最適化するという一端の狙撃銃では考えられない特殊仕様。

 

銃から備品に至るまで全てワンオフ。

そのスコープを覗きながらカナタは妹のコナタに対して無線越しに吠えた。

 

「目標の航路が違うみたいなんですけど!?」

 

「でも、その目標で間違いないみたい~お姉ちゃん、狙える?」

 

「当然」とばかりにカナタは狙いを定めて引き金を引く。

 

銃口を覗き込めば、ビール瓶の様な巨大な弾薬が薬室に収められている事が確認できるであろう・・・その巨大な銃口から雷鳴の様な轟音を響かせ弾丸は射出される。

 

マズルブレーキから大量の燃焼ガスが排出され、周囲の砂や埃を巻き上げた。

 

 


 

 

~ロスサントス国際空港~

          アーニャ・ムメイ

 

 

HQ(作戦司令部)、此方『Alfa2(アーニャ)』」

「目標物に接近。『Mike(ムメイ)』が配置に着き次第ターゲットの捕捉を行う。オーバー」

 

大型旅客機の行き交う国際空港。

ウエットスーツに身を包んだアーニャは航空機が着陸し、地響きの様なエンジンの逆噴射の騒音に紛れて索発射銃の引き金を引いた。

 

分厚い雲が辺りを覆う曇天。

月明りも見えない夜空に、空高くまで打ち上げられる一本の縄。

 

地上からだと見上げるほどの高さに設置されているターミナルの巨大なレーダー。

遥か上層から微かな金属音。

ムメイが暗闇の中、目視でロープが固定されているのを確認した後にスルスルと馴れた手つきで上へ上へと昇っていく。

 


 

~パーマーテイラー発電所~

          アキ・ベールズ

 

ブレイン郡、ロスサントスの境目に位置する火力発電所。

施設の設備を囲う様に設置されたフェンス。

正面にはセキュリティーゲートが設けられており、公共施設でありながら警備は厳重と言える。

 

その施設内に既に潜り込んでいるアキ・ベールズの両名は、別のユニットがターゲットを捕捉するその時まで待機・・・

静かに瞳を閉じて待機するアキ、そわそわと辺りを見回し落ち着かないベールズの様子は傍から見れば対極の様に見えただろう。

 

「皆の事が心配?」

作戦時間が近づき、一層周囲の変化に敏感になっているベールズはアキの声にビクリと肩を震わせる。

 

「空港への侵入、発電所での工作、接近する敵への陽動・妨害、限られた時間内での貨物回収・・・もし、他の組織が同じ事を行うとしたら、どの役割でも分隊(5~10人程度)規模で行う作戦よ。1~2人の構成を1ユニットで振り分けているけれど、人手不足感が拭えないわね」

 

「ただ、それは只人が同じ事をしたならばの話よ・・・」

 

只人より突出した能力のある亜人ならば、その例には当てはまらない。

夜目が効くムメイ、索敵に特化したペコラ、武器の扱いに長けたアーニャ、車両を使った逃走に適応しつつあるコヨリ、物理的な強度があるアヤメ・・・それぞれが種族の特性やこれまでの経験を生かした特技を持っており、適材適所に配備すれば最大限の効果を生み出す。

 

「歴史の教科書には載っていないけれど戦時中でも多くの亜人が戦ったわ」

プライドの高い只人は亜人の活躍を良しとしない。

当時、同じ軍に所属していた只人の司令官は、亜人部隊の功績をもみ消し、同軍の侵攻を妨げる蛮族として亜人を取り扱った。

 

「実際のところ亜人と只人の混合部隊は、その能力差から足並みを揃える事が出来ず瓦解したの」

只人のペースに合わせなければ部隊は分離する。また、只人にペースを合わせるならば亜人の能力を活かしきれない。

 

「私達にとって枷でしかなかった・・・」

激戦区で付いてこれない只人を見捨てれば咎められ、助けに行けば同族の犠牲が出る。

どちらを選択しても結果は同じ…「ありがとう」の言葉すらなく、「助けに来るのが遅い」「飼い主の為にペットが命を懸けるのは当然」「あいつらは我々を見殺しにしようとした」などと宣う(のたまう)

逆に亜人部隊が窮地に陥った時はどうだろう?

彼らが手を差し伸べたことがこれまでにあっただろうか?

 

 

─何故、私達が血を流さなければならない?─

 

 

アキはまるで当時を思い出すかの様に依然として静かに瞳を閉じたまま・・・

怒り、悲しみ、喜び、諦め・・・

色々な感情を掻き混ぜた様な複雑な表情を浮かべた。

 

「・・・今はいい時代になった。根強く偏見は残っているけれどね」

・・・昔の話よ。『今ではない』

 

 

「トワは皆の力を把握してお願いしてるの。大丈夫よ、今回の作戦で万が一なんて事はない」

 

 

『此方『Mike(ムメイ)』、ターゲットを捕捉した。推定15分前後に『Bravo(ベールズ)』地点を通過。座標の書き換えを開始、着陸地点719』

『Copy、到着まで15分』

『了解、719へ向かう』

 

『各ユニットへ。工作完了後、速やかに離脱せよ』

 

「ほらね、問題ないでしょ?」とアキはベールズに微笑みかけた。

 

「10分後に発電所のスイッチを落とす。すぐに作業員が駆けつけてくるけれど、すぐに復旧できる訳ではない」

例えるならば家庭にあるブレーカー。契約電力を超過した場合落ちる『サービスブレーカー』とは別に、漏電した場合に事故を防ぐ為に作動する『漏電遮断器』などが存在する。

何が原因で安全装置が作動したのかを確認せずに復旧させれば・・・起こる事は人災。

更に扱う電力が大きい発電所でソレが起これば損害は計り知れないことになる。

 

「原因の解析、点検、復旧作業。停電時間おおよそ10分前後」

 

遠くから響いてくるジェット音。

他者に自身の機体の存在を認識させるための航行灯は意図的に消されており、今にも雨が降り出しそうな空には視認出来るようなものはない。

 

アキ・ロゼの合図と共に『カチリ』と発電設備の停止ボタンがベールズにより押され、それと同時に2人は敷地内からの脱出に動き出す。

2階の通路、手すりから身を投じ空へ。

一瞬の浮遊感、足に伝わる着地の衝撃を逃がす様に身を捩じりながら前転を行う。

 

背後を振り返ると、慌てた様に作業員がライトの明かりを頼りに施設へ向かって行く姿が見えた。

 

『此方『Bravo(ベールズ)』チーム。工作及び離脱完了。健闘を祈る』

 

『了解。『Kilo(コヨリ)』より『HQ(司令部)』へ、目視は出来ないがターゲットは上空を通過した模様。空港に待機しているバゴスの動きは無し』

 

『『HQ(司令部)』から『Kilo(コヨリ)』へ。これより目標へ向かい回収を行う。撤収までにバゴスの妨害が入りそうだったら個人の判断でインターセプトを行え。問題ないか?どうぞ』

 

『Copy、此方の判断で行動する。撤収時に通達されたし。どうぞ』

『承知した。以上』

 

 

(・・・無線のやり取りを見る限り、事は順調に進んでいる)

 

アキ・ロゼは賽を振る。

航空機に乗るパイロットが異変に気付き、飛行場へ引き返すのもよし。

気付かずに墜落するのも良し。

 

はたまた航路のズレに気付いたのは良いが、航空機の進路上に存在する州軍基地のレーダーに捕捉されることを恐れて()()()低空飛行を敢行するのも良し。

(飛行場で待機する幹部へ問い合わせれば航空管制官を買収している旨が知れるけれど、機内がパニック状態になってれば冷静な対処が出来るとは思えない)

 

上手く事が運び、墜落するのも良し。

失敗し、飛行機の貨物や乗員が警察や軍に捕縛・押収されるのも良し。

 

あくまでこれはサブターゲット(副次目標)

私達の失敗条件は飛行機の命運とは別にあるの

 

「後はトワ達が上手くやるわ」

ベールズと共に己の愛車までたどり着いたアキ・ロゼは、未だ不安そうにしてるベールズを励ます様に声をかけた。

 

 


 

 

『時刻は20:50。現在の天候は曇り。発達した雨雲の影響で所により落雷(砲撃)ゲリラ豪雨(ラテンアメリカ人)が降り注ぐでしょう』

 

「素直に『ターゲットダウン(墜落)』って言いなさいよ!「お姉ちゃんもお疲れ様~ヘリまで撤収頑張ってね」」

吠えるカナタに無慈悲にもクソ重い()()()()()()脱出ポイントまで来た道を引き返せと告げるコナタ。

 

(・・・さてさて、私もお仕事がんばりますか)

『HQ、HQ。此方テラーバイトから作戦本部へ。目標墜落を確認、上空からの映像では生存者は見当たらない。引き続き墜落現場周辺の監視を行う。オーバー』

 

カナタの里親であるコロネとミオ

パン屋の娘、天音カナタに実の妹『天音コナタ』がいる事を彼女等は知らない。

 

そして今、ドローンによる目標周辺の監視

墜落地点へ集合する各勢力の情報収集、及び映像記録という大して面白い訳でもない、退屈な任務が彼女を待っている。

 

 

コナタにとって長い夜が始まった。

 

 




天音カナタ・・・パン屋の娘。ゴリ・・・天使の亜人。何故か力仕事や(過酷な環境を走破し、目標地点に辿り着く様な)狙撃を任せられる。あと、ペラペラ

天音コナタ・・・カナタの血の繋がっている妹。意図的に存在を隠しており、カナタと同じ組織に所属している養母・ミオですらコナタの存在を把握していない
とある組織に所属している。
そして、その胸部は豊満であった

テラーバイト…オンラインをしている人なら知っているFIBの所有するトレーラー型の電子戦機。何故、この組織がテラーバイトを所有しているかは不明。(もっとも、盗難にあったとしても物が物なだけあって盗難届けを出せる筈もない

飛行機に起こった事…サンアンドレアス島に入った瞬間、カナタによる砲撃でエンジン炎上。
アキロゼによる発電所の工作で飛行場を視認できず通過
アーニャ班による飛行場座標書き換えを墜落寸前でパイロットは気づくがエンジンの出力不足でそのまま墜落

HQ…作戦指令部。ミリモンメンバーではその作戦でトワと共に行動しているユニットをさす。

カナタが所属している組織はミリモンではない為、彼女等が言う作戦指令部はトワとは別

作戦成功条件
ミリモン…飛行機内の貨物が標的。貨物の損傷を抑えて確保したい為、パイロットにはギリギリまで頑張って貰う必要がある

組織…撃墜自体が目的。空中で爆散しようが構わない


オンラインで貨物を運ぶと様々な組織のプレーヤーが攻撃を仕掛けてくるように、一つの敵対勢力だけターゲットに攻撃を仕掛けるとは限らない~!(時には共闘、時には殺し合い

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