『此方
ロスサントス市内。
数時間前に作戦終了と連絡を受け、他のメンバーよりも一足先にアジト方面へ向かっていたコヨリの元へ無線機から応援要請が届いた。
「
「「ん??」」
信号待ち。
隣から聞こえてきた警察無線に首を傾げながらコヨリは自身の横に視線を向けた・・・
緑と黄色のデクラス ヴィゲーロZX
プッシュバンパー、車両の
「改造された警察車両、ボディーアーマーとカービンライフルを常備しているロスサントス市警は優秀よ。私達の作戦では彼等との直接対決は避ける様に調整している」
この街に到着した直後にトワが口を酸っぱくしてメンバーへ警告した内容がコヨリの脳内にフラッシュバックする。
(やばいヤバイやヴぁいYABAI!!)
(このまま何事も無かったかのように・・・誤魔化せれるか?)
コヨリ、そして隣に停車したパトカーは運がいいのか悪いのか、窓が全開に開いていた。
つまり・・・彼方の無線が聞こえたって事は、此方のやり取りも聞こえったってことだよね!?
そして、コヨリは自身の服装に目を落とす。
飛行機墜落作戦でバゴスの妨害をするために
「此方いろは!強盗団と思しき人物を発見したでござる。6201の交差点」
警官が無線機を取った瞬間、コヨリは限界までアクセルを踏み込んだ。
「ヤバイ、やヴぁい!警察に見つかった!追ってきてる。救援は難しい・・・」
「・・・分かった。そのまま警察の陽動をお願い出来る?」
若干、落胆の混ざった声色が無線越しに伝わった。
数多もの銃弾をエンジンに受け、白煙を吹きながら息絶えたピックアップトラック・カラカラ4×4。
5024番地横の高速道路の路肩に停車し、
「
荷台から持ち出され、投げ渡されるのは先日調達したAK-12と装填済みの複々列式箱型弾倉。
「車と木々を盾に!迎撃するわよ!」
「分かった!」
車を捨てて逃げ切れるのなら良い。
だが、現状では人員も機動力も相手組織が優勢、このまま逃げ込んだところで追いつかれるだけだ。
そして、逃げた先に遮蔽物や隠れる場所も無ければどうなる?
トワは各々が戦闘態勢を整える最中、考え、応援が到着するまでこの場で凌ぎきる事を決断した。
「
「敵よ!撃って!」
この場面、この状況。
高速道路を逆走し、此方へ向かってくる車など敵対者としか考えられない。
アヤメは狙いを定めて引き金を引いた。
断続的に吐き出される銃弾。
ヘッドライトが逆光となり、相変わらず距離感は掴みづらい。
従って、車の中に居る乗員を無力化出来たかの判断は
500m・・・高速で走行する車両にとって500mなんて数十秒で縮められる。
400m・・・豆粒だった光がみるみる大きくなっていく。
装填された弾薬を使い果たし、次の弾倉へ。
300m・・・突撃銃の一般的な射程距離から現在に至るまで迎撃は有効打を与えた手応えを感じなかった。
「
中央分離帯のブロック付近に停められたカラカラ。それを起点に高速道路の上下線、双方から強襲を掛ける追跡者の迎撃。
アヤメと共に背中を合わせて防衛線を築いていたトワへこの場から逃げる様に声をかけた。
200m・・・銃弾を浴びせた1台が大きくハンドルを切り、ブロックに接触、横転。
100m・・・残り一台。弾倉最後尾に装填していた曳光弾が連続で吐き出され、弾倉の終わりをアヤメに知らせた。
マガジンキャッチレバーに新しく取り出した弾倉を沿わせ、そのまま銃に装着している空の弾倉をレバーと一緒に押し、弾き飛ばす。
バゴスの乗るテクニカルが迫り来る。
アヤメは再装填の時間は残されていないと悟る。
『タンッ』と軽いステップで闘牛士の様にその身を翻すと同時、先程まで居た場所へバゴスの乗るテクニカルが突き刺さった。
(トワは!?)
腰ほどの高さのある分離帯のコンクリート製ブロック。
その先にトワの姿を確認したアヤメ。
トワがテクニカルとカラカラの衝突に巻き込まれなかった事を安堵し、再び装填作業を再開する。
弾倉前部をレシーバーに引っ掛け、円を描くように弾倉後部を押し上げ装填。
ホールドオープンではない為、右手で銃を保持したままチャージングハンドルを左手で引き初弾を装填。
そして衝突のショックから回復していないテクニカルの乗員、トワが回避行動を行っている際に手薄になった反対側に到着した新たな増援へ銃を向ける。
吐き出される60発の鉛玉。
(遮蔽物は何処!?)
通常、近距離の銃撃戦は建物や遮蔽物に身を潜めた状態で行われる。
複数の射線上に身を晒せば、自身が数秒経たずに屍に為ることは明確。
そして不運なことに先程まで身を隠し、迎撃を行っていた
道路を横断し、中央分離帯とは反対方向、木々が立ち並ぶ路肩へと。
だが、敵は待ってはくれない。
だから相手が顔を出せないように鉛玉で
テクニカルの銃架に付く射手。
アヤメに銃を向けるバゴス。
分離帯を覗き込みトワを狙うバイカーギャング・・・ザ・ロストMCへと・・・
脅威度の高い相手から順に排除する。
曳光弾が射出され、空になった弾倉が地を叩く。
新しい弾倉を叩き込む。
再び雨の様に薬莢が宙を舞い、金属音が鳴り響く。
赤熱するバレル。
既に強化プラスチックのハンドガードからは白煙が出ており、焦げたプラスチックの香りが周囲に漂う。
この銃は機関銃ではない。
立て続けに数百発と弾丸を発射する様には設計されていない・・・
(分かってはいても撃たなきゃいけない・・・)
手を止めた瞬間、屍を晒すのは私の方だと理解している。
アヤメはアーマーに衝撃を受けるのも気にも留めずに再装填を行う。
・・・既に内部部品は損傷しており、時折排莢不良を起こすAK。
チャージングハンドルを持ち、銃床を地面に叩きつける事で強制的に排莢を行う。
ハンドガードは溶融、熱せられたバレルに付いたプラスチックからは炎が出始める。
鬼火の様にユラユラと揺らめく炎を携えてアヤメは無言で引き金を引く。
「救援はまだ!?」
『高速道路が警察によって封鎖されてる。裏道から其方へ向かうから持ちこたえて!』
アヤメが激しい銃撃を行っている一方、トワは分離帯のブロックに身を寄せて一人ずつ確実に始末していく。
テクニカルの突撃によりアヤメと分断されたが、立ち位置的には
【木】=【アヤメ】===【追跡者】=【ブロック】【トワ】
といった感じで挟撃の形を取れていた。
夜間の為、アヤメからは確認しにくいだろうが確実に追跡者の数は減らせている。
(バゴス、バラス、ロストMC、カルテルも・・・)
次から次へと参入してくる追跡者の姿は銃撃戦を仕掛けたバゴスだけに留まらない。
今やこの島に住まうアウトロー達を一か所に集めたかのような惨状。
(甘く見ていた・・・)
報酬に目が眩んだ者たちは、我先に身内でも殺しあうと計算していたが、まずは『強盗団』を捕えてからと方針を変えているようだ。
ミリモンが長く姿を
どの道、やる事は変わらない。切り抜けなければ明日は無い。
「ヤバイ、やヴぁい!警察に見つかった!追ってきてる。救援は難しい・・・」
応援に駆けつけて来ているコヨリからの無線。
警察に介入させればこの騒乱は収束するだろうか?私達は逃げ切れる?・・・否
(その代わり、より強固な連携を行う市警に追われるだけ・・・)
「・・・分かった。そのまま警察の陽動をお願い出来る?」
アキ・ロゼの迎えが来るまでここでアウトロー相手に踊っていた方が
『
『
相手の残存兵力は残り僅か。
そして、それは自身の持ち合わせている残弾も同様。
トワは周囲を見渡す。
そして状況を打開出来る兵器を見つけ、身を低くしながら忍び寄る。
カラカラに衝突したテクニカルの銃架
取り付けられた約40kgの鉄の塊
『裏手に付いた。敵はまだいる?』
「
トワは武骨な鉄の塊・・・ブローニングM2重機関銃のレバーを2回引く。
「敵は全部、私が殺る」
そして、押金式のトリガーを押し込んだ。
対物ライフルに使用される弾薬・・・50BMGが毎分635発の速度で発射される。
既に何台も乗り捨てられている追跡者の車両を『何の抵抗もなく』複数台貫通し陰に潜んでいた残党を文字通り『挽き肉』にする。
射線上に入ればアウト。
トワの斉射によって、それまで肩を並べていた
もし
今となっては動く者は誰もいない・・・静かになった高速道路。
遠くで鳴り響くサイレンが徐々に近づいてくる・・・
「周辺状況クリア。
『余は大丈夫。・・・だって長女だから!』
「そう・・・よかった・・・
アキ・ロゼの機転で現場に到着する前に調達された盗難車両。
その座席に深く座り込みながら深く息をついた。
「ママ、他のメンバーは?」
「アーニャ、ムメイは撤収済み。コヨリも何とか警察を撒いたみたい。ペコラちゃんは・・・連絡が付かない」
「・・・わかった」
「HQから全ユニットへ。繰り返す、HQから全ユニットへ通達」
「
「現在、強盗犯を追跡中。応援をお願いします」
『本部より5号車へ。現在、ザンクード周辺に墜落した飛行機の調査及び高速道路の銃撃事件への対処で応援を出すことが出来ない』
「了解したでござる~」
イロハはまだコヨリに追いつけずにいた。有り余るパワーは時として諸刃の剣となる。
例えば不整地。
砂利や土、タイヤの回転を路面に上手く伝える事が出来なければタイヤは空転し、グリップを失う。
「ヤバイ!」
激しいカーチェイスの末にコヨリが逃げ込んだ場所は林道。
車体の捻じれを抑制させると共に横転時に乗員を守るロールバー。
極め付けはロールを抑える為に下げられた車高。
「やだ!こんなところで負けたくない!」
既にコヨリの車両をロスト。
逃走したと思われる道を追っているところだった。
追走するロスサントス市警・イロハ前に現れたのは明かりの無い郊外の民家。
速度を緩め、注視しながら家の横を通過する際の事だった。
横からの衝撃。
再びコントロールを失い緩やかな丘の上から滑り落ちる車両。
横転する車両の中でイロハが見たものは、夜間にも関わらず意図的にライトを消し、イロハの乗るヴィゲーロZXの側面へ衝突させた下手人・・・コヨリの乗る車の陰だった。
「見失ったかもしれないですーごめんなさい!」
再び林道に復帰するも周辺にはコヨリの姿は無い。
ため息と共に帰路へ着こうとしたイロハの電話に見知らぬ番号から着信が届く。
「はい、もしもし?」
『は~い、もしもし、いろはちゃ~ん。怪盗コヨコヨですけどぉ~』
電話の相手は正しく、先程までカーチェイスを繰り広げていた相手だった。
「むかつく奴だぜマジで『あれあれあれ~運転へたっぴなのかな?』こちとら、オメーラ等のせいで忙しくてカスタムする暇もないんだわ!『カスタムなんて無くたってね、あんた達のは速いですからね。いい車乗ってるのよ、警察ちゃんは~』ムカつくー!!」
『とりあえず、これは私の一勝って事でいいですかね』
「絶対、次捕まえてやるからな!首洗って待っとけよマジで!」
『あ~かわいそかわいそ~じゃあね~~!』
「ぜってぃー捕まえてやるからなーーー!!!」
*出張が決定しまして3章の更新は(落ち着くまで)未定です(*゚ー゚)
取り敢えず2章分のストックはあるので引き続きお楽しみくださいませー!