ミリモン   作:ブルーな雛菊

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アメリカ軍が他国の軍隊よりも秀でているのは何故か?

理由は航空優勢からなる空からの空爆や、ガンシップサポート等の支援攻撃。

 

彼等は常に次の戦場を見据えて武器や装備を開発し、各地の紛争に介入し、その効果を確認、改良を続けてきた。

仮にその技術を他国が真似をしようとしても、その根本にある理念までも取り入れることは出来ない。

結果、近年までは夜間戦闘という分野ではアメリカと言う軍事国家の独壇場であった。

 

暗視鏡は2種類。

屋外、照明のない暗闇の中でも僅かな光を増幅し、ハッキリと人物を視認出来るパッシブ方式。

屋内、可視できない近赤外線を照射し、反射光を感知するアクティブ方式。

 

他国が視認できない暗闇の中、状況に応じて装備を選び、一方的な蹂躙を行う。

それがアメリカの特殊部隊の形だった。

 

戦術、装備開発の技術は日々の積み重ね。

形だけ真似たところでソレを『使いこなす』とは意味合いが違う・・・

でも考えてみてほしい・・・

 

「ライトを当てた際の反応から彼方はアクティブ方式の暗視鏡を装備。屋内で増幅する光源が無い状況でしたら最適な装備ですね」

「敵に感心してる暇があったら此処から出る方法を考えるペコ!」

 

施設を包囲され、2つしかない出入り口の両方から制圧部隊が侵入してきている状況。

袋のネズミ状態のペコラは、()()()()()()()()()()()()()()気が気でなかった。

 

手には先程仕留めた兵士からもぎ取った手榴弾。

強化ガラスの下に広がる真っ暗な海を見ていなければ、追い詰められ自決一歩手前の敗残兵の様に見えていただろう。

 

「水中は抵抗が多く、放たれた銃弾は10mも飛翔しません。逃げるのには最適ですね」

・・・尤も、私ならその方法は使いませんが。と少女が告げると同時にペコラの見る床の前を巨大な魚影が通り過ぎて行った・・・

 

「反捕鯨団体のおかげでクジラが増殖。それを目当てに鮫がビーチ近くまで来ているとの事です」

食物連鎖の頂点を気取った人間様がこれまで行ってきた捕鯨を止め、悪戯に生態系を弄った結果ですね。

 

「じゃあ!どうしろってのさ!?」

ペコラの考えた逃走ルート。そのルートは使えないと真っ向から言われ激昂する兎へ()()が貴方の命綱ですと転がっていた死体を引きずって渡す。

 

「アンタはペコーラに死ねと?」

「そうじゃないです。両面合わせて2枚のプレートと防弾繊維。それが糞袋(死体)を挟んでます。ベストを着用しただけなら抜かれる事もありますがベストを着用した死体ごと貫通する事はありません」

 

「なんなら対物ライフルの銃弾だってソレは耐えれますよ」と動脈が切断され血みどろの遺体を指さした。

「ペコーラが降伏したら?」

 

「おすすめはしませんね。とっくの昔に私達への射殺許可は下りているようですし、降参するには()()は殺し過ぎた」

それはアンタだけだよと突っ込むペコラを涼しい顔でいなす少女。

 

「時間です。残り30秒」

「あ~もう・・・アンタはどうするペコ?」

 

「良い事を教えてあげます。傭兵も、私も、これ(殺し)はビジネスなんですよ…なので、割に合わない仕事を引き受けたと骨の髄まで判らせてやるんです」

 


暗闇の中、絶大な効果を発揮する暗視鏡とソレを使用し、訓練した軍人は強力な戦力と言える。

だが、その暗視鏡も万能というわけではない。

 

先に挙げた2つの方式にも得意不得意があるが、もう一つ覆すことの出来ない欠点がある。

 

肉眼では180度の視界を持つ人族だが双眼式ナイトビジョンでは40度の視野角しか得られない。

500万~1000万円する特殊部隊用の4眼式ですら視野角は120度しかない。

 

()()()()指令室前の廊下で待機した隊員は部隊長のハンドサインの合図と共に突入を開始する。

正面からの攻撃は着用した防弾ベストで受け止める事を前提としたドッシリとしたスタンス。

後続の味方の射線を塞がない様に、素早く部屋の両四隅に展開しながらのクリアリング。

移動しているにも関わらず上半身、特に構えたライフルの銃口が一切ブレないのは潜り抜けて来た修羅場の数を物語っている様だった。

 

訓練された彼等の姿は正に死神。

形だけ真似たところでソレを『使いこなす』とは意味合いが違う・・・

でも考えてみてほしい・・・

 

人類が科学の進化で手にした暗視や音響センサー。データリンクシステムや動体感知センサーは一体何をヒントに開発された物なのだろうか?

極められた技術は、素人からすると魔法の様に見えるという言葉がある。

 

・・・もしも、生まれてこの方、馴れきった感覚で。

幾千、幾万もの命を摘み取っている武術を夜間に遺憾なく発揮できる者が居たとするならば、夜間戦闘においての新参者は果たしてどちらであろうか?

その答えは、部屋へ展開した隊員が誰一人として確認しなかった所から奏でられた。

 

天井から金属を叩いたような高音。

血生臭い匂いのする空気の流れのない密閉された室内。

ソレにも関わらず風が吹いたように感じられた。

 

(まずは2人)

優先するべきは最後に部屋へ足を踏み入れた指揮官。そしてついでに、その近くに居た隊員1名。

 

切断した頭部が床に落ちるよりも速く少女は動く。

接近戦。触れられる距離に居るならば銃よりもナイフが早いと言う者がいる。

常人では唯のハッタリだが少女に関してはそれが事実。

 

文字通り音も無く2人を絶命させた少女は、異変を察知して部隊長の居た入口へと振り向く隊員の死角に身を滑り込ませる。

120度の視野角。高性能な4眼ナイトビジョン。最高の装備ではあるのだが見えるのは横方向であり、上下に関する視野は双眼式と大差ない。

結果、隊員は一度も少女の姿を認識する事も出来ずにその命を散らした。

 

制圧部隊は6人。

中央2人、左2人。

 

左端、部屋の壁に背を預け少女へとライフルを向ける隊員。

少女はその銃を払いのけると同時に、流れる様な動作でその場でターン。

反射防止のためにブレードをコーティングされた黒塗りのククリナイフが闇を裂く。

 

右側2人。

一瞬のうちに絶やされた戦友、それを行ったレインコートを着た小柄な人影。

自らを『プロ』として語る彼らは、気づけばまるで新兵の様に少女へとフルオートで弾倉の弾が無くなるまで発砲していた。

 

暗視鏡越しに視界にチラつくマズルフラッシュ。銃口から立ち上がる硝煙が晴れた先に先程の少女の姿は無かった。

 

「言ったとおりですね。プレート、防弾繊維と糞袋の5層構造。対物ライフルでも凌げそうです」

首の落とされた戦友の背後から、この場に似つかわしくない死神の声がした・・・

 

暗視鏡に『もう要はない』と投げ捨てられる死体、それを行った下手人の姿が映る・・・

投射された可視不可の赤外線が少女の瞳に反射して怪しく光る。

 

右端の壁側に居る隊員は現実を受け止められずにいた・・・

その彼を『カチリカチリ』という音が現実へと引き戻す。

 

(馬鹿な奴・・・弾倉はさっき打ち切ったじゃないか・・・)

慌ててポーチから新しい弾倉を取り出そうとする仲間。

 

(ああ・・・あの悪魔から目を放しちゃいけないのに)

ゆっくりと歩み寄ってくるレインコート。

新しい弾倉を銃に押し入れて、ボルトキャッチをリリースするだけの簡単な作業。

これまで幾度となく死地をくぐり抜けてきた仲間が肝心な時にそれすらも出来ないでいる・・・

カチャカチャと弾倉を入れなおす耳障りな音が消え、代わりにドサリと質量のある物体がコンクリートに落ちる音が響く。

 

男は自負していた。

ライフルに拘れば仲間の二の舞になると。

既に装填された拳銃。初弾は薬室に装填され、セーフティーを外すだけで発砲が可能になる。

 

目の前に居る小柄な人影は興味深げに男の行動を見守っている様だった・・・

男は深呼吸を行い、人生最期の賭けに出る。

 


「アンタ、なんで最後の奴をすぐに撃たなかったん?」

「力量差を見せつければ降伏してくれるかな?と思いまして・・・」

 

人間は2種類に分けられる。追い詰められると全てを諦め身を委ねる者、無謀な突撃を行い自身の尊厳を守り抜こうとする者。

 

彼はサイドアーム(拳銃)を引き抜いた。とった構えは早撃ちに特化したクイックドローでも、近距離で相手に銃を奪われない様に考案されたCARシステムでもない。日々練習を行い、体に染みついた一般的なアイソセレススタンス。

 

引き金を引き絞るが彼の銃が音を奏でる事は無かった・・・

男の突き出した拳銃の銃口には、同様に少女の突き出したインフィニティーが当てられていた。

 

発砲とは爆発のエネルギーに方向性を与えたものだ。もしも、閉鎖が出来ていない状態で発砲出来たら?

その際に起こるのは暴発。銃の部品を破損するだけではなく射手をも危険に晒す。

従ってスライドが少しでも下がり、薬室の閉鎖が不完全ならば・・・そもそも撃鉄への接続が切れ、トリガーを引いても反応しない。

 

「お待ちしておりました、お嬢様・・・発注した品が届いております」

「インフィニティ・ファイアアームズ製レースガンです。由緒正しい45口径、IED、銃身は6インチ、銃口には格闘戦を想定したマズルガードを採用、トリガープル及びグリップをお嬢様が扱い易い様に変更しております」

 

対する少女の持つインフィニティーは違う。

マズルガードが作用し、異物が押し当てられてもスライドに干渉する事は無く、()()()()()()()

 

対面する男が何がおきたのが理解する間もなく、少女は引き金を引いた…

 

「彼は最後まで兵士だった・・・それだけですよ」

 


 

「人を撃ったのは初めて?」

 

必死に血濡れた手を水で洗い流そうとするペコラを見かねて少女は声を掛けた。

 

「人を撃ったのも、首のない死体と添い寝したのも初めてだよ!!なんなのさ!いくら手を洗っても血の匂いが消えない!!」

 

「血の飛沫が鼻の粘液に付いて血の匂いがするんです。後で鼻をかむといいですよ」

 

「アンタいかれてる!」

 

親切心で行ったアドバイスを全く聞く気のないペコラ。

班長と呼ばれている少女・・・アリシアはペコラの態度を見て残念そうに眉を下げる。

 

「ええ、それでいい。私も貴女も今回は敵ではなかった。それが全てです」

 

だから自己紹介も表面だけの仲間意識もいらない。

 

「貴女がこのまま道を違えなければもう会うことも無いでしょう・・・」

 

だから貴女も祈ってください・・・二度と相見える事の無い様に・・・ってね

 

 




天井にナイフを突き立てて待機
隊員全員が部屋に突入後、頭上からの奇襲
死体を使った弾丸ガード
銃の構造を理解した上での接近戦(ショートストローク云々以前に撃鉄は落ちませんって話)

(因みに近距離でライフル撃たれてもこの子はステップによる回避やナイフを使った弾道剃らしを涼しい顔でします)

追い詰められる方からしたら
アリシアの姿はホラー映画に登場するキラーのように映ってるかもw
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