ミリモン   作:ブルーな雛菊

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プロフェッショナル

 

その数日前。

「例えば静まりかえった水面に小さな石を投げ入れたときの様に・・・事が起きれば波紋となって遠くまで広がる」

「私達はこの街の雑踏に紛れる事で()()()()()を他者に気付かれない様にしてきた」

()()()()()それで問題なかった・・・」

 

どんなに小さな小石だったとしても、水面に落ちれば()()落下地点を中心に波が発生し静寂を搔き消してしまう。

普段ならば見逃してしまう程の些細な環境の変化。だが、目を皿にして水面を監視する者が居たのならば・・・これまでと同じように一石を投じる事は()()と言えるのだろうか?

 

きっかけは()()()が近くに居た時に運悪く横を通り過ぎただけに過ぎない。

監視者(保安官)から追跡者へ・・・各所へ流れた情報はミリモンの居場所を特定し、メンバーを追い詰める結果となった。

 

「これから先は綱渡りになる」

勿論これまでに行ってきた作戦に無駄なものは無く、どれも必要なものばかりだった。

結果、今後の行動に支障をきたし始めたとしてもそれは()()()()なのだとトワは皆の前で言い切った。

 

 

「警察は無能ではない。私達が使った手口は警戒するし、当然その予兆も見逃さない様に網を張る」

 

 

 


 

「・・・これ、どう思う?」

「食べごろなのでは?いい焼き加減で」

 

締め切られた正面ゲート、レンガの積み上げられた頑丈な駐車場の塀。

駐車する車両が端へ退けられ広々とした空間にはBBQセットを囲むボタンとラプラスの姿があった。

 

「肉の話じゃなくコノ状況についてだよ」

「あ~昇進おめでとうございます。ボタン署長「お前それ本気で思ってる?」」

「この場所がどういうものだったか思い返してみな」

 

頭の中で疑問符が浮かぶラプラスに向かってボタンは網から上げた肉をタレに浸しながら流し目で問うた。

 

サンアンドレアス州、海に囲まれた島、その北部に位置するブレイン郡、旧保安官事務所。

汚職警官が上層部の弱みを握り、脅迫する事で過去の大規模な粛清から逃れると共にブレイン郡での地位を築き上げた場所である。

犯罪組織と手を結び力を持った保安官は同じような人間を招き入れ自らの王国を作った。

 

「強盗団が暴れた結果、保安官の不正も発覚して摘発されたわけだが・・・」

「それで無人になった事務所を纏める為に吾輩達が派遣されたって事ですね!「兼ねてより此処は問題児達が送り込まれる場所って事・・・実質、左遷だよコレ」」

 

アレを見てみなよとボタンは階段に座り込み放心状態のノエルを肉を挟んだ箸で指す。

 

「執行機関の虎の子N.O.O.S.E所属、部隊長ノエルがこの様よ」

肉を乗せたテーブル、和気あいあいとコンロを囲むボタンとラプラスとは対照的にドンヨリとした雰囲気でブツブツと独り言を呟くノエル。

 

「あれ、どうしたんです?」と首を傾げるラプラスへボタンは丁寧に1から説明を始めた。

「ノエルが何で警察に入ったか聞いた事あるか?」

 

そういえば聞いた事ないですねと答えるラプラス。

 

「じゃあ、ノエルがスバル署長を慕っているのは知っているよな?」

「あ~~~」

 

スバルに纏わりつきまるで犬の様に全身で喜びを体現している様子を署内で目撃した者は少なくない。

スバルに憧れて警察に就職し、スバルの為に戦闘技術を覚え、スバルに頼られる()()()()N.O.O.S.E(国家安全保障執行局)へ入った・・・入れてしまった傑物・・・なのだ。

 

正確にはロスサントス市警とは別組織にも関わらず、当然の様にスバルの居る中央署で頻繁に目撃されているあたり筋金入りのスバ友と言える。

 

「エリート部隊を指揮するノエルがこのタイミングで任を下ろされ、強引な形でこの地に押しやられたんだ」

「(大好きな署長と引き離されりゃ)そりゃ、誰だってショックだわ~」とゲラゲラ笑いながらボタンは焼き立ての肉を口の中へ放り込んだ。

 

「んで、極めつけはワタメのツィートさね」

ラプラス、お前SNS見たか?とボタンに促されラプラスはスマホを取り出し同僚のワタメのツィート覗いた。

 

其処には一枚の写真・・・ニャンニャンカーサービスの店長、猫又オカユと署長・・・大空スバルがキ〇しているシーンだった。

 

「まぁ、実際はハグしているだけなんだが、悪意のある撮影アングルのせいで2人が秘密の密会をしているように見えるってわけだ」

 

「それであんな感じなんですね・・・」

「正に7日目の蝉だな」

 

憐れみの視線を向けるラプラスと涙を浮かべながらゲラゲラ笑うボタン。

 

「・・・まぁ、正直なところ、このメンバーの移動は仕組まれたものだよ」

獅白ボタン・ラプラスダークネス・音乃瀬奏・白銀ノエル

このメンバーはロスサントス港の調査へ赴いたメンバーであり、その直後に突如の配置換えである。

 

「ボタン。明日から今言ったメンバー連れて北署勤務してくれない?警察無線もセントラルから外れてブレイン郡のチャンネルを使って」

 

昨晩のスバルとのやり取りを思い出しながらボタンはコーヒーを啜る。

 

「これからどうするんです?」

不安げに今後の方針を聞くラプラス。

 

「さぁね。FIBが何を企んでるのか知らないが私達は日々の業務をするだけさ」

 

「肉を食い終わったら仕事を始めるぞ」席を立つボタン

防弾ベスト、椅子に立てかけていた小銃に弾倉を差し込み戦闘用意を始めるボタンの姿を見て

ラプラスは「何が始まるんです?」と問うた。

 

「ラプラス。失踪者の捜索依頼を受けてたよな?だから関係者(ザ・ロスト)事情聴取(殴り込み)に行くのさ」

 


 

「これまで行ってきた作戦の様に『陽動』を主体としたモノはこれから先、効果が薄いと思った方がいいわ」

昔とは状況が違うとトワは改めて強調した。

 

奇襲が通用するのは相手が手口を理解し、対策するまでのひと時のみ。

敵が想定していない方法で、予期せぬタイミングで攻撃することで致命打を与える・・・それを奇襲と呼ぶのなら、万全な装備で待ち構える敵に使い古した方法で攻めるのは奇襲と成り得るのだろうか?

 

「フリーサ銀行、貨物機墜落・・・その中には偶発的に起こった予期せぬ戦闘もあった。そして状況悪化を防ぐ為にやむを得ず同様の手段を使わざるを得なかった」

 

同時に複数個所を攻撃し、警察の持つ限りある戦力を分散させる作戦は確かに効果的。

警察もどうするべきか理解していても物理的に人員が不足してはキャパ不足で捜査網に穴が生じる。

 

「状況は変わる」

今やミリモンを追っているのは警察だけではない。

市警だけではなく連邦捜査局やこの街に巣食う複数の犯罪組織、賞金に目のくらんだ一般市民の監視の目。

 

「全ての監視の目を搔い潜らなければならない。どれか一つに捕捉されればたちまち追手が差し向けられ戦闘が起こる」

ターゲットを積んだ足の遅い輸送班は言うまでも無い。

荒事を想定した陽動班ですら集中する敵戦力を少数で撃破し、包囲網を突破するのは難しい。

 

「既に当初予定していた作戦から大きく離れつつある「ここでメインターゲットを諦めるって話なら私は拒否するぺこ」」

 

話の流れから、トワがメンバーの安全のために作戦を終了させるつもりだと察したペコラはトワが決定を下す前に自身の意思を告げた。

 

「此処に居るメンバーは最初っから覚悟は出来てんだ!危ない?死ぬかもしれない?上等だよ!ここまで来たんだ!私達の覚悟を見くびらないでほしい」

 

ペコラの意見に同意を示す一同を見渡しトワは小さくため息を漏らす。

「ママ・・・子供たちが反抗期に入ってる・・・」

「全く一体誰に似たんでしょうね~」

 

クスリと柔らかく笑うアキ・ロゼ。

 

「実際どうなの?完全にお手上げ?打つ手はないの?」

 

頭が痛いとばかりに眉間に寄った皴を揉み解すトワ。

「私達の力だけで目的を達成出来る可能性は限りなく0に近い」

「外部組織の支援を受けられるとしたら?」

 

「その支援も物資の供給を行う間接的なものだけでなく、直接攻撃支援が出来る兵隊が必要よ。それもこの島に住まうチンピラ程度の戦力ではなく、訓練されたプロ・・・少なくとも私達と同等くらいの戦力が必要」

 

トワの必要条件を聞きアキ・ロゼは一つ頷いた

 

「契約を完遂できる能力、報酬に目がくらみ裏切る可能性のない者達」

 

この島に住まう大半がミリモンにとっては敵と言っても過言ではない。

その上でトワの提示した条件に当てはまる…その気になればミリモンを壊滅させる事も出来るかもしれない戦力が今更自分達の側に付くとは到底思えなかった。

 

(名声や金銭が目的ならとうの昔に敵対している。だってそうでしょ?力を持っているなら協定を結ぶよりも奪い取った方が早い)

 

「問題ないわ。彼らは相応の報酬を支払えばきっちり仕事をしてくれる」

「メリーウェザーは駄目よ・・・あれに頼れば次の日には私達が追われる側になる」

 

ペコラが拉致された際のメリーウェザーが実際に取った行動、依頼主からの脅迫電話・・・その情報精度の差異、ペコラの証言。

それらを纏めてトワは一つの結論に至った。

 

ペコラの射殺命令は早い段階で出されていたという事を・・・

(おそらくは本来の依頼は警察から拉致した後、人目の付かない場所で殺害し、死体を隠蔽する手筈だった)

 

救出後の傭兵部隊の攻撃タイミング。

それにも関わらず依頼主はその情報は持ち合わせていないようだった。

(金に目のくらんだ傭兵が独断でペコラから情報を抜き出そうとしたのか・・・)

 

そのおかげでペコラは辛くも命を拾った訳だが、平然と契約を反故にする傭兵は信用できない。

 

「アレ等とは違うわ」

納得のいかない表情を浮かべるトワにアキ・ロゼは断片的に情報を出す

 

「私達がこの島に入った当初からお世話になっている組織よ」

・・・そうね、例えば武器の売買。

どの組織でも『組織の名前』とやらは重要で組の『名前』という看板には『力・信用・誇り』など様々な想いが込められている。

バゴスでもバラスでも一緒。

カルテルやトライアド、メリーウェザーだって例外ではない。

どの組織も看板を売り出すために事を起こす。

依頼を完了させた暁には高らかに自身の属する組の看板を掲げる。

 

・・・だけど彼等だけは違う。

「彼等の組織に名前は無く、自らを『その道のプロ』とだけ名乗る」

 

表舞台に一切出る事はなく、情報もほぼ皆無。

都市伝説の様に語られるスーツ姿の者達・・・

 

「わかった・・・その組織と協定は結べそう?交渉はママに任せる」

トワの決定に一つ頷き退室するアキ。トワはその後ろ姿を見送った。

 

 

そして視界の端に携帯のバイブレーションの様にガタガタと震える影が一つ・・・

 

「ペコラ・・・あんた大丈夫?」

 

「大丈夫ぺこ・・・」

今にも死んでしまいそうな顔色をしたペコラを見たトワは再びため息をついた・・・

 

 




ペコラ「雨は嫌ペコ…狼も…」

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