ミリモン   作:ブルーな雛菊

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みりもん

「作戦の決行は朝方、開店前の準備期間に行われる」

「なんで夜じゃないペコか?」

 

ペコラの言う通り店舗へ侵入して金品を強奪するとなると、従業員と訪れた客を制圧する手間が増える日中よりも店を閉めた後の深夜に行われるイメージが強い。

 

「コンビニ強盗みたいに程度の低いものならそれでも良いけれど、貴金属や宝石を扱う店となると警備は厳重よ」

店内にある全ての窓と扉にはマグネット式の接触センサーが設置されており、セキュティーが稼働している中で扉の開閉があれば直ちに警備会社へ通報が行く。

 

また、展示ブースの天井には赤外線感知センサーが四方に配備。

招かれざる客が来店した際にはそれらの設備が遺憾なく発揮され、先の見えない暗闇の中でも侵入者を燻り出す。

 

「当然だけど、宝石など展示品を納めているショーケースにも何らかの仕掛けが施されている可能性が高い」

 

富裕層と貧民の貧困差の激しいロスサントス。

この街の宝石店が狙う顧客層は当然この街に住まうセレブ達だ。

 

「他の者達よりも価値の有る物を身につけたがるセレブ。彼らの目を引くためには相応に価値のある品を揃える必要があるの・・・だから、ショーケース内に振動検知や圧力センサーが施されててもおかしくはない」

この街でアメリカンドリームを掴んだ者も多い反面、犯罪者も多いこの街で自身の店の品を守り、商いを続けるには相応の覚悟と設備投資が必要になる。

 

「だから閉店後の店内は人の代わりにソレ等の設備が目を光らせているってこと」

死角無く設置されたパッシブセンサー、機械的に動作する警報装置を欺くのは至難の業。

故に警察に見つからない様に夜間潜入するという目論見は計画段階で破綻しているのよ。

 

「勿論、抜け道がないわけでもない。回線に予め細工を行い、腕の良いハッカーが設備から発信される信号を一つずつもみ消していく・・・まぁ、現実的ではないわね」

ハッカーには複数の信号の欺瞞工作という負荷を与える事になるし、店内の警報装置の把握を怠れば全てが水の泡。

 

「ならば、最初っからセンサーが切られている日中に襲撃する方がまだ可能性がある」

そちらだと監視カメラの映像に細工をするだけで済むからね。

 

開店し、従業員やお客が店内に居る状況で・・・平時、確実に警報が鳴ると分かっていながら防犯設備を稼働させる従業員は居ない。

 

ショーケース内のセンサーも日中ならば切られている可能性が高い。客に品を見せる為に取り出す事もあるからね。

「商売だからね。お客に商品を購入してもらわないといけない」

 

「・・・つまり、夜間に入れば武装した警備員(セキュリティーサーブ)が突入してくるけれど、日中ならばきちんと制圧すれば多少は時間を稼げるって事でいいのかな?」

 

「その見解であってるわ。ただ、私なら更に襲撃の時間を選ぶ」

同じ日中でも開店し不特定多数の来店者が居る状況は仕損じる可能性が高くなる上に外から店内の状況が丸見え・・・制圧できたとしても通行人からの通報で警察が来る。

 

ならば、開店前の準備期間に押し入れば?

 

「人気レストランやカジノではない。開店前に宝石店の前に行列が出来る事なんてありえない」

「なるほどね・・・それなら少人数でも実行可能か・・・「勿論、計画通りに行くとは限らないわ」」

 

この街の状況は強盗団にとって不利な方向に動いている。

「必ず想定外の事は起こるし、それに対応できるガンマンが必要」

 

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太陽が水平線の向こうに顔を出し、変わらない一日が始まる。

街を行き交う人々の喧騒。

 

ありふれた日常。何の変哲もない平日の朝。

レンガ調の路面、街路には一定間隔で木が植えられており、立ち並ぶ店の雰囲気と相まって他とは違う気品を醸し出している。

 

時刻は午前9時を周り、渋滞に苛立ったクラクションの音も緩和された頃、幹線道路から外れた小洒落た街道の中で一台の黒いバンが開店前の店の前で停車した。

 

「別働隊が正面に到着した・・・指示を待て」

正面の車からゾロゾロと般若面の集団が降りてくれば誰だって気が付くわ。

だから車は逃亡用・・・そして、その店で働く従業員が店舗を開錠するタイミングを裏で待機する別働隊へ知らせるために使う。

 

『『M』準備を・・・カウントを始める・・・3・・・2・・・』

紫のフードパーカー、般若面、黒い革の手袋。

ミニスカートにニーハイソックスとロングブーツ。

 

容姿だけでなく肌の色すらも判別できない様な服装をした3人組。

正面のバンからの通信を聞いて店舗の裏手で待機していたチームが行動を始める。

 

「店員が開錠し、店内のセキュリティーを自ら解除する。そのタイミングで実行部隊は侵入」

 

「・・・1・・・やれ!」

合図と同時に機材を使用し、ガラスを音も無くクリ抜き窓の鍵を開ける。

 

警報機が作動するのは当たり前。店を開けた店員自らセンサーの前を堂々と横切っていくからね。

 

本機からセンサーの反応した部屋を確認する事も出来る。

自身が通った部屋と通路以外で感知した信号を本機は受信しモニターに表示する。

もしも、毎回しっかりと確認しているのならば異常に気付けるはず。

 

「だけど、その表示を店員は確認することなく設備を解除するでしょうね」

警備本社へ発信する前に防犯設備を解除しろと従業員を急かす電子音。

チカチカと異常を指すモニター。

毎日のルーティン。

馴れてしまえばしまう程、警戒は薄れ異常に気付かない。

 

「従業員は3~5名ってところかな」

後は簡単。

10時の開店前に次々と出社する従業員。

スタッフルームで待ち構え、銃を突きつけながら出勤打刻をしてあげるの。

 

「これで全員か?抵抗しなければ無傷で開放すると約束しよう」

「人は忘れることの出来る生き物だ。今日の事も忘れるんだな」

お行儀よく、紳士的に対応すればポイント高いわ

 

朝礼、点呼が済んだら本日の業務スタート。

 

「『L』状況を」

『警察無線は異常なし。監視カメラも手中に収めた』

 

「『T』『A1』所要時間5分。始めろ!」

 

指揮を取る『M』の合図で2人のメンバーが動き出し、手に持った小銃のストックで次々とショーケースのガラスを叩き割っていく・・・

鷲掴みでボストンバックの中へ押し込まれていく宝石を散りばめたアクセサリー達・・・

 

そんなメンバーを横目に『M』はメインターゲットであるショーケースへと手を伸ばす。

 

「価値のあるものには相応の設備が導入されている」

例えば防弾防爆の分厚い特殊ガラス。

生半可な方法では歯が立たない。

 

『M』はバックから取り出した機材をガラスに吸着させ、起動させる。

携帯式プラズマカッター・・・ガラスに赤い線が走り、甲高い耳障りな音が木霊する。

 

ここまでは順調に行くはず・・・問題はここから

 

『『M』問題発生だ。包囲されている』

「『L』状況を!」

『警察への通報はいってないぞ!?』

「ならば警察以外のお客さんなんだろうよ!」

 

「『A2』車を放棄、店内に入れ。プランBだ」

 


 

「使用する機材は特殊な物」

特殊という事は足が付きやすいという事と同義である。

購入するにしろ、何処かから拝借するにせよだ。

 

取り扱っている店舗の分母が少ない為、感知されやすい。

 

「一石を投じれば・・・ってね」

今やミリモンを追っているのは警察だけではない。

 

「予想が正しければそろそろ仕掛けて来ても可笑しくない頃合いよ」

「それじゃ、来ると分かってて実行するわけね・・・」

 

「寧ろ来てもらわないと困るくらいよ」

生半可なものでは『陽動』と知れてしまう。

だから、それがフェイクだと思わないくらい派手に暴れてもらう必要がある。

 

「頃合いを見て警察に通報。完全に注目を町中に集める」

「それでペコーラは何をすればいいペコ?」

 

トワは改めてペコラの様子をじっくりと眺める。

 

「アンタはまだ骨折が治ってないでしょう。留守番よ留守番!」

「嫌だ!ペコーラもお小遣いが欲しいペコ!」

 

働かざる者食うべからず。

間接的でも良いから計画に携わらせろとせがむペコラにトワは頭を抱えた。

 

「アンタは監視をお願い」

「わかった!何を監視すればいいペコ?」

 


 

『市民からの通報が入った。宝石店で強盗事件発生。付近のユニットは急行せよ!』

『強盗犯は4人、いずれもミリモンと酷似する服装をしている。従業員5名を拘束し店内に立てこもっている模様。ヘリも出せ!』

 

防弾ベストにカービンライフル。

パトロールカーで現場へ駆けつけたスバルは異様な光景に眉を潜めた。

 

路上に乗り捨てられた黒いバンはエンジンが掛けられたまま。

狭い路地でバンの退路を防ぐように、街区の両端に停められたN.O.O.S.Eの所有するライオットバン。

 

シールドを構え、待機する特殊部隊。

そして、目にするだけで胸焼けを起こしそうになるパトランプを屋根に付けた黒のグレンジャー(SUV)

 

市民からの通報でいち早く駆けつけた筈が・・・

(これじゃFIBが包囲した後に市警が駆けつけたみたいじゃないか・・・)

 

この後の展開は予想は出来る・・・

 

「ロスサントス市警のスバルだ。何か協力出来る事はないか?」

「ああ、自己紹介は不要だ。スバル君、この事件は我々が受け持つ事になった。此処に構わず日々の業務に戻りたまえ。勿論、自由にしてくれても構わんのだよ?君たちがこの紙っぺらよりも強い権限を持っているのならの話だがね?」

 

容易に予想できる上に一言一句違わずに発せられるであろう言葉。

スバルはFIBの捜査官に会う前から既に青筋を立てていた。

 

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 ・

「それでスバル署長!FIBはなんと?」

「案の定、ここはFIBに任せて解散しろだとよ!」

 

通報を受け集まってきた部下達へ解散するように連絡するスバル。

 

「大人しく指示に従うんですか?」

「そうするしかあるまいよ」

 

誰よりもその決定に納得していないのはスバル自身であった。

(なぁ、ボタン。お前だったらどう思う?)

 

「カリオペ、ビブー、撤収するぞ。ワタメ、話がある。ちょっとこい」

 

 


「それで『M』完全に包囲されたわけだがどうするつもりだ?」

「焦るな『T』プランBに移行するだけだ「プランB!?プランBのBは馬鹿のBだろ!?」」

 

本当は考えてないだろう!?と憤慨するTにMは「またか・・・」と息を吐いた。

 

「お二人さん。仲がいいのは結構だがそろそろ準備してもらわないと困る」

計画を実行するにあたってガンマンとして雇った『A1(アシスタント1号)』『A2(アシスタント2号)

互いの顔を見合わせた後「早くしろよ」と肩を竦めて『M』の指示を待っている。

 

「・・・『T』、計画に従え。今まで幾度となくやってきた事だろう・・・やるぞ!」

 

「生半可な作戦ではこの街に飲まれる」

「だから作戦に複数の分岐を設けて柔軟に対応できるようにする」

 

抜け道はある。

例えば乗り捨てた車両・・・道路を封鎖され、バンに乗って突破するのは不可能。

バリケードに使われている車両は特殊部隊N.O.O.S.Eが所有している防弾仕様の重量級の輸送車両だ。

それこそ、軍用車両の様なタフな物じゃないと障害物を押しのけるのは不可能だろう。

 

・・・ならば、バンでの逃走は包囲された時点で捨てるしかない。

 

(警察無線を感知出来れば予定を切り上げた。包囲に抜け道があれば強行突破を実行した)

その為にガンマンを雇ったんだ。

 

ただ、あまりにも包囲が迅速で強固だった・・・それだけの話だ。

 

「『A2』やれ!」

Mの指示と共に起爆装置を作動させるガンマン。

 

「荒事を得意とする特殊部隊にも隙はある」

例えば装備品。

装備品も潤沢にある特殊部隊だが、常にフル装備で出撃している訳ではない。

室内戦で狙撃銃を持ち出す者は居ないだろうし、破る扉もない屋外でバタリングラムを持ち出す者もいない。

使用する機会のない物は『ただのお荷物』でしかない。

 

爆発の余波でショーウィンドーのガラスが一斉に割れた。

バンが空を飛び、白煙が辺り一面を一瞬で覆いつくす。

 

「催涙ガス・・・包囲した大半が手元にガスマスクを持ち合わせてはいない」

持っているのは使用する予定のある突入部隊だけ。残りはバリケードにしているライオットバンの中。

 

「車で包囲網を突破する事は不可能。・・・そうね、私なら別の手段を用意する」

そう、包囲される可能性は計画段階で分かっていた。

ならば適した手段を調達する。

 

爆風で店内と屋外の境界線は無くなった。

息苦しく、目や鼻の粘膜を刺激する白煙の中、4人の人影がバリケードの間を抜ける。

 

『いいぞ!『M』!警察はまだ立て直していない!チャンスだ!』

「散開だ!時間までに合流地点へ向かえ!」

 

 ・

 ・

 ・


 

「彼方は順調みたいね」

「まさか、模倣犯の犯行をそのまま私達の作戦の一部に組み込むなんてね・・・なんで他人の計画まで分かったの?」

 

「強盗は襲う前から始まっているの」

焼き切る為の特殊な機材。多数の敵を無力化する為の催涙ガス・・・調達した物が分かれば強盗団の狙っているターゲットの予想が付く。

どの様な状況を視野に入れて準備しているのか、そして成功するのかも。

 

「・・・まさかレース用のインラインスケートを使って車両の通れない路地裏で追跡を撒くなんてね~」

「彼らのお陰で時間が作れた。ロスサントスにFIBと市警を釘付けに出来ている今が好機ね」

 

ストリートギャング達も今頃、情報を入手した頃合いだろう。

ギャングが使用していた情報屋が閉店してる現在、情報収集の速度は常に一歩遅れ。

先に強盗を開始した模倣犯をミリモンと思って追跡を開始。

警察の隙を窺いながら漁夫の利を狙っている筈だ…。

 

町中の注目を集める必要がある。

誰もが『この強盗そのものがフェイク』だと思わないほど鮮烈に…。

故に、中途半端な陽動では効果がない。

一方で陽動に人員を割くとミリモンの作戦に支障をきたす。

 

「本当にいいタイミングでやってくれたよ模倣犯さん」

だからこそ、この街で起こり得る模倣犯の犯行を利用しようと考えた。

 

彼等にとってはソレが本命。

計画、準備、戦力もミリモンが手助けしなくても勝手にそちらで済ませてくれる。

 

もし、彼等が捕まったとしてもミリモンとは一切関係無く、私達の痛手にならない。

 

そして模倣犯もミリモンに似せるために質を上げなければならない以上、周囲の注目を集めてしまうのは必然…

ミリモンのリソースを割くことなく陽動の役目を果たしてくれるのはトワにとって千載一遇のチャンスだった。

 

(……それにしても、このタイミングで強盗を決行するなんてね…よっぽどの自信家か自殺志願者としか思えない)

 

トワも作戦決行を先延ばしする程の状況。

交戦する可能性も考えた上で彼等は勝算があると判断したのだろう。

 

(彼等は敵の戦力を見誤った愚か者?それとも…)

「・・・彼等こそ本物だったのかもね」

 

 




「此方『P』模倣犯のアジトに動き有り」

監視を続けていたペコラはため息をついた。
トワの計画では彼等の強盗に合わせてミリモンの行動を開始する。

(何時強盗するんですか~って本人達に聞ければ楽なのに)

だが、彼等はあくまで他人。
ミリモンに罪を押し付けようとしてる辺り随分と顔の面が厚い事には違いはないのだが、一方でミリモンも死地に彼らが行くのを大手を振って見送っている状況。

(まぁ、精々大暴れして引き付けておいてほしいペコね)
と双眼鏡片手に焼きそばパンを頬張った。

建物の扉から姿を見せ、黒塗りのバンへ向かう一向。

片手には般若面、紫色のパーカー、ニーソにブーツ・・・紛れもないミリモンの姿だ

「『T!』『T!』なんなのあれ!?あれって私達のコスプレのつもりぺこか!?」

身長180cmオーバー。肩幅も広く筋肉質。体重は90kgに及びそうな体格はどう見ても身長150cm前後のメンバーが多いミリモンとは似ても似つかない。

銀髪ロングなカツラを被った初老に差し掛かろうとしているオッサン。
ルーズソックスにミニスカート兎耳のヘアバンドを薄くなった頭部に飾る中年のオッサン。
黒人、此方も筋肉質、ニーハイ…そしてオッサン。ロングの桃色カツラ・・・これはコヨリのつもりなんだろうか?

唯一マトモなのが紫色のカツラを結い、ツインテールにしている女性・・・
それでもミリモンのメンバーに比べると身長の差があるのだが・・・他の三人のインパクトが凄すぎて完全に存在感が消えてしまっていると言って過言ではない。

「あれ・・・ぺこーらか?ペコーラのつもりか!?剃れ!せめて脛毛剃れペコ!!!」


────
というわけでトワ様解説の模倣犯による宝石店襲撃!
舞台となる場所はフランクリンとマイケルが襲ったあの場所になります。
コードネームは混在しているので、「あれれ?」と思われると思いますがミリモンは予測解説だけで現地には居らずその件には無関係
実行は模倣犯でそれぞれコードネームで呼びあってると把握していただければ~

模倣犯のT ・M・L…はてはて、誰なんでしょうか?w
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