『全ユニット、銃撃事件の通報に備えて待機…』
『……オーシャングレートハイウエイで銃声との通報。通報者によれば、ザンクード州軍基地付近で兵士と思われる装いの者達が発砲しているとのこと。現時点では詳細は不明』
『ユニット46、ユニット5、コード3で出動。その他のユニットは回線を空け指示を待て』
『ユニット46、コピー。コード3で向かう』
『5、コピー』
『負傷者は未確認。容疑者は最後に高速道路を北上していると目撃情報あり。注意して接近せよ。現場は未確保』
腐敗した政治、巨大マフィア、ストリートギャングが混在する街…リバティーシティ。
組織犯罪が多く、一般人への無差別犯罪は少なめの傾向にある。だが、銃撃・強盗・汚職は日常茶飯事。
近年は度重なる抗争を経て各組織の疲弊、弱体化が進み治安回復の兆しが見える。
…もっとも、専門家から見れば『この平穏は次の戦争の為の準備期間だ』と口を揃える事になるだろうが。
観光都市、バイスシティ。ドラッグ関連の犯罪が他の都市に比べ群を抜いている。
車両盗難はトップクラス。暴力犯罪率は高め。コカインカルテル、ギャング、汚職警官が横行しておりお世辞にも治安の良い都市と呼ぶことは出来ない。
全米最凶の治安を誇る都市、カーサーシティ。ギャング、殺人鬼、汚職警官、私刑集団が混在。
経済、工業は崩壊しており治安組織は既に機能していない。
掛け値なしの無法地帯となっており、力を持たない者は淘汰される。
人の手による『神隠し』が頻繁に起こる。
人々はこの街を『地獄』と呼ぶ…
では此処、ロスサントスはどうだろうか?
10年前に起こった暴動、汚職警官の一斉告発によって執行機関の不正は目に見える範囲では激減。
治安向上に繋がったが、その一方で警官の総数が減った弊害も顕著に出ていた。
ただでさえ大都市であるが故に執行機関の手が行き届かない状況だったのだ、その中で汚職警官の一斉検挙を行えば深刻な人手不足に見舞われるのは必然だ。
路地裏、ナイトクラブ、そして保安官が仕切っていたブレイン郡…
市警の目の届かない場所で犯行は行われ、パトカーのサイレンが聞こえると共に蜘蛛の子を散らすように実行犯は姿をくらませる。
捜査を行おうにも次々と各地で行われる犯罪に時間を割く事が難しい状況…
だから、市警は状況によって軽犯罪程度は『目をつぶる』事を決定した。
…仕方のない事だ。ロスサントスは年間237197件の犯罪が起きており、一日あたり650件の事件が発生しているという事になる。
これは2分に1件の犯罪が起きているという計算になる…
当然、全てに対応する余力など市警にある筈も無く、危険にさらされた市民からの通報や殺人事件など優先度の高いものに絞って対応する事で今日まで治安を守っていたという歴史がある。
『ディスパッチ、此方ユニット5。通報の車両と思われる車を発見。黒のセダン、位置はパレトコーブ、現在オーシャングレートハイウエイを北上中。どうする?』
『ユニット5、追跡許可。コード3でパースート開始。ユニット46はバックアップに向かえ』
見逃していた犯罪も多い。即ち、少量の薬物所持や銃の携帯許可証の不所持、速度超過による危険運転などである。
だが、今日に関してだけは事情が違った…
連日、話題になっている強盗団『ミリオンモンスター』の陽動と思われる事件。
今日、仕掛けてくることは分かってはいても未だ彼等の尻尾を掴むことも叶わず、一刻一刻と時が過ぎ去っていく。
ピリピリと張りつめた重苦しい空気を一変させたのはオペレーターからの無線…内容は『市民から銃撃事件との通報』
唯の速度違反程度なら見逃していた…だが、銃撃事件となると話は別。
これは重大犯罪。そして今日、この地で、このタイミングでそれが起こっているという事は例の強盗団が関与している可能性が高いという事に他ならない。
【とんでもねぇ待ってたんだ】と言わんばかりにワタメの乗る5号車、そしてボタンとノエルの乗る46号車が発進したのは言うまでもない。
『ディスパッチ、ユニット5。容疑者は停止命令を無視し北上中。速度は120。マニューバ実施の許可を求める』
『ユニット5、速度が出過ぎている。速度が落ちるまでマニューバは保留』
『コピー。距離を保って追跡を継続する』
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「州軍は逮捕権や捜査を行う権利を持ち合わせていない。軍は軍、警察は警察ということよ…つまりどんなに強力な武力を有していても、然るべき手順を踏まなければ行使できないってことよ」
「その状況でFIBはそりが合わないという理由だけで市警との協力体制を反故にした。もうわかるでしょ?本来ならFIBが主導し、市警が手足となって行う筈の捜査が十分に機能していない」
テロへの対処も同様にFIBが主導し州軍はあくまでも支援。
そのFIBが保有する戦力で最初に動かす事の出来る組織が市警なのだ。
「組織内部の腐敗による犯罪組織への情報リークを疑っていたのかもしれない…理由はどうであれ私達にとってはプラスとなる出来事ね」
作戦が実行されれば強盗団【ミリオンモンスター】を追っているFIBは真っ先に食いつくだろう。
「FIBはロスサントスに釘付け、襲撃を行うブレイン郡・ザンクード基地へ急行しようにも街から現地まで2時間かかる。彼等が取れる手段は少ない」
「その中の一つが州軍への支援要請?」
「その通りよママ。私達が盗む物が物だけに州軍は【支援】の域を超えた本気の追跡をしてくるかもしれないけどね。だけど、逆に言うならば彼等の取れる手段はそこまでという事になる」
持ち出す物は大量破壊兵器。街で使用されたら…又は兵器を持ったテロリストに逃げ切られたら甚大な被害を及ぼす事になる、従って緊急措置として州軍へ支援要請を出すのは必然。
そして大義名分を得た州軍がどさくさに紛れてテロリスト諸共、自らの汚点となる【襲撃を許した】という証拠である兵器ごと消し去ろうと目論むのも予想はつく。
追跡は苛烈になる、故に州軍を相手取った作戦を立案するのだ。
「州軍の追手さえ退けられれば、ブレイン郡に私達の脅威となる勢力はいないはずよ」
先日の襲撃後から各勢力に大きな変化が起こった。
大量の武器を島外から輸入して、武装を目論んでいたバゴスはミリモンの作戦によって計画が潰された。
そして、ブレイン郡に拠点を置くバイカーギャング【ザ・ロスト】や高速道路の襲撃に参加した麻薬カルテルは激しい銃撃戦の末に、多数の死者を出し弱体化を余儀なくされた。
情報を売った保安官も同様、市警とFIBから捜査のメスが入れられ解体となる。
「この地は現在、空白地帯となっている」
(…と作戦立案時には言ってたんだけどな)
高速道路を疾走するシャフターV12。ハンドルを握るコヨリはルームミラーに視線を向けながら(全部予定通りとはいかないか…)と過去に想いを馳せた。
後方より接近するサイレンの音。
ルーフには赤と青のライトバー、プッシュバー付きのバンパー、車体は白と黄色のツートンカラー。
ドアには【5】とステッカー。
それは、最も出会いたくない相手…ワタメの乗るロスサントス市警特注、防弾仕様のカスタム車両だった。
『こら~‼止まりなさい~!こんなことして…お母さん泣いてるよ~!』
「止まれないよ!こちとら強盗やぞ!?」
本来ならばこの地に居ないはずの市警との遭遇。
仮に目撃されたとしても多忙な警察には全ての事件を解決する余裕は無く、速度違反程度の軽犯罪は見逃される可能性が高いと予想していた。
もしも、目撃されたのがもう少し後だったのならば…
州軍と銃撃戦を行った現場から十分な距離を稼ぐことが出来たのならば一般車に紛れ、車両の特定が困難になっていた事だろう…だが、見つかってしまったからには仕方ない。
コヨリは再度、車内の状況に目を配る。
先程まで赤熱していた軽機関銃の銃身は立てかけたシートを焦がし、硝煙と焦げた臭いを車内に充満させている。
迷彩服と戦闘用のベストに身を包んだ亜人が3人。
いずれの防弾ベストも無数の銃弾に晒されて消耗していることが一目でわかる。
こんな状況で市警の停止命令に応じ身元確認、車内を調べられたら即アウト。
当然、停止命令に応じるなど出来ない相談だった。
運が無いとコヨリは内心舌打ちをした。
既に予想外の状況になっている。
まずは鬱陶しい追跡を振り切ろうとコヨリはアクセルを強く踏み込んだ。
「tango、続行できそう?」
一方、ハンドルを握るコヨリの横で助手席に座るアヤメは後部座席に深く座り込むトワへ声をかける。
「…大丈夫、…問題ない」
一拍おいてからの返答。
短く、要点を返すだけの反応。
呼吸は浅く、尚且つ早い。
何より言葉を捻りだすかのように口に出すたび、苦痛に耐えるかのように顔を引きつらせている。
(頻繁に咳。口元を押さえた手には少量の血が付いている)
アヤメは医学に詳しい訳ではないが、トワが戦闘行動を継続する事が出来ない状態にある事は容易に想像がついた。
そして、そんな状態にも関わらず戦線を維持するために無理にでも戦闘に参加するであろう事も…
(組織の援護は州軍の排除まで。此処から先は私達だけ…)
州軍が態勢を立て直すまでの間、アヤメ達が完遂しないといけないタスクはアキロゼと合流し共に離脱するだけなのだが、市警の追跡が始まった現在では【警察を振り切る】というタスクが新たに追加され、それを残された制限時間内に行わなければならないというハードモードに切り替わっていた。
「kilo、このまま追跡されれば合流地点に警察を引き連れて向かう事になっちゃう!」
現在の指揮はコヨリが担当している。故にアヤメは彼女へ判断を仰いだ。
(走行中の車内からの発砲は禁じられている)
警察が守るべきは市民の安全が第一、犯人の追跡は次点となる。
(車を犯人の車両に押し当てて停車させるマニューバもこの状況では許可が下りる事はない)
アタックの許可が下りる速度は時速80kmまで。現在の様に120kmオーバーで走行する車両にぶつけた場合、容疑者輌のみならず仕掛けた警察車両までコントロールを失い横転する可能性が高くなる。
先程と同様に市民の安全を考慮するならば、物理的な対抗策を実施する可能性は低い。
「警察は追跡しか出来ないはず!撃って!」
「わかった!」
コヨリの判断を聞き届け、アヤメは窓の開閉ボタンを押し込んだ。
厚さ50mmの防弾ガラスを強化モーターが駆動させ、ゆっくりと扉内部へと格納していく…風切り音・強風が車内に流れ込む中、アヤメはミニミを片手に携えて窓から身を乗り出す。
走行風を一身に受けながら片手で追跡者へと引き金を引いた…
重い銃身、跳ねる銃口。常人ならば片手で扱える品物ではないが、アヤメは種族特有の筋力で暴れ馬をねじ伏せる。
『ディスパッチ、此方ユニット5。容疑者輌から銃撃を受けている‼』
『フロントガラス損傷、タイヤ破損。これ以上の追跡は困難。一旦離脱する』
『了解、後退を許可。ユニット5は安全な場所へ退避せよ』
『全ユニットへ通達。容疑者輌は北方向へ逃走中。警察への発砲を確認。容疑者は武装しており極めて危険』
『ユニット45、容疑者輌を視認できるか?』
ボタンはハンドルを握るノエルの代わりに無線機に手を伸ばす。
『こちら45、現時点では未確認。スパイク展開は間に合わない。パレトベイを南下し迎撃ルートへ入る』
「ワタメが撃たれたようだな。場所は此処から3km先。視認まで30秒」
今日、この時間、この場所で…警察の隙を付いたように行われた犯行。
通信・指令スタッフであるディスパッチを介した警察無線の情報共有は全て記録される為、犯人の情報が揃っていない現段階では強盗団の固有名詞を出す事は無いが、市警一同気付いていた…(あいつらが動いた)と…
ボタンの呟きにノエルは「わかっている」と同意を示す様に静かに頷いた。
曲がりくねった海岸線。
前方から黒の高級セダンが対向車線へはみ出しながらコーナーを通過していく…
ノエルはハンドルを切りながら即座にサイドブレーキを引いた。
後輪はロックし、白煙を上げながらスライドを始める…
すぐにロックを解除するが、車体は大きく弧を描くように路面を滑る。
ノエルの乗るパトカーは重量のある防弾車両、それを圧倒的なエンジンパワーで無理やり転がしているのだ。
防御力の向上という恩恵を得られる一方で機動力の低下というデメリットも存在する。
それは制動距離の増長でありコーナー侵入時の安定性にも繋がる。
自車線、対向車線の路面に4つのタイヤ痕を残す…そして迫りくる縁石。
…もし助手席に座るのがラプラスだったのならば、きっと彼女は絶叫していただろう。
これが奏ならば失神していたかもしれない。
だが、現在ノエルの隣に座るのはゲラゲラと笑うボタンのみ。つまり、誰も止める者がいないという事だ。
「いいぞ~やっちゃえ~」
ボタンの気の抜けた掛け声と共にノエルはアクセルを踏み込んだ。
壁から数センチ…そのまま激突すると思われた車両は寸前のところでコントロールを取り戻し、路面に綺麗なUの字を描くだけにとどまった。
『ディスパッチ、此方ユニット46。容疑者輌を視認、黒のセダン、パレトベイへ向けて逃走中。時速110kmオーバー。追跡を開始する』
『46、追跡を継続せよ。ただし発砲は許可しない。周囲の交通に注意』
「署長、応援は呼べそうですか?」
「ラプラス達はこの山脈の向こう側、此処に駆けつけるまでに1時間はかかる。中央署からなら更に倍の時間だ」
「なるほど…それじゃ、私達だけって事ですね」
「ああ、FIBの横槍も無い。正真正銘の一騎打ちさ」
Gta6!楽しみですねー!
指名手配が大幅に変わるようなので[仕事用]、[常用]と分けて車を管理しなきゃいけなくなるのでしょうかー?
映画の主人公みたいなロールプレイが出来そうです(n‘∀‘)η