ミリモン   作:ブルーな雛菊

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ブラックマーケット

~8068番地 立体駐車場屋上~

 

トワの指定した集合地点から3ブロック先、島の全体図を参照にスラム街の上に位置するビジネス街。

壁には落書き、路上にはゴミが投げ捨てられているスラム街とは一変し、この近辺では高級車のショールームやオープンカフェなどの景色が徐々に見え始める。

 

「これから向かう駐車場にはとある理由で監視カメラが存在しないの」

 

ビジネス区から高級住宅街への区間にはきちんと『税金を納めている善良な市民』が生活しており、それに伴って防犯の水準が上昇していく。

 

これには理由があり、犯罪率の多いスラム街に監視カメラを設置したところで銃の的にされるか、もぎ取られ解体された状態で闇市に出回るだけでしかない。

また、犯行現場を撮影したところで下手人はギャングの集団が匿っており、迂闊に手を出すことができないのが常。

だから下の地域、スラム街にはカメラもない。

逆にビジネス区から上は治安は良くても監視の目に注意が必要なの。と副リーダーであるハーフエルフの少女、『アキ・ローゼンタール』は歩きながらメンバーへ説明を行う。

 

彼女はほかのメンバーよりも早くロスサントスに訪れており、『仕事』に関する情報収集や必要な道具の用意を行っていた。

 

道をすれ違う人々。アキは声を潜める必要など感じていないようでそのまま街の様子をメンバーに伝えていく。

彼女が説明をしている各区の特色はロスサントスで生きていくうえで必要な情報であり常識でもある。

事実、街に住む市民から見た彼女達は観光客とそれを誘導するガイドの様なものとしか捉えていないようで誰も気にも留めやしない。

 

「なるほど」と納得する鬼人の少女とは対照的に首を傾げるウサギ耳の獣人の少女。

これは、ド田舎の飛行場から街を目指したトワと同じように、それぞれのメンバーが別々の経路を使ってロスサントスに集合しているからだ。

 

国際空港からスラム街をタクシーで通過した鬼人の少女、『百鬼あやめ』がアキの説明を理解できるのに対し、船で入港しビーチ沿いの比較的安全な幹線道路で来た『兎田ぺこら』がスラム街の様子を想像出来ないといった感じである。

 

 

歩道を歩く人々。話し声、自動車のエンジン音。

街の喧騒が立体駐車場に入った瞬間幾分か緩和され、その代わりに自身の足音が壁に反響して甲高い音を響かせていく。

 

「ブラックマーケット、闇市。まぁ、ブランド品を模した贋作、正規品をコピーしたCD・DVDやゲーム、販売権利のない物品を許可なく売りさばく市場の総称ね」

ロスサントス、スラム街にも当然闇市は存在する。警察もその存在を知ってはいるが様々な理由で手を出せないようだ。

 

「私たちが利用する闇市は更に特殊なの」

駐車していた自身の車、ウィーニー社製 『イッシースポーツ』のトランクからボストンバックを取り出して中の物をメンバーに配っていく。

 

「9mmオートマチックピストル、追跡不可能」

 

銃大国アメリカと言われているが何も規制がないというわけではない。

州によって異なるが、銃の購入時に身分証の提示が必要であったり犯罪履歴がないか調査が入り、警察から許可されないと購入ができないところもある。

また、購入時にはライフリングが記録され犯罪で使用された場合は所持者を特定できるような取り組みが義務化されている。

 

ここでいう追跡不可能というのは正規の方法で購入されていない為、政府への登録が行われていない銃の事を指す。

 

例えば盗難品、または登録者が死亡し譲渡が上手く行われなかった銃。つまり、現在の使用者と購入時に登録した者とは異なる銃。

 

例えば部品を組み替え、一部改造を施した物。

例えば生産拠点から然るべきルートを経由せずに持ち込んだ密輸品。

例えば現地で作成されたハンドメイド品。

 

「値段は?」

「240,000円」

 

ハンドガンの相場が200ドル~600ドル。グロックやベレッタの通常モデルが7万円程度で購入できるのに対してこの市場では3倍の価格。

思わずため息をもらすトワに「必要経費よ」とアキは諭すように肩を叩いた。

 

改めて銃の状態を確認する。

遊底に引っ掛かりもなくスムーズにスライドが後退する。

安物の銃のように素早く抜いた時に内部パーツがカチャ付くこともない。

オイルの状態も良好

 

「少なくともチンピラが整備せずに使用した後の消耗した状態ではないようね」

「命を預けるのにボロボロの中古は嫌ペコ!」

 

うんうんと頷く他のメンバー。トワ自身も「銃は撃って弾が出ればいい」という考え。

動作不良が起こる不良品はそもそも論外だと思っていた。

続けてPCと携帯端末を取り出すアキに「よくそんな物が手に入ったわね」と感心の声をもらす。

 

工作員、諜報員がハッキングの訓練で使用する端末・・・言うならばそのままの状態でも犯罪に使用出来るという品物なのだ。その為、(ごく)限られた一部の機関にしか供給されない物品であり、いくら様々な物が出回る闇市とは言えども直にソレに御目にかかることになるとは思ってもみなかったと素直な感想を述べた。

 

「この駐車場の屋上にマーケットへのアクセスポイントがあるの」

つまり、専用回線を使いネット注文を行う。

後日受け渡し場所に物品を置き、互いに顔を合わせる事なく取引を完了させるシステムという事らしい。

 

「扱う物が特殊なだけあってその方が都合がいいわね」

これだけの物を用意できるのだ。取引相手はマトモな人間ではないことぐらい容易に想像がつく。

 

渋い顔をするトワとアキとは対照的に新しいアクセサリーを買ったかのようにはしゃぐ子供たち。(メンバー)

2人は互いに顔を見合わせて少し笑いをもらす。

 

「それじゃ、最低限の準備はできたわね。まずは一仕事終えてから装備を充実させていきましょう。私達はこれから公には言えない事をするけれど、その前に何点か守ってもらいたい事があるの」

 

 

 

・一つ、無線機でメンバーを呼び合うときには個人が特定される単語を控える事。

互いに名前の頭文字で呼び合うか、メンバーだけ理解できる渾名を使用する。

 

「無線はチャンネルが合えば傍受できる。秘匿通信と言えども完璧ではないのが現状よ。警察にメンバーが確保された、無線機を紛失して警察の手に渡った。これらは全メンバーの命を危険に曝す事態に繋がるから気を付けて。私達(亜人)特有の身体特徴を把握されるのもNGよ」

 

「え~ぺこらんの耳は着脱式じゃないぺこよ!」っと文句を言う兎

そっと自らの角をパーカーの中にしまおうとしてテントを張ってしまっているアヤメ

耳をツインテールと一緒にリボンで結び付けて見事に同化させることに成功した鼠耳の女の子こと『ハコス・ベールズ』

 

キョロキョロと周りを見回しす『七詩ムメイ』や反応を示さない『アーニャ・メルフィッサ』は只人とは呼べるものではないが外観の特徴は薄い。

 

「あんたは胸張ってないで隠す努力をするぺこよ!」

ぺこらに詰め寄られ「煩い兎さんですね」と言っているのはコヨーテの『白衣こより』

 

「どう?隠れた?隠れてない!?どうしよう・・・余の角が立派すぎてフードに収まらないwww」 

三者三様のリアクションをとる各々。

 

・二つ、警察や一般市民には危害を加えない。

 

「人質や車を奪う程度ならば問題ないけれど、殺人はしないでね」

警察はこの町の現状を知った上でどこまでやるかを線引きしている節があるの。もしも、この制約を破ってしまったら完全武装した警官が私たちを殺しに駆けつけてくるわよとアキがつづけた。

 

 

「とりあえずはルールはこんなものね。まずは拠点の確保を目標に活動するわよ!」

 

車の確保、ハッキング用の端末の設定・練習。襲撃の打ち合わせ、逃走経路の確認。

襲撃まで後2日・・・

 

 

 

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