ミリモン   作:ブルーな雛菊

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大空警察

建築中の家。懐中電灯や携帯式LEDランタンの明かりの中で、作戦のミーティングは進んでいく。

工具や木材が乱雑に散らばる家の中、椅子やテーブルなど気の利いた家具等は当然の様に此処には存在しない。塗料の入った一斗缶や運び込まれた木材の上など、それぞれが椅子になりそうな物の上に腰掛け話に耳を傾けた。

 

役割の振り分け、当日の予想される警察の動き、各班の襲撃するターゲット、逃走経路。

日中には各人が車の調達や機材の準備を行っており、夜間には明日の襲撃への作戦会議・・・

時刻は『2:15』。説明には『陽動』『隠密』と他の班(自身には関係のない)のものが含まれており会議は長引く・・・

 

「・・・ってところだけど何か質問はある?アヤメちゃんは大丈夫そう?」

 

一通りの説明を終えたトワは木材を加工するために簡易的に組み立てられた作業台の上に座り、足をぶらぶらさせてあからさまに『心此処に在らず』状態のアヤメに確認を取る

 

「あ~ごめん。余、何も聞いとらんかった~」

「どこまで把握してる?」

「2つめの銀行を襲うところまで」

 

トワは少し考え、「私が隣に居るしそこまで把握してれば十分か・・・」と結論に至った。

 

「それじゃぁ、これで会議はお終い!時間まで十分に休んで備えましょう」

 

 

 

ターゲットが記された地図。各班の逃走経路が記入された地図。アキの事前偵察によって撮影された銀行の裏口、内部の写真・・・それらを集めてゴミ箱に詰めて火を付ける

マグネットは回収され、ホワイトボードは反転し工事内容の記載された表面が顔を出す。朝にはメンバーは此処を発ちそれぞれの持ち場へと向かう・・・誰もこの場で何が行われていたのか気付く者は居ない。

 

「やっぱり不安?」

ゆらゆらと炎の明かりが周囲を照らす中、全てが燃えつきるのを見届けているトワにアキは問いかけた

 

静かに頷き胸の内を語る。準備はした、計画に不備はない。だけど、かつてマイケル・タウンリーが失敗したようにどんなに綿密な計画であっても『完璧』なものなんてこの世界には存在しない。

 

「どうせ誰か捕まるかもしれない、死ぬかもしれないって考えてたんでしょ?自分の身ならばどうでもいいけども『最悪』を引き当ててしまったとき『自身は犠牲になっても良いから助けに行こう』なんてね?それは杞憂よ。今日、この島では『誰も死なないし誰も捕まらない。全員欠けることなく成功する』リーダーの貴女が始まる前から弱気になってどうするの?」

 

「そうね・・・ありがとう、アキ。もう大丈夫」

『虎穴に入らずんば虎子を得ず』得る物も大きいが失うものも大きい。今日、私は自身を含む仲間の人生をベット(賭け)する。

『簡単?前哨戦?』この商いに『安全』なんてものは初めから存在しない。だから・・・出し惜しみはしない

 

 

 

~~~

 

「回収終わった余」

「了解、暫く待機」

 

フリーサ銀行 ブレイン郡グランド・セノーラ砂漠支店

ロスサントスの警察署から車で最短1時間10分、これから街内で銀行を襲う『隠密班』の為に『陽動班』であるアヤメとトワは離れた地でこの島中の警察を引き付けなければならない。

 

乾燥した空気、ジリジリと焦がす様な日光、容姿体型を隠すために着たパーカーは通気性が悪く、顔を隠す為の般若面は息苦しさを感じる。

銀行内には捕縛した人質5人。銀行の外には包囲する保安官、偶然付近を巡回中で素早く駆けつける事の出来たロスサントス市警、警察ヘリ、報道ヘリ、もしもの為の救急車両。

 

見回すだけでストレスで吐き気を催す様な状況にも関わらず、若干顔色を悪くする程度で抑えられてるアヤメからは計画とトワへの信頼が伺えた。

(私もしっかりしないとね・・・)

 

緊張で乾く喉を潤したい欲求を押さえつけトワは状況を計算する。

 

北署から高速道路を使ってこの銀行まで1時間10分

西署から海岸沿いで2時間

中央署から山道で最短1時間30分

早くこの銀行を立ち去ろうとすると街に残るメンバーへの脅威度が上昇し、逆にこの場にとどまり続けると私とアヤメちゃんの脱出が困難になる。

 

(予定通り1時間半が妥当か・・・)

 

「2件目の銀行を囮に陽動を行う。人質を確保し、籠城、街から警察を引き離す」

「まず、始めに行わなければならないのが逃走車両を押収されないように警察を車両に近づけさせない事」

 

「そんな簡単に行くぺこか?」

 

「勿論、対策はある。だけど確実ではない」

そんな装備(計画)で大丈夫か?と心配するペコラに「大丈夫だ、問題ない」と返すトワ

 

「どの道、中途半端な車を鹵獲しても逃げ切ることは出来ないのなら逃走車両に手出しできない状況を作り出す」

 

『こちらスバル!現在、セノーラ砂漠支店上空。各ユニット、現在地を送れ。どうぞ』

『こちらマツリ現場に到着。裏口の監視を行います』

『イロハ、ワタメと共に海岸沿いを急行中。現在ルート68にのりました。到着予定あと50分』

『ラプラスです奏と共に正面入り口で待機中です。どうぞ』

『狙撃班ノエル。店舗入り口に人質を並ばせています。この地点からは犯人を捕捉できません』

 

『・・・残りはまだ到着していないか。了解、マツリはその場で待機、裏口を監視しろ。ラプラス・奏、保安官から目を離すな』

 

『こちら狙撃犯!正面入り口に動き有り!人質と思われる人がゲートを出ました』

 

 

保安官からの応援要請、報道のTV中継を見た市民達からも矢のように署へと電話で問い合わせが行われ受付はパンク状態。管轄外でも知らぬ存ぜぬとは行かなくなった市警は警官を現地に向かわせる流れとなった。

 

保安官、市警は厳密には仲間とは言えない。特に後ろ暗い噂の絶えない保安官、彼らは言うならば個人主義の塊。同僚すらも信用せず証拠を残さないように心掛けている彼等には『仲間意識』や同じ保安官同士の『繋がり』が薄く、自身がもみ消してきた事件の再調査に繋がる恐れのある本件は厄介事でしかない。

「今回は自身は関わっていないが他の同僚が手を引いているかもしれない、犯人が同僚の汚職の証拠を提出したら追加の捜査で関係のない自身にも不利益が生じてくる可能性がある」と考えるでしょうね。

 

「ここまで話が大きくなってしまった以上、私達を逃がせば関与が疑われる。ならば口封じをしたくて仕方ないはず」

ギャングメンバー一同「駄目じゃん」という心境の中でトワは話を進める

 

「一方、『強盗犯と裏取引があった』と通報から情報を得た警察はどうする?これを機に内部の不届き者を一掃したい市警は、可能ならば犯人を確保して証拠を得たいと考える」

「そこに市民へ有りのまま情報を流すメディアが参入すれば・・・雁字搦めの監視で互いの迂闊な行動を牽制しあうようになる」

 

 

「こちらスバル!人質には近づくな。繰り返す、人質には近づくな!爆発物と思われる装置が市民に巻き付けられている・・・」

上空を飛行するポリスマーヴェリック(警察ヘリ)に備え付けられた追跡用カメラを操作していたスバルは銀行から出てきた人質の姿に驚愕し、すぐさま無線機で全員へ注意を促した。

 

 

「逃走用車両へ警察を近づけさせない為、爆弾ベストを着せた人質に車付近に立ってもらい彼らの行動を更に制限するの。防弾ベストを拘束着に改造し無線で起爆装置を遠隔操作する。爆弾はダミー、殺傷能力はない。だけど、警察がそれに気づくのは人質を救出した後・・・」

 

『A』(Alfa)時間よ」

「了解」

 

一番危険なのは車へ乗り込むまでの間。起爆装置をちらつかせ人質を盾にしながら外へ出る。警察はこの時点で生け捕りを断念。市民の安全を第一に考え狙撃による犯人の無力化が好ましいと思うでしょうね・・・だけど『2人組』の犯人、『移動目標』、『盾にされた人質』の隙間を縫うように『同時に狙撃』し射殺するのは現実的とは言えないし、上手くいったとしてもTVを通じて一部分の情報を知った市民達が『一般人を危険に晒した』と反感を買う可能性だってある。

 

 

「狙撃を中断!人質を開放するまで攻撃を禁ずる。逃走を始めたら強盗犯を刺激しない程度に追跡しろ。爆発物処理は市民を保護後、迅速に解体にあたれ!」

 

 




評価、感想ありがとうございます!
のんびり気の向くままに・・・完走目指してやっていきたいと思っております
ついでに、刺さる人に刺さってくれれば幸いです(皆様の暇つぶしになれば良き!

爆弾ベスト・・・防弾ベストを改造した爆弾付き拘束着。ケブラーで作られておりハサミやナイフで切断するのも困難(ゲームである○○秒アタック禁止ルールを小説版にしたらこんな感じかな?って)

警察・・・警察は市民の味方であるがそれと同時に『市民が警察の味方になるとは限らない』事も理解している。最善な行動を選べる状況でも市民が枷となり動けない状況になることもしばしば・・・
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