相変異 黒蝗   作:エターナルドーパント

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要請

(コウサイド)

 

「あァらよっとォ!」

「ぐはぁっ!?」

デブちんなアンドロイドを回し蹴りで壁に叩き付け、その顔面を蹴り抜いて壁に縫い止める。そしてエアロディテクターに意識を集中し、周囲をスキャン。どうやら、残存兵力はゼロらしい。

フゥと息を吐き、脚を下ろして窓の外を見遣った。暗く澄んだ夜の空を、冷たい月光が照らしている。お月見日和だな。

「終わったぞ」

『了解。此方も人員を投入します』

飛んで来たスタッグフォンを掴み声を掛けると、通話後しに応答が返って来る。これで、今回の仕事は終了だ。

スタッグフォンをオープンチャンネル無線から外し、別個の連絡先を呼び出す。

『もしもし?』

「此方ローザスト。終わったぞ、七神代行。報酬は予定通りに振り込んどけ」

『了解しました。お疲れ様です』

「おう、そっちもお疲れさん」

「全員逮捕だ!」「神妙にお縄につくことだな」

電話を切った直後、俺の居る工場事務所にヴァルキューレの機動隊が突入。其処らに転がっている有象無象共に手錠を掛けて行く。コイツらは、違法ルートに流す銃器の製造をやってた小物共だ。次から次へと湧いてくる。今日はこれで27件目。ようやっとラストだ。

「ハァ、にしてもキナ臭ェな」

窓を開け、風を入れる。歯応えの無い、おやつにすらならん雑魚狩りで溜まった鬱憤を洗い流せたら、と期待したんだが・・・生憎、じっとりと湿った空気が肌を舐め、不快感が増えるだけだった。

「チッ・・・」

湿気に苛立ちを募らせながら、窓から飛び降りる。5階の高さも、何ら問題無く着地。敬礼を送ってくるヴァルキューレ生にヒラヒラと手を振り、ライドクウィンケーに跨がる。

「これでマシになってくれりゃ良いんだが・・・」

ヘルメットに頭を押し込みながら、うんざりと呟く。

D.U.近辺に於ける、出元不明兵器(ゴーストウェポン)の密造業者共の一掃作戦。七神代行が立案したこの作戦は、現場人員への凄まじい負荷を代償として今し方完遂された。そこまで広い訳では無い地区内とは言え、100件を越える違法工場。それらを潰し回り、一日中文字通り跳び回っていた訳だ。1ヵ所に掛けられる時間は5分。マジで常時フルスロットルで移動しっぱなしだった。冷却コート内の冷媒もスッカラカンだ。

 

━ピロピロピロッ♪━

 

「ん?」

スタッグフォンに新たな着信。相手は、《AMON》。直ぐ様通話を開始し、ヘルメットのバイザーを開いてスピーカーモードにする。

「おう、終わったか?」

『うん、バッチリ。ボスの方も、応答したって事は終わったんでしょ?』

「おうともさ」

気安く答えながら、エンジンをスタート。低く唸るような排気音を鳴らしながら、ポーチからペミカンを取り出して口に放り込んだ。凄まじい激務により、多めに用意しておいたペミカンは今の1つで底を突いた。

「今日は遅いから、すぐ帰れ。給料は追って振り込む」

『りょーかい!じゃあボス、お休み』

「お休み。気を付けて帰れよ」

通話を切り、スタッグフォンをハンドルのホルスターに装填する。そして改めてバイザーを閉じ、スロットルグリップを捻った。

 

━━━

━━

 

「只今~っと」

「お帰りなさい、蝗」

ガレージに戻ると、思いも依らぬ出迎えが。2階部分の備え付けの椅子に腰掛けたワカモが、銃剣に打粉をしながら俺の帰宅に応えたのだ。

「おぉワカ~モじゃん。どうだ調子は」

「可も無く不可も無く、と言った具合でしょうか」

紙で油を拭い取りながら、脚を組んでユラユラと上体を揺らすワカモ。つんけんとした愛想の無い態度だが、ゆったりと波打つ尻尾を見るに、精神的にはかなり安定しているようだ。

「それで、その・・・あの御方は、何と?」

そんな態度だったワカモの顔に、サッと朱が差す。チラチラと眼が泳ぎ、尻尾の振り方も先程よりも大きくなった。

「おう、美味かったってよ。米の1粒も残さず完食してたぜ」

「っ~♥そ、それは、何よりです・・・!」

ワカモが知りたかったのは、自分の作った朝食の出来。先生にどう評価されたか、それを俺が伝達すると言う約束だった訳だ。

「栄養バランスも整ってて、人を思いやれる優しい子が作った飯だって言ってたぜ」

「っ~!?そ、そんな・・・!」

尻尾がボンッと膨らみ、三角座りの体勢になってお面で顔を隠すワカモ。先生の事となると、途端に可愛い生き物に早変わりするな。

「良かったな、喜んで貰えて。先生に予定が入った時には連絡する。出張する時なんかには、お握りでもこさえてやれ」

「はい・・・」

「但し、そう言う時はお前はシャーレでお留守番だ。お前は少々悪目立ちするからな。先生の帰る場所を守っといてやれ」

「そ、それはもしや・・・!」

「・・・まぁ、そう言う事だ。あ、食材買ったレシートは取ってあるか?それがあれば連邦生徒会に生活経費として請求出来るぞ」

「レシート・・・?あぁ、前回の食材は不良共を暴れさせてスーパーから強奪したものですので、私のお財布は痛んでおりませんわ」

「おう待てやあれお前かい!?」

油断した。そうか、よくよく考えりゃ脱獄犯が金持ってる訳ャ無ぇわな。そして先生に関わる時以外は良心と思いやりをパージしちまってるコイツならそうなるか・・・俺のミスだ。いや俺のミスか?

「・・・」

「どうかなさいまして?」

「ワカモ、良く聞け」

「はい?」

「もう強奪はするな。10万くれてやるから、それを先生の食費に充てろ」

「何故・・・もしや、私、何か間違えてしまいましたか?」

サッと顔を青ざめさせるワカモ。本当に息をするような感覚で強盗強奪を働いてたのか・・・

「まぁ、な。先生は盗品を貢がれても喜ばんよ」

「そ、そうだったのですか!?も、もしもばれてしまったら、私・・・き、嫌われてしまう、のでは・・・!?」

おぉう、この世の終わりみたいな顔するなぁ。これ肯定したら自棄っぱち起こして暴れ回るだろ。

「だから、次からはするな。金を確り払って、正当に入手したものだけで作れ。そうすりゃ、大丈夫だ。あの人は1度失敗しても、改善の姿勢を取ってる奴には目くじら立てるような人間じゃねぇ」

「は、はい・・・感謝しますわ、蝗。私、危うく取り返しの付かない過ちを犯す所でした」

「先生絡むと素直だなお前・・・あ、あんまり高級品使うと経費落ちないかも知れねぇから、普通の食材使えよ。で、確り領収書も貰っとく事」

「承知致しました。このワカモ、もう先生を煩わせる事は致しません!」

「そんな思い詰めるなよ?失敗はあって良い。反省して、繰り返さないように改善していけ。その姿勢があれば、先生は失望しねぇよ」

「わ、分かりました・・・」

興奮し掛けたのをクールダウンさせつつ、また釘を刺す。

あんまり人格に云々言うのは好きじゃない。だが、コイツは先生に尽くす事を望んでる。なら、それをこなせるよう精神の方向性を誘導してやるのが、腐れ縁でも縁を結んだ俺の義務だ。何より、コイツは先生となら、罪を数えて償えるだろう。だったら、それを後押しするのが俺の信じる仮面ライダーだ。恐らくきっと、あの半熟探偵さんもそうするだろうさ。

「じゃあ、俺は風呂浴びて寝る。お前寝床は?」

「私は基本野宿ですが」

「じゃあ、うちのソファでも仮眠ベッドでも使えよ。あぁ、シャーレの休憩室は日中殆ど誰も使わねぇし、使用自由だから狙い目じゃねぇの?じゃ、お疲れさん」

脱いだコートを専用のチャージングハンガーに掛け、冷媒を補給。そしてガレージから繋がる横通路を通って、風呂場を目指す。

様々な場所を駆けずり回った疲労感はあるものの、幾許かの達成感が確かにあった。

 

(NOサイド)

 

「あ?来てねぇってどう言う事よ」

砂の吹き荒ぶ、茶色まみれの校舎。その中に、素頓狂な声が響く。

「えーっと、支援要請は出したんですけど・・・」

砂漠の学園、アビドス高校。その唯一の部活で使われている部屋で、両名が頭を抱えている。

片方は、仮面ライダーローザスト。もう片方は、このアビドス高校に通うエルフ耳に赤縁メガネの1年生、奥空アヤネである。

「おう。俺もアビドスに行くって知らせがあったから、丁度良いっつって此方に来たんだよ。しかも置き手紙。ったく、出発したのは俺のが遅いってのに何やってんだアイツは・・・」

「ま、まぁまぁ!多分ちょっとしたトラブルですよ!良くある事です!」

「問題はその()()()()()()()()が先生にとって文字通り致命傷な事なんだよ・・・」

2年生の十六夜ノノミの宥め文句に、寧ろローザストの頭痛は酷くなった。

「蝗屋さんがそこまで心配する必要あるの?大人なんてろくでも無いのばっかりじゃない」

「おう黒見。気持ちは分かるが、アイツはそんな事出来る人間じゃねぇぞ」

不信感を隠そうともしないのが、アヤネと同じく1年の黒髪猫耳の少女、黒見セリカ。どうだか、と吐き捨て、彼女は壁に凭れ掛かる。

「ハァ・・・で、あの昼行灯気取りは?また寝坊助か?」

「そ、そうですね、多分。何処にいるかまでは、私にも何とも・・・」

「ったァく、むず痒い仕事が漸く明けたから、口直し出来ると思ったってのによ・・・奥歯にものが挟まってる気分だぜ、やだやだ」

「相変わらずの戦闘中毒っぷりね。わざわざホシノ先輩と戦いたがる変人なんて、蝗屋さんだけじゃないの?」

「いや、少なくとも2人心当たりあるぞ」

「う~わ・・・」

ドン引きするセリカを他所に、ローザストは重く沈んだ気分を溜め息と共に吐き出した。

「おはよう」

そんな中、部室の扉が開かれる。入ってきたのは、明るい灰髪にピンと立った狼耳が特徴の少女、砂狼シロコ。

「「・・・えぇぇぇぇ!?」」

全員の視線がシロコに集まり、1拍置いて1年生2人が絶叫。理由が何かと言えば単純明快。シロコが背負っている成人男性の存在である。

「誘拐!?遂に誘拐しちゃったんですかシロコ先輩!?」

「わぁ!シロコちゃんが大人を拉致して来ました!」

「イヤァァァ!?証拠!?証拠隠滅しなきゃ!?埋める!?何処に埋める!?」

「3人ともうるさい・・・久し振り、ローザスト」

「おうシロコ。元気そうで良かったよ。で、だ・・・」

恐慌状態に陥った1年を捨て置き、ローザストとシロコは挨拶を交わす。そしてノシノシと引き摺るような重い足取りでシロコに背負われている大人、先生に歩み寄り、一言。

「何やってんだ、先生」

 

━━━

━━

 

「こ の 糞 た わ け が !」

”イヤ~・・・迂闊だったよネ、我ながら”

正座姿勢のまま、たは~とおどけて見せる先生。その態度に、ローザストの身体から蒸気が噴き出す。

「コンパス処か最新の地図すら持たず、2日彷徨い歩く奴を迂闊だったで済ませる訳あるかよッ・・・良かったな、干物になる前にシロコが拾ってくれてよ」

”そりゃそうだ!えーっと、シロコだっけ?ありがとね犬っ子ちゃん”

「ん、私は砂狼シロコ。犬呼ばわりはやめて欲しい」

”おーっとごめんゴメン!シロコね、覚えたよ!”

「・・・何か、不思議。憎めない」

へらへらとした態度の先生だが、シロコの受けは悪くない様子。しかし、セリカは対照的に懐疑的な視線を先生に突き刺していた。

”改めまして、連邦捜査部シャーレの先生だ。どうぞ宜しくネ。えーっとそれで?要請をくれた奥空アヤネちゃんって?”

「あ、はい、私です!良かった、本当に来てくれた・・・」

”うん!取り敢えず、要請通りの物資は持ってきたよ!シロコ、あのキャリーバッグ持ってきて貰って良いカナ?”

「分かった。ちょっと待ってて」

快く了承し、シロコは部室を出る。軽やかな足音が去っていくのを待って、ローザストが先生の頭をむんずと掴んだ。

”あ痛~!?”

「なぁ、何で俺を呼ばない?弾薬含めた物資をキャリーバッグ分なんざ、実戦で30分も持たんぞ?俺ならもっと物を積める特殊車両持ってるし、何より人手が倍だからずっと楽だと思うんだが?」

”い、いやぁ、わざわざ呼び出す程でも無いかな~、なんてイタタタタタタ!?”

「その結果干からび掛けてさえいなけりゃ世話ねぇんだがなァ!」

”ギブギブギブギブ!ミシミシ言ってる!ミシミシ言ってるからぁ!?”

先生を押し潰すようにアイアンクローを続けるローザスト。激痛による悲痛な叫びが、伽藍堂の校舎に木霊した。

「うへぇ~、全くうるさいなぁ~」

「あっ、ホシノ先輩やっと来た!」

気だるげに部室に入ってきたのは、ピンク髪とオッドアイが特徴的な低身長の少女、小鳥遊ホシノ。

「漸く来たかよ昼行灯気取り」

「ゴメンねぇイナホ。おじさんの歳になると、ちょっと朝がしんどくてさ~」

「いや私達とそんな歳変わらないでしょ!」

寝惚けたような力の入らない声で話すホシノに、セリカの突っ込みが入る。

「で、その人が先生?何か頼りないなぁ」

「イタタッいてててッ!?た、助けて!」

ホシノがジト目で見つめる先には、ローザストによって卍固めを極められる先生の姿が。頼りないと言われるのも当然である。

 

━ズガガガガガッ!━

 

「どわっ!?な、何!?」

「先生!伏せろ!」

突如として響く銃声。咄嗟に先生の頭にコートを被せ、ローザストが窓の外を見遣る。

 

「ひゃははははァ!包囲しろ!今日こそこの校舎は私らのモンだァ!」

「連中は既に補給を絶たれている!押し潰せェ!」

 

そこにいたのは、フルフェイスのヘルメットを被った不良集団。人数に任せてアビドス高校を包囲し、ご機嫌に銃弾をばら蒔く姿は、正に無頼の輩と言った具合であった。

「カタカタヘルメット団!よりによってこのタイミングで・・・」

「あーもう!しつこいってのアイツら!」

セリカの怒声が響く中、教室の扉が開く。そこにいたのは、両脇にアタッシュケースを抱えたシロコ。

「ん、皆お待たせ。弾薬を急いで補充して、打って出よう」

「じゃあ、俺は戦車や重量兵なんかを潰して撹乱して来るわ。確り準備しろよ」

背中からメリッと羽を生やし、窓を開けて飛び出すローザスト。そして戦列中央にドゴンと着弾し、ヘルメット団は悲鳴を上げる。

「景気良くドンパチドンパチやってるなァ、このロクデナシ共!人様の物を奪おうとするなら、当然自分も奪われる覚悟してるんだよなァ!」

宣言通り、ローザストは体躯の大きい傭兵や戦車を中心に狙って攻撃を始めた。防御は崩され、装甲は引き剥がされ、銃撃は悉く避けられるか、受けきられるか、弾かれる。ヘルメット団にとって、ローザストの乱入は悪夢の到来と同義だった。

「ん・・・ローザスト、蝗丸使ってない。何時もは雑魚相手に抜刀こそしなくても、鞘とか柄頭で急所をどつき回すのに」

「あら、そう言えばそうですね。何ででしょう?」

”あの子何時もはそんなえげつない戦い方なの?”

「ん。初手飛び膝蹴りで肋骨を潰されそうになった事もある」

”わぁお野蛮”

先生がドン引きする中、アビドス生達の準備が完了。そしてローザストと同様に、それぞれが窓から飛び降りて参戦し始めた。グラウンドには、訓練で使ったのか複数のバリケードが構築されている。それらに隠れながら、4人は各個に攻撃を開始。それを確認してローザストは入れ替わりに後退し、先生のいる教室の窓まで跳び上がった。

”うおっ!?お、おかえり”

「ただいま。さーて、アイツらのお手並み拝見だ」

”そう言えば、さっきも知り合いっぽかったね。付き合い長いの?”

肩に掛けられたコートを返しながら、質問を投げ掛ける先生。それを受け取り袖を通しながら、ローザストが答える。

「まぁ、ボチボチ浅からぬ仲かねぇ。最低限、戦闘スキルの基礎を教えたのは俺だからさ。ほらシロコ見てみ、あの足癖の悪さ」

”うわホントだ、めっちゃ蹴ってる。と言うか飛び膝蹴りに回し蹴りに後ろ蹴り、うわソバットまで・・・しかも全部的確に急所狙ってる”

野蛮且つ鮮やかにヘルメット団を薙ぎ倒すシロコの脚技に、先生の口許が引き攣る。

”お手並み拝見っていうのは、教えた事を実践出来てるかの確認って事かい?”

「そうそう。で、シロコ達は悪くねぇが・・・黒見はありゃまだダメだな」

”・・・確かに”

ローザストの指摘を聞き、先生の視線がセリカに向く。

どうにも遮蔽を活かした戦闘に不慣れらしく、隠れきれていない部分を撃たれたり、バリケードに脚を引っ掻けたりと、地形把握の甘さが目立つ。

そして、遂にお互い余所見をしながら走っていたせいでシロコと正面衝突してしまった。

「あーらま、ありゃいかんわ」

”じゃ、そろそろこっちの出番かな”

「出番?何するつもりだ?」

”いやぁ━━━━━ちょっと、お手伝いをネ!”

 

━━━

━━

 

「あーもう!イライラする!」

バリケードの裏で、頭に血の上ったセリカが叫ぶ。最近訓練を始めたばかりで、慣れが足りない地形戦。思うように動けず、連携も取れず、彼女の苛立ちは沸点に到達していた。

「セリカうるさい。あと無駄弾も多い」

「シロコ先輩だって、前見てなかったじゃないの!」

「それを言うならお互い様だよ、早くリロード済ませて構えて」

「もう弾が無いの!」

「っ・・・節約癖が裏目に出たね」

そもそもとして持って来たマガジンが少なかったのか、弾切れに頭を抱えるセリカ。正面でホシノが惹き付け、ノノミの弾幕射撃で薙ぎ払ってはいるが、今一つ決定打が足りない。そんな泥沼のような状況に、異質な声が届く。

 

”あーっあーっ、えーっと、アビドスの皆?聞こえてるカナ~?”

 

「っ!先生の声!?」

「ウソ、何処から!?」

 

”そう言うどーでも良い事は後回しで!時間無いから手短にね!今からこっちの指揮下に入って欲しいんだ。この声は君ら以外聞こえてないしね”

 

「・・・分かった」

「ちょ、シロコ先輩!?大丈夫なのコレ!?」

「どうにもこうにも、頼らなきゃ今潰されるだけ。先生、私とセリカの位置に弾薬の補充支援を要請。いける?」

 

”はいはーい!じゃあ2人分の弾薬、お届けしますヨ!アヤネちゃんが”

 

その数秒後、アヤネの操る運搬ドローンが到着し、2人の頭上からポーチを投下。中身はそれぞれの弾薬が2マガジン。2人はそれを回収して再装填し、チャンバーチェックを済ませる。

 

”準備はいいかな~?じゃあ始めようか!シロコとセリカ、左右に散開してバリケードに隠れながら敵の最前線辺りまで移動!弾薬は節約しなきゃだから、数が多い右側は体術得意なシロコが担当ね!”

 

「ん、OK」「あーもう!やるわよやればいいんでしょ!?」

 

”ノノミはバリケードの上からガトを地面にばら蒔いて牽制、ついでに2人が動けるよう煙幕にしよう!撃つ時は言ってあげてね~”

 

「了解しました~!ノノミ~、行きまぁ~す!」

 

”ホシノはそれでも突っ込んで来た気骨のある子を受け止めて最前線をキープ!弾幕射撃はまぁ、自前の盾で何とかしてよ!”

 

「うへぇ、先生はおじさん使いが荒いねぇ?まぁやるけどさぁ~」

先生の指揮の通りに、ヘルメット団への反撃を開始する。ノノミの弾幕の角度を適宜先生が指示して出鼻を挫き、その隙を突こうと飛び込んで来た雑兵はホシノがショットガンの連射で踏み潰す。それぞれが消耗する弾薬をアヤネのドローンから補給し、シロコとセリカはヘイト掌握を2人に任せて指示通りのルートで敵に接近。シロコは延髄斬りや踵落としで鮮やかに敵を沈め、セリカはゼロ距離に持ち込んで銃で殴り倒して対処した。

 

”よーし!布陣は展開出来たネ!ここからは全員ガンガン突っ込んで、戦線を押し込んじゃおう!あっちの圧力優位を此方が奪う訳ネ!じゃあ、頑張ってネ~!”

 

「簡単に言ってくれて!」

「でも、ごちゃごちゃやるより分かりやすくて良い」

「さぁ!お仕置きの時間ですよ~!」

「うへぇ、皆元気だねぇ?おじさん着いてくだけでヘトヘトだよぉ」

「な、何だコイツら!?急に動きが・・・!?」

「クソ!こんなの聞いてねぇ、聞いてねぇぞ!?」

敵方を圧迫しながら突っ込み、遂に連携の圧潰へと持ち込んだアビドスの4人。左右から体術と銃撃で挟み込み、密集エリアに徹底的な面の制圧射撃。この噛み合わせにより、ヘルメット団は巨大な顎に咀嚼されるが如く瓦解する。

「ち、畜生~!」「覚えてろよ~!」

状況が不利になったと見るや、ヘルメット団は撤退し始める。自分達が乗って来たトラックと装甲車の位置に辿り着き━━━━━

 

「よっ」

 

━━━━━絶望を直視した。

ローザストが車両の護衛を蹂躙し、ボンネットを開いていたのだ。

「な、なっ、なっ!?」

「何で、何時の間に!?」

「いや、正面に火力が集中するならフリーな奴が伏兵として回り込むなんざ基本だろ」

あっけらかんと言い放つローザストに、ヘルメット団は冷や汗を垂らす。

「にしても、ものの見事にパーツがごちゃごちゃのキメラだな。それぞれの接続に非正規パーツを挟んでるし、こりゃ燃費も悪ィだろ。こんな車売りモンにならねぇや」

「う、売りモンって・・・!?」

「あ?バラして業者に売っ払うのさ。あとお前らもだ」

スマホを確認しながら、何人かを指差すローザスト。

「5万、7万、13万、6万、9万・・・お前ら、相当やんちゃしたらしいな。ヴァルキューレの賞金首掲示板(バウンティボード)に登録されてるぜ」

ギラリと歯を見せ、嗤う。こう言った賞金稼ぎも、万事蝗屋の稼業の1つだ。

「さて。お前達の選択肢は2つに1つだ。ここで降参してキレイな顔のまま逮捕されるか・・・闘争か逃走を試み、ベコベコにされた顔面の判別が着くようになるまで勾留されてから逮捕されるか・・・」

 

━バキョッ ミギギギギッ バツンッ━

 

ローザストは地獄の底から轟くような重圧を孕んだ声で脅しを掛けると同時。引き剥がしたボンネットを両手で掴み、厚紙か何かのように意図も容易く真っ二つに引き裂いてしまった。

 

Make your choice(さぁ、選べ)

 

「「ひぃぃぃぃ!?」」「降参!降参します!」「殺さないでぇ!?」「っ・・・」「相棒ォ!?」

結果、ヘルメット団は漏れ無く腰を抜かし、本気の命乞いをし始める。卒倒する者も出る始末だ。

「うっわぁ・・・」

「ん、相変わらず鬼畜の所業」

その一部始終を目撃したセリカはドン引きし、シロコは感心したように呟いた。そんな2人の様子を余所に、ローザストは車内を物色。適当なロープを見付け、賞金首達を縛り上げる。

「じゃ、俺はコイツら引き渡して換金して来るから。先生のお守りは頼んだぞ。銃弾1発で致命傷だからな」

「はいはい、行ってらっしゃ~い」

気だるげに答えるホシノにヒラヒラと手を振り、スタッグフォンを操作。それにより校舎裏に停められていたドゥオルギャリーが起動し、校門を通って車道に出て来る。

「行って帰って、大体3時間半って所だな」

「そっか~。じゃあ暗くなっちゃうねぇ」

「まぁ俺は夜目が効くから平気さ。そっちも気を付けろよ」

「はいは~い」

ドゥオルギャリーのハッチを開け、賞金首を放り込んで寝かせる。そして閉じたハッチの上に立ち、騎乗用のグリップを握って身体を固定した。

「そんじゃ、出発進行~!」

ギャリギャリとキャタピラを回して、猛スピードで急発進する。その後ろ姿を見送りながら、ホシノは少しばかり眼を細めた。

 

To be continued・・・




~キャラクター紹介~

・叢雲コウ/草薙イナホ/仮面ライダーローザスト
激務を終わらせた飛蝗少女。
D.U.地区の主力違法業者を始末し、更にワカモの先生への奉仕方法に対する矯正も熟した。
アビドスでは案内役も地図もコンパスも持たず危うく死にかけた先生に激怒しオクトパスホールドを炸裂させ、ヘルメット団には悪魔のような脅しを掛けて足腰を立たなくさせた。

・狐坂ワカモ
尽くしたいタイプの厄災の狐。
先生が自分の料理を褒めてくれて夢見心地だったが、その料理の材料はスーパーから強奪した盗品。それを悪い事とすら認識出来ていなかった。
先生に嫌われたくない為、もう先生の為に物資を強奪する事は無い。
今後、蝗屋のガレージやシャーレに入り浸る事となる。

・奥空アヤネ
アビドス1年。常識人筆頭。
先生に救援要請を出した張本人。しかし待てど暮らせど先生は来ず、絶望的な状況に頭を抱えていた。
先生に対しては純粋に感謝してる方。

・黒見セリカ
アビドス1年。常識人寄り。
先生に対しては信用出来ないと言う態度を隠さないツンケン猫。
弾薬すら切り詰めていた癖で持ち出したマガジンが尽き、万事休すとなったタイミングで先生の指揮下に。銃撃のセンスは非常に良く、下された指示をキッチリと完遂している。

・十六夜ノノミ
アビドス2年。母性担当。
ほんわかとした空気を醸し出すお姉さん。しかし仲間達がおかしな方向に舵を切っても基本的にブレーキを踏む事は無い。
おっとりとした性格とは裏腹に、ミニガンの弾幕射撃による無慈悲な広域殲滅を得意とする。また、総重量100kgを軽く越える凄まじい反動の連射火器を容易く制御する膂力には並外れたものがある。

・砂狼シロコ
アビドス2年。
倒れていた先生を広い、アビドスに連れ帰ると言うファインプレーを熟した。彼女がいなければ割と冗談じゃなく世界が滅ぶ。先生に対しては現状一番懐いている。本能だろうか。
ローザストに戦技指導を受けた結果、アニメ含む原作より3割増しで脚癖が悪く、兎に角敵を蹴り倒しまくるようになった。

・小鳥遊ホシノ
アビドス唯一の3年。昼行灯気取り。
緩い口調で雰囲気を誤魔化してはいるが、警戒心は一番強い。先生に対しては、自分の盾による耐久力を正当に評価した指示を出した事で観察眼の鋭い人間だと認識している。

・先生
特大ガバをカマしたバカタレ先生。オクトパスホールドの餌食に。
救援要請を受けてアビドスに来たは良いが、地図の更新も行わずコンパスも持たず案内も頼まずと言う最悪ムーヴにより無事遭難。当然の結果である。
尚、弾薬満載のキャリーケースを2つ引き摺って2日間彷徨い続けた。人間としてはタフな方。

~アイテム紹介~

・シッテムの箱
先生が持つタブレット型のオーパーツ。
今作に於いては、先生を攻撃から守るバリア機能の他に、生徒達の布陣を立体CGとして表示するマッピング機能と指揮下の生徒に対して指示を飛ばすテレパシー機能が搭載されている。
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