”いやぁ、何とかなるモンだね。意外とさ”
「ホントホント~。まさか勝っちゃうなんてねぇ。ヘルメット団も結構な覚悟で攻めてきてたみたいだけど」
おどけるような態度の先生に、ホシノもだらけた調子で便乗する。
「まさか勝っちゃうなんて~じゃありませんよホシノ先輩!負けてたらこの学校は不良のアジトになってたんですから!」
「先生の指揮、分かりやすくて良かった。何を狙ってるかも伝わってたし、補給のタイミングも絶妙。これが、大人の力・・・大人ってスゴい」
”イヤイヤ~、褒め過ぎだってばシロコちゃ~ん”
シロコの真正面からの称賛に、照れ臭そうに頭を掻く先生。満更でも無さそうな態度だが、それはそれとして擽ったいらしい。
「いやぁ、今まで寂しかったんだねぇシロコちゃん。パパが帰って来てくれたお陰で、ママはぐっすり眠れまちゅ・・・」
”え、パパって私?まだそんな歳じゃないつもりだよ?”
「変な冗談は止めてよ!先生も困っちゃってるでしょ!そもそも委員長、しょっちゅう寝てるし!」
「そうそう、可哀想ですよ」
”ハハハッ、仲間内で仲が良くて何よりだよ”
「あはは・・・改めまして。救援要請に応じて頂き、ありがとうございます!私達が、アビドス対策委員会です!私がオペレーターと書記を担当しています、1年の奥空アヤネです!」
”ハイハーイ、さっきはナイスアシストだったヨ♪”
「同じく1年のセリカ」
「・・・どうも」
「こっちが、2年のノノミ先輩とシロコ先輩です!」
「よろしくお願いしますね、先生」
「さっき、道端で初めて出会ったのが私・・・あ、別にマウントを取ってる訳じゃ無い」
”皆、結構良い動きだったじゃない?”
「そして、こちらが委員長。3年生のホシノ先輩です」
「改めまして、宜しくね~先生。いやぁ、にしてもさっきは荒っぽい指示出してくれちゃってさぁ。おじさんが傷物になっちゃったらどうするつもりだったのかな~?」
”ハハ、冗談。そんなヤワじゃないのは見れば分かるよ。何と無くだけど”
「ん。実際、ホシノ先輩の扱い方はあれが最適解」
「えぇ~?シロコちゃんまでそんな事言うのぉ~?」
先程の指揮の結果も交え、ワチャワチャとじゃれ合う対策委員会。そんな状況もありつつ、アヤネは顔をキリッと引き締める。
「先程ご覧頂いた通り、我が校は現在危機に晒されています。その為、シャーレに救援要請を送ったと言う訳です。結果として、直近の危機を乗り越える事が出来ました。先生が居なければ、今頃さっきの不良達に学校を乗っ取られていたかも知れません。本当に、何とお礼をすれば良いか・・・」
”いやぁ~、褒められるって気分良いねぇ!で、対策委員会ってのは具体的に何の対策してんの?”
「そうですよね、ご説明致します」
先生の質問に、変わらない調子でアヤネが回答した。
「このアビドスを甦らせる為、有志が集った部活・・・それが、対策委員会なんです」
「うんうん!全校生徒で構成される、校内唯一の部活なんです!と言っても、この5人だけなんですけどね」
「他の生徒は、転校したり退学したり、兎に角アビドスを出て行ったんだって。学校がこの有り様だから、学園都市の住人も居なくなって、カタカタヘルメット団みたいな三流のチンピラに学校を襲われてる始末なの」
”あ~らま、そいつは何とも・・・”
ノノミとシロコの説明も加わり、先生はこの学校が思った以上に文字通りの存亡の危機に瀕していると理解した。
「このままだと、ハッキリ言って私達だけでは学校を守るのはとても厳しい。在校生としては、恥ずかしい限りだけど・・・」
「今日だって、シャーレの支援が間に合って居なければ・・・あの物量で押し潰される所でした」
「だね~。補給も底を突いてたし、流石に覚悟したよ~。中々良いタイミングで来てくれたよね、先生は・・・ホント、良いタイミングだよ」
”(ホシノ・・・何か抱えてるっぽいね。俺を信用した訳じゃ無い・・・ま、当然っちゃ当然かな。やれるだけの事はやる。それだけだ)”
ホシノの小さな呟きに、内心の不信感を感じ取る先生。しかし、現状で打てる手はそう多くないと割り切り、現状の確認を継続する。
「もうヘルメット団なんてへっちゃらですね!大人の力、スゴいです☆」
「だからって、すごすご引き下がるような奴らでも無い。何度叩きのめして、尻尾を巻いて逃げても、また直ぐに戻って来る」
「そうそう!全くしつこいったらありゃしないわよ」
当然と言えば当然であるが、長期間の消耗戦を強いて来たヘルメット団に対してのヘイトは強い。それはつまり、攻撃意欲、則ち士気が高いとも言える。
「こんな不毛な消耗戦、いつまでも続けていられません。不良以外にも、問題は山積みなのに・・・」
「そうだよね。ってな訳で、ちょっと作戦を練って見ました~」
「ウソ、ホシノ先輩が!?」
「本当に、ですか!?」
「あの万年5月病のぐーたらホシノ先輩が・・・?」
「皆、私の事そんな風に思ってたの・・・?」
”(普段どんだけ動かないんだろう、ホシノって)”
傷つくよ~ふぇ~ん、とわざとらしい嘘泣きをして見せるホシノに、全員が顔を見合わせる。目元に浮かぶのは、任せて大丈夫かと言う不安。
「・・・まぁ、それはさておきさ」
”さておくんだ?”
「ヘルメット団は、数日もすればまた襲ってくるでしょ。最近ずっとそんなサイクルだしさ。じゃあ、補給も潤ってるこのタイミングで、アイツらの前哨基地をぶっ潰しちゃおうよ。相手も消耗してるし、最高のチャンスなんじゃない?」
「い、今ですか!?」
「そうそう。今ならめんどくさいアレコレもこなしてくれる先生もいるしさ」
”そうそう!まぁ使えるだけ使い倒しちゃってよ。こっちも借り物の権力だけど、人助けに使えるなら喜んで提供するし!”
「敵の基地への強襲作戦・・・ローザストが後から悔しがりそう」
”確かに。付き合い短いけど、あの子こう言う手合いの作戦大好きだろうからねぇ”
「で、ヘルメット団の基地は偵察済み。ここから30kmの位置にある。鉄は熱い内に打てってローザストも言ってた」
「今から反撃されるなんて、あっちも夢にも思ってもいないでしょうし、賛成です!」
「それはそうですが・・・先生は、いかがですか?」
若干引き攣った顔で、アヤネが先生に問う。先生の返答は、力強いサムズアップ。
”良い~じゃん!面白くなって来たねェ~♪じゃ、引き続き指揮は私が執るからさ、皆頑張っていこう!”
「よっしゃ。先生のお墨付きも貰った事だし、この勢いでカマしちゃおっか」
「善は急げ、だね」
「しゅっぱ~つ☆」
”お~!
・・・所でサ、キヴォトス人ってお散歩感覚で30km移動出来るの?”
━━━
━━
━
『敵拠点周辺のエリアに到着しました。半径15km圏内、敵シグナル多数検知!恐らく、向こうも此方が近付いているのは分かっている筈。ここからは実力行使です!』
”さてと。じゃ、いっちょやりますか!”
アヤネが運転するオフロードトラックの助手席で、先生はシッテムの箱の戦術指揮アプリを起動。トラックの荷台からは前線要員が飛び降り、陣形を展開する。
「オイ!何か来やがったぜ!」
「ケッ。アイツら、調子付いて突っ込んで来やがったなァ?構いやしねぇ!ぶっ潰せェ!」
”おーおー、景気が良いねぇ。じゃ、ホシノはさっきと変わらず最前線で敵を惹き付けて”
「うへぇ、また前に出るのぉ~?しんどいんだけどなぁ」
”出来るんだからやるの。その為のゴツいシールドでしょ?セリカは・・・屋根の上とか行ける?行けるなら左翼から上を取ってトップアタックを仕掛けようか。で、シロコは右翼に食い付いちゃって!そんで左右で意識を振り回された所に、ノノミの弾幕射撃!”
「屋根の上?まぁ行けるけど、そんなのやった事無いわよ?」
「大丈夫、セリカなら行ける。ファイト」
「うんうん!では、弾幕張りますね~☆」
先生の指示に従い、それぞれがポジションに着く。
「クソが!てめぇら、襲撃班をどうしやがった!」
「帰ってこねぇんだよ、あたしのダチがよ!」
「てめぇら、ウチらのダチを売りやがったんだろ!えぇ!?」
「許せねぇ!私らのダチを奪いやがって!」
「・・・」
ヘルメット団からの非難に、シロコの髪がブワリと逆立つ。瞳孔は大きく開き切り、奥歯がゴリッと軋んだ。
否、シロコだけでは無い。対策委員会全員、憤怒にまみれた能面の如き無表情を顔面に張り付けている。
「・・・お前達が、よりにもよってお前達が、それを言うんだ・・・皆、ちょっと、良心と思い遣りはシャットダウンしよう。コイツらは・・・只の、害獣だから」
「天狗になって調子の良い事言ってんじゃないわよカスどもがッ・・・!」
「私達から奪おうと散々襲い掛かっておいて、自分達は奪われたくないって・・・通らないよ、それはさ」
「これは・・・特別なお仕置きが、必要ですね~?」
「救いようの無い、恥知らずですねッ・・・!」
”まぁそうなって当然だよネ。甘やかしても何も良い事無いし、徹底的に叩いちゃおっか”
「ん・・・ぶちカマす」
先生すら匙を投げ、怒れる猟犬と化した対策委員会は一斉にトリガーを引く。激情を乗せた弾丸は拠点の壁や遮蔽にされた廃車を無慈悲に穿ち抜き、横殴りの豪雨のように降り注いだ。
「ばっ、バカな!?なんだアイツらの弾は!?」
”怯んだね。じゃ、総員突撃しよっか!要所要所だけ声かけるからさ、各々好きにやっちゃってよ!”
先生の指示が飛ぶや否や、シロコは空弾倉を引き抜きながら駆け出す。そしてその空弾倉の角を不良の鳩尾に抉り込むように叩き付け、息が詰まり頭が下がった所で後頭部をキャッチ。そのまま顎を狙って膝蹴りを叩き込んだ。
一瞬で意識を飛ばされた不良は、そのままシロコの肉盾とされる。フレンドリーファイアを恐れて銃撃が弱まった所を、一気に刺し貫くように疾走。リロードを済ませた銃が正中線の急所に叩き込まれ、更に着撃点で発砲する事で内部まで衝撃を押し込む。内臓を諸に揺さぶられた不良達は次々と戦闘不能に陥り、正に死屍累々の惨状と化した。
シロコだけでは無い。ホシノはその大盾で、セリカは銃のストックで、ノノミに至ってはガトリング本体と手頃な大粒瓦礫で。ありったけの怒りを、直接的な殴打に込めて文字通り叩き付けて行く。
暴力。圧倒的暴力。運動エネルギーを伴う感情の暴風雨に擂り潰され、30分と持たず拠点は崩壊した。
「ん、制圧完了」
「うへ~、勝利勝利~」
「スッキリしました~♪」
「口程にも無いわね、2度と噛み付いて来るんじゃないわよ」
多少息を切らしながらも、容易く勝利を掴んだ対策委員会。その顔は皆一様に晴れやかであり、フラストレーションの発散効果は極めて高かったようだ。
”や、お疲れ~。皆凄かったねぇ。所で、ぶん殴りまくってたのってローザストに教わったの?”
「そう。『時と場合によっては、銃よりも直接殴った方が効果的』・・・ローザストの言った通りだった。何よりスッキリする」
”あ、そーなんだ・・・”
車から降り、シロコの回答に若干引く先生。そしてセリカとノノミがヘルメット団を捕縛して行く様を眺めつつシロコを見遣ると、何故か拠点の奥に入り込んで行くのが見えた。
”おーい、シロコ~?”
呼び掛ける。応答は無い。
”あれ?シロコさ~ん?・・・大丈夫かな”
「ど、どうする?私達も追い掛ける?」
「みんな!こっちに来て!」
「うおっ、シロコ先輩!?」
急なシロコからの呼び声に、毛をブワリと逆立てるセリカ。しかし爆発音の類いは無く、周囲と顔を見合わせて安全と判断。ゆっくりとシロコの声がした方へと脚を進めた。
「見て、宝の山!」
「わぁ・・・!」
シロコの居た場所。それは弾薬庫だった。とはいっても、打ちっぱなしのコンクリートの部屋に無造作に物資が置かれているだけの、物置部屋と言って差し支えない部屋。しかし、その物資の量が桁違いだった。
アサルトライフル弾、ショットシェル、拳銃弾に手榴弾・・・文字通り山と積まれた大量の火器弾薬。ライフル弾の小箱を手に取り、シロコは眼を輝かせる。
「これ、私達が使ってるのと同じ弾薬だよ。この量、軽く8万円分以上ある・・・」
「わぁ~!私のと同じ弾薬も、こんなにいっぱ~い!」
「アヤネちゃん!この拳銃弾使えるんじゃない?」
”いやぁ、壮観だねぇ。所でみんな、安全装置は絶対外さないでね?私死んじゃうから”
大量の物資を見てはしゃぐ面々を見て、先生は背筋が冷える思いをする。弾薬は木箱等では無く、紙の包装箱が剥き出しで積まれている。その上に、消火設備の類いも見当たらない。ここで1発でも撃とうものなら、先生の身体は脆くも弾け飛ぶ事になるだろう。
「ねぇねぇ、ここにある使える弾薬、全部持って帰っちゃいましょうよ!暫く弾代を気にせずに済むわ!」
「そうだね。丁度アヤネのトラックもあるし」
”あれ?荷台に荷物積んだら皆どうすんの?”
「これくらいの距離なら大丈夫。歩いて帰れる」
”キヴォトス人のフィジカルはやっぱ凄いなぁ・・・”
「・・・」
”あれ?どったのアヤネ”
「えっ?あ、いえ!何でもないです!」
「じゃ、さっさと積み込んでさっさと帰ろうよ~。お昼寝したいしさ~」
「もーホシノ先輩、いっつもそればっかなんだから」
その後、対策委員会でトラックに弾薬を満載し、アビドス高校へと帰投する流れとなった。その顔は、一様に晴れやかであった。アヤネを除いて。
━ドゴォーンッ!━
「えっ!?何!?爆発した!?」
「ん。弾薬庫と車全部にガソリン撒いて時限爆弾セットして来た。これでもう回収出来ない」
”アハハハハ!容赦無いねェ~シロコちゃん!”
「情けは無用。こう言う手合いは徹底的に叩くべきって、ローザストも言ってた。それに、アイツらも本気になった私達が何をするか、これで分かった筈」
”わーお!コマーシャル効果絶大だネ!で、「それなら集まれば良い」となっても、向こうは寄せ集め且つ訓練もしてない、オマケに物資の統制も取れない!だから下手に大軍になると、逆に内側から壊死するって寸法だ!”
「ん、流石は先生。勘が良い」
”ハハハ、派遣軍隊は大飯食らいってのは常識だからネ!”
━━━
━━
━
”ふぃ~、皆お疲れ!”
部室。追撃と鹵獲を済ませた対策委員会と先生が、各々の席に着く。
「先生もありがとうございます。物資の搬入まで手伝って貰って・・・」
”良いの良いの。そりゃ皆より非力だけどサ、ちょっとでも運べる量は多い方がいいでしょ?あ~でも、ちょっと腰痛いかも・・・シロコ、腰踏んで貰って良いカナ?”
「はァ!?踏むって、何言って!?」
「任せて」
”ンゴォォォ!”
「ってノータイムで踏んでるし!」
寝そべった先生をシロコが踏み、セリカが突っ込む。その様を見て、アヤネは苦笑い。何ともカオスな空気である。
「さて、火急の事案だったカタカタヘルメット団については、一先ず片付きましたね。やっと一息つけそうです」
「ん。漸く大事な問題に集中出来る」
「ホント、先生のお陰ね!これで心置き無く、全力で借金返済に取り掛かれるわ!ありがとう先生!この恩は━━━」
”借金?”
「・・・あっ」
一瞬、部室の空気が固まる。セリカは青ざめた顔で口許を抑え、上級生組は顔を見合わせた。
「あの、それについては・・・」
「ま、待ってアヤネちゃん!これ以上は・・・」
「・・・うーん、別に良いんじゃないかな?セリカちゃん」
対応を決めかねていた1年生2人に、ホシノが言う。
「別にやましい事じゃないしさ。隠す必要なんて無いよ」
「でも!もし足元見られるような事があったら・・・!」
「・・・そこに関しては、私はイナホを信じるよ。アイツが信用してる人なら、まぁ大丈夫でしょ」
「ん。もし先生が悪い大人なら、ローザストと一緒で無事な筈が無い。結構気安く接してたから、問題は無さそう」
「だ、だからって!部外者に懐事情を晒け出すなんて・・・」
「確かに、パパっと解決出来る問題でも無いよ。けどさ、結局私たちだけじゃどうにもならないじゃん?それに、耳を傾けてくれるような大人も先生しかいないしさ。案外、解決策も出てくるかもしれないし・・・セリカちゃんには、それより良い方法出せる?」
「だ、だとしても!今まで私達の事を気に掛けてくれる大人なんて居なかったし、私達だけで頑張って来たじゃない!それを、急に他人が首を突っ込んで来るとか・・・私、認めないから!」
「あ、セリカ!」
”ぐぉえっ!?”
「あっ、ゴメン先生」
激情のままに部室を飛び出したセリカを追おうとして、先生の背中を踏み抜くシロコ。呻く先生を気にしている間に、セリカは姿を消してしまった。
「わ、私、様子を見て来ます!」
ノノミが追いかけようと扉に手を掛ける━━━その直前、外から扉が開かれた。
「おう、お前らどうした?泣きそうな面の黒見、が・・・」
入って来たのは、丁度帰って来たローザスト。驚いてたたらを踏んだノノミを然り気無く支えつつ、部室の中の状況を観察する。
苦々しい笑顔を張り付けたホシノ、驚くアヤネ、地べたに這いつくばりながら息を切らす先生、その背中を擦りながら自分の方を見るシロコ。
「・・・何くたばってんの?先生」
━━━
━━
━
”そっか、そんな事情が・・・”
ノノミがセリカを追い、入れ違いに入って来たローザスト。その場にいるメンバーから、アビドスにのし掛かる重大な問題についての説明が終わった。
”砂嵐がもたらした、5億の借金かぁ・・・果てしないね、そりゃ”
「セリカがあんなに神経質になってるのも、これまで誰も手を差し伸べてくれなかったから。話すら、先生以外聞いてくれなかった」
「何より、今までの環境が悪さしてるな、黒見の場合」
腕を組み、壁に凭れ掛かったローザストが補足を挟む。
”と言うと?”
「あの山盛りの弾薬を見るに、大方不良共の前哨基地でも潰して来たんだろ?ありゃその戦利品・・・違うか?」
「ん、合ってる」
「だろうな。今までお前らは、そう言う逆襲が選択肢にすら上がらない程にギリギリだった。だが、先生が来たら一転。面白いように上手く運んで、目の上のたんこぶだった不良共を
フッ、と冷たく渇いた笑いを溢し、ローザストはテーブルに腰掛けた。
「今までどうにも解決出来なかった問題が、容易く解決した。じゃあ、借金までそうなったら?」
「それは・・・嬉しい、んじゃないですか?」
「そりゃ嬉しいさ。嬉しいけどな・・・同時に、無力感が心臓にぶっ刺さるのさ」
「無力感・・・そっか、そりゃそうだよね」
ホシノの眼が、暗く沈む。そんなホシノには眼を振らず、ただじっと天井を見上げるローザスト。
「自分達が必死になってるつもりでやって来た借金返済が、大人の手に掛かれば児戯のように済んでしまう・・・そんな事になれば・・・全くお笑いだ。過去の苦労全て、只の茶番だ。茶番に、全てを翻弄されて来た訳だ。そんな世界を叩き付けられる・・・そんなのに耐えられねぇわな。俺だってちったぁキツいわ」
”そっかぁ・・・思春期だもんね。失礼だけど、セリカはイナホ程自立してるって風にも見えなかったし”
「そう。黒見は決して弱い訳じゃ無い。だが、まだまだガキさ。脆くて、繊細だ。
そして何より・・・アイツは猫だ。猫は縄張り意識と警戒心が強い。黒見はあれで、一応は会計責任者だ。銭繰りはアイツのテリトリー。そこに土足で入って来そうになったから、警戒して突っぱねた・・・割合としちゃ少なくねぇだろうよ、そう言う感情もよ」
”あー、猫ちゃんってグイグイ距離詰めると嫌われるからねぇ”
「・・・まぁ、説明した手前でなんだけどさ。先生が私達に関わるにしろ離れるにしろ、借金の事は気にしなくて良いからね~?ヘルメット団を退治出来た上に、話まで聞いてくれたんだから、これでも十分だよ~」
「確かに。これ以上は、先生に迷惑掛けたくない」
”へぇ~、そっか、そうなんだ・・・で、それが何か問題?”
「「えっ?」」
立ち上がった先生の言葉に、アヤネとシロコの眼が見開かれる。
”いやいや、乗り掛かった船じゃん?ここで見捨てるなんて、先生云々以前に男が廃るってもんよ!あ、部外者巻き込むのが後ろめたいって言うなら、この対策委員会の顧問になっちゃおっか!身内なら、協力するのも当然でしょ!”
「・・・ハハッ。ったく、どんだけお人好しなんだアンタは・・・スクリューボールにも程がある。いや、それを期待されて着任したのか・・・」
呆れ交じりに笑い、眼の光を細めるローザスト。しかしその声は喜色もまた交じり、若干の楽しさも滲ませる声だった。
To be continued・・・
~キャラクター紹介~
・奥空アヤネ
アビドス1年。常識人オペレーター。
原作では学校からオペレーターをしていたようだが、今作では車を転がして先生を運んでいた。流石に常人に30km徒歩は無理。
ヘルメット団の基地を見て、何かを感じた模様。
・黒見セリカ
アビドス1年。ツンデレ黒猫会計。
武器種が同じな為、シロコとニコイチで運用される。
ヘルメット団のおまいう案件にブチ切れ、銃床で執拗に顔面を擂り潰すように殴りまくった。
借金問題に先生が踏み込んで来た事で凄まじい警戒心を抱き、部室から離脱。色々と難しいお年頃である。
・砂狼シロコ
アビドス2年。ナチュラルボーンアウトロー担当。
趣味を兼ねてサイクリング中にヘルメット団の拠点の位置を下調べしていた。
ヘルメット団にブチ切れ、銃と体術を組み合わせて徹底的に蹂躙。更にヘルメット団が貯めていた使える弾薬を大量にパクり、更に車両と残りの弾薬全てをガソリンで焼却すると言う徹底ぶりを見せる。
・十六夜ノノミ
アビドス2年。弾幕射撃担当。
ヘルメット団に対して流石の温厚な彼女もブチ切れ、100kg超えのガトリングでぶん殴って撃ちまくる暴力の暴風雨と化した。怒らせると怖いママ。
・小鳥遊ホシノ
アビドス3年。委員長。
ブチ切れた際にはシールドの角でド突き回す。
先生に対しては、ローザストと行動していたと言う情報を根拠に少し信用を置くようになっている。
・先生
勘が良い先生。
基本的に生徒の味方ではあるが、それはそれとして必要とあらば「痛くなければ覚えませぬ」が出来る大人。道理に反した事をすれば手痛いしっぺ返しを喰らうと教育するのも先生の務め。
セリカと何とか仲良くなろうと、距離感を考え始める。その為にも、対策委員会の顧問となった。
・カタカタヘルメット団
アビドス近辺に居着く不良集団。
アビドスに攻撃を仕掛けた襲撃班が帰らず、代わりに対策委員会が出張って来た事で仲間が捕まったと気付き、更にその中に賞金首がいるのも知っていたので売り飛ばされたと逆ギレ。
その態度が対策委員会の逆鱗をスクラッチしまくる事となり、徹底的な暴力で叩き潰され弾薬を毟り取られ、挙げ句に車両と残りの弾薬全てを焼却されると言うしっぺ返しレベル50を喰らった。
・叢雲コウ/草薙イナホ/仮面ライダーローザスト
賞金を稼いで来た飛蝗少女。
状況把握と心理予測により、セリカの繊細な反応の本質に当たりを付けた。そこそこ付き合いもあるからこそ出来る事。