相変異 黒蝗   作:エターナルドーパント

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奪還

”おはよ~”

「気安く話し掛けないでくれる?先生の事、まだ認めてないから!全く、朝からうろうろと良いご身分ね」

”おぉっと~、警戒されてるなぁ。セリカちゃんはこれから学校かい?”

「ちゃん付けなんて許した覚え無いんだけど!?私がどう行動しようと私の勝手!先生には関係無いじゃない!フーテンみたいにフラフラしようとどうでも良いけど、私は忙しいの!邪魔しないで!」

”うっへぇ、この子めちゃくちゃ刺してくる・・・ま、まぁでもさ。一緒に登校するぐらい良くないかい?”

「何でアンタなんかと仲良く登校しなきゃいけないってのよ!今日は自由登校だから学校には行かないの!」

”ほうほう。では忙しいとは何用で?”

「教える訳無いでしょ!あーもう気持ち悪い!私はもう行くから、着いて来るんじゃ無いわよ!」

”(・・・まぁ、追わない手は無いよネ)”

 

「ちょっと!何で着いてくる訳!?」

”いやぁ、行き先知りたいからさァ”

「うっさい!先生なんて名ばかりのストーカーじゃないの!」

”失礼な!好きでこんな事してる訳・・・ちょっとある!”

「最悪!!・・・あぁもう良いわよ!行き先言えば着いて来ないのよね?言うからもう追っ掛けて来ないで!」

”え、良いの?やった~!”

「・・・バイトよ。どっかの誰かさんと違って、こっちはのんびりしてる暇は無いのよ!稼がなきゃいけないんだから、とっととどっか行って!」

”へぇ~、バイトねぇ・・・”

 

「何でまだ着いて来るのよ!?バイトって教えたじゃない!」

”教えたからって追い掛けないとは言ってないし、バ先も何処か分かって無いじゃん?つまり!追跡を止める理由は無いのだ!”

「ハァ!?意味分かんない!とっとと消えてこの変態フーテン野郎!ぶっ殺すわよ!?」

 

━━━

━━

 

”ってな具合で見事にフラれちゃってサ。流石に命の危険感じて・・・イナホ?何を・・・”

「こン糞たわけ(クソだぎゃあ)!!」

”あぁぁぁぁぁ!?ギブギブギブギブ!?”

対策委員会部室にて。あっけらかんと言い放った直後、ローザストに吊り天井(ロメロ・スペシャル)を掛けられ絶叫する先生。それを見てシロコは無表情で呆れ、他は苦笑いを浮かべている。

「言ったよな俺は!あの黒猫は距離感にシビアだってよォ!」

”あだだだだ!?いやでもウダウダ考えても良い案が浮かばなくてイテテテテテ!?”

「なら何で俺なり他のメンバーなりに聞かねぇんだよ!そう言うとこだぞお前マジで!」

「ん、残当。ローザストの正論には非の打ち所が無い。今回の先生は適度に痛い目を見るべき」

”既に見てます!シロコさん見て、背骨が!もっと言おう腰が!既に凄く痛い目見てます!”

「ほぉ~随分と余裕綽々だなテメェ?」

”待って何を見てそう思ッガガガガガガ!?”

「まぁ、茶番はこれぐらいにして。流石に先生の背骨も限界だろうし」

「しょうがねぇなぁ。おい、シロコの優しさに感謝しろよ?」

”優しすぎて涙出てきた・・・”

床に下ろされたまま、べっちょりと倒れ伏す先生。その背中をシロコがふにふにと揉み、痛みを和らげる。

「大丈夫?」

”うぅ・・・ありがとうシロコ”

「ローザストもやりすぎ。先生は脆いって言ったのはそっち」

「俺が手加減してねぇとでも?ちゃんと肉体に損傷が残らない絶妙な力加減でやってるに決まってるだろ」

”尚の事タチ悪くない?”

「黒見と追い掛けっこが成立する時点でアンタは相当なフィジカルエリートだから大丈夫だよ」

腰を摩り、シロコに手を借りながら立ち上がる先生。先生からの抗議も鼻で笑い、ローザストはドカッと椅子に座った。

”で、こっちでは何してたの?”

「賞金が出たから受け取って来て、それを分けてた所だ。30万出たからな。働きの比率的に、俺が5万で委員会が25万だ」

”へぇ、結構太っ腹だね”

「まぁ、そんだけコイツらのが働いてたし・・・何より、今んとこ金に困ってねぇからな」

「それイヤミ?」

「ほざけ、イヤミならもっと効果的なの言ってるわ」

「あうっ」

ペシッとデコピンされ呻くシロコ。赤くなった額を摩りながら、ムスッとローザストを睨む。

「まぁ、それもさっき終わった。奥空が帳簿に付けたから、後は黒見に共有すれば完了だ」

”そっかぁ。メールか何かで見て貰う感じ?”

「いえ、今セリカちゃんはバイト中なので、多分見られないかと・・・」

”じゃあセリカのバ先に凸っちゃおうか!”

「それを止めろっちゅうに!」

”痛い痛い痛い痛い!”

「何も反省してない・・・」

先生は肋骨の隙間に指を捩じ込まれて悲鳴を上げ、シロコはそれを見て溜め息を吐く。

「・・・まぁそれはそれとして、腹減ったのも事実だな。もう良い時間だし、この辺でガッツリ食えるのは・・・()()だけか・・・しゃあないな。着いて来い。今から歩いて行けば、丁度良い時間になるだろ。あと、俺の奢りだ」

「ん!行く!」

「おうおう急にイキイキしやがって」

「うへぇ、良いの~?じゃあおじさんも遠慮無くご馳走になっちゃおうかなぁ~?」

「ご、ご馳走になります!」

「楽しみですね~♪」

「ハイハイ、ちゃっちゃと動くぞ~腹ペコ共」

 

━━━

━━

 

「━━━とまぁ、そう言う訳で」

「何でよりによって今日なのよ!?」

柴関ラーメン。アビドス市街地に構える、唯一の飲食店である。そこにやって来た、ローザスト率いる対策委員会一行。彼女達を迎えたのは、他の誰でも無い黒見セリカの悲鳴にも似た絶叫であった。

”へぇ、ここがセリカのバ先だったんだ~”

「セリカちゃんのバイト制服、可愛いですね~♪もしかして、ユニフォームでバイト選んでたり?」

「いやあの、冷やかしなら帰って欲しいんだけど・・・」

「んな訳ねぇじゃん。大将!俺何時ものね!」

「おうよ!」

「普通に客だよ。ほら、俺は良いから案内してやりな」

「・・・はぁ、此方へどうぞ・・・」

げんなりするセリカだったが、金を落とす客を追い返す訳にも行かない。営業スマイルすら剥がれ落ちたくたびれ面で、委員会をテーブル席に案内する。それを他所に、ローザストはカウンター席に座った。

「いやぁ、結構流行ってるね大将」

「おう!お陰さまでな!」

ローザストの声に、柴関の主人である茶柴獣人・・・柴大将が答える。チラリとテーブルを見遣れば、何やら先生を取り合って盛り上がる委員会の姿が。セリカはボケ倒す先輩方を捌きつつ、注文を取っていた。

「にしても、久し振りだなイナホちゃん。元気だったか?」

「元気元気!ただ、最近ちょっと宮仕えに近い立場になったせいで忙しくてさ」

「へぇ。でもまぁ、個人事業主から中々の出世じゃねぇかい?」

「まぁ、そりゃそうだな。舞い込んで来る仕事は増えたけど、前みたく此方を嘗め腐って踏み倒そうとして来る奴ら相手に掛けてた一手間が無くなったのは楽だし。()()()()の給料に回せる金も増えたしな」

「また連れて来てくれよ」

「言われずともさ」

「大将~!チャーシュー麺、塩、味噌、特製味噌の炙り、豚骨醤油!」

「あいよ~!」

セリカが拾ったオーダーを伝えると、柴大将の作業スピードは倍以上に跳ね上がる。鍋で麺を湯掻き、どんぶりにカエシとスープ、アブラを注ぎ、湯切りを済ませた麺を投入してトッピングを乗せる。

みるみる内に山と積まれた野菜と刻みニンニクと極厚チャーシュー。更にその上から調味液に浸けられた黒アブラをたっぷり掛け、ローザストの言った()()()()が完成した。

「へいお待ち!特製柴三郎!」

「うっひょ~!これこれ!頂きます!」

ドンと置かれた、人の頭2つ分の体積すら優に超える()()()。ローザストは割り箸と蓮華を構え、野菜と麺を丼の中でひっくり返す。そして厚さ3cmはあろうかと言う肉塊を摘まみ上げ、顔面を生身に戻して1口で頬張った。

「ん~!んっ?」

「おっ、気付いたか?ちょっと肉を変えてみてさ」

「ん~!」

「ハハハ!気に入ってくれたなら良かったよ!」

鼻歌のような唸り声のみではしゃぐローザストに笑い掛けながら、手際良くラーメンを作って行く柴大将。一方、その食いっぷりを見た委員会の面々は、ものの見事に眼を見開いてフリーズしている。

「・・・すっごい食べるんですね、ローザストさん」

「あれが、強さの秘訣・・・」

「シロコ先輩、あれは流石にちょっと・・・」

”いやぁ、前にすごい量食べるって本人から聞いたけど、このレベルかぁ・・・と言うか、素顔初めて見たな”

「だから俺はカウンターで良いって言ったのさ。こんなの細っこいセリカに運ばせちゃ酷だろ?何せ1杯で6kg超えだからな」

バリッと羽を展開し、体内に取り込んだ熱を放出しながら会話に混ざるローザスト。飛び散らさず、溢しもせず、器用に山のようなラーメンを食べている。

「ほいセリカちゃん!アビドスの子達の分上がったよ!」

「あ、はい!」

「それと、昼休憩入っちゃって良いからね!」

「えっ、良いんですか?」

「良いって良いって」

「は、はーい分かりました」

トレイに丼を乗せ、パタパタと配膳に向かうセリカ。そして届け終わるとトレイを戻し、委員会のいる席にそのまま座った。

”ねぇ、イナホ。ここのお代だけどさ、半分出させてよ”

「え?俺が出すつもりだったんだけど・・・何で?」

”イヤイヤ、流石に教師が子供から奢って貰うってのは宜しくないからサ。大人の顔を立てると思って、ネ?私には()()()()()()もあるからサ!”

「まぁ、そこまで言うなら・・・ん?」

渋りながらも了解したローザストは、先生が取り出した()()()()()()に眼を向ける。見た目は何の変哲も無いクレジットカード。しかし、それが纏う雰囲気に言語化不可能な質量にも似たモノを感じていた。

 

(コウサイド)

 

「どうだ、行けるか?」

”もうちょいだね”

シッテムの箱と睨めっこしている先生の隣で、重く息を吐く。朝方のアビドス高校空き教室。先生と俺が寝泊まり部屋として使っているそこは、ピリピリと空気が張り詰めていた。

登校日なのに、黒見が何の連絡も無しに遅刻・・・奥空やシロコから助けを求められて、俺達は使えるものを総動員して捜索に当たっている。監視カメラがあれば()()()()()のハッキングで情報を抜けたんだろうが、生憎とアビドスにそんな贅沢なモノが稼働している区域はほぼ無い。故に、先生が連邦生徒会のセントラルネットワークに接続して位置情報を拾おうとしている訳だ。

「チッ、適材適所とは言え、こういう時に何も出来ねぇのは気分悪いぜ」

”そんな事無いって。さっき侵入すんの手伝ってくれたじゃん・・・おっ、出た!”

「でかした!」

サルベージした情報を抱えて、部室に2人で駆け込む。丁度全員揃っていたようで、何事かと全員の視線が集まった。

”取り敢えず、最終シグナル地点はここ!”

シッテムの箱に表示された地図を見せる先生。マーカーがセットされている座標に、真っ先に反応したのは奥空だった。

「砂漠化の進んだ、市街地の末端・・・ここって確か・・・」

「廃墟ばっかりになって、治安が保てなくなってるエリアだね」

「以前この地区を分析した際、目立った危険要素は・・・カタカタヘルメット団の集結地点となっている事でした」

「ビンゴだな。大方、人員を売り飛ばされちまった上に脅威度認定が上がって、正面から圧力掛ける程度じゃどうにもならねぇと踏んだか」

「・・・私達の、せい?」

「違う」

悲しげに耳を垂らすシロコに、俺は強く否定を示す。

「悪いのは全部ヘルメット団共さ。お前の示威は何も間違ってねぇよ。さぁ、捕られたもん取り返すぞ!仕事だ仕事!」

「・・・ん!」

頭を撫でてやると、シロコはやる気を取り戻した。そうだ、それで良い。

「この地点、尚且つ本拠地に向かうなら、もう入り組んだ地形は無い筈だ。俺のドゥオルギャリーで行く。ナビゲートは任せろ」

脱いでいたコートを羽織り、メキリと指を鳴らす。

「奴らに教えてやろうか。自分達が何の尾を踏みつけたのか・・・」

ブワリと殺気立つ面々。俺はキーメモリを取り出しつつ、窓を開けて飛び下りた。

 

(NOサイド)

 

「ん・・・ここは・・・?」

ガタガタと揺れる暗闇の中、セリカは眼を覚ます。数秒ボンヤリとアイドリングした後、急速に脳が回転し最後の記憶を思い出す。

「あ、私誘拐されちゃった!?これは・・・普通のトラックに幌を被せただけ?なら、外を見れば・・・」

身を起こし、幌の隙間から外を見る。広い砂漠と廃墟、更に放置された鉄道路線を眼が拾った。

「路線・・・って事はここ、アビドス郊外の砂漠!?そんな・・・こんなとこからじゃ、何処にも連絡取れないじゃない・・・脱出は多分出来るけど、でも対策委員会の皆も、蝗屋さんも呼べない・・・」

手首を拘束していた結束バンドを引き千切りながら、セリカは途方に暮れる。近場を漁って見たが、当然ながら愛銃シンシアリティはそこには無い。

「皆、心配してるだろうな・・・私、このまま何処かに埋められちゃうのかな?誰にも気付かれないように・・・そしたら、私もアビドスを棄てて、逃げたって思われちゃうんだ・・・」

セリカの脳裏に、仲間達の失望と嘆きが浮かぶ。そして、それを聞く事も出来ず、砂の下に埋もれる自分も。

「やだ・・・そんなのヤダっ・・・誤解も解けずに、もう会えないなんて・・・う、うぅ・・・ぐすっ・・・」

重い絶望が、セリカの心にのし掛かる。絞り出された涙を拭う気力も無く、彼女は啜り泣いた。

 

━バコンッ━

 

「え!?うわっちょ、きゃぁぁぁ!?」

突如として響いた爆音。車体は不安定に蛇行し、遂に横転する。

奇跡的に最低限の受け身を取れたセリカは、ぶつけた場所を擦りながら恐る恐る立ち上がった。

「な、何・・・?」

 

━バリィッ━

 

「ひぃっ!?」

「お、いたいた!黒猫発見~!しょぼくれた黒猫発見~!」

「い、蝗屋さん!?」

幌を引き裂いて射し込んだ光に眼を細めながら、効き馴染んだ声に驚くセリカ。そこに新たに足音が近付き、荷台を覗き込んだ。

「ん!こっちも確認した!半泣きのセリカ発見!」

「し、シロコ先輩!?」

「なにぃ~!?可愛いセリカちゃんを泣かせたのは何処のどいつだ~!」

「ホシノ先輩まで!?あぁもう!泣いてない!泣いてないわよ!」

「強がらなくても良いですよセリカちゃん!私達がその涙を拭いてあげますから!」

「うぅ~!違う違う!泣いてない!黙れ~っ!」

続々と追い付いて来たメンバーに囲まれ、もみくちゃにされるセリカ。顔を真っ赤に染めながら、強がり混じりにギャンギャンと吠える。

『セリカちゃん、無事で良かった・・・本当に、心配で・・・っ』

「あ、アヤネちゃん・・・」

 

”アハハハハッ!オーイ皆、それぐらいにしといてあげなよ!セリカが別の意味で泣いちゃうよ!”

 

「先生まで!?と言うか皆、どうやってここまで・・・」

 

”イヤイヤ~、セリカちゃん専属ストーカーの敏腕!嘗めて貰っちゃ困りますヨ?”

 

「胸張って言う事じゃねぇぞそれ」

「ホントよ!最低!変態フーテン教師!」

 

”ハハハッ!良いじゃん、元気出て来たネ!やっぱセリカはこうじゃないと!じゃあ、お片付けと行こうか!”

 

「そうだね。まだ敵陣のど真ん中だし。セリカ、銃取り返しておいた」

「あ、ありがとうシロコ先輩」

「大事な人質乗せた車がひっくり返っちゃったからさ、敵さん真っ赤になって襲ってくるよぉ~」

『敵、カタカタヘルメット団の兵力を多数確認!』

アヤネの言う通り、続々と敵が集まって来る。しかし、有象無象の群れに怯むアビドスと蝗屋では無い。

「さぁ、覚悟しろよ碌で無し共!ここで出逢った不幸を呪え、たった今からここが地獄の一丁目だッ!」

複眼をギラリと輝かせ、ローザストが好戦的に吠える。眼状紋の浮かんだ禍々しい羽を広げ、正面を威圧する彼女の咆哮に、対策委員会の眼も鋭く光る。

「ひぃふぅみぃよぉ・・・たっぷりいるじゃない」

「じゃあ、ダウンスコアでも競おうか」

「良いですねぇそれ♪腕が鳴っちゃいます☆」

「うへぇ・・・全く、おじさん激しい運動苦手なんだけどねぇ?」

「そうか?じゃ、一番槍は頂く、ぜッ!」

包囲しようとするヘルメット団を、ローザストの突貫が喰い破った。ヘルメットの上から右脚のセパタクローキックを叩き込み、最前列の1人を蹴り飛ばす。そこから回転の勢いを活かし、瞬時にローリングソバットへと派生。3人を纏めて凪払った。

「あっ、ズルい!」

「ん。私達も負けてられない」

「惜しまずどんどん行きますよぉ~♪」

ネズミ花火のように暴れまわるローザストに触発され、セリカとシロコも突撃。手榴弾とシロコのドローンから発射されたミサイルで敵陣を混乱させ、ゼロ距離での戦闘を展開する。

セリカが爪先を撃ち抜いて重心が崩れた所にシロコが膝蹴りを叩き込み、後ろに倒れる勢いのまま顔面を踏み抜いてダウン。更に左右に散開し、体術と銃撃で挟み打つように戦列を圧縮して行く。

「一網打尽ですよ~♪」

そうして集められた敵を、ノノミの制圧射撃が薙ぎ倒す。そうしてノノミに集中力を奪われた敵は、再びシロコ達の遊撃の餌食となる。

そこへ、近くの基地から集まってくる援軍。多数の戦車や装甲車が群れを成し、ゾロゾロと進行して来る。

「ほォ?この俺相手に戦車をぶつけるか。笑止千万!一切合切、纏めて喰らうまでよォ!」

再びローザストが突撃。狙いの甘い砲撃を躱し、アームカッターで履帯を切断。そのまま先頭の車両に飛び乗り、それを足場に飛び蹴りを放った。

数十t単位の衝撃を受けて装甲はひしゃげ、砲身はへし曲がり、車高の高いモノは無様に蹴り転がされる始末。生ける砲弾と化したローザストは、ピンボールのように飛び回りながら被害を振り撒き続ける。

「うへ、皆元気だなぁ。まぁ、それだけ怒ってるって事だもんね・・・」

 

”あれ、ホシノは乗り気じゃ無い感じ?”

 

「まさか~。皆があんまり元気だから、譲ってあげてただけだよ・・・何より━━━」

 

━ガィンッ━

 

「私が一番、怒ってるからね」

 

━ドゴムッ━

 

投げ付けられた手榴弾を叩き落とし、上にシールドを被せるホシノ。ヘルメット団側に盾と地面の隙間、口が開くような形で傾斜を付け、炸裂した手榴弾は周囲の砂を舞い上げた。

「なっ!?くそ、何処に・・・」

「正面だよ」

「ごへぁ!?」

突撃したホシノは、傾けたシールドの角を鳩尾に抉り込むように叩き付ける。そして隣の敵の膝を撃ち抜き、跪いた所で顔面にショットシェルを叩き込んだ。

「良くもまぁ私の後輩を拐ってくれちゃったよね。容赦しないからさ、覚悟してよ」

砂漠の熱射にも負けぬ凍てついた怒気を放ちながら、シールドを投擲するホシノ。それは数人の頭に当たり気絶させ、地面に突き刺さった。それを目指して疾走しながら、打撃と射撃を組み合わせて1動作で2人以上を戦闘不能に陥れる。

「ヒュー、さっすがホシノ先輩」

「あのキレの鋭さ、参考にしなきゃ」

 

”それって動きの話?怒り方の話?”

 

「両方」

 

”そっかぁ。じゃ、頑張ってネ!”

 

━━━

━━

 

ローザストと対策委員会の獅子奮迅により、ヘルメット団はいっそ憐れになる程に叩きのめされた。主力戦車、装甲車、その他車両は全損。全員が顔面が変形しているか嘔吐しているか、兎に角無事な者は1人として居ない。

対して、対策委員会側に脱落者は無し。多少の数的有利程度では覆せない圧倒的実力差が、そこにはあった。

「ハァ・・・」

”どったのイナホ”

「ん?あぁ・・・」

しゃがみ込みため息を漏らすローザスト。ドゥオルギャリーの中から降りて来た先生が、そんな沈んだ彼女に声を掛ける。

「いやな?暴れられたのは良いんだけどやっぱ歯応え無さ過ぎてさ・・・不完全燃焼と言うか、欲求不満と言うか」

”ホントに戦闘を娯楽にしてるんだね”

「好きだからな、強いのとやるのも、強くなるのも。まぁ、こんな不良集団如きに旨味を期待するべきでも無いんだろうけどさ」

ドゥオルギャリーのフレームに座り、辟易した様子でボヤく。その様子に苦笑いしながら、先生も隣に座った。

「そう言えば、先生はどうだった?ドゥオルギャリーの中に、つーか格納したライドクウィンケーに人を乗せたまま走らせたのは初めてだったが」

”大変だった”

「おうそんなにか」

翻ったように、今度は先生が顔をげっそりとさせる番となる。

”周りが一切見えないし、此方が操作出来る訳でも無いから動きに合わせて踏ん張るのすら一苦労でさ。せめて外が見えるようにして欲しいかな”

「分かった。じゃあハッチの内側を広範囲モニターにしとくわ。ミレニアムにもコネあるし」

”あ~、そう言えばユウカとも仲良さげだったネ”

「まぁそれはそれとして、今回の帰りはひとまず耐えてくれや。こっから帰んのに、先生の脚じゃ半日は掛かるぜ」

”えぇ~?まぁ乗るけどさぁ・・・エチケット袋積んでる?”

「クウィンケー左後方の収納に入ってる。吐いても良いがぶちまけないでくれよ?」

”善処するよ~ぅ”

沈み込んだ先生の声を掻き消すように、ローザストはドゥオルギャリーのエンジンを再起動する。その音を聞き、対策委員会は次々と車体の周りに集まって来た。そして、その中から怖ず怖ずとセリカが歩み出る。

「あの、蝗屋さん」

「おう、どうした」

「それと、先生も」

”ハイハ~イ?”

「その・・・今回は、あっ・・・ありが、とう・・・」

恥ずかしそうに顔を赤く染めながら、感謝を伝えるセリカ。その様子に、先生とローザストは顔を見合せ・・・笑いあった。

「・・・フッ」

”ハハハッ”

「ちょ、何でよ!今の笑う所じゃないでしょ!?」

「おう、すまんすまん」

仮面の下で微笑みながら、セリカの頭をポンポンと撫でるローザスト。その手付きは優しく、凶悪な攻撃力と裏腹に柔らかい。

「どういたしまして。これからも、遠慮無く頼ってくれて良いぜ?」

”そうそう!生徒のピンチを助けるのは、先生として当たり前の事だしネ!”

「・・・うん!2人とも、ありがとう!・・・所でその、蝗屋さん?そろそろ、耳を捏ね回すの止めて貰えないかしら?」

「おう、あんまり可愛かったもんでついな。よし、帰るとするか!先生、乗り込みな!」

”ハァ・・・了解”

「ホントに嫌そうだな」

忘れ物が無いかを確かめ、撤収準備を始める。先生はシッテムの箱をスーツの内ポケットに収納し、ライドクウィンケーに股がってハンドルを握った。

”いやぁ、にしても・・・ツンがデレに転じる瞬間は素晴らしいですねェ!”

「言わぬが華って概念を知らんのかこの歴史的バカタレが!」

 

━━━━━

━━━━

━━━

━━

 

「ハァ、ハァ・・・クソ!何なんだよ、アイツら!?」

夜。ゴーストタウンにある、ヘルメット団のアジト。刺すような冷たい風の吹き抜けるその場所で、逃げ回る手負いの不良が1人。

 

━ドガンッ!━

 

「がはっ!?」

背中に大口径のライフル弾が直撃し、倒れ伏すヘルメット団の下っ端。その弾丸を放った張本人が、硬い足音と共に姿を表す。

「ま、まさかアビドスの!?てめぇら、仲間を売り飛ばすだけじゃなくこんな・・・!」

「ハァ、全く。こんな不潔で変な臭いまでする場所がアジトだなんて、冴えない事ね。良いわ。あなた達を、この仕事から解放してあげる」

「な、何だと!?あぐっ・・・」

「冴えないのはその頭も、なのかしら?」

スナイパーライフルの銃口を押し付けられ、呻く下っ端。そんな彼女に、無慈悲な宣告が下される。

「あなた達は、現時刻をもってクビよ。今から、私達がアビドスを引き受けるわ」

「お、お前は・・・お前ら、何者だ・・・!?」

獲物からの問いに、彼女は答える。()()()()()()に手を添えて。

68(シックスティーエイト)。報酬次第でどんな仕事も請け負う、最強最悪のアウトロー・・・便利屋、68よ」

 

━ドガンッ!━

 

再び響く銃声。自慢のヘルメットを貫かれ、下っ端は意識を手放す。

「はーい!これでお片付け終わり~!」

「大した事無かったね。さて、ここからどうするか・・・」

「さ、流石ですっ!アル様っ!」

仲間達が終結し、お互いの無事を確認し合う。その中でリーダーは帽子を被り直し、夜空に浮かぶ月を見上げた。

「待っていなさい、アビドス。私の、私達の獲物・・・」

 

To be continued・・・




~キャラクター紹介~

・先生
どうにもゴリ押し癖がある教師。多分座右の銘は『押してダメなら破城槌』であろう。
まだ関係を構築しきれていないセリカに対し執拗なストーキングを敢行し、ローザストからのロメロスペシャルを喰らう羽目に。
その後、ローザストの案内で柴関ラーメンにて昼食。ここで大人のカードを初めて使用する。
セリカが誘拐された際には、バレなきゃ犯罪じゃねぇんだよとばかりにシッテムの箱からセントラルネットワークに無断アクセスし、セリカのスマホの位置情報を割り出した。そして何故かストーカーの肩書きの誇りを持っている。どう言うプライドなのだろうか。
ドゥオルギャリーの中に格納されているライドクウィンケーにしがみついて急行したが、本人曰く乗り心地は最悪だと言う。

・黒見セリカ
誘拐されたツンデレ黒猫。
信用出来ない大人に追い回された挙げ句バイト先に突撃を喰らった。先生に銃を向けてないだけまだ自制出来ている。
誘拐された際には、自分が裏切り者となってしまう不安から泣いてしまう。が、無事救助された上にその泣きっ面をバッチリ見られてしまった。
原作よりも対策委員会のキレ方が激しかった為か、若干素直になるのが早い。

・叢雲コウ/草薙イナホ/仮面ライダーローザスト
最優秀暴力装置な飛蝗少女。
早くも先生のやらかしに関節技でお仕置きをカマすのが恒例行事になりつつある。先生の身体を握り潰さぬよう細心の注意を払いつつ、容赦はしない。
柴関ラーメンには何度か通っており、専用メニューの特大ラーメンを特別に作って貰っている。食事の時は放熱能力の問題もあり、頭部のみ変身解除して食べる。
セリカが拐われた際、実はシッテムの箱からセントラルネットワークへのバックドアの作成をキーメモリで助けており、またセリカ奪還直前にもキーメモリのナビゲートにより最短距離を突っ切っていた。
対人戦闘も然る事ながら、対車両戦に於いては無類を通り越して無法な強さを誇る。

・砂狼シロコ、奥空アヤネ、十六夜ノノミ
烈火の如くキレた方の対策委員会。
ストライカー2人はローザストの教えもあって攻撃が苛烈なものとなり、ヘルメット団を鎧袖一触とばかりに薙ぎ倒している。

・小鳥遊ホシノ
静かにキレた委員長。
他のメンバーのキレ方が爆弾だとすれば、此方は完全燃焼のガスバーナーのような怒り方。攻撃のキレが増し、シールドとショットガンと体術のコンビネーションで抵抗を許さず殲滅する。

・柴大将
アビドスの数少ない名所、柴関ラーメンの店主。
可愛らしい見た目とは裏腹に、その調理技術と効率化は見る者を圧倒する。ローザストの「いつもの」を5分足らずで仕上げる腕前。

・カタカタヘルメット団
虎の尾の上でタップダンスし、龍の逆鱗をスクラッチしてしまった不良集団。
仲間を警察に売り飛ばされた上に逆襲を受け、更に前哨基地まで破壊された事で危機感を覚え、正面戦闘から人質戦法に切り替えようとした。結果、モノの見事に叩き潰され、作戦は失敗。更に泣きっ面に便利屋と言う特大スズメバチまで飛んでくる始末である。

・便利屋68
アビドスに迫る次なる脅威。
原作と違い、リーダーは帽子を被っているようだ。因みに、悪口のキレも数段鋭くなっている模様。
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