相変異 黒蝗   作:エターナルドーパント

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変態

(飛蝗怪人サイド)

 

「・・・ハァ」

何だ・・・?意識が、ボヤけやがる。けど、腹は減ってない・・・ん?

「・・・あーあ、こりゃ派手に食い散らかしちまったな」

ふと我に返り見渡すと、周囲に散乱した軍用レーションとおぼしきパック飯の残骸。しかしよく見れば米の一粒も残っていない辺り、正気は失っても日本人根性は消えなかったらしい。我ながら流石と言うべきか。

「まぁ取り敢えず、喰ったら力が湧いてきたな!」

軽く10人前は平らげたらしく、鳴りを潜めた腹の虫と反比例するように身体の底から湧き上がる活力を感じる。

「つーかよく見たら敵兵が何人か延びてんな。喰いながら反撃するとは、虫にしちゃ器用な事をしたらしい」

段ボール箱の壁に隠れていたが、ボロボロになった推定サイボーグ兵が倒れている。何か腕の装甲とかに明らかに咬み千切られた痕跡があるが・・・俺、金属飲み込んでねぇよな・・・ッ!

 

━ガガガガガッ!━

 

「くそッ!もう喰い終わってやがる!」

「俺らの飯をよくも!」

廊下に出たら即座に銃撃。またサイボーグ兵か。増援を連れて来たらしく、今回は大柄な盾持ちまで居やがる。

ただ、小銃弾では衝撃は来ても痛みは無いな。どうやらこの生体装甲は小口径では貫けないらしい。良い事を知ったな。

しかし、さっきと違ってシールドの陰から撃ってくるせいで圧迫感があって鬱陶しい。丁度腹も膨れた所だ。食後の運動と洒落込もうか。

「き、効いてねぇ!効いてねぇぞ!?」

「びくともしねぇ!どうなってる!?」

どうやら奴さんらも、豆鉄砲じゃ俺に通用しない事に気付いたらしい。動揺が広がり、士気の乱れが狙いの乱れに直結する。

「とァ!」

前方に飛び出し、小手調べにシールドを蹴り付ける。流石は大盾兵と言った所か、ノックバックはしつつも受け止めきって見せた。成る程、このぐらいは受け止めてくれるか。その膂力や良し。しかし・・・

「弐式━━━━」

 

━ゴガンッ━

「げうっ!?」「ごはっ!?」

 

「━━━━ホッパーキック!」

側面からの急襲には、やはり脆弱。横から延髄斬りを撃ち込んで意識を刈り取り、更に着地点を重心から後ろに置く事で落下の勢いを前に向け、歩兵に対してロケット加速を乗せた肘鉄を撃ち込む。

「ふぃ~、これしきなら恐るるに足らず。やっぱ明らかに強いな。何だろうなこの強さ」

さっきから思ってたが、妙に暴力への躊躇が死んでる気がする。敵意を向けられているからか、それともメモリがその辺りをオミットしてやがるのか・・・っと。

「クソッタレめ!やってやらァ!」

「撃て撃て!撃ちまくれェ!」

「また貴様らか。正直喰い飽きたぞ」

追加戦力が投入され、アサルトライフルがバカスカ撃たれる。代わり映え無く食傷気味だ。俺の強さの物差しにならん。

「参式。ホッパー、キック」

 

━ズドンッ━

 

「ごへぁっ!?」

ステップで距離を詰め、右のハイキック。吹っ飛んだ歩兵が後方の味方を巻き込み、3人ぐらい纏めて堕ちる。

「ちょっとは格好付けてみるかね?」

余裕が出て来たので、次の標的に対して勢い良く飛び掛かる。そして両足を開き、肩に膝を掛ける事で脹ら脛のスパイクで敵をホールド。そのまま上半身を勢い良く後ろに倒し、重心を崩して頭から落とした。

「蝗式フランケンシュタイナー、ってな。中々上手く出来るもんだ」

そしてついでに新たな発見。こう言う派手なパフォーマンス技は実用性に欠けると思っていたが、見栄えのする技で敵を倒せば相手はビビって隙が生まれる。

「オラッ!」

「ごほぁ!?」

最後の〆は肩掴んで膝蹴り。これで第2陣も殲滅だ。

「これ以上来られるのも面倒クセェ。とっとと逃げるか・・・」

エアロディテクターのお陰で、袋小路の停滞した空気と出入り口のある気流の見分けは付く。隔壁が閉鎖されても、迎撃用の尖兵の気配で進まれたく無いであろう方向も特定出来る。

「にしても、感覚の拡張に認識が完全に追い付いてるな。どうなってんだ俺の適応力は」

ワラワラと湧いてくる雑兵共を蹴り、殴り、投げ飛ばしながら、出口があるとおぼしき方向に進み続ける。途中階段は全段飛ばしで駆け登り、閉じた隔壁は大盾を奪ってフルスイングで叩き付ければ破壊出来た。どうやら汚染防止を重視した突貫建設物だったらしい。

「・・・おっ」

漸く開けた場所に出たと思ったら、左手方向にスモークガラスの自動ドア。ああ言うのは研究室か玄関かと相場は決まっている・・・少なくとも俺の中では。

そして、奴らは俺の動きは認識出来てる筈。99%待ち伏せされてるな。

スモークは濃過ぎて真っ白なせいで何も見えない。そしてこのガラス、表面は滑らかなようで、俺の姿が鏡のようにクッキリ写っていた。

「・・・あー、辛うじてシンさんとか黒殿っぽいが・・・ライダーっぽい造形ではないなぁ・・・」

どう見てもライダーより怪人側。つぶらな複眼はチャーミングだが、それ以外が生物的かつ野性的に過ぎる。ザ・飛蝗怪人って具合の造形だ。

「まぁまんまドーパントじゃないのは良いが・・・今になって思えば、変身する時のサウンドもドーパントのだった気がするなぁ。それでか?空腹で意識飛んだの」

まだ仮面ライダーの仮面を被りきれていないような気がする。畏れ多いとは思うが、そうしないとここ、キヴォトスだったかが滅ぶらしい。背に腹だな。

「さて・・・どう考えても扉が開いた瞬間を狙って来るな。こっちが気付いてると悟らせないように自然に近付いて・・・い゛っ!?」

自動ドアのセンサーが反応し、自動ドアが左右に開く。その瞬間、尾葉から激痛にも似た刺激が脊髄を駆け抜け、脳をぶっ叩いた。

 

━ドシュオッ ドゴォンッ!━

 

「あぶっ、あっぶな!?」

撃ち込まれたのはまさかのロケット榴弾。咄嗟に天井に跳んでやり過ごしたが、もしも直撃したら・・・考えたくねぇな畜生め!

「い、生きてる・・・!」

「当たりめェだアホ垂れ共!何処に自分の施設ごとロケランぶっぱなすバカがいるってんだ!」

天井から床に降り、バカ共に指を突き付け叫ぶ。しかし、やはりこの扉は玄関だったらしい。夜で暗いが、空気の質が明らかに屋内と違う。

「全く、良くもまぁ、好き放題やってくれたものだな」

「あ?」

ズラリとならんだ兵士の後ろから、盾持ちと同じぐらいガタイの良いロボが出て来た。何か場違いな仕立ての良いスーツを着てる辺り、ここのボスか何かだろう。

そんでもって、ボスが軍服じゃなくてスーツって事は、何処ぞの国の正規軍隊って訳じゃ無さそうだな。マフィアの類いか何かか?

「君の身柄を、母校の借金4億円分の減額と引き換えに買ってやった恩人は、何処の誰だったかな?」

「何言ってんだテメェは。先に銃向けて来といて被害者ヅラか?撃って良いのは撃たれる覚悟がある奴だけだぜ?つか誰だテメェ」

「・・・ほう?」

何やら考え込むように顎を撫でるボスロボ。

つーか母校の借金?母校って学校だよな・・・何で学校が借金のカタに生徒売っ払ってんだ?訳が分からん。発展途上国かよ。そんでそれを受け入れてる辺り、コイツらやっぱヤクザ者だな。

「まさか忘れてしまったとは言うまいな?」

「何についてだよ、主語を抜くんじゃねぇ。相手が自分の意思を100%汲み取ってくれるなんて甘えてんじゃねぇぞ推定裏社会人」

「中々に強気じゃないか、この多勢に無勢の状況を前に」

ボスロボの言葉に、周囲の雑魚共が銃を構える。その数、凡そ15。その後ろにいるのも合わせると、60はいるか?

「・・・あぁ~、確かにそうだな。コイツは酷ぇ多勢に無勢だわ」

「ならば少しは大人しく「オイ、何を愉快な勘違いしてやがる」・・・何だと?」

ゴキリと首を回し、腰を落として弓を引くように腕を絞る。

「全く、笑かしてくれるぜ━━━━此方の多勢にそっちの無勢で、勝てる訳ャねェ~だろ」

 

「撃てェ!」

瞬く間に吐き出される鉛の雨。小銃弾ならそこまで痛くねぇ。が、鬱陶しいのは変わり無い。とっととお片付けと行こうか。

「ッシレァ!」

引いた右脚を踏み締め、蹴ると同時に右手を突き出す。筋肉と装甲によって増した腕の重量が、絶大な速度を以て身体を引っ張った。彼我の距離は刹那に詰まり、俺の右手は敵兵先頭の首に掛かる。

「がっ!?」

「オラッ!」

「あがぁあッ!?」

ローキックで膝を刈り折る。崩れ落ちたコイツから銃をパクりつつ、更に片手でジャイアントスイングの如く振り回して敵集団に投げ付けた。

「あ゛ぁァァァァァ!?」

円盤投げのように吹っ飛んだ雑魚は4人程の仲間を盛大に捲き込んで戦闘不能。向こうが混乱した一瞬の隙に、俺はパクったライフルを単発に切り替えて敵を狙った。

 

━ガンッガンッガンッ━

 

3発射撃。命中弾無し・・・

「・・・え、そんな事ある?えぇい!」

今度はフルオートに切り替え、やたらめったらに撃ちまくった。ワンマガジンすぐに撃ち切り、エジェクションポートがホールドオープンされる。命中弾、無し。

「だァ~!畜生め!駄目だドク当たらん!」

自棄っぱちになって思い切りブン投げたら盾持ちの頭に当たりやがった。何でだよ畜生め。

やっぱり俺には肉弾戦しか無いっぽいか。

「まぁ良い!俺の手足は大砲じゃい!」

再び敵方に突貫。姿勢を腰下まで落とし、左オーバーハンドフックで肋骨を撃ち抜き殴り倒す。続いて隣に居た奴に前蹴りを入れ、跳び横蹴りで追撃。

「参式ホッパーキック」

後方から撃ち込まれたロケランを尾葉で関知し、カブトキックで迎撃。跳ね返った砲弾は3人ぐらい巻き添えにして爆発した。

「どうしたよ、こんなもんかいボスロボさ━━━」

 

━ガオンッ!━

 

「━━━ごあっ?」

なんだ、何が起きた・・・?倒れた、立てない・・・力が入らん・・・

「ふん、私がただ貴様を気持ち良く勝たせていただけだと思ったか?貴様が気取った魅せ技を好むのは先程の観察で理解した。後はそれを誘発してやれば、この通り。まんまと格好の的になってくれたな?」

「クソ・・・乗せられたか・・・!」

ドライバーからメモリが抜け落ちる。ガンガンと頭が割れそうな激痛に襲われ、三半規管が衝撃でやられたのか眼が回って仕方無い。何とか立とうとするが、手を上げれば確実に転倒すると感覚で分かる。

「全く、手こずらせてくれたな。この損害は、君の母校に請求させて貰おうか?」

「ケッ、ボケも休み休み言えよ。さっき俺の身柄買ったっつったのはテメェだろうが。なら俺の行動に対する責任は学校にゃ発生しねぇだろうがよ」

「ほぉう?少しは頭が回るらしい。だが、どの道あの学校は終わりだ。あのバカな生徒会長は死に、君は我々の手の内。残るは腕っ節しか能の無い小娘━━━君の級友、おぉッと失礼。元、級友の1人だけだ。そして既に自治区の98,7%は買収済み。分かるか?もう後は無いんだよ。既に将棋やチェスで言う王手(チェック)が掛かっている訳だ」

自慢気にベラベラと喋るボスロボ。だが、ソコソコ重要な情報が引き出せた。

「何ともまぁ、臆病な事だなァ?」

「・・・何だと?」

咳き込むように笑いながら挑発し、同時並行で頭の中を整理する。

「お前、こんなに立派な軍隊持ってて、しかも俺を落とせる位に頭も回るよなぁ?あぁ流石だよ。調子乗ってる所を諸に足元掬われちまった。恥ずかし過ぎて火が出るぜ畜生め」

まず、学校と言う枠組みが俺の認識よりかなり大きい。自治区と言う単語が出たと言う事は、学校と言う組織は土地を支配する貴族に相当する権力があると言う事。更に、奴が学校勢力のメンバーとして出したのは生徒会長と俺の級友とやら、つまり生徒だけ。どうにも理解し難いが、土地の自治を学生が行っていると言う事か。

「けどよぉ、あんまりにも回りくど過ぎるだろ」

更に、その学校を借金漬けにして土地を巻き上げていると言う地上げ稼業の情報。俺の認識にチューニングするなら、困ってる貴族に高利貸しを吹っ掛け、その返済と称して土地を奪ってる訳だ。土地が無くなりゃ収入が減る。収入が減りゃあ金は返せず、また土地を売るしか無くなる。この良く出来た悪循環の果ては、その貴族を丸ごと接収して暗黒メガコーポの大勝利って寸法だ。

要するに、コイツらは子供相手に経済戦争を吹っ掛けてやがるって訳だ。だがこんだけの武力がありながら、コイツ等は実力行使で丸ごと差し押さえない。それは何故か?

考えられるのは2つ。まず、小国を侵略戦争で滅ぼすに等しい差し押さえを強行すれば、外聞が悪くなり袋叩きにされると言うパターン。ショッカーの前身を束ねたあのチョビヒゲですら、態々自分の施設を破壊すると言うマッチポンプを組んでまで、向こうが先に攻撃を仕掛けて来たと言う反撃用の大義名分を捻出した。第2次大戦時でそれなんだ。ここまで新しい銃を揃えられる社会なら、侵略戦争への反感が強いってのは自然な話。

そして、もう1つ。俺と言う存在が居る事で実証出来る、俺の常識じゃ考えられない仮説━━━━

「そんなに俺とタメの小娘とやらが怖いかよ?」

たった1人の生徒相手に、それを押し潰せる武力が存在しないと言うパターン。

普通なら有り得ない。だが、ここに俺が居る。数十倍の物量不利をひっくり返して暴れ回れた埒外が、ここに居る。

ならば、絡め手とは言え俺を下したコイツを以てして、()()()()()()()()と言わせしめた同級生も、俺と同等以上の大立ち回りを演じられると言う事に他ならない。ベルト怪人と同等の生身の学生とか考えたくないが、俺だって体内のエネルギーからドライバーとメモリ作って変身してんだ。ライダーのスペックと喧嘩が成立する子供がいても不思議じゃない。

「ッ~!貴様、言わせて置けば!」

「おーおー怒っていらっしゃるゥ?落ち着けよォ、大の大人がみっともねぇぜ?ガキに図星突かれた程度でよ!」

首を掴み上げられるが、まだまだペラを回し続ける。俺の仮説は当たったらしい。表情が変わらない筈のボスロボも、心成しか顔が赤くなってるように見えちまうね。

「みっともねぇ上に下衆野郎と来りゃあ、コイツぁどうにも救い用がねぇな!」

「下衆だと!?子供の分際で知った風な口を利きおって!」

「下衆だろうがよ。ガキ相手に戦争仕掛けて、ねちねちネチネチ借金で弱らせて、最後は自分で呑み込もうってか。まるで毒蛇だな」

俺を掴み上げるボスロボの腕を、此方が掴み返す。関節部を締め上げれば、向こうの握力が弱まった。

 

「そう言う下衆野郎にゃあな、負ける訳に行かねぇんだよ。自分で()()()()を背負っちまったからにはよォ、眼ェ回した程度じゃ立ち止まれんのよ!」

 

熱が身体を巡る。心臓が煩い程に脈打つ。ギリギリと握り締めたメモリが、この拍動に共鳴するように輝いた。

「な、何だ!?」

「おぉ、漸くお目覚めかい。いや、腹据えるのが遅かったのは俺の方かな」

手の中のメモリは、化石のようなデザインからは一変。フレームはダークグリーンのクリアパーツとなり、先端の端子は銅色から銀色に変わっていた。

【HOPPER!】

「変身ッ!」

【HOPPER!】

頭上のヘイローから、真っ白な蒸気が吹き下ろす。その蒸気に包まれて、俺の身体は変わっていく。

新たな皮膚、新たな筋肉、新たな神経、新たな感覚。

一新されたそれら全て。しかしそれらも、全てが間違い無く、俺のものだ。

「貴様は・・・何なんだッ!」

 

「俺は━━━仮面ライダーだ!」

 

(NOサイド)

 

白い陰りが晴れて、姿が露になる。鋭い爪の生えた脚が、地面を踏み締めた。

生々しい生物的な印象はそのままに、複眼は緩やかなアーモンド型のツリ目に。額には赤い水晶体(Oシグナル)が輝き、その左右から生える触覚は頭蓋に沿って後頭部に向けて伸びている。前腕には生物的なアームカッターと人工的なガントレットが共存し、脚は生体工学的な合理性を感じさせる分割装甲を纏いつつ、指は虫に近い二指から人に近い五指となっている。

体表は漆黒ではなくダークグリーンを基調とし、装甲は淡い青の構造色で縁取られる。そして脊髄から繋がるように肩から手首、腰から足首まで、赤いラインが走っていた。

胸部装甲(コンバーターラング)の側面に配置された気門から、発煙筒のように蒸気が噴き出す。真っ赤な複眼がギラリと光り、ムエタイのそれをベースとした構えを取った。

「仮面ライダー?どんな創作か妄想かは知らんが、コイツには勝てん!」

理事が指を鳴らすと、後方にあったコンテナから大型のロボットが姿を表す。

大型の逆関節脚に、大口径ガトリングキャノンを備えた武器腕。更に背部には大型砲を2門背負った、重装砲撃決戦兵器。

「我がカイザーPMCの最新兵器、その名もゴリアテ!貴様のような埒外であろうと、容易く擂り潰してくれる!」

「ハァ・・・悲しいなァ」

大きく溜め息を吐く仮面ライダー。その様に理事はニヤリと笑うが、次の瞬間真逆の顔をする事になる。

「あんなカッコいいのをぶっ壊さなきゃ駄目とは」

「貴様ッ!嘗め腐るのも大概にしろッ!やれ、ゴリアテ!お前らもだ!撃て!」

ゴリアテの後方から雑兵が射撃を初め、当のゴリアテも腕のガトリングを回転させる。ライダーは地面を母趾球で踏み締め、一気に駆け出した。

「1つ、2つ」

ゴリアテの股を抜け、狙いは2人並んでいる敵。左側の肩に右ボレーキックを撃ち込み、その反動を利用して途切れる事無くもう片方の頬面にソバットを入れる。

「ん、少々手応えが重いな。出力を抑えて安定を取った形態か、成る程」

自分の攻撃力の調子を分析しつつ、一斉射撃を側宙で回避した。飛んでくるロケットランチャーを蹴り返し、遠距離狙撃はタイミングを合わせてガントレットでパリィ。

「嘘だろ、スナイパーライフルを!?」

「3、4」

「おがッ!?」「がほぁっ!?」

膝を抜き、重心を落として震脚。同時に腕で腹を突き、落下する重量を敵に流し込む。次いで腕を横振りして重心を引き、横滑りに脚力を合わせてショルダータックルを叩き込んだ。

そのタイミングで、ゴリアテの照準がライダーを捉える。撃ち出される大口径砲弾を前に、ライダーは大きく後ろにジャンプして回避した。その先には、丁度大盾持ちがいる。

「そらよっ!」

「ぐおっ!」

盾持ちの背後に着地し、膝裏を蹴り抜いて踏ん張りを崩す。そこに襲い掛かる砲弾に崩れそうになる防御を、ライダーは脚で支える。フレンドリーファイアを検知してゴリアテが射撃を中断すると、ライダーはそのまま吹き付けるように踵を頭に落として盾持ちの意識を刈り取った。

「5つ目っと」

「えぇい!何処までも鬱陶しい!ゴリアテのセーフティを解除しろ!焼き払━━━」

 

「そこまでです」

 

「あ?」

業を煮やした理事が奥の手を切ろうとする直前、そこに待ったが掛かる。声の出所は、ボロボロの施設正面玄関。真っ黒なスーツを着込んだ異形が、ネクタイを弄りながら歩み出していた。

「黒服!貴様、今更何を!」

「いえ、ここで止めておいた方が賢明です。彼女には、有象無象では歯が立ちませんから」

不服そうな理事を宥めるように言いながら、しかし黒服の視線は仮面ライダーから外れない。

「そもそも、彼女の身柄を買い取ったのは私です。彼女の持つ恐怖の出力の程・・・それを観察する為に口出ししませんでした。結果、今し方彼女は恐怖の上から新たな神秘を纏った。素晴らしい結果です。ですが、彼女の力をここだけで測るのは早計。故に、彼女の件は私の方で持ち帰らせて頂きます」

「ふざけるな!我々を彼処までコケにしたヤツを、みすみす見逃せと言うのか!」

「無論、対価はお支払しましょう。今回の実験で出た損害分全ての補填、と言う所で如何でしょうか。そちらも懐を痛めたくは無い筈。それとも、ここから更に彼女に暴れさせて、その被害総額を経費で落としますか?上層部からの目見が、少々厳しくなるかもしれませんが・・・」

「ッ~!えぇい、好きにしろ!何処へなりと持って行け!」

「ご理解ご協力、感謝致します」

そう言ってペコリと一礼し、改めてライダーに向き直る黒服。ライダーは脚を盾持ちから退け、黒服に正対した。

「勝手に話纏めてくれたとこ申し訳無いが、俺はお前にご理解ご協力するたぁ決めてねぇぞ。つか、この下衆を放っとけってのか?」

「確かにそうです。しかし、彼は大企業の重役。消えれば、不具合は民間人まで伝播します。何より叢雲コウさん。貴方、所持金の方は?」

「うぐっ」

「と言うか、ここは砂漠のど真ん中ですが、市街地への出方は分かりますか?」

「うげっ」

「更に言うと、一般常識も無いのではありませんか?もっと言えば、生身の貴方は今全裸でしょう」

「えっそうだっけ?気付かなかった」

「まぁ、この状況です。致し方ないでしょう。さて、無一文で行く宛も無く、進むべき方角も常識も分からない。そんな貴方に、決して断れないご提案を1つ。

私の元に来ませんか?」

あくまで紳士的に、手を差し伸べる黒服。対してライダー、コウは、仮面の裏からでも分かる程に顔を顰める。

「勿論、ご承知頂いたとて対価等は発生いたしません。既に貴方の身柄は私のもの。その契約は成立済みです。これは私が、自分の所有物を持って帰るだけの事」

「いや・・・アンタ、何と無く嘘は吐いて無いっぽい気はするが・・・契約の時に、結構大事な事を相手から質問とか指摘されるまで隠すタイプだろ。そんな臭いがする」

「クックックッ、中々な言われようですね。しかし、リテラシー意識は獲得していると・・・えぇ、貴方の言う通りです。私は嘘は吐きません」

「あぁそうかい・・・着いて行った場合、俺の扱いは?」

「そうですね。貴方の持つ、恐怖と共存する特殊な神秘の観測実験、その他諸々の実験に付き合って頂きます」

「・・・じゃあ、今から俺と新たに契約しろ」

「ほう。と言いますと?」

「お前の契約した叢雲コウと、ここに居る叢雲コウは別物だ。人格が連続してねぇ。だから、お前の持つ所有権云々は一旦ノーカンだ」

「!クックックッ、成る程そう来ましたか。良いでしょう。では、契約については明日執り行います。今夜は我々の拠点でお休み下さい。衣食住を揃えて対応させて頂きます」

「それ人生丸ごと売っても返せねぇ値段で、とかじゃねぇよな?」

「クククっ、良い警戒心ですね。えぇ、今回は無償で提供させて頂きますとも。身体的拘束も致しません」

「そうかい・・・じゃあ、乗った」

差し出された手を、コウは取る。黒服はポケットから端末を取り出し、何かを手早く入力した。

すると、間も無く黒い車が到着する。運転席は空っぽであり、黒服は助手席の扉を開いた。

「やれやれ、考える事が多くて疲れたぜ」

「クックックッ、あの状況で冷静に情報を分析する様、見事でしたよ」

車に乗り込んでシートベルトを締め、愚痴るようにぼやくコウ。黒服は彼女の精神力を褒めつつ、車を発進させた。

 

To be continued・・・




~キャラクター紹介~

・叢雲コウ
カイザーの基地で大暴れ。その結果、飛蝗怪人から遂に仮面ライダーへとランクアップを果たした。
成り行きとは言えど仮面ライダーの名を背負う事になった為、1度目を回した程度では負けられないと奮起。無責任で楽な怪人の姿を捨てた。
ライダー態はベルト怪人態よりも攻撃力が下がっており、その分の出力を安定性能に回している。デザインはBLACK SUNやシンをベースに、目元がギルスのようなツリ目となっている。
また、色は真っ黒からダークグリーンになり、群生相ベースから孤独相ベースに置き換わった。

・カイザー理事
今回は飛蝗怪人もとい仮面ライダーに一杯喰わされた。
政治戦ではかなり強いが、そのプライドのせいで前線に出るとしくじるタイプ。

・黒服
今回1人だけ全得してる悪い大人。
人格が変わったから契約はノーカンと言うコウの詭弁を快く受け入れ、彼女を連れ帰る事に成功した。
やり口はまどマギのキュウべぇに近い。

~アイテム紹介~

・ガイアドライバーrex
今回の覚醒に伴い、ドーパントメモリと純化メモリの両方に対応できるようになっている。

・ホッパーメモリ
純化によってライダーが使う規格へと仕様変更。出力リミッターを設け、マキシマム時にのみその制約を解除する。

・ゴリアテ
カイザーの決戦兵器。
背部のキャノンは原作と違い実弾兵器で、エネルギー砲はまだ搭載されていない。
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