「何なのよ、これッ!?」
セリカの絶叫が、朝の教室に木霊する。握り締めた拳を机に叩き付け、大きな音が鳴った。理由は明白。ホシノが残して行った、置き手紙だ。
内容を要約すれば、『自分が身売りして借金を減らすから、後は頑張って。もしも敵対したら、私のヘイローを破壊して』と言うもの。激怒されて当然の、酷く独り善がりなメッセージだった。
「私が助けに行く。対策委員会には迷惑掛けられない。1人で行って・・・」
「待って下さい!まずは足並みを揃えないと━━━━」
━ドゴォンッ!ドガァァンッ!━
「な、何!?」
「爆発音!?」
「・・・もう来やがったか」
突如響いた轟音。それも1発では終わらない、継続的な炸薬の咆哮。アヤネが爆心地を調べようとする間に、コウは窓を開け飛び出した。
「これは・・・!」
PCが映し出したのは、アビドス市街地を無差別に蹂躙するカイザーPMCの兵士。その数は膨大で、百人単位の物量で雪崩れ込んでいる。
”ヤバいヤバい!アイツらマジに潰しに来たよ!”
「兎に角!私達で迎撃と、平行して市民の皆さんの避難も・・・」
「ターゲット確認!」
「っ!」
スタートダッシュすら出来ない状況に、敵の刺客。敵兵が銃を撃つ寸前、シロコがその銃口を蹴り上げた。更に崩れたバランスを利用し、蹴り足を振り下ろす大股の踏み込み。全体重を乗せた銃口を、がら空きの腹に叩き込んだ。
「ぐほぁっ!?」
「斥候がもうこんな所に!」
「シロコ先輩ナイス!」
「兎に角、迎撃です!打って出ましょう!先生、指揮をお願いします!」
”ヨーシ!じゃあオジサン頑張っちゃうぞ~!”
おちゃらけたテンションとは裏腹に、先生の額には冷や汗が滲む。それでも、シッテムの箱を起動しながら、先生は無理矢理に笑って見せた。
(コウサイド)
【CYCLONE!MAXIMUM DLIVE!】
「メタルトルネイダーッ!」
━ダォヒュオォォォッ!!━
メタルシャフトを地面に叩き付け、周囲の敵兵や不良私兵を上空へ舞い上げる。強烈な上昇気流で洗濯機のように揉みくちゃにされ、挙げ句に地面に激突。技に巻き込まれた敵は、1発で意識を失った。
「ケッ、キリがねぇ」
とは言え、再起不能にしたのは俺が釘付けにしてる1個中隊のほんの一部。敵はまだまだ残っていやがる。
「な、何だお前ら!?」「ひぃ!?」
「ッ!いかん!」
逃げ遅れた市民の悲鳴。敵は躊躇無く、そちらに銃口を向けた。
「こンの外道共がッ!」
【QUEEN!MAXIMUM DLIVE!】
メタルシャフトにクイーンを装填し、投擲。地面に突き刺さったシャフトを起点に、半球型のバリアが展開される。
「今だ!とっとと逃げ━ズガンッ!━ぐぁおッ!?」
逃げようとする市民に視線を向けた直後、側頭部に凄まじい衝撃。脳が揺らされ、膝を突く。
「くッそ、また
いや、それはそうか。過去、実際に通用した攻撃は確り覚えてて当然だ。そして、致命的な隙が出来たと言う事は・・・
━ドガガガガガガガッ━
「いっててて!そりゃそうするわな!」
示し合わせたような集中砲火。と言うか多分実際に示し合わせてやがったな?市民守って撃たれるのはヒーローの華ではあるが・・・
「それはそうといってぇンだよ!」
【LUNA!】
ルナをレイズし、神秘をコートに付与。瞬時に脱ぎ払ったコートをはためかせ、広く延ばして即席の盾にする。その為の高性能複合防具だ。
そのまま敵弾を防ぎつつ、メタルシャフトを回収。掴んだ瞬間にシャフトは分解され、クイーンメモリだけが残った。これで鹵獲の心配はしなくて良い。だが此処じゃ射線が通り過ぎだ。まずは此方の小隊規模を潰すとしよう。
「チッ、しゃあねぇな」
撤退。それを匂わせるように、路地裏へと駆け込む。視線が切れた隙にコートを羽織り、ルナをトリガーに入れ換える。
【TRIGGER!】
左腕はライフルに変化させず、トリガーマグナムだけを生成。そのタイミングで、敵さんが追い付いて来た。狙い通りに。
「此処なら、当たる」
【CYCLONE!MAXIMUM DLIVE!】
「トリガーエアロバスター!」
サイクロンをマグナムに装填。圧縮空気の弾丸をバラ撒き、視界全てを攻撃で埋め尽くす。左右が壁の狭所なら、銃撃に嫌われた俺の弾でも当てられる。周りの壁ごとだが。
「スナイパーの位置は覚えてる。とっとと潰しに行くか」
【CYCLONE!】
トリガーをサイクロンと入れ換え、更にコートの腰に付いた紐を引っ張る。するとコートが収縮して上半身に密着し、下半分がブワリと広がって硬直。空力カウルを形成する。
ビルの壁を蹴り、屋上まで跳躍。敵の方向を確認し、全力で駆け出した。
「目算、10秒!」
彼我の距離を計測、目標到達までに掛かる時間を概算する。
普通ならば、一定ラインを越えた脚力で走ろうとすれば脚力と空気抵抗によって身体が浮き上がり加速不能に陥る、処か盛大にスッ転ぶ。だがこのコートを使えば、空力特性によってダウンフォースが発生。身体を地面に押し付ける事が出来る。結果、平常時の倍以上の瞬間速度を発揮可能とする訳だ。現に━━━
「は、速過ぎる!?」
「た、退━━━」
「遅ェよ」
━━━目標地点に、既に到着した。
スナイパーと、それを補佐するスポッターのツーマンセル。お決まりの構成だが、俺相手に一撃入れて即位置変えしないのは致命的だ。
【HOPPER!MAXIMUM DLIVE!】
「ホッパーライフリングチャージ!」
全身に風を纏い、圧縮空気を背後で炸裂。その爆風を全て捕まえ、きりもみ回転しながら敵に突貫。両方とも打ち飛ばし、壁に叩き付ける。当然、綺麗に気絶した。
「これで良し・・・ん?あれは・・・」
窓から中央街道を見下ろすと、対策委員会の面々が到着していた。更に、その正面にはカイザー理事の姿が。
「おうおう、大将自ら出張って来やがった。やっぱ前線大好きだなアイツ」
上の立場になっても現場主義なのは見事と言うべきか、その護衛に平常の数倍気を尖らせねばならない現場人員が憐れと言うべきか・・・なんて事を考えつつ、俺はその修羅場を目掛けて一気に跳んだ。
(NOサイド)
「アビドス生徒会の最後のメンバー、小鳥遊ホシノは退学した。アビドスの生徒会は、最早存在しないも同然。君達はもう、何者でも無い」
勝ち誇るように、対策委員会に語るカイザー理事。全員腹が立つものの、正面から言い返せずにいる。
「公的な部活、委員会、生徒会に自治区、悉く無し。こんな体たらくでは、学園都市の学校として自立・存続は不可能と判断せざるを得ないな。致し方無い。ではこの自治区の主人たる我がカイザーコーポレーションが、あの学校を引き受けるとしようか。
新しい学校名は・・・差し詰め、《カイザー職業訓練学校》、とでもしようか」
「な、何言ってるのよ!アビドスにはまだ対策委員会があるわ!私達がまだいるのに、そんな言い分が通る訳が・・・」
「それは・・・」
「・・・アヤネちゃん?」
血気盛んに噛み付くセリカとは対照的に、アヤネの眼は暗い。何故なら、自分達にはその権限が無いから。
「対策委員会の発足当時、既にアビドス生徒会は無かった・・・公的機関の認可を受けていない以上、対策委員会は部活とは認められない・・・」
「そうだ、その通りだとも。所詮は非公認の委員会擬き。公的書類の承認も下りていない。どれだけ喚こうが、どれだけ足掻こうが、
それに、嘆く事ばかりでも無いだろう?学校が無くなれば、あの借金地獄から解放されるのだから」
━ズドォンッ!━
「ぬおっ!?」
得意気に語っていた理事の目と鼻の先に、何かが着弾する。その轟音に怯む理事の前で、その弾頭が立ち上がり、土煙を払った。
「相変わらず能書き垂れるのが好きだな、理事さんよ」
「ローザスト!」
「叢雲コウ・・・」
仮面ライダーローザスト、現着。シロコを始め対策委員会の眼には喜色が宿り、逆に理事は忌々し気に名を呟く。
「ごちゃごちゃ言った所で、コイツ等は無抵抗になりゃしねぇのさ。そんなに諦めが良けりゃ、とっくのとうにこんな学校棄ててるっつーの」
呆れたような声色で、しかし信頼を乗せて、断言する。そしてその鋭い爪の先を、理事に向けた。
「絶望感で心を折って、接収を楽に済ませたかったのか?そんな横着い事なんざせず、物量で一息に押し潰せば良いものを」
「フッ、何ともまぁ乱暴な発想だな。しかし、貴様はどちらの味方なのだ?」
「くくくっ、まぁあんた等のじゃねぇ事は確かだな。だがそれはそれとして・・・相手に自分の優位を見せ付けなきゃ気が済まない、その自己顕示癖は危ういと忠告したくなったのさ」
愉快そうに肩を震わせながら、ローザストは理事に向けていた人差し指を真っ直ぐ上に向けて立てた。
「・・・何だ、何が言いたい」
「愚か者は指を見る。じゃあ、賢い者は?」
「何!?」
━ボゴォンッ!ドガガガァンッ!ドッゴォンッ!━
「な、何だ!何があった!?」
連続する爆音。理事が慌てて通信で確認を取ると、周囲に展開していた部隊の大部分が爆発に巻き込まれて行動不能となった事が報告された。
「全く、情けないわね」
その混乱の仕立人は、ローザストの指の先と重なる場所、ビルの屋上に立っていた。
「べ、便利屋だとォ!?」
「どうしてあなた達が!?」
「そんな事、どうでも良いでしょう?」
屋上の縁に脚を掛け、右手で帽子を押さえるアル。その下から、鋭い眼光が対策委員会の面々を睨んだ。
「貴方達、仲間が危機に陥っているんでしょう?ならへこたれてる暇なんて無いんじゃないかしら?」
自然に1歩踏み出すように、屋上から飛び降りるアル。他の3人も、それに続いて飛び降りる。
危なげ無く着地した彼女等は、対策委員会に歩み寄った。
「何をどうすれば良いか分からず、何をやっても失敗だらけ。この場を凌いだとしても、待つのは逆境と苦難のみ・・・だとしても、己の流儀を通し己の道を行くのが、貴方達じゃ無かったの?
目には目を、歯には歯を。無慈悲に孤高に、我が道の如く魔境を行く・・・それが、覆面水着団のモットーなのでしょう?」
「・・・ンっ?」
唐突に飛び出した聞き覚えの無いパワーワードに、一瞬首を傾げるローザスト。しかしこの熱に冷や水は浴びせまいと、努めて黙り圧し殺す。
「まぁまぁ、その辺で勘弁してあげようよアルちゃん。メガネっ娘ちゃんは繊細だから、泣いちゃう事もあるって。
それはそれとして・・・私の可愛いメガネっ娘ちゃんを泣かしてくれちゃってさ。これはもう・・・ぶっ殺すしか無いよねッ!」
「えっ!?」
突如飛び出した聞き捨てならない情報。ローザストはアヤネに対し、《アイツ、お前、
「ったく・・・で、カヨコ。首尾は?」
「埋設してた爆薬で、敵の増援は遮断済み。オマケに指揮官はビルの下敷きにしたから、指揮系統も崩壊してる上に救助隊分も人員を削げた。あなたがやったのをそのままぶつけてやったよ。対風紀委員会の、良い予行演習になったかな」
「上々だ」
差し出されたサムズアップに、コツンと拳をぶつけるカヨコ。そうして、お互いに矢張り相性が良いと笑う。
”ハハハ!頼もしい助太刀だね!”
「さぁ先生、協業と行きましょう。あの子達に見せてあげるわよ、本物のアウトローの戦いをね」
”じゃあ元気良く行こうか!イナホもまだやれるよね?”
「おう。あと、コウでも良いぜ」
”そっか。でも良いや、此方のが馴染んでるし。じゃあ、頑張ってネ~!”
「あいよ!
所で覆面水着団って何?」
”え、今聞いちゃう?ソレ”
(コウサイド)
「良い的ね。片手でだって当てられるわ」
アルの一射が、上空の攻撃ヘリを撃ち抜く。機関部をぶち抜かれたヘリは炎上し、面白いように墜落した。
「ヒュウ、素敵な風穴だな」
「もっと必要かしら?」
「あぁ、腹一杯喰わせろ」
「了解、任せなさい♪」
「きっ、貴様等ァァァァ!」
ヘリの残骸の下から、怒髪天と言った様相の理事が這い出して来る。そのガタイはどうやら飾りじゃ無いらしい。
「あら、意識あったの。気絶してくれてたら楽だったのだけど」
「そう言ってやるな。祭りの参加者には盛り上がって貰わねぇと」
「便利屋ァ!貴様等、飼い犬の分際でェ・・・」
「何言ってんだよ。金を積んだ方に尻尾振るロクデナシを起用した時点で、付いて回る当然のリスクだろうが」
「何だと!?まさか・・・」
「あぁ、まさかもまさか。1回の出撃につき100万!これしきで鞍替えしてくれたぜ。少々ケチり過ぎたんじゃねぇの?」
「バカな、たったそれだけの泡銭で・・・!」
そりゃそうだろうな。カイザーの幹部ともあろう者が、そんな小遣い程度の額で雇う訳も無い。だが、先と今とじゃ状況が違う。俺は便利屋を、「傭兵は使わず、お前達だけの腕前を買いたい」と口説いた。これなら医療費、弾薬費を除いた残りが丸儲け、そのまま便利屋の懐に入る。アビドス進攻時のように、割高な雑魚傭兵を従える必要も無い。
要するに、理事は便利屋の最適な運用方を発見出来なかったって訳だ。これが自前の兵力の援護人員として雇われたなら、恐らく俺の財布じゃ口説き落とせなかったがな。
「・・・くっ、くくくっ。はっはっはっはっはっはっ!」
「あ?」
悔しそうな態度から一変、急に笑い出す理事。狂ったか・・・と思ったが、どうやら違うらしい。
「会話・・・成る程、確かに有効だな。勉強になったよ」
━ドゴォンッ!━
「お陰で、到着までの時間を稼げた!」
「っ!おや、やり返されたか」
理事の後ろに着地した、大まかに人型の巨大ロボ。自分の常套手段たる時間稼ぎをやり返された悔しさと共に、ロボに対しては既視感を覚えた。
「懐かしいなオイ。ゴライアスだったか?」
「ゴリアテだ!コイツで全て、カタを付けてやろう!」
巨大ロボ、ゴリアテに乗り込んだ理事が叫び、両腕に搭載されたガトリングキャノンが火を吹く。先生側の人員は何とか回避し、遮蔽物の後ろに逃げ込んだ。
「良く見りゃ銃の大きさの割に口径小せぇな」
「どぉうりゃあッ!」
「なっ!?」
━ズゴンッ!━
「んぐぉっ!?」
ノノミを狙った、跳躍からの叩き付け。咄嗟に割り込み、両腕を交差させて受け止める。尻餅を付いたノノミは何とか助かったが、その衝撃に危うく此方が潰され掛ける。
”こりゃいかん!アルちゃん!狙撃で気を引いて!”
「任せなさい!」
━ドキャァンッ!━
「ぐおっ!?この、野良犬風情がァ!」
「せーのっ!よいしょぉ!」「どっこいせぃ!」
「どわっ!?」
加圧が止まったガトリング腕を、ノノミと2人掛かりで押し返した。そしてグリグリと肩を回しつつ、衝撃でめり込んだ脚を引っこ抜く。
「ありがとよノノミ。ガトリングガールの筋力は伊達じゃねぇな」
「エヘヘ、単純なパワーだけなら、ホシノ先輩にも負けませんよ~☆」
むんっ!と力瘤を作って見せるノノミに、そいつは頼もしいと笑う。そして、理事がこっちにかまけている隙に人員の配置が完了した。
「さぁ!パーティーを始めちゃおっかなっ♪」
ムツキが爆発物満載のバッグを投擲。理事のゴリアテがそれに反応し、右腕を向けようとするが・・・
【LUNA!MAXIMUM DLIVE!】
「はいチーズ!」
「ぐわっ!?」
バットショットを使ったルナのマキシマム、閃光目潰しで妨害。
「セリカ!」
「了解!」
その隙に地面に落ちたバッグをシロコが拾い、理事の顔面近くまで投げ上げる。それをセリカが狙撃し、見事に爆裂させた。
「ぐあぁ!?くっ、ちょこまかと鬱陶しい!」
”お代わりどうぞ!ポイっとやっちゃってデリバリーガール!”
「了解!」
━ボゴンッ!━
「ぐはぁ!?こ、こンの・・・!」
先生の指示により、奥空がドローンから爆弾コンテナを投下。死角から衝撃を喰らい、ゴリアテの巨体がたたらを踏む。
”アル!今!”
「任せなさい!」
シロコを狙って伸ばされた腕。その肘関節に、アルの狙撃が命中。駆動部の僅かな隙間に過たず命中した弾丸は、内包したエネルギーによって爆裂する。内側からの爆圧は装甲とフレームを容赦無く破壊し、左腕を半ばから千切り落とした。
「ぐぅぅ・・・貴様等、調子に乗りおってェ!」
「い゛っ!?」
猛烈に嫌な予感。つららを後頭部から背骨に突っ込まれたように、全神経がアラートを鳴らす。
「退避ィ!!」
「消ェし飛べェ!」
「ふぇ!?」
近くに居たハルカの首根っこを掴み、全力で跳躍。直後、ゴリアテの背部に搭載された大砲が閃光を放った。
━ジュガオウッ!!━
「なっ・・・!?」
それは、明らかに既存の兵器では無い。凄まじい熱量を撒き散らす、真っ赤な破壊光線。仲間達を狙ってか縦薙ぎの軌道で放たれたそれは、アスファルトの道路を焼き切って空の彼方へ消えた。
「な、何だ!?プラズマキャノンか!?もう撃たせるなッ!あれはダメだ!」
砲の口径や出力からか、砂や岩を沸騰させるビナーのアツィルトよりは弱ぇ。が、それでも生身で喰らって耐えられる攻撃じゃねぇ!
”総員!脚部関節を狙って集中砲火!足腰ガタガタにしてやりな!”
「了解!」「尻餅突かせてやるわ!」「そ~れ~!」
「あっははは!皆張り切ってるぅ♪負けてらんないね~アルちゃん!」「えぇ、そうね。でも、大丈夫。一撃で十分よ」
シロコのミサイル、ノノミのガトリング、そして黒見の集中射撃が殺到する。良く見れば、その陣形は妙に密集して・・・成る程。全く先生も人使いの荒い事だ。
「鬱陶しい!それしきでこのゴリアテをッ!落とせると思ってかァ!」
仲間に大砲の照準が向く。頭に血が上っているのか、あっちの排除以外は考えられないらしい。そこが、先生の狙い目だ。
「
「ッ!しまっ!?」
━ザキンッ!━
肩まで飛び上がり、アームカッターを展開。大砲を支える根元の左関節を、油圧シリンダーごと不意打ちで断ち切った。
”アルちゃん今だよやったげて!”
「据え膳、遠慮無く頂くわ!」
━ズキャンッ ボゴンッ!━
「ぐおわぁぁ!?」
砲身が傾きバランスが崩れた所で、アルが重心の乗った軸足を撃ち抜く。膝関節は容易く崩壊し、鋼の巨人は跪いて頭を垂れた。
「ば、バカな!このゴリアテが、こんな子供風情に・・・!」
「子供だと、高を括るからこのザマよ」
”いやぁ、気付いてくれて良かったよイナホ。ありがとね”
「ったく、アンタも中々博奕打ちだねぇ」
先生の狙い。それは対策委員会と便利屋68を丸ごと囮とし、俺がゴリアテに致命傷を与える隙を作る事。失敗すれば自分諸とも生徒達が消し飛ぶ、えげつない大博奕だ。
「さぁて!覚悟しなさいよ理事!ギッタギタにしてやるんだから!」
「待て黒見、コイツにはまだ・・・ッ!?下がれッ!!」
【HOPPER!MAXIMUM DLIVE!】
「壱式ィ!」
突如の悪寒。それに従い、ゴリアテの上半身を支える左腕を蹴り抜く。その反動で大きく跳び、宙返りした瞬間・・・殺気の塊が、微かに見えた。
━シュガオゥッ!━
「おごっ!?」
上半身が完全に落ち、顔面を地面に強打して呻く理事。しかし、そうなっていなければ数倍悲惨な状況になっていただろう。
ズルリ、と大砲が外れ、地面に落下する。元々ひん曲がっていた接続金具はしかし、ねじ切りとは違う鋭利な切断痕を残していた。攻撃が来たのは、斜め上・・・ビルの屋上。其処に、奴は居た。
「何、アイツ・・・!?」
「カニの、怪物?」
「まさかアイツ、ドーパント?」
頭部に備えた2本1対のハサミに、背中から生えた4本の節足。先端がナイフのように尖った異質な脚を、ビルの屋上の縁に掛けて、俺達を見下ろす異形。
「クラブ、ドーパント・・・ッ!いや、それだけじゃねぇ!」
「く、今の内に・・・!」
ゴロリとコックピットから投げ出された理事が、走って行くのが聞こえる。だが、そっちに構っている場合じゃない。
「ガイア、ドライバー・・・!」
クラブの腰に装着された、銀のベルト・・・旧式の、ガイアドライバー。確信はしていた。だが、これで確定した。カイザーは黒だ。
━シュイィィィィ━
「ッ!一か八かッ!」
【QUEEN!MAXIMUM DLIVE!】
頭部のハサミにエネルギーを収束させるクラブドーパント。俺は条件反射をプログラムし、クイーンのマキシマムを発動する。左手のガントレットが中盾となり、ガイアフォースが集中。絶対不壊の鉄壁と化す。
━シュガァンッ!━
「どりゃッ!」
放たれ迫る、ギロチンのような斬撃波。狙いは俺・・・では無く、切り落とされた大砲。その接近を関知し、俺の腕は自動的に刃の側面に角度を合わせ、盾を振り払った。
━バキィンッ!━
斬撃は弾かれ、軌道がずれる。そして射線上にあったゴリアテの肩関節に命中し、サッパリと切り裂いた。
「・・・」
「・・・」
5秒に満たぬ睨み合い。その果てに、奴は口から泡を吹き出す。その泡の塊が風で崩れると、其処にはもうクラブの姿は無かった。
「に、逃げた・・・?」
「みたいだな・・・はぁ、肝冷えたわ。弾けて良かった」
漸く、一息吐いた。いやはや、先生に続き俺まで大博奕を打つ羽目になるとは・・・
「結局、理事は逃がしちゃいましたね・・・」
「あーもうムカつく!あのカニ野郎も何が目的だったのよ!」
「そいつァ決まってる。だが、一旦学校に戻れ。落ち着かなきゃ話も出来ねぇだろ。ここは俺が片付けとく」
”アイアイサ、お願いねイナホ。皆、帰ろっか”
「分かりました・・・」
「ん、帰ったらスポーツドリンク配るね」
”さっすがシロコちゃん、気が利くネ!”
「ではクールダウンをしつつ、ホシノ先輩を助け出す方法を考えましょう!」
疲労を隠せない声色ながら、明るく話し合いつつ帰り始める対策委員会。その背中を見送り、俺は便利屋に向き直る。
「今回は良く働いてくれた。報酬・・・小切手で良いな?」
「え、えぇ。その方が有り難いわね」
「そっか。じゃあ100万な。それから・・・ミレニアム資本の銀行に個人口座置いとけ。彼処は比較的信用出来るから」
「わ、分かったわ。じゃあ、今日はこれで・・・」
「おう、次も頼むわ」
軽く手を振り、便利屋一行の背中も見送った。さて、これで取り掛かれる・・・取り敢えずコイツは・・・いけるかな。まぁやってみるだけだ。
【LUNA!MAXIMUM DLIVE!】
先程のようにコートを脱ぎ、神秘を付与。地面に転がってる大砲を覆い隠せるぐらい広げて・・・
「そりゃっ!」
上から被せる。すると、大砲が持っていた筈の体積は嘘のように消え、コートは地面にペタンと落ちた。
「よし上手く行った。じゃあ、後はこれだな」
コートを縮めて羽織り直し、ゴリアテを見上げる。このサイズなら、全略ぐらいで丁度良いだろう。
「詠唱省略。破界ノ零式」
全身から、恐怖のエネルギーが溢れ出す。そして右腕に収束し、うぞうぞと蠢きながら膨れ上がり始めた。そのどす黒く覆われた右腕をゴリアテに向け、呟く。
―――――――黒蝗―――――――
それが合図となり、腕から無数のイナゴが飛び立つ。それは瞬く間にゴリアテを包み込み、メリメリと音を発てながら貪食し始めた。噛み砕かれ嚥下された質量が、俺の内側に流れ込んで来る・・・しかし、解せない。あんな高出力のエネルギー兵器なんて、作れそうなのはミレニアムぐらいの筈・・・何より、あの出力を支えるような埒外のジェネを積んでるようにも・・・ん?
「何だ?妙な光が・・・」
黒蝗が齧った、バッテリーのような箱。その中から、薄紫色の光が漏れている。
「よっ、とっ」
ビス留めを引き千切り、噛み砕こうとしがみ着く蝗を毟ってフレームの方に放す。またガリガリと元気に齧り始めたのを確認してから、その箱の蓋に指を掛けた。
「・・・鍵付きだな。まぁそれが何だって話だが」
鋭く伸ばしたハイバイブネイルで蓋を切り裂き、中身を見る。其処にあったのは、何度か見た事のある物体。
「これは・・・何度か喰った事があるな。確か・・・神名のカケラ、だっけか」
六角形のクリスタルのような結晶体。それがボタン電池のように並んで、ギッシリと入っていた。実験と称して、何度か黒服に喰わされた物だ。効果としては、そこそこ高効率なエネルギーの補給ってとこだったが・・・
「確か、エネルギーの凝縮された結晶とか言ってたな・・・そんでもって、10個ぐらいはあからさまに色がくすんでやがる。これをカートリッジにして撃ってやがったな?」
電池切れになったカケラを1つ引き抜き、バリバリと噛み砕く。何の味もせず、エネルギーも殆ど残っていない。これがカート代わりで間違い無いな。
「しかし、クラブは此方じゃ無くキャノンを狙った。明らかに証拠隠滅を狙った動き・・・理事がこの状況で切ったカードって事も考えると、其処まで貴重って訳でも無さそうか・・・?技術流出を恐れて破壊しようとしたが、俺相手じゃ部が悪いと思って撤退・・・ってなってたらありがたいんだがな」
ケース内の残り50個程度のカケラを収納しながら、溜め息混じりに呟く。全く、何でカイザーはこんなに野心的なのかねぇ。支配者ってのも、そう良い立場とは思えんが・・・
「ん?このキャノン・・・もしかして・・・よし、解析に回そ」
少々面白い事を思い付いた。丸ごと鹵獲出来たのは僥倖だったな。
「さて、片付け終了。帰るとすっかな」
黒蝗はすっかりゴリアテを喰い尽くし、俺の中に戻って来る。その回収を終えて、アビドス高校への帰路に就いた。
(NOサイド)
夜。キヴォトス某所のオフィスビル。その自動ドアを潜り、2人は正面のエレベーターに乗る。
「「・・・」」
先生と、コウ。2人は一言も発さないまま、目標階への到着を待つ。間も無く上昇は止まり、扉は開いた。
「お待ちしておりましたよ、先生。そして、来ると思っていました。叢雲コウさん」
デスクの前で、ペコリと頭を下げる人物。それはあまりにも異質な、真っ黒の異形。その顔面に広がる白いヒビ割れを愉快そうに歪めながら、
「こんなに分かり易い招待状置いてきゃ、そりゃ来るさ。久し振りだな、黒服」
呆れたような声色で、カードマジックのように封筒を取り出すコウ。黒服の顔そっくりな柄のそれは、知る者なら一目で彼を連想するだろう。
”で?イナホとどんな関係かは知らないけどサ。何の用なのかな?”
「クックックッ。貴方とは、直に会って話をしたいと思っていたのですよ。シャーレの先生?」
”へぇ~、そうなんだ”
喉をならすように笑う黒服を、信用ならないと睨み付ける先生。事前にコウから黒服の人となりを聞いていたから、だけで無く、面と向かって話した事で確信したからだ。これは信用してはならない手合いだと。
「あー、まぁお話を始める前にだ・・・歯ァ喰い縛れや。あるならな」
前置きは最短に、コウは常時着けていた右のグローブを外して、拳を握る。
「わりぃちょっくら手が滑る!」
「がぼぇっ!?」
その固め込んだ鉄拳を、黒服の顔面に叩き込んだ。
To be continued・・・
~キャラクター紹介~
・叢雲コウ/仮面ライダーローザスト
戦線を押し留めた飛蝗少女。
ホシノが学校を去るのも、カイザーが殴り込んで来るのも想定済み。なので便利屋に声を掛けて罠を張らせ、真っ先に自分が出撃して敵を釘付けにした。
黒服と身体能力テストをした時に必要だと言った冷却コートの空力カウルモードも今回発披露。モチーフは言わずもがな、ガオガイガーのルネが着用している冷却コートのイークイップモード。
今回もずっと最前線で飛び回っていたが、仲間に投げられる所は投げていたので負担はそれ程でも無い。ゴリアテ相手でも攻撃を受け止めて仲間を守り、先生の狙いを瞬時に読んで隙を突いたりと、中々に忙しく働いている。
突如現れたクラブドーパントに関しては、ガイアドライバーを使っている事に加えてカイザー理事とキャノンを狙って攻撃した事からカイザーの手の者だと確信している。そんな奴が隠滅しようとしたキャノンを丸ごと鹵獲する事に成功。何か良からぬ事も企んでいる様子。
黒服に対しては「遂にやりやがったなテメェ」と言う感情で拳を振り抜いた。
・対策委員会
何とか踏ん張ったアビドス組。
ホシノが失踪し狼狽え、理事の言葉に折れ掛けたものの、ローザストと便利屋の加勢によって何とか持ち直した。
これよりホシノ奪還の為の作戦構築を開始する。
・便利屋68
味方だと頼もしい根無し草。
アルに関しては今回徹頭徹尾ハードボイルドであり、ローザストのアシストに徹していたので怪我等もしていない。カヨコとローザストは馬が合う為か、グータッチする程に仲良くなっている。
報酬については現金の持ち合わせが無い上に便利屋の口座が凍結されているので、コウが小切手を切った。
・カイザー理事
憐れな木っ端役人。
意気揚々とアビドスに進行した結果、ローザストに中隊足止めされるわ便利屋に裏切られるわ、挙げ句に自分でゴリアテに乗り込んで秘密兵器ブッ放したら脅威度急上昇してボコボコに叩きのめされるわ、その上にクラブドーパントから口封じまで狙われる始末。泣きっ面に雀蜂の巣を投げ付けられたような踏んだり蹴ったり具合。しかし自業自得である。
・クラブドーパント
唐突に現れたベルト怪人。
旧式だがガイアドライバーを使っており、それ以外は風都探偵に登場したクラブと同じ。
その存在からガイアメモリだけで無くガイアドライバーまで流出している事も証明され、コウが怒りを募らせている。
・黒服
怪人腕で殴り飛ばされた真っ黒野郎。
殴られて当然。寧ろ脊髄をぶっこ抜かれなかっただけ温情である。
~アイテム・技紹介~
・メタルシャフト
メタルメモリを使用した際に現れる専用武器。ダブルのものと同じ外見、性能。当然メモリガジェットの装着、マキシマムの発動も可能。また生体磁石でメタル化した肉体に吸着させる事も出来る。それを応用した高速回転は攻撃防御双方に使い易く、隙が無い。
・メタルトルネイダー
メタルシャフトにサイクロンメモリを装填して発動。頭上でシャフトを高速回転させて竜巻を起こして周囲の敵を拘束し、地面を強く打つ事で強烈な上昇気流を発生させて敵を打ち上げる。モチーフはELDEN RINGの戦技《黒炎の渦》。
・トリガーエアロバスター
トリガーマグナムにサイクロンメモリを装填して発動。高速回転を帯びた圧縮空気の弾丸をフルオートで連射する。反動が強く弾がバラける為、面制圧には向く反面精密射撃は不可能。
本来なら銃器に嫌われるコウの体質も合間って絶対に当たらないが、左右を壁に挟まれた狭い路地裏だったので多数命中した。
・ホッパーライフリングチャージ
冷却コートをカウルモードに変形させ、サイクロンをレイズした状態でホッパーのマキシマムを発動する事で使用可能。
圧縮空気を炸薬とし、自身をライフル戦車砲弾の如く射出。高速回転する身体に纏った高圧ガスによって、敵を吹き飛ばす必殺技。戦車ぐらいならひっくり返る。