相変異 黒蝗   作:エターナルドーパント

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逆襲

「敵勢力確認!攻撃を開始しています!」

「兵力を集結させろ!南と東からも呼び寄せておけ!北方の対デカグラマトン大隊もだ!」

カイザーPMC基地のオペレータールームに、大音量の号令が飛ぶ。

現在、基地は外部勢力からの襲撃を受けていた。

「第3ブロックで火災発生!第5ブロックもです!」

「敵勢力はアビドスに・・・風紀委員会だと!?ゲヘナの治安屋が何故・・・!?」

確認された敵を識別し、困惑するオペレーター。そんな混乱も余所に、侵入者は迎撃に出た部隊を悉く蹂躙して行く。その旗頭は、専用武器の返還によって水を得た魚の如く活き活きとした暴れぶりを見せるローザスト。抜き放った蝗丸とその鞘で、敵を打ち据え、斬り払い、薙ぎ倒す。その後ろにアビドスのメンバーと、先生を乗せたアヤネのトラックが続く。

「おのれ・・・奴等め、何故此処が・・・」

「理事!量産型ゴリアテはいかがなさいますか!」

「全て投入しろ!15機全てだ!奴のお望み通り、物量で一息に押し潰してしまえ!」

 

「と、打って出てくるだろうな」

回転撃で敵の戦列を貫きながら、ローザストが笑う。そして蝗丸に鞘を被せ、左手に赤いメモリを取り出した。

BOMB(ボム)!】

黒服から受け取った片割れ。それをレイズし、左腕を変質させる。パイナップルグレネードを模したシールドと、背中側に垂れる帯。その悉くが、赤地に黒縞、虎模様の警戒色。

そのタイミングで、カイザー陣営に増援が加わった。弾幕射撃も最低限度蝗丸で叩き落としながら、ローザストは声、を張り上げた。

「総員後退!後退しろ!」

「了解!」「分かったわ」

「えっ、何で今!?」「イオリ、指示に従いますよ」

シロコとヒナを筆頭に、ローザストの指示を聞いた仲間達が後方に下がる。好機と押し込みに掛かる敵兵を見据え、異形の複眼は妖しく輝いた。

【BOMB!MAXIMUM DLIVE!】

マフラーのように背中に垂れ下がっていた帯。簾状に束ねられた、ダイナマイト状の装飾。それを根元から引き抜き、蛇腹のように長く延ばす。そしてそれを大きく振るい、一直線のヒモ状にして戦列に投下した。

「ボム・デトネリンクラスター!」

 

━ボゴゴゴゴォンッ!!━

 

「おわぁーっ!?」「ぐあーっ!?」「アバーッ!?」

連鎖する爆裂。その衝撃波が、雑兵を瞬く間に叩きのめし吹き飛ばす。ローザストが投下したのは、名前の通りクラスター爆弾。ダイナマイト状の爆弾の中に、更に小型の爆弾が詰め込まれた兵器。無論、親弾の爆発によって飛散した子弾が降り注ぎ、満遍無く降り注ぐ。更に不発弾は地面に残り、即席の地雷原にもなる鬼畜仕様である。

「クッソ、図に乗りやがって!」

「テメェら無事に済むと思━━━━」

「脚、止まったな」

「・・・は?」

 

━ヒュゥゥゥゥ ドゴドゴゴォンッ!!━

 

「うぎゃー!?」「ぎえぇー!?」

 

「こ、今度は何だ!?」

風を切り裂き、落下する音。続いて、土を捲り返す程の爆発。更なる乱入に、オペレーションルームの混乱は一層増す。

「は、発射位置の特定完了!これは・・・トリニティの重迫中隊!?」

「トリニティだと!?ゲヘナと言い、何故こんな所まで・・・ええい!どいつもこいつも、忌々しいガキ共が!」

苦虫を噛み潰したように吐き捨てる理事。しかし、こうしている間にも砲弾は降り注ぎ、カイザーPMCの受ける打撃は増す一方。

 

そして、第2射を指示する生徒の姿。

「第1第2砲列、+8の+3!第3第4砲列、-7の+4!」

「あっ、ヒフミ「ちっ、違います!」え?」

名前を呼び掛けたセリカに、彼女は紙袋を被った頭を大きく振って否定する。

「わ、私はヒフミでは無く・・・ファウストです!」

「・・・成る程、了解したファウスト。何処の誰かは知らねぇが、トンズラこいた方が良いと伝えてくれるか?」

「は、はい!」

直後、再び砲弾が落下。基地の地上倉庫を吹き飛ばし、戦力を大きく削る。その時には、既にトリニティの重迫撃砲部隊は撤収を始めていた。

 

「自走ターレット倉庫、中量戦車庫、共に大破!内部の備品も同様!出撃出来ません!」

「理事!」

「えぇい!ゴリアテの起動まで持たせろ!いざとなればハイエンドで私が出る!起動準備を済ませておけ!」

「はっ!」

「ゴリアテ、全機起動完了!」

「即時投入しろ!間違っても小出しにはするな!擂り潰されるぞ!」

 

「げっ、アイツらって・・・!」

「前に街で相手した奴!」

地面のシャッターが開き、エレベーターで迫り上がってくるゴリアテ。その数、実に15機。

「どんだけいるのよめんどくさい!」

「そうね。ここは私が・・・」

「いや、大丈夫だ。ここは任せろ」

一歩踏み出そうとするヒナを、ローザストが手で制する。そしてポケットに手を突っ込んで、余裕綽々に笑った。

「何を笑っていやがる!死ね・・・あ?」

腕を振り上げたパワーローダーが、不意に動きを止める。何故かと言えば、けたたましいエンジン音が耳に入ったから。

「な、何だこのエンジン音は!何処から!?」

「横っ面じゃないか?」

 

━ガッシャァンッ!ガコォンッ!━

 

「ぐぉわぁぁッ!?」

ゴリアテの側面を、倉庫の瓦礫をぶち抜いた巨大な鉄塊、ドゥオルギャリーが直撃。速度と質量を以て、盛大に轢き飛ばす。

「ぎ、ギャリー!?」

「だけじゃねぇぜ?」

ドリフト停車したドゥオルギャリーのハッチが開き、現れる2つの影。方や大きな角と尻尾を持ち、方や大きな白い翼を持つ。それぞれが己の愛銃を携え、ドゥオルギャリーから降り立った。

「よっ、ボス。料理はまだ残ってる?」

シュネルフォイヤーカービン(フュルスト・スパイラル)に弾倉を込めながら、角の少女(亜門モア)が問う。チャンバーに弾を送り込む彼女に、ローザストが返答。

前菜(オードブル)は俺達で、スープと魚はトリニティが平らげた。丁度今から肉とメインだ。腹一杯喰え」

「オッケー!行けるな、リエ」

「愚問ですことよ、モアさん」

2丁のカスタムガバメント(コスモス&アステール)を胸の前で上下に構え、澄まし顔で応える白翼の少女(科加部リエ)。2人は目配せすらせず、一息に駆け出す。

雑兵の群れが2人を狙って引き金を引くが、悉くが当たらない。モアは障害物や地面の出っ張りを利用した鋭角蛇行で、リエは弾道を読み切り回転を多用する流水のような所作で、自らに向かう弾丸を回避していた。

「な、何だコイツら!」

「何で当たらねぇ!?」

「さぁ、撃ち抜かれたい場所は何処でしょう?」

「リクエストは3秒以内ね!」

ギラリと輝く剥き出しの歯。その獰猛な殺気に、歩兵達は一瞬狼狽える。

「ふ、ふざけるなよ!たった2人増えた程度で・・・!」

「時間切れ」

「ごはぁ!?」

虚勢を張る歩兵の顔面に、モアが1発撃ち込む。その胸板にリエが飛び蹴りを叩き込み、スケートボードか何かのように踏み付けながら滑らせる。

広範囲から向けられる銃口。しかしリエは微笑みすら浮かべ、コスモスとアステールを構える。

 

━ズガガガガガガガッ━

 

殺到する鉛の雨。超音速のそれを、当たり前のように回避。そして姿勢を変える1つの動作毎に、2丁の拳銃が火を噴く。それらは的確に敵の急所を捉え、最少の攻撃で最大の制圧効果を実現した。

尋常ならざる高速精密射撃。銃を向けるよりも先に照準が完了している。銃を肉体の延長線上に定義し、指差しの要領で真っ直ぐと敵を狙う《直感照準》。その究極型である。

 

━ガチンッ━

 

そんな大立ち回りをすれば、弾薬の著しい消耗は当然の帰結。左右両方、同時にスライドストップが掛かった。

「弾切れだ!畳み掛けろ!」

「させねぇって!」

リエが胸元で両手をクロスさせ、重心を落として滑るように後退。その上を飛び越えて、モアが前線にスイッチする。そして右手に持った己の愛銃、フュルスト・スパイラルを左に倒し、身体ごと反時計回りに回転しながら5点指切りのバースト射撃をばら蒔く。ワルツにも似た優美な舞い、繰り返す事5周。放たれた25発の弾丸は、1個小隊を壊滅に追い込んだ。

「お見事♪」

「でしょ♪さて、こっからは各自判断だし、奥まで行っちゃおっか!」

「屍山血河のフルコース、お次の皿は死屍累々!」

 

(コウサイド)

 

「やってるやってるゥ」

雑兵を蹂躙する2人を尻目に、俺は達磨と化したゴリアテを蹴り飛ばし、後ろにいた2機を巻き込む。

脚を削ぎ、腕を壊す。機械兵器相手のセオリーよ。

さてと、残りは12機・・・いや、風紀とアビドスで1機ずつ落としたか。なら、残りは10!

「チィッ!ブラボー、エコー、フォックストロット!俺に着け、ローザストを確実に擂り潰す!」

「「「了解!」」」

「お~っと、4機掛かりかい?賢明だな」

単独の俺相手に4機、他を6機。言葉通り、特級戦力の俺を真っ先に潰そうとしたか。だが・・・四方包囲は悪手よ悪手。

【MIMESIS!】

「な、何だ!?」「何でも良い!何もさせるな!撃て!」

4方向からの集中砲火。それも蝗丸と鞘を振るい、打ち落とす。背後だろうが、関係無い。

 

━パリィンッ!パリィンッ!━

 

「な、何だあれは!?」

両手で振るう2振りの軌跡。そこに、数瞬前の実物をミメシスする。攻撃を受ければ砕けるが、そこで弾丸は止まる。砕け散り消えたミメシス、無銘ノ蟲刃身も、瞬く間に補充され、決して貫けぬ鎧となる訳だ。

「ば、化物め・・・!?」

「今更気付いてももう遅ぇよ!」

左脚軸にクルリと回転。無銘ノ蟲刃身を左右2振りで弾き、散弾のように飛ばす。堪らずコックピットを守った隙に、左手でメモリの頭を叩いた。

【MIMESIS!MAXIMUM DLIVE!】

「はぁぁぁ!ハァッ!」

限定解除したミメシスのエネルギーを纏わせ、蝗丸を地面に突き立てる。そして頭上に大量の無銘を数打ちし、ゴリアテ4機を丸く囲むように打ち込んだ。

「な、何だ!?」

「刀が、周囲に・・・!?」

「ハッ!」

地面を蹴り、宙返りしながら大きく後退。そこにあった無銘ノ蟲刃身を2本引き抜き、右は順手、左手は逆手持ちして腰を落とす。

「デェヤァッ!」

 

━バキキィンッ!━

 

「ぐあっ!?」

最も近かった1機の脚を、両手の無銘で叩き斬る。強度限界を超える衝撃に砕け散るが、同一箇所への高速2連撃で装甲は切り開いた。

「脚部装甲破損ッ!?」

「バカな、一撃で・・・!」

「まだ終わらねぇぞ?」

狼狽えるパイロット共を余所に、再び無銘を引き抜く。今度は別の機体に、先程と同じく高速で叩き付ける。

「ククククッ・・・ハハハハハッ!アーッハッハッハッハッハァ!」

続いて3発目、4発目。クラッシャーを開き高笑いを響かせながら、それを合計8度繰り返し、全てのゴリアテの脚に傷を刻んだ。

「くっ、密集隊形!奴に隙を見せるな!」

「ありがとよ、狙い通りだ」

背中合わせに密集した4機。その中心には、最初に突き立てた真打の蝗丸がある。

【CYCLONE!】

ミメシスメモリをサイクロンと換装。空気抵抗を風圧吸収で無効化し、奴等の股下を潜って蝗丸を回収。そして杖のように地面に突き、左手でメモリをタップした。

【CYCLONE!MAXIMUM DLIVE!】

「サイクロン・・・」

吸収して溜め込んでいた風も含めて解放し、身体に纏わせる。左肩から延びる銀色のマフラー(ウィンディスタビライザー)を靡かせ、獣のように落とした重心を脚力で一気に撃ち出した。

 

「カラミティ・ストライク・・・!」

 

風圧を纏って高速回転しながら、標的に突貫。駆動系の中枢部を、巨大なミキサー刃と化した蝗丸で斬り刻む。

「ば、バカな!?」「こんな事が・・・!?」

「ハッ、案外大した事無かったな」

ダメージの限界超過により爆発するガラクタ4つを背に、残心を解いて納刀。仲間の方を見れば、そちらでも残りのゴリアテをスクラップにしていた。

「おうおう、流石にそれぐらいは始末出来たみたいだな。出来なかったら困ってた所だぜ」

「当然。ローザスト仕込みは伊達じゃない」

「そいつは良かった。俺は教え子を役立たず呼ばわりはしたくねぇからな」

ドヤ顔でサムズアップするシロコの頭をクシャっと撫で、そしてヒナちゃんと眼を合わせる。

「で、次は何をしたら良い?」

「基地の東側だ。じっくりウェルダンにしてやれ。終わったら任務は終了だ。こっちも適当なタイミングで帰す」

「了解。イオリ、そう言う事だから。こっちは任せるわね」

「えっ、委員長?」

銀鏡にここを一任して、ヒナちゃんは左手で俺の胸元を掴んで足を踏んだ。何をする気だと困惑する対策委員会を余所に、俺はグッと腰を落とす。

「準備は良いか?」

「えぇ、出来てる」

「そんじゃ、お空に1名ご招待!」

 

━ドンッ!━

 

脚のバネを瞬時に解放し、大跳躍。上空50m程でヒナちゃんは手を離し、俺は上半身を翻しながらヒナちゃんが乗る右足を後ろに反らせる。

「ホッパー空崎カタパルトォ!」

2人の脚力を合わせ、サイクロンの圧縮空気で姿勢制御。目標値点に向けて、一気に蹴り飛ばした。

劇的な加速を受けて射出されてご自慢の翼を広げ、滑空しながら制圧射撃で敵施設を擂り潰すヒナちゃん。その背中を見送って、地上に戻る。対策委員会はあんぐりと口をかっ開き、銀鏡は口許を引き攣らせ、駄犬は此方を睨み付けている。そんな中、先生だけはキラキラと眼を輝かせていた。

「・・・あれは先生にゃ無理だぞ?」

”イヤイヤ!分かってるヨ?分かってるけどサ!カッコイイじゃないの!”

「まぁそれは同意するが・・・あ?」

ブンブンと鳴る、蜂のそれに似た羽音。見れば、上空に大量の攻撃ドローンの姿が。無事な分を総動員したと見える。

「うっわ!まだあんなに・・・!?」

「ノノミ、弾幕射撃で・・・」

「待て。俺に喰わせろ」

シロコ達を手で制し、左手で蝗丸の鍔を鳴らす。久し振りにコイツをぶっ放したくてウズウズしてた所だ。

「あんな数をですか!?そんな無茶な・・・」

「アヤネ。ローザストは何もかも無茶苦茶だから、気にしない方が良い」

「何なんですか蝗屋さんって!?」

酷い言われようだ。まぁ純然たる事実だがな。

【HOPPER!MAXIMUM DLIVE!】

「ッシィィィィィ・・・!」

全身の気門から空気を吐き出し、体内でエネルギーを練る。それを右手から蝗丸に流し込み、鞘の中で更に圧縮。ドス黒い靄が溢れ出す蝗丸を腰に帯び、ジリジリと重心を落とした。

「ッシャア!」

再び跳躍。敵影を正面に捉え、鯉口を切った。

 

「一刀両断!神食斬(かみはみぎり)!」

 

爆発的に膨張するエネルギーを刃に乗せて、横一文字に居合一閃。貪欲な牙は空間ごと喰い尽くすが如く迸り、ドローンの群れを擂り潰すように貪食した。

「なっ!?」「えっ・・・?」

”おぉぉ~!?”

着地すると、黒見と奥空が絶句、先生は更に眼を輝かせていた。まぁ、好きだろうからなこう言うの。

「な、何今の・・・」

「ホッパーのマキシマムドライブ、神食斬。メモリのリミッターを一時的に取っ払って最大出力をブッ放す、謂わば必殺技だな」

「バッタが何で斬撃飛ばすのよ!?」

「ノリに乗ったら出来たんだよ」

「そんな事ある!?」

「ガイアメモリってそう言うもんだから」

「えぇ・・・?」

何か黒見がドン引き要員みたいになってきてるな・・・まぁ比較的常識人だから仕方無いか。

「さぁてと?もうちょいで目標地点だ!とっとと行くぞ!」

ガツンと拳を打ち合わせ、蒸気を噴き出す。そして懐から取り出したペミカンをザラザラと口に流し込み、目標地点、基地最奥へと向かった。

 

(NOサイド)

 

「ッ~!!」

ギリギリと拳を握り、声にならない唸りを上げるカイザー理事。彼が生身の肉体であれば、奥歯を噛み砕き血涙を流していた事だろう。

「・・・非戦闘員は全員退避しろ。私がハイエンドで出る」

「理事!?し、しかしそれは・・・」

「2度言わせるな!」

 

━バキャンッ━

 

理事の拳が、壁に備え付けられた電話機を殴り砕く。わなわなと身体を震わせながらも、努めて冷静に脳内で算盤を弾き、結論を出した。

「・・・これより、カイザーPMCはこの基地を放棄する!戦闘員は私と共に総員出撃!非戦闘員は我々が奴等を相手取る間に、重要物資と情報を可能な限り持ち出し、本社に輸送せよ!」

「そんな、良いんですか理事!?そんな事をすれば、理事の立場が・・・」

「構わんッ!これまでの全てが水の泡になるよりはマシだ!」

理事は茹だり掛けの頭で、それでも理解していた。カイザーPMCの壊滅は、最早避けられないと。そうなれば、次点で考えるべきは上手い負け方である。

「多少なりとも成果さえ持ち帰れば、少なくとも無為に捨てられはしないだろう・・・此方もハイエンドのバトルログをリアルタイムで戦術ネットワークにアップロードする。本社にとっても有用なデータの筈だ・・・後は任せる。上手くやれ」

「理事・・・承知しました。御武運を」

大きく溜め息を吐きオペレーションルームを出る理事。補佐官はその背中を敬礼で見送り、直ぐ様命令を実行した。

 

━━━

━━

 

「ここって・・・学校?」

カイザーPMC基地、その中枢部まで脚を踏み入れた一行。その場所、その光景に、セリカが呟く。

砂に呑まれ、無残にも朽ちて果てた建物の残骸。その一部に、彼女達にとって馴染み深いエンブレム・・・アビドス高校の校章があった。

「アビドスのエンブレム・・・ここってもしかして・・・」

「あぁそうだ。ここが、本来のアビドス高等学校本館だ」

「「「・・・!」」」

「あんたは・・・!」

溜め息混じりに響く、低い声。黒いスーツに包んだ身体を揺らし、カイザー理事が立ち止まった。

「全く、しつこい物だなァ?アビドス対策委員会よ」

『敵の増援多数!この数・・・恐らく、動かせる兵力を全て・・・カイザーPMCは、ここで総力戦に持ち込むつもりです!』

わらわらと集結する人員の数に、アヤネの表情が強張る。大隊規模、実に1000人以上の敵勢力。一般常識に於いて、この物量差を絶望と呼ぶ。

「砂漠化の進行により、嘗て遺棄されたアビドスの廃墟・・・ここが、元はアビドスの中心だった。1つの時代に於いてはキヴォトス最大規模を誇り、列強の名を欲しいままにした学校・・・その残骸が、この砂の下に埋もれている。ここに実験室を建てる事が、ゲマトリアの要求だった」

「・・・あぁ、何か絶妙に見覚えあると思ったら・・・此処か、俺が覚醒した基地は。当時の俺は、鳥籠に入れられた飛蝗だったって訳か」

理事の昔語りに、何処か耽るように唸るローザスト。叢雲コウが死に瀕し、そして己が生まれた場所。ある意味で、故郷と言えない事も無い。

「で、その鳥籠は現在、本来の獲物である猛禽を収容中と」

「その通りだよ、叢雲コウ。あの副生徒会長なら、あの建屋に収容されている。既に実験が開始されているかも知れんなァ?」

「ッ!」

挑発するように、後方の建物を顎でしゃくる理事。シロコはギリッと歯軋りし、睨み付ける。

「ハァ・・・全く、腹立たしい。そうだ、実に腹立たしい!」

手を置いていた瓦礫の残骸を握り潰し、理事は感情を爆発させて叫んだ。

 

「ぬあぁぁぁぁッ!!貴様らさえ居なければ、シャーレさえ来なければッ!私の計画は完璧だったッ!!この私がどれだけの時間と!手間と!金を掛けて来たと思っているッ!?巫山戯るなァァァ!!」

 

「ハハハハッ!だってよ奥空。先生にヘルプ飛ばして大正解だったらしいぜ?何せ敵将直々の太鼓判だ!」

喚き散らす理事を、愉快そうに笑うローザスト。そして蝗丸を腰に帯び、柄に手を乗せて左脚を引く。

「さぁどうする?さっさと尻尾巻いて逃げるか、この場で俺達に倒されるか・・・」

「出来るものならば、やってみるが良いッ!!貴様ら━━━」

 

━ドゴォォォンッ!━

 

「なっ、何だ何事だ!?」

突然鳴り響く爆発音。そして爆風に紅い髪を靡かせ、帽子を手で押さえるシルエット。

「便利屋の皆さん!?」

「便利屋68・・・貴様ら、今更何をしに来た?」

「何をしにって・・・決まっているでしょう?」

愛銃を抱え、帽子の鍔を撫でる陸八魔アル。その縁から眼を輝かせ、ニヤリと笑った。

「事情は理解したわ。ここは私達に任せて、先に行きなさい!」

「えっ!?」

コートをはためかせ、大きく宣言。威風堂々たるその姿勢に、対策委員会とカヨコが唖然とする。

「プッ、アッハハハハ!良いじゃん良いじゃん!アルちゃん絶好調じゃない?」

「す、すごすぎます!一生ついていきます、アル様!」

「はぁ、マジで言っちゃったか・・・まぁ、決定には従うけどさ」

「・・・ハハハ、お前等すげぇノリで生きてやがるな」

頭痛を抑えるような諦め顔のカヨコを見て、少なくともこのアルの発言が打ち合わせ無しのアドリブだと理解し、ローザストも笑いを漏らす。そして同時に、アルの耳の後ろを伝う1粒の冷や汗も見付けた。

「よしお前等!ここは俺も便利屋と残ろう!ホシノ奪還は任せる!」

「えっ!?何で!?」

「敵さんの大将が直々に出て来たんだ。最後の最後、取って置きのオモチャを引っ張り出して来たんだろう?そんな獲物、余所者だけに喰わせちゃやれんぜよ」

「あぁ・・・」

おい黒見、なんだその雨後のナメクジでも見たような目は。

「ん・・・じゃあ、任せる」

”負けないでね”

「ハッ、誰に物言ってんだよ」

先生に軽口を返し、瞬時にエネルギーを鞘の中で練り上げる。腰を落とし、抜き放ち、居合一閃。三日月にも似た斬撃波が敵を薙ぎ払い、前方に1本の道を斬り拓いた。

「・・・悪いな、待たせちまったか」

「・・・ハァ、構わぬさ。どうせ変わらぬ事だ。誰が進み、誰が残ろうとな」

「・・・そうか、そう言う事か・・・大した覚悟だな」

理事の言葉に、ローザストは理解した。目の前の男は、全てを擲つ覚悟をしていると。そして、その覚悟は忠誠心から生まれるものだと。

「あれま、大事な所?」

「少々遅くなりましたか?」

「いや、丁度良いタイミングだ」

部下2人、モアとリエも合流した。戦力は都合7人。対して理事は、地下格納庫からせり上がって来た黒いゴリアテに搭乗する。

「デザートまで楽しむとしようか」

ローザストはクルリと蝗丸を逆手に持ち変え、前腕に添えながら柄頭を目線まで上げて構えた。部下2人もリロードを済ませ、各々が特殊な構えを取る。便利屋もそれらに習い臨戦態勢へ。

理事用にチューニングと改造を施された特殊仕様のゴリアテが唸りを上げ、ローザストもまた気門から蒸気を噴き出す。

「さぁ、皿まで平らげてやろう」

 

(コウサイド)

 

「チェリァァァァ!」

逆手持ちした蝗丸と鞘で、腕を交差させるように繰り出す斬撃。並の装甲なら容易く断つ刃はしかし、予想外に重厚な装甲に防がれる。

「チッ、堅いな!ハイエンドってのはその辺りか?」

「あぁそうとも!量産型の3倍の装甲!その重量を支える高出力のジェネレータ!私専用にカスタムされた特別製のゴリアテだ!」

「あら、重くなったのなら狙い目は1つね?」

ニヤリと笑い、銃を握った左手を真っ直ぐ伸ばすアル。素早く狙いを定め、迷い無く引き金を絞った。

 

━ボォンッ!━

 

「効かぬわァ!」

「なっ、嘘でしょ!?」

放たれた弾丸は、狙い通りに脚に命中。大きな爆発を起こす。が、命中箇所は損傷軽微。内部中枢処か、装甲板すら貫けていない。

「え~?マジか、アルちゃんの狙撃が通らないって・・・」

「今の爆発、それに全身に着いた黒いアタッチメント・・・恐らく・・・」

爆発反応装甲(リアクティブアーマー)だな。そう言う爆発だった」

カヨコが立てた推測を引き継ぎ、俺が結ぶ。

良く見れば、ゴリアテの全身にはレンガのような黒いブロックが大量に貼り付けられている。それら全て、外部からの弾丸による装甲貫通を防ぐ爆薬だ。本来はH.E.A.T(成形炸薬)弾を防ぐ為の処置だが、爆裂するアルの弾丸にも有効らしい。

「甘い!それしきの対策、しない訳が無かろう!」

「ソイツぁ良い、何とも喰い応えのあるデザートだ!」

「ぜぇりゃぁぁぁッ!!」

腕を振り上げながら跳躍し、パワーボムを仕掛けて来る理事。

流石にあれを受けるのは無理。なので、敢えて前に踏み込む。

 

━ドゴォンッ!━

 

【METAL!】【HOPPER!MAXIMUM DLIVE!】

腕の隙間、懐にスッポリと収まる事で叩き付けを回避。そこからメタルをレイズし、続いてホッパーを叩いてマキシマムを発動。

「ホッパー!アハトアハトゲイザー!」

 

━ゴワァンッ!━

 

「ぬおわっ!?」

鉄塊と化した左腕に強化脚力を真っ直ぐ乗せ、繰り出したジャンピングアッパー。直撃すればビナーすら仰け反らす一撃はしかし、傾斜装甲の表面で滑って受け流され、クリーンヒットには程遠い。

「小癪なッ!だが空中に踊り出したのは間違いだったなッ!」

「いっ!?こりゃいかん!」

ゴリアテに搭載された、大量のミサイルポッドが火を噴いた。

「んぐおっ!?」

幾つかのミサイルが直撃し、盛大に吹き飛ばされる。翅を露出させて何とか姿勢制御を試みるが、空中では爆発の圧を殺しきれない。何よりメタルで重心が狂ってるせいで、いつもの感覚を当てに出来ん。

「そこでは逃げ回れまい!喰ら「そーれっ♪」え?」

 

━ボゴォンッ!━

 

「どわぁっ!?」

ガトリングキャノンをこちらに向けたゴリアテ。その足元が爆発し、つんのめるように前方へと転倒した。

メタルを引き抜き、四肢と翅で漸く乱回転を止めて落下する僅かな時間。強化複眼の視野と動体視力で状況を観察し、何が起きたのかを理解する。

ガトリングキャノンをこちらに向ける瞬間。重心移動に対応する為の脚の踏み直しは不可避。その瞬間に、ムツキが足の下に爆弾を投げ込んだのだ。

成る程な。あの娘、中々にやるじゃないか。

「じゃ、追撃と行こうかな!」

「ですわね!」

部下2人が左右に散開し、銃を構える。

モアは右手持ちの銃を左に倒し、輪舞撃ちを1マガジン。リエは直感照準と高速指切りによる人力連射。それぞれ神秘を多分に内包した弾丸は、次々とゴリアテの爆発反応装甲を削ぎ落としていく。

一方、俺は漸く着地。ザリザリと足裏で地面を削って停止し、直ぐ様駆け出した。幸い、地面には大きな瓦礫が埋まっている。それを足掛かりにすれば、加速に問題は無い。

「クッソォ、小癪な餓鬼共がァ!」

「うおっと!」

末端部分の小さなコンテナから小型機雷を投射し、距離を取らせるゴリアテ。姿勢制御は復活したらしい。その胸部装甲に、速度と体重と脚力を乗せた飛び蹴りを叩き込んだ。

「ぐんぬっ!?」

「おッも!?」

蹴り飛ばしてやろうかと思ったが、予想外の質量に運動エネルギーが大幅に喰われた。なのに凹んですらいねぇ。何使ってんだよこの装甲。

「くっ、まだまだァ!」

「解せねぇなァ!」

蝗丸の逆袈裟を、右腕の装甲で防がれる。しかしその腕に取り付き、肩関節にハイキック。射撃で剥がされた事もあり、爆発で迎撃される事無く可動部を蹴り抜いた。

「アンタみたいな奴が、何故カイザーなんぞに忠を尽くす!」

「何だと!?」

俺の問いに喰い付いてくる理事。

左腕で振り払われ、そのまま浴びせられるガトリングキャノン。腕を交差してバイタルゾーンを守りつつ、股下に滑り込み反撃を試みる。が、足元に機雷をばら蒔かれやむを得ず後退。

「親玉のアンタが直接出張ってんだ、もうそっちは奥の手も出尽くしたんだろ!?大方、部下とデータを逃がす為の殿(しんがり)やってるってとこじゃねぇか!?」

「貴様に答える筋合いは無いわァ!」

「それもう答えだろうが!」

感情的になった右の振り下ろし。サイドステップで躱し、跳躍して再び右肩を蹴り抜く。パーツが歪んだのか、バチバチとスパークが散り始めた。

「カイザーはガイアメモリ開発に手を出し始めてる!だがこのカイザーPMC襲撃でドーパントは出て来なかった!つまりここにガイアメモリは無いんだろう!アンタはメモリを製造する工場を建てるのに必要な建築会社のトップ!にも関わらずメモリを渡されてねぇ!つまり、アンタに情報を持たせず棄て駒にしようと、上が判断したって事だろうが!」

「くっ!」

「甘いわッ!」【HEAT!】

 

━ボゴゴゴンッ!━

 

「ぐわぁっ!?」

ミサイルポッドを開いた瞬間、ヒートで炎を振り撒いて暴発させる。発射口はこれで破損した。ゴリアテはもうミサイルと言う手札は切れない。

「なぁ・・・俺は一応、アンタを認めてんだぜ?アビドスを合法的に追い詰めた手腕も、最終的に逃げ出すんじゃ無く、自分から最前線に立つその覚悟も・・・そんなアンタが、何故カイザー如きに使われる?」

「子供には分かるまい!積み上げて来た物の重さも!それに伴う責任も!今居る地位を四六時中狙われ続けるプレッシャーもッ!」

「だから!何でそんな所にしがみ付いてんだっつってんだよッ!」

蹴飛ばそうとして来る右脚を躱し、真上に跳躍しながら抜刀。さっき蹴り付けた肩関節を狙い、一息に振り抜く。

「くっ、アクチュエータが・・・!」

「今回、幾らなんでも判断が性急過ぎたよな?早くしろと上から圧力が掛かったんじゃねぇのか?」

「ぐっ・・・だとしたら、何だと言うのだ!」

「そのせいで、計画は瓦解した。挙げ句棄て駒にされるんだぞ?上に振り回され、隠れ蓑として使い捨てられる・・・あんまりじゃねぇか」

「貴様ッ・・・貴様如きが、まさか私を哀れむつもりか!?」

「んな訳ねぇだろ」

後方に攻撃中止のハンドサインを送りつつ、ゴリアテに、理事に3歩歩み寄る。どうやら叩き潰す気は起きないらしく、まだ聞きの姿勢だ。

「純粋に、アンタの手腕がそんな不義理に沈むのが勿体ねぇと思っただけだよ。

最初は何でそんなにトップを兼任してんのか疑問だったが、要するにそうやって優秀さをアピールしてなきゃ蹴落とされるからだろ。だがそんな立場、針の筵とどう違う?そして現に、アンタは棄てられた。そもそも切り捨てるつもりで、囮にされてたのかも知れん。そんな主人、忠を尽くすに値するのか?」

「ッ・・・!黙れェェェッ!!」

コクピットから打撃音が響いた。恐らく、どこかしらを殴り付けたのだろう。そしてゴリアテはガトリング同士を打ち合わせ、高音と共に火花を咲かす。

「貴様が何を言おうと、最早私はカイザーの一員でしか無いッ!カイザーの他に、選択肢など無いッ!

 

我が魂はカイザーと共にありィッ!!」

 

ガシャンと仰角を下げるプラズマキャノン。その砲口が、俺を焼き融かさんと輝く。

【METAL!】

「残念だ。ハァッ!」

背中のメタルシャフトを、砲口に投擲。内部機関に突き刺さり、エネルギーの収束は緊急停止された。それでも間に合わず、煙とスパーク、小爆発を伴って、キャノンは致命的な損傷を負う。

「何ッ!?」

「じゃあ、こうするしかねぇわな」

 

━パキッ ズギャンッ!━

 

「ぬわッ!?」

フィンガースナップを合図に、1発の弾丸がゴリアテの肩を貫く。既に壊れかけだった所だ。

とは言え、破損箇所を正確無比に的中させるアルの腕前には頭が下がる。後方にサムズアップしながらメタルを引き抜き、鯉口を切った。

【HOPPER!MAXIMUM DLIVE!】

「一刀両断!神食斬!」

 

━ザォウッ!━

 

エネルギーを纏わせ、蝗丸を振り抜く。削り喰らう刃は砕けた装甲を蝕み、合金の骨すら断ち、遂に鋼の巨人の右腕を斬り飛ばした。

「グッ!?何のォ!!」

「遅いわ」【QUEEN!MAXIMUM DLIVE!】

残った左腕の砲身が回転し始めるが、その隙間に空間設置型のプロテクションを挟み込む。

「クイーン・エスクード」

 

━ガキャキャキャキャキャッ━

 

「っ!モーターが!?」

エスクードは強度をそこそこに落とし、()()()()()()()()()()()()()()に特化させたバリアだ。故に回転可動部に差し込めば簡易的な拘束具にもなる。

ガトリングは電力回転を肝に連射する機構。更にこの大きさをブン回すパワーを無理矢理閉じ込めれば、パーツには当然ながら限界を超えた負荷が掛かる訳だ。

「アンタが言っても止まらねぇのは分かった。なら、俺の流儀で止めてやる。エスクード!」

ゴリアテの足首を、上から押さえ込むようにバリアを設置。足の甲にある装甲の膨らみのせいで引き抜けず、これでもう動けない。

「くっ、このっ!小癪な!」

「アンタのズル賢さ程じゃねぇよ」

ACCEL(アクセル)!】

大きくバックステップしながら、左手に新しく手に入れたメモリを取り出す。ドライバーのクイーンと入れ換えると、左腕が瞬く間に変質。肩にエンジン、上腕にエグゾーストパイプ。そして前腕にはジェット噴射孔にも似たマフラーが付いたガントレットが出現した。

 

━ブォン!ブオゥンッ!━

 

手首をスナップすると、スロットルを捻ったように回転数が上昇。マフラーからは炎が吹き出す。蝗丸を地面に突き立て、暴れだしそうになるのを抑え込みながら、メモリを叩いた。

【ACCEL!MAXIMUM DLIVE!】

「さぁ・・・振り切るぜ!」

エンジンが唸り、出力が限界まで上昇。噴き出すジェットガスに身を任せ、ブレーキを外して一気に跳躍。ブレそうになる姿勢は、翅を展開して制御する。

殺人的な加速の中、加速に真っ直ぐ乗るよう右足を突き出した。

 

「アクセル!ストライクエース!」

 

腹部に叩き込んだ必殺の一撃。その衝撃は、装甲からそれを支える内部フレームに伝播し、圧潰させ、粉砕。その胴体を貫通して、地面をザリザリと削りながら着地する。

「ぬぅおわぁぁぁぁ!?」

理事の絶叫と共に、ゴリアテは内側から爆発した。肘内に挟んで汚れを拭い、蝗丸を納刀。陽炎立ち上る翅を数度震わせ、熱を逃がしながら立ち上がる。

「さぁ・・・お前の罪を、数えろ」

・・・なんて格好付けて言ってみたが・・・アイツ居ねぇな。ベイルアウトしてるわ。うん、吹っ飛んでった。

「・・・よし、蝗屋及び便利屋諸君。仕事は完了だ。良くやってくれた」

「えっ?お友達の救出は?」

「それはもう向こうがやってるさ。どうする?何も言わずにクールに去るかい?」

「・・・そうね。私達は便利屋・・・報酬の為に戦うもの。ローザスト、忘れてないわね?」

「おう。100万な・・・ほら、これで」

「えぇ、確かに」

小切手を切り、アルに渡す。これで依頼は完遂だ。

「ふぁ~、疲れた!じゃあまたね?バッタのお姉さん♪」

「悪くない仕事だったよ。気を付けてね」

「お、お疲れ様でした!」

「おう。次も味方として会いてぇな。あばよ、便利屋68」

全身から蒸気を噴き出し、冷却。蝗丸を懐に仕舞い、ヒラヒラと手を振る。見れば、モアとリエも薬室から弾を抜いていた。

「待って!」

「ん?」

俺を呼び止めたのは、アル。帽子を脱いで胸元に当て、その視線は不安げに右下に向いている。

「どうした?」

「あの・・・私は、恥を雪ぐ事が出来たかしら・・・」

「・・・成る程な」

以前の説教、まだ心に引っ掛かっていたようだ。失敗を忘れないのは良い事だな。

「・・・今回に関しては、お前達に文句は無い。帽子も、良く似合っていたさ。胸を張れ」

「わぷっ!?」

帽子を取り、ボフッと被せる。その縁から覗く眼を覗き込み、小さく笑った。

「さっきの狙撃はカッコ良かったぜ?これからも励みな」

「っ!・・・えぇ!楽しみにしていて頂戴!次に会う時には、更に立派なアウトローになってるんだから!」

「ハハハ・・・あぁ、期待しとくぜ」

踵を返し、サムズアップを贈る。そのまま2人を引き連れて、俺は基地の最奥に向かった。

 

To be continued・・・




~キャラクター紹介~

・叢雲コウ/仮面ライダーローザスト
大暴れした飛蝗少女。
尖兵集団をボムで一網打尽にし、ゴリアテ1機を素のスペックで達磨にした。更にミメシスを応用して曲芸じみた防御を披露し、カラミティ・ストライクで一網打尽。
その後ヒナを上空で蹴り飛ばし、ヒナが滑空しながら上から撃ち下ろすと言う鬼畜コンボを発動。基地の施設の3割がお釈迦となる。
更に無数のドローンの大半を一刀の元に切り伏せ、理事と対峙。乱入した便利屋68と共同し、ゴリアテのハイエンドモデルを相手取る事となった。
理事の優秀さを認め、敵方に居る事を心から惜しんでいる。

・カイザー理事
仕事に殉じようとした大人。
膨大なストレスに曝された結果、情緒はかなり不安定。しかしそれでもカイザー本社に少しでも利益を持ち帰れるよう尽力し、最後の殿を自ら務めた。責任感と忠誠心、覚悟は並外れたものがある。
惜しまれながらもローザストと激突し、敗北。ベイルアウトユニットと共に遠方まで射出された。

・対策委員会
カチコミ掛けたアビドス組。
描写は少なかったが、実数としてはローザストより1機多くゴリアテをスクラップにしている。
この後、ホシノを無事奪還する。

・風紀委員会
ちょい薄味な治安屋。
ほぼほぼ対策委員会の露払い。アコはその点でブツクサ言っているが、風紀委員会は汚名の払拭として来ているのでヒナが黙らせた。

・便利屋68
結構重要な活躍が出来た問題児達。
今回の働きをローザストに認められた事で、アルはより一層自信を付けた。帽子も多少は様になっている。

・亜門モア&科加部リエ
先行登場枠。
本編での出番は地味だったが、実は裏で100人以上蹂躙していたりする。

~アイテム・技紹介~

・ボムメモリ
爆弾の記憶。
赤黒いフレームが特徴であり、レイズする事でローザストの左腕を爆弾怪人のものに変質させる。
武装は肩からマフラーのように垂れた簾状の爆薬の束と、グレネードを模したシールドガントレット。このシールドは外部からの衝撃や熱をエネルギーとして取り込む事で軽減し、自身の爆発力に上乗せする事が出来る。その反面、キャパシティを超過すればその瞬間に大爆発するので、扱いには注意が必要。

・ボム・デトネリンクラスター
クラスター爆弾で出来た爆導索。名前はデトネーティング(爆轟)+(ライン)+集合体(クラスター)
爆薬束を引き千切って振り抜き、その線上に子爆弾をばら蒔く攻撃。多段爆裂の衝撃と爆圧によって敵を蹂躙する。

・アクセルメモリ
加速の記憶。
朱色のフレームが特徴であり、レイズする事でローザストの左腕をエンジン怪人のものに変質させる。
手首がスロットルになっており、スナップさせる事で出力を上げる事が出来る。
素の相性自体は悪くないものの、使い終わってすぐに変身解除すると熱が体内に残ってしまう為、使用後は入念に放熱しなければならないと言うデメリットを持つ。しかし、それと引き換えに得られるエネルギーと加速力は驚異的であり、時速150kmまで2秒で加速する。

・アステール
リエの専用武器。意味はギリシャ語で星。
コスモスと瓜二つの、サウスポーモデルのコルトガバメント。マエストロが直々に手を加えており、リエの神秘を引き出し増幅する触媒となる。

・無銘ノ蟲刃身
蝗丸のミメシス。
一定以上の衝撃によって一撃で確実に壊れるが、その対象に与えるダメージは相対速度に比例すると言う特殊な性質がある。その為、これを使ってもダメージが下がると言う事は無い。なので弾丸を受け止めれば確実に止まり、敵を斬り付ければしっかりとダメージが入る。

・カラミティ・ストライク
仮面ライダーセイバーに登場するデザストの技。それを模倣したもの。
今回は対象が多かったので、サイクロンで威力を上昇させている。

・ホッパー空崎カタパルト
サポート技。ヒナと共に上空へと跳躍し、目標に向けてヒナを蹴り飛ばす。そこからヒナが翼を広げ、滑空しながら弾幕射撃で制圧すると言うコンボに繋げる。

・アクセル・ストライクエース
アクセルのマキシマム。
腕のマフラーから爆炎をアフターバーナーのように噴射し、その勢いを乗せて放つライダーキック。助走距離によって威力が増す。この際、噴射する炎がAの文字を象る。
モチーフはギーツのブーストフォーム(上半身)。
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