3つの光跡、3つのティアラ   作:サンタクララ

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チーム〈ハチサ〉

 メイクデビューからしばらくして、次のレースであるサフラン賞に向けてトレーニングをしている最中のこと。芝コースを走っていたら途中でテイクと二人のウマ娘が会話しているところを見かけた。あれがチームのメンバーなのだろうか?

 なんとなく気になって、周回が終わって休憩になったら三人がいたところへと向かった。

 

「あ、ゾンネちゃん!どうしたのです?」

 

「さっきランニングしてる時に見つけて、テイクのチームの人と一緒なのかなって気になったから」

 

 そう言いながら、テイク以外の二人を見る。

 片方は鮮やかなオレンジっぽい栗毛でリングのあるロングのツーサイドアップ、睫毛とアイラインをバシバシにキメていかにもギャルという感じで、耳飾りは黄色い花にリボンがついたものを左耳に。

 もう片方は落ち着いた亜麻色に近い栗毛で、髪型は肩にかかるセミロングのハーフアップ。目を細めてにこやかな様子で佇んでいるはんなりした感じの人だ。桜っぽい白い花と葉っぱをモチーフにした耳飾りを右耳に着けていて、モチーフがあるなら牡馬らしい。

 そして特筆すべきは、二人ともジャージの上からでもハッキリとわかるほど……何がとは言わないがデカい。もしや、テイクはこんな人たちと一緒にトレーニングしているのだろうか?だとしたら結構うらやまし……こほん。

 

「はい、そうなのです!二人ともとっても優しい先輩なのですよ。お菓子もくれますし」

 

「へぇー、このコがテイクっちの同室なんだ?お人形みたいでキレイじゃんよ~♪推せる~☆」

 

 そう言いながらオレンジ髪の方のウマ娘がオレの顔をマジマジと見つめる。あ、やっぱり見た目どおりギャルキャラなのか。というか相手の顔が良すぎて直視できなくて困る。

 

「こらこら、近すぎなんちゃいます?困ってしもとるやん」

 

 次いで、亜麻色髪の方がそう言ってギャルを嗜める。雰囲気から薄々そうなんじゃないかと思っていたけど、どうやら京都弁キャラらしい。

 

「あ、そうだねキヨミっち……メンゴメンゴ、同室ちゃん!まずは自己紹介しなきゃかな?」

 

「うん、わたしはインデアゾンネ。テイク……クルーシャルテイクの同室……です」

 

 オレがそう簡単に紹介すると、二人が顔を見合わせて、それからギャルの方が一歩前に出てきた。

 

「あーしちゃんはコレオプシスカラーっての♪こんな感じだけどいちおGⅠで連対もしてるチョーつよウマ娘なんだよ☆」

 

「……次はうちですね、うちはキヨミズノマイ言います。よろしゅうお願いしますね、ふふふ」

 

 コレオプシスカラーとキヨミズノマイ、か。テイクやオレ自身と同じく前世で聞いたことがない名前だ。

 

「どうも、テイクがお世話になってます……?」

 

 今まで先輩とあんまり話したことないから、イマイチどういう返事をすればいいのかわからない。そう思ってどこかぎこちない返しをしていると、テイクが側に来て。

 

「ゾンネちゃん、自然体でいいと思いますよ。先輩たちは優しいのでタメ口でも気にしないのです」

 

「そ、そう……?えっと、テイクのチーム……ってこれで全員?」

 

 アニメ版1期ではチームは5人以上でないといけないという設定があったが、2期ではチームカノープスが4人だけ*1なのに正式に稼働している辺りそこら辺の条件は緩くなったのだと思われる。

 ただ、アプリのメインストーリーではメジロマックイーン一人だけになってしまったチームシリウスはさすがに最低人数を下回っていたので、チームの要件はまあ3人くらいなんだろうか?

 

「んや、もう一人いるよ?今トレっちとプールでワンツーマントレーニングしてるじゃんねー☆」

 

「あの娘はまだ体が完全には出来上がってないらしいです。やからトレーナーはんが付きっきりで見とるんや」

 

 トレセンに入ってメイクデビューに出たのに本格化を迎えてなかったり、本格化はしても体の成長が追いついていなかったりという事例はあるので、チームトレーナーが見ているという彼女もそう言う感じなんだろう。そう一人で納得しているところに、さらに近づいてくる足音がする。

 

「インデアゾンネ……と、チームハチサ?どうかしたのか?」

 

「……トレーナー?まだ休憩終わってないのに呼びに来たの?」

 

 そうトレーナーの声に振り返りながら、一体何しに来たんだとアイサインを送るが知らんぷりされた。だがしかし、それとは別に気になることがある。

 

「……いやちょっと待って、このチームの名前って」

 

 今トレーナーがさらっと言ってたけどチームハチサ……?チーム名って確か恒星の名前から付けられていた気がする*2が、全く聞いたことのない名前だ。

 

「……その」

 

「……どない言いましょう」

 

 テイクとキヨミズノマイがそう言い淀んでいると、コレオプシスカラーが人差し指を口元に寄せて愛らしくウインクをしながら沈黙を破った。

 

「あっ、ゾンネっちチーム名ダサいと思ったでしょ」

 

「いえ、そういうわけでは……」

 

「ちょっと待ってね、あーしちゃんたちもぶっちゃけダサいと思ってるから」

 

 ……言っちゃったよこの人。確かにスピカとかリギルとかカノープスとかカペラとか、シリウスとかアスケラに比べるとハチサはちょっとインパクトが弱いかもしれないが。

 

「否定はしいひんけど、言うたらあきませんて~」

 

「の、ノーコメントなのです……」

 

 そうしてオレは、何とも言えない微妙な空気をこれ以上悪化させないように、黙って様子見をして誰かが話を変えるのを待っていた。

 

「そうか、じゃあチーム名を決めたのは誰なんだ?」

 

 ……のだが、オレを完全に無視して話しづらい話題を続けようとするトレーナー。お前そういうところだぞ。

 

「トレーナーはんや」

 

「トレっちじゃんね」

 

「トレーナーさんだと思うのです」

 

 そう三人が声を揃えて言う姿を見て、この場にチームハチサのトレーナーがいなかったことに安堵した。会ったことがないからどんな人となりなのかは知らないが、目の前でこんな光景が繰り広げられたらと思うとさすがにちょっと可哀想に思える。

 

「そうなのか。さて……ちょうどいい機会だし、良ければ俺たちも練習に混ざってもいいかな?」

 

「えっ」

 

 いやこのタイミングで言うか?本当こいつは図太いというか無神経というか……いつものことだしちょっと慣れてきてしまっている自分もいるが。

 

「うん、いいよ~!あーしちゃんにお任せじゃんじゃん♪」

 

「うちもええですよ~」

 

「ふふ、これまでゾンネちゃんとの併走は全然勝てませんでしたが、今日こそは勝つのですよ……!」

 

 そうして、思いの外快諾されてオレたちはテイクを含むチームハチサと共同で練習することになった。

 

 

 

 

「たああああっっ!!」

 

「まけない、じゃんねっっ!!」

 

 ハチサの中でも、ティアラ路線の先輩で一番学べることが多そうな相手であるコレオプシスカラーとの併走中。

 彼女は桜花賞で2着だったがオークスでは10着に大敗し、一応次走は秋華賞の予定だがそれ以降は短距離・マイル路線に専念する予定らしい。

 

「くっ、さすがに、クラシック級の先輩は強い……!」

 

「ちょっとでも、気ぃ抜いたら、やばたにえんだったけどねっ……!」

 

 相手からの提案で、芝1600mでのマッチレース。逃げを打つコレオプシスカラーを慣れた先行策で追走し、コーナーの終わりから仕掛けて追い抜こうとしたが、さすがにGⅠ戦線で戦う先輩だけあって追っても追っても並べず、半バ身差までは追い詰めたが逃げ粘りを決められた。

 

「どうだ、うちのインデアゾンネは強いだろう」

 

「いや、あんたのじゃないし。担当ではあるけどそんなんじゃないから」

 

 相変わらず軽々しい口ぶりだ。大体おだてたって何も出やしないのに、一体何が目的なんだか。

 

「ふふ、なんやえらい仲良さそうやんなぁ」

 

「うんうん、なんか熟年夫婦?みたいじゃんね♪」

 

 そう言って年長二人がオレたちを微笑ましそうに眺める。ちくしょう、そんなんじゃないって言ってるのに。というか夫婦ってなんだよ。

 

「……もうっ、続きやるから!テイク、併走!」

 

「は、はいなのです!」

 

 オレはその場から逃げるようにテイクを連れていき、1800mのスタート位置まで移動して強引に併走を始める。そして仕掛けどころを間違えてしまい、クビ差だが彼女に先着を許してしまった。

 

 

 

 

 そうして色々あった合同練習、そろそろ終わりの時間にしようかというところで、先輩二人が自分の荷物から何かを取り出して、雑談していたテイクとオレの方へ歩み寄ってきた。

 

「テイクっち、ゾンネっち、糖分補給にこれあげる~♪」

 

「うちからも、今日お疲れ様ですってことで~」

 

 そうしてコレオプシスカラーは側面に『延糖』とデカデカと書かれたカップからロール状のグミ?キャンディ?みたいなものを、キヨミズノマイは焼き八つ橋をそれぞれ差し出してきた。

 

「ど、どうも……」

 

「わあ、先輩たちのお菓子!」

 

 受け取って、まずは食べ方が説明されなくとも分かる八つ橋の方をいただく。そして、ロールキャンディ?の方も包装を開けてみるが……。

 

「これ、どうやって食べるの……?」

 

「丸まってるのを広げて、そう、こうしたら分かるけどグミなんだよ~☆」

 

 広げて見ると、確かにひもグミの亜種みたいな感じだ。白い部分は……あ、オブラートとかじゃなくて普通に紙か。グミの部分はというと、ブドウ味だったりイチゴ味だったり、まあ普通に伸縮性のあるグミだな。

 

「レインボーロールグミって言って、ウマトックで話題の映えスイーツじゃんね♪」

 

「よく分からないですが、美味しいのです!」

 

 それでいいのか、同室よ。にしても、美味しそうに食べるからか先輩たちに餌付けされまくっているようだ。単純な疑問だが太らないのだろうか?

 

「テイク……いや、なんでもない」

 

「ふぇ?」

 

 まあ、本当にヤバかったらチームトレーナーが何とかするだろう。そのためのトレーナーだし。そういうわけで、お菓子を食べ終えたら今日のトレーニングは解散、となったのだが……後日。

 

 

 

「どうしたの、テイク……そんな、周りが灰色に見えるみたいな顔して」

 

「間食減量令が出たのです……」

 

 絶望的な表情をしていたので何かと思えば案の定、トレーナーからおやつを減らすよう言われたらしい。

 

*1
ナイスネイチャ・ツインターボ・イクノディクタス・マチカネタンホイザ。3期ではサウンズオブアースとロイスアンドロイスが加わっている

*2
アニメ及びアプリメインストーリー、スターブロッサムなど。アプリのアオハル杯シナリオでは特に固定した由来はなく様々なチーム名、熱血ハチャメチャ大感謝祭では花の名前




作者の性癖が何となく滲み出ている気もする新キャラ二人が登場。そしてこれまで謎に包まれていたテイクのチームですが、まあこんな感じのそこそこ緩いチームです。



ちなみにハチサという名前が散々な扱いをされていますが、これはあくまで彼女たちの所感なので深く考えないでいただきたいです。
一応あらかじめ被りがないかは調べていますが、もしチームハチサで被った作者さんがいたら先に謝っておきます。本当に申し訳ありませんでした!
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