スターフォックスFree実況プレイ 帝国設立縛り   作:竹製手桶

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幼馴染への感情がデカい女、好き(自己紹介)

【追記】
最後のチームメンバー紹介でマーのフルネームが間違っていました。訂正済です。


side M.I『バナナケーキ』

焼き立てのバナナケーキは現在、入手困難である。材料であるバナナ自体が希少である故だ。

かつて一大生産地であった宇宙農園は現在戦場となっている。闇市で希少なそれが出回ってる場面は何回か見たことあるけど、高過ぎて食指は伸びなかった。

バナナだけではない。ケーキを焼くには貴重品となりつつある砂糖やバターもたっぷり使わないといけない。無論、それらを用意するには大金をはたかないといけないし流通路も限られている。さらには調理技術を持った人物と、それを十全に発揮出来る設備も不可欠だ。

このケーキひとつを手に入れるために一体どれだけの金とコネが必要なのか。分からないほどあたしは世間知らずではなかった。

 

「好きだっただろう。私への感謝に咽びながら食べることだな」

「ありがとう、アンドリュー!大事にするね!」

「大事にするよりも早く食べないか、痛むぞ。それに貴様が望むならいくらでも用意してやっても……って、抱きつくな!」

 

何年も会っていなかった幼馴染は随分と背が伸びて、声も低くなっていたことは作戦前のブリーフィングの時点で分かっていた。あたしを押し退ける力も強くなっている。

だけどこちらを見る目つきや高い鼻、ゆらりと揺れる白い尻尾は幼い頃の面影をきちんと残していた。

 

「いいの? 後でやっぱり一口って言われてもあげないからね?」

「何だ、いらないのか? いらないなら私が食べてやるが」

「ダメ! 全部あたしの!……でも一口だけならあげる」

 

こっちを揶揄う口は相変わらず。それに懐かしさを感じながら、あたしはフォークでケーキを一切れだけ切り分ける。

叔父さんそっくりな彼の目はあたしの手元を見ていた。意外だと言わんばかりに見開かれ、ややあって細まった。

 

「貴様の好物だろう。本当にいいのか?」

「一口だけね」

 

フォークに刺したケーキの欠片を彼の口元へ運ぶ。彼は口を開き、白いクリームがついた欠片は舌の上に落ちる。

彼が口を閉じるのを見計らってからフォークを引き抜く。

 

「あとは全部あたしのだからね!」

「元からそのつもりだ。……しかし」

 

彼はケーキを飲み込むと、あたしの右手にあるフォークを見た。今は手袋をして隠しているけれど、あたしの右手は義手だ。手だけじゃない。両足も義足だ。

そうなる原因を作ったのは幼かった頃の彼だ。厳密に言えば彼を取り巻く環境がそうさせたのだから、あたしはちっとも気にしていないのだけど。アンドリューはあたしの思っている以上に責任を感じているようだった。

 

「もう、痛くないのか」

「痛かったらここにいると思う?」

「いいや。思わない」

「なら聞かなくてもいいじゃない。もう終わったことだし」

 

彼の手が義手に触れた。手袋越しに金属の感触を確かめるように彼の指が動く。あたしも遠慮する必要はなかったから、左手を重ねて数年ぶりの彼の手の感触を楽しむ。

 

「文字通り痛くも痒くもないから。ね?」

「そうか、良かった」

 

彼はほっとしたように笑った。その笑顔があまりにも幼かった頃の彼とそっくりで、あたしは思わず笑ってしまった。

それからあたしたちは色んな話をした。彼がアンドルフ軍に入ったのはやはり叔父さんを支えるためだった。予想は出来ていた。時々頭の中に聞こえる謎の声もしきりにそのことをあたしに教えようとしていたし。

会話している間、彼の目はまっすぐにあたしを見ていた。あたしを通して誰かを見るのではなく、あたし自身を見ていた。

そのことが、何よりも嬉しかった。小さい頃から彼だけは、あたし自身を見てくれている。パパやママはあたしを通して別の誰か(アンドルフ)を見ているけど、アンドリューは違うんだ。

 

「ねぇ」

「ん?」

「……ううん、やっぱり何でもないや」

 

彼は相変わらずあたしの手を撫でていた。義手は触り飽きたのか、生身の方の左手をぎゅっとしたり離したりしている。

もしかしたら彼は気づいていないかもしれない。だけど、その仕草は昔、あたしを励ます時にしていたのと全く同じだ。

あたしはもう大丈夫なんだよ。そう言いたかったけど言えなかった。だってそれを言ったらこの幸せな時間が終わってしまうから。だから、また今度言うことにする。

 

「何だ、何か言いたいことがあるならはっきり言え。次いつ会えるかは、誰にも分からないのだからな」

「会えるよ。チームメテオライトはアンドリューの忠実な部下だもん。呼んでくれれば絶対に行くよ」

「何……?」

「使える駒は多い方が困らない、でしょ?」

 

彼は微妙そうな顔をする。けれど本当のことだ。

リーダーは弱みを握ったあたしに逆らえないし、他のメンバーは軍への帰属意識より仲間への個人的な情が勝つタイプだ。だからメテオライトをどう動かすか決めるのは実質あたし。

アンドリューはあたしのことを馬鹿な幼馴染と思ってるかもしれないけど、あたしだって色々考えてるんだから。今は弱っちくて頼りないあたし達だけど、いつかきっと必ず彼の役に立てる筈だ。

 

「それに、あたしだってアンドルフ様の御役に立ちたい。……ううん、違うな。あたしはアンドリューの近くにいたいの。実際の距離は離れちゃうけどさ。アンドリューが困ってたら誰よりも先に助けに行けるくらいには傍にいたいの」

「そ、そうか。き、貴様にしては殊勝な心掛けだな」

 

彼は何故か顔を赤く染めるとそっぽを向いた。耳も忙しなく動いているから、何か気に触ることを言ってしまったのかもしれない。やっぱり叔父さんといる方が楽しくて大事なのかなと思いながら彼を見上げると、一瞬合った目も逸らされた。

 

「アンドリュー?」

「な……、何でもない。それよりケーキはもういいのか」

「もう全部食べたよ。ごちそうさま、本当にありがと」

 

彼がくれたという事実もあって、世界で一番美味しいバナナケーキだった。本当はもっと味わって食べたかったけど、今の彼は皇帝直属部隊スターウルフの一員。あまり時間を取らせるわけにはいかない。

 

「じゃあ、そろそろ行くね」

「ああ。……いや待て、最後にひとつ聞きたいことがある」

「何?」

 

彼は咳払いをひとつするとあたしを真っ直ぐに見つめた。

 

「貴様は……、この戦争が終わったらどうするつもりだ?」

「戦争が終わるのなんて何十年先か分からないじゃない」

「我々が終わらせる。少なくともアンドルフ叔父さんはそのつもりだ。だから聞いている。そのときに……こう、具体的な将来設計はあるのか。心に決めた相手がいたり、やりたいことがあったりするのか」

 

あたしは言葉に詰まった。将来なんて考えたこともなかったからだ。今を生きるのに精いっぱいで、そんなことを考える余裕は無かった。彼に聞かせられる夢も希望もない。あるのは、ただひとつ。

 

「別にそういうのはないけど、全部終わった後もアンドリューの傍にいたい。……ダメ?」

「……は!?」

 

彼は素っ頓狂な声を上げた。周りに人がいなくて本当に良かったと思う。仮にも皇帝直属部隊の一員がこんな声を出しているのを聞かれたら一大事だ。イメージダウンは避けられない。

 

「き、貴様は何を言って……!」

「多分アンドリューは帝国の重要なポストに就くだろうから、ちゃんとした後ろ盾のある人がパートナーとして選ばれるよね。となるとあたしでも狙えるのは……、ボディガード!うん、いいね!」

「それを本人の前で言うか!せめてボディガードではなくてだな……」

 

彼は今日一番のしかめっ面をし、もにょもにょと口の中で何かを呟いた。その表情が面白くて思わず笑ってしまうと、彼は一層頬を赤くした。あたしの笑いが少し収まると、むっとした顔の彼にいきなり腕を掴まれる。

 

「え? 何?」

「よーく分かったぞ。貴様は自分の立場を何も分かっていないということがな」

 

とん、と彼の指があたしの胸を突いた。何のことか分からずきょとんとしていると、彼は朗々と宣言する。

 

「この戦争の間に探しておけ。貴様のやりたいこと、戦いの後に何を残したいのかを。全てが終わって凱旋した際、改めて聞いてやる」

「それって……」

 

この戦争を終わらせるということ。それはアンドルフ軍がこれからコーネリアへ本格的な侵攻を開始して、コーネリアを制圧するということだ。

その中で皇帝直属部隊のスターウルフがどんな役目を担うのか、あたしには分からない。頭の中の声も沈黙している。だけど危険だってことだけは確かだ。

アンドリューはまだ全然強くないし、それを補うような頭脳もまだない。もしかしたら、彼の可能性が花開く前に撃墜されて死んでしまうかもしれない。

そう思った瞬間、目の奥がつんとした。ダメだと思ったけど、もう止められなかった。

 

「泣くな」

「……泣いてないもん……」

 

彼が指であたしの目元を拭った。それでも涙が止まる気配はない。それどころか勢いを増している始末だった。

 

「確かに私はまだウルフェンの制御に慣れていないし、未だにピグマから機体を破損するなと出撃前と後に小言を言われるほどだ。しかし、それでも私はスターウルフの一員だ。皇帝直属部隊の一員として、アンドルフ軍の一翼を担っている」

「うん……」

「だから、その……。仮に私が撃墜されたとしても、貴様が気にすることではない。私は私の意思でスターウルフに入ったのだからな。それに、だ」

 

彼はそこで言葉を切った。そしてあたしの目をじっと見つめる。彼の目は真剣だった。あたしだけを見ていた。

 

「おじさんのためにも、私は必ず生きて帰る。だから泣くな」

「……分かった」

 

あたしは涙を拭った。それでもまだ不安は消えなかったし、彼がいなくなる未来が頭をちらついて消えなかった。

 




◤ ◤ チーム『メテオライト』 ◢ ◢


リーダー……メイ・イルード(暫定)
銃でドンパチする世界で白兵戦特化の雌猿。幼馴染への感情がデカすぎる。一人称は『あたし』

サブリーダー……マー・サラブレッド
色々後ろ暗い事情があるっぽい雄馬。これからメイに振り回されることが確定している。一人称は『俺』

パイロット……チキ・ブロウ
ガラガラ声の雄鶏。この中で一番空中戦の適性がマシなので消去法でパイロットとなっている。一人称は『オレ』

ガンスミス……カトル・ホルスター
オネエ言葉の雄牛。危ない薬をキメてラリラリしてる姿をたまに目撃されている。一人称は『わたし』
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