スターフォックスFree実況プレイ 帝国設立縛り 作:竹製手桶
見切り発車で進めて来た本作も、一応どう決着つけられそうかはほんのり見えてきた気がします。予定通り着地はしなさそうですが。
ブックマークをつけて下さっている皆様、読んで下さっている皆様。貴方がたの足跡が何よりの励みとなっています。本当にありがとうございます。
当初の予定よりもキャラクターが(特にメテオライト面子)好き勝手動いているので設定や性格の矛盾など多いと思います。申し訳ありません。
多分次回の更新で年内の更新は終了です。良いお年を。
オレのチームは変わっている。戦車や飛行機がドンパチやるのが戦場の常だが、このチームは未だに地べたを走り回っていた。
チームは全員見事なまでに飛行機の神様に嫌われてやがる。ヘリを目的地まで飛ばせるだけのオレが一番マシってあたりで察してくれ。
そんでリーダーも変わってやがる。かつて我らがリーダーを務めてたマー・サラブレッドは新人のメイ・イルードを後任に指名して、自分は後見人の席に収まった。
このメイ・イルードって奴が曲者だ。シミュレーターですらまともに飛行機や戦車を操作出来ない癖に、格闘訓練では負け無しだ。細くて長い指は銃でもグレネードでも自由自在に扱う。種族的な特徴ってヤツだ。猿種族のアイツは、一度見た技術は絶対に忘れない。見様見真似で何でもかんでも習得しちまう。アイツ曰く、幼馴染はもっと器用で真似るのが上手いんだと。どんな化け物だそれは。
まぁ、それはいいんだ。強いだけの化け物なんて戦場にはいくらでもいる。終わりの見えない地獄で生き残れるのは、そういう化け物だけだ。
当人は詳しく語りたがらないが、アイツには何か目的がある。それを実現するためなら自分にとって大切なものすら切り捨てられる。そういう奴だ。
だけどオレ達に何も思っていない訳じゃあないようだ。作戦中、救援要請をすればちゃんと助けてくれるし必要なものだって先んじて用意しているときもある。アルジーなんて最新鋭とは言わねぇがそれなりに良い戦闘機を貰ってたぜ。
「待ってくれ!」
オレが発見した謎の化け物を倒して、死体の検分が終わった後。オレ達の近くに1機の戦闘機が降り立った。嫌でも覚えているそのペイントとフォルムはコーネリアファイター。コーネリア軍で制式採用されている戦闘機だ。
――オレ達をここで亡き者にして手柄を横取りする気か?
そう思ったのは他の奴も同じだろう。一番構えるのが早かったのはカトルだ。次にマーとオレ。
メイはそんなオレ達を手で制した。アイツはオレ達を庇うように前に出て、戦闘機から降りてきた男と真正面に向かい合う。
「コーネリア軍所属のビル・グレイだ。……君達に聞きたいことがあってここに来た」
奴はヘルメットを外し、オレ達に深々と礼をした。
この戦場において、ヘルメットを外すのは降伏や投降を示す合図でもあった。
戦争にも分かりづらいがルールはある。降伏した相手を執拗に攻撃するのはそれに反している。それを無視してヤンチャすると皇帝陛下の品位まで疑われちまう。
とはいえ投降すると見せかけて攻撃してくる悪辣な奴もいるモンだから、油断しないに越したことはない。メイはそこが甘いんだ。まだお上品な連中としか戦ってないから、詰めが甘い。
アイツがもしやられたときに備えて、オレ達はいつでも引き金を引けるように気持ちを引き締めておく。
「怪物の死骸ならあっち。あたし達も報告の義務はあるから一部は持ち帰らせてもらっている」
「ああ。それは分かっている。まずは……ありがとう。君達が助けてくれたから、俺達は助かった」
「べ、別にアンタ達のためじゃない。あたしはアンドルフ軍のために怪物を倒しただけ。勘違いしないで」
「それでもだ。君達のおかげで助かったんだ。ありがとう」
「………………」
おおう。あのリーダーがたじたじだ。コイツは珍しいモンが見れたもんだ。
「それで、聞きたい事って?」
「ああ、それなんだが……」
ビル・グレイは改めて姿勢を正してオレ達を見渡す。そして言った。
「君達の強さは凄まじいものだ。だが、何故そこまでの強さがありながらベノム軍に与して戦っている?」
そりゃあ、コーネリアが気に食わないからだよ。少なくとも、オレはそう。
犬種族が大多数を占める世界で、オレ達ハズレ者は肩身が狭い。オレだって、出来ることなら戦争なんかしたくはなかったさ。青空の下でラッパを吹いてたあの日々が恋しいぜ。
「あたしが話せるのはあたしの動機だから、ベノム軍の総意じゃない。それは分かってほしい」
「ああ」
メイは頷き、言葉を続けた。オレ達も耳を傾けることにした。コイツが自分の考えを話すなんて珍しいからな。
「あたしには、メイ・イルードには大事な人がいる。この世界の何よりも、ライラット系の平和なんかよりも大切な人。……そう睨まないで。これは総意じゃないって前置きしたでしょ。彼は目的があってベノム軍に志願した。だからあたしも彼の夢を叶えるためにベノム軍へ入った」
「……それは、アンドルフの命令よりも大事な事なのか?」
「ええ。少なくともあたしにとっては。皇帝陛下と彼のどちらかを選べと言われたら、あたしは迷いなく彼の手を取れる。尤も、あたしのチームメイトやベノム軍の大多数は違うけど。大多数は彼の手を手酷く払い除けた後、皇帝陛下の爪先に口付けるでしょうね」
おおう。こんなにハッキリ宣言されちゃあ立場がないぜ。いや、相手が敵だからこそ言えるのか。
ビル・グレイはコーネリア軍だからベノム軍のしがらみに縛られない。だからこそ、メイは目の前の奴に本心を打ち明けることが出来た。
何だかなぁ。オレ達は敵兵より信用ならねぇって言われてるみてぇだ。敵を欺くにはまず味方からとも言うが限度ってモンがあるだろ。
「…………君は、アンドルフの敵なのか」
「それは違う。あたしを含めた皆は皇帝陛下を心から尊敬しているし、陛下が作る未来に希望も抱いている。……でもあたしは、その未来に彼がいないなら、ライラット系全土を敵に回しても戦う。それだけ」
「……そうか」
「要は敬意や好意を持つのと、協力したい味方になりたいって思うことはイコールじゃないってこと。理解した?」
ビル・グレイは何か言いたげだったが、それを飲み込んだようだ。メイの言葉に含まれている意味を自分なりに解釈しようとしてんだな、きっと。
この青年士官、なかなか良い目をしている。オレ達のような日陰者とは違う、光の中で生きてきた奴の目だ。
「さよなら、もう二度と会うことは無いと思うけど」
「……ああ。君も、元気でな」
メイが踵を返してオレ達の方へ戻ってくる。ビル・グレイは戦闘機に乗って飛び立って行った。
「殺さなくて良かったの?」
「別に、どうでもいいから」
カトルに問われたメイはそう答えた。まるで観光客に道を聞かれたような気軽さだ。淀んだ蜜色の瞳はビル・グレイには向けられちゃいない。
コイツが心を砕き、命を投げ出せる相手はこの世にたった一人だけ。コイツにとって大事なのはアンドルフ皇帝陛下でも、オレ達でもない。相手に検討はついちゃいるが……。
「どうでもいいってお前……」
「道端にいた犬の一匹や二匹、殺したところで変わらない。そうでしょ?」
「機密情報とか聞き出そうとする努力ぐらいしろよ、新米リーダーさんよ」
「青年士官にそこまでの権限を与えるほど人手不足に見える?」
実際そうだろうし、ビル・グレイは安々と口を割るほど馬鹿じゃねぇだろうよ。そんなヘマする奴だって知られてりゃあ味方が首根っこ掴んででも止めさせるだろう。
されなかったってことはそういうことだ。これくらいのヤンチャをお目溢しされる程度には、信頼を勝ち取れるほど優秀ってこった。
「アルジーが来た。皆、帰還準備を」
そう言ってメイはさっさと歩き出した。オレ達は顔を見合わせながらも付いて行く。
コイツもアイツも苦労するなぁとオレは思いながらも、秘密を打ち明けたメイに免じてビル・グレイのことは忘れることにした。
その日の夜遅く、オレは目を覚ました。
オレは真夜中から明け方にかけての見張りを担当している。だから帰還した後は直ぐに寝て備えるのが常だ。
「アンタが見張りなんて珍しいな」
「今日は皆疲れてるから。特にアルジー」
本来見張りだったのはアルジーの筈だ。だが見張り番をしていたのは我らがリーダーのメイ・イルード。多分アルジーはコイツが見張りを代わるって言ったからこれ幸いにと押し付けたんだろう。ずる賢いアイツのことだ、コイツの前でわざとらしく弱ってるアピールでもしたんだろう。
疲れてんのは皆同じだろうが。アンタだって正体不明の怪物の報告で脳味噌使いまくったろ。一睡もしてねぇのが見て分かる。
「早死するぞ」
「別に気にしてないから」
「大事な彼のために、命を使い潰すんだろ?」
号外と銘打たれた新聞はフィチナ陥落の記事を示している。その立役者としてスターウルフの名前がデカデカと書かれている。無論、我らがリーダーの愛しの君も。
メイがその記事をしっかり読み解くのを確認してから口を開く。
「アンドリュー・オイッコニー。テメェが操を立ててんのはソイツだろ?」
「……いつから気づいてた?」
「そう怖ぇ顔すんな。別に密告しようって気はねぇし、何か必要なモンがある訳でもねぇよ。強いて言うならさっさとこの戦争にケリをつけてくれ……ってところだ」
新入りのアルジーですら確信してんだ。ソイツよりも長い付き合いのオレ達にゃ分かってるぜ。むしろバレてねぇって思ってたのかよ。メテオライトに入った当初やクレーター作戦のときはもっとボロが出まくってたぞ。
オレとしちゃ戦争が終わるんなら勝者は誰でもいい。
皇帝陛下には確かに恩義を感じているが、先の見えない戦争をダラダラ続けるのはいただけねぇ。いい加減疲れてきたんだよ、やりたくもねぇ仕事を回されたり悲鳴をBGMにして歩くのは。
「頼むぜ。皇帝陛下はこの戦争でライラット系がボロボロになることをお望みだが、オレは正直反対だ。夜明けを知らせるラッパは、誰かが聞いてねぇとな」
「うん、分かってる。……ありがとう」
メイはそう言うと、オレの横を通ってテントの中に入って行った。オレは見張りに戻る。
この戦争がいつ終わるのか、それは誰にも分からねぇし皇帝陛下にだって分からないだろう。
ただ分かるのは一つ。何が起きても朝焼けは眩しいってことだ。