スターフォックスFree実況プレイ 帝国設立縛り   作:竹製手桶

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私生活で激変期が訪れ、バタバタしているせいでちょっと最近筆が止まりつつあります。
なので更新出来なかったり、更新分が短かったり別視点が多くなるかもしれません。
本当に申し訳ない。


side C.H『宝物』

カトル・ホルスターはかつて薬物中毒者であった。心と身体にどうしようもない歪みを持って生まれた彼が、戦争という絶望の雨の中を生きるのにそれはどうしても必要だった。

 

彼が濫用していた薬を安価に、かつ大量に出回るきっかけを作ったのがアンドルフである。

より厳密に言うと、彼が発見した化学合成の理論が発端となってライラット系の製薬産業が一足飛びに発展したからなのだが、その辺りの事情をカトルは知らない。

 

とにかくアンドルフが発明したものが、カトルの生活を劇的に良くしたのである。薬が出回る量が増え、手元で使える量も増えた。故にアンドルフへは感謝の思いがあった。

 

彼がアンドルフ軍にスカウトされたのは、薬で酩酊している間に連れて来られたからである。定期的に注射する分の薬物を支給され、金も貰え、アンドルフに仕えられるのだから二つ返事で受けた。

 

きっと碌な死に方はしないだろうと彼は思っていた。それでいいと思っていた。

 

「新しくこのチームに配属されました、メイ・イルードです」

 

だけど、彼女と出会ってから全てが変わった。

 

「ホルスター先輩と呼べばいいですか?」

「やぁね、他人行儀過ぎるわ。カトルでいいわよ。ホルスターだと銃をしまう方とも被って分かりづらいじゃない?」

 

「普段からちゃんと整備はしておくのよ? わたしがいれば整備してあげられるけど、いつでもいるとは限らないわ」

「そうですね。()()()()()実感してますから」

 

「カトル、これ」

「あら? 珍しい銃と弾薬ね。どうしたの?」

「お土産。ちょっと……、市場に用があったから。リーダーには内緒にしてほしいな」

 

マーとチキは新入りの彼女に一定の距離を置いていた。それが何だか可哀想で、カトルは進んで世話を焼くようになった。

すると彼女は精いっぱいのやり方で、不器用ながらカトルに応えてくれた。闇市で売っていた珍しい銃を土産代わりに渡してくれたり、少しの間ならおしゃべりも出来るようになった。

 

それが嬉しかった。自分があげた分の何かが返ってくるという体験はカトルの繊細な部分に優しく沁みた。

 

「……っ!そぉ〜……わたしが聞いちゃっていいのかしらぁ?その人のお話」

「いいよ。カトルは口が固そうだからね」

 

銃の改造を頼まれた際の言葉が決定打となった。彼女からの信頼は薬よりもよく効いた。注射を打たなくても気持ちが安定するようになった。

 

薬物に頼らなくなったことで、整備の腕も中毒に陥る前の勘を少しずつ取り戻している。

チキなんかは「お前は一生ヤク中かと思ってた」となどと言っていたが、「それよりも大事なものが出来たのよ」と返せるぐらいには安定していたのだ。

 

 

故にメイ・イルードが生死の境を彷徨うことになった際、彼は慟哭した。

 

 

 

チキがペパー将軍を確保して帰還し、残ったマーとメイがジェームズ・マクラウドというとんでもない相手と交戦していると聞いたとき、カトルは全身から血の引くような思いをした。

 

本当なら彼女のもとへ駆けつけたかった。役に立てるかは分からなかったが、弾除けぐらいにはなれるかもしれないと思ったし、実際出ていこうとした。それを止めたのはアルジーだった。

 

「あいつがオレさま達を残した理由を忘れてねぇよな?」

「でも、メイちゃんが!」

「目的を忘れてんのかぁ? オレさま達は皇帝様にあの犬を献上するのが目的だ。もし自分の救出に力を入れたせいで失敗した、なんてあいつが知ったらどうなる?」

 

カトルもアルジーの言っていることは分かる。むしろメイが来る前のメテオライトだったら迷いなく彼女らを見捨てていただろう。アンドルフから命じられたことを優先するのは当然で、そのためなら自分の命ですら投げ捨てられた。

 

だが、今は迷いが生まれてきている。

薄々気づいているのだ。アンドルフは決して自分達の方を見ないと。彼に比類する頭脳を持つ訳でもなく、種族や生まれも異なる自分達は部外者の枠を出ないと。

それでもこちらを見てほしかった。少しでもあの御方の役に立ちたいと思って頑張っていたが段々とその想いが揺らいでいる。

 

――どれだけ頑張ってもこっちを向いてくれないのなら、無駄ではないか?

 

そんな思いが自らの胸のうちにあることにカトルは驚いた。

 

「まずは将軍様を運ぼうぜ。言っておくが、あんまり酷い扱いをすると後でアンドルフ様からどやされるぜ?」

 

ゆらゆら揺れる思いのまま、カトルはアルジーの言葉を信じて空き部屋にペパー将軍を運ぶのであった。

 




ツングースカのある部屋は不気味なほどに静まり返っていた。そこは射撃場と、銃の調整をするための作業台が一緒になっている部屋。現在はカトル・ホルスターの第二の私室と化している。

彼はここ数日間、碌に眠れていなかった。

――メイ・イルードの愛用しているホーミングランチャー、光線銃(ブラスター)、ショットガン、そして弾切れになったデビルランチャーが作業台の上に置かれている。

それらの整備はもう終わっている。むしろこれらが手元に戻ってきたとき最初にやったのがそれだった。ひたすらそれらを直し、整えていく作業は辛い現実から一時的に目を逸らすための麻酔だった。

麻酔が切れたらどうなるか。痛みと向き合わなくてはいけなくなる。浅い眠りにつきかけては悪夢を見て飛び起きる日々が続いた。

(アレを使えばすぐに眠れる……。いいえ、わたしはもうアレを使わないって決めたんだから)

全てを解決する特効薬はカトルの部屋にある。どんな痛みも忘れることが出来る魔法を彼は知っていたし、使い方も熟知していた。けれど、彼はそれを使わないと決めている。

(アレを使ってる間は、銃の整備や改造が出来なくなるじゃない。あの子を助ける武器を作れなくなっちゃうわ)

薬を使っても一時的に楽になるだけで根本的な解決にはならないと、カトルは知っていた。

今までのカトルならこのように苦しくなったときはすぐに薬を使っていた。副作用である幻覚を見ながら戦場に向かうことすらあった。

だけどメイと出会ってから、彼女がカトルの整備した武器で戦うようになってから、それに頼りたくないという思いがカトルの中に生まれていた。


「おいカトル。客が来てるぞ」
「あら、どなた? 」
「アンドリュー・オイッコニー。お前をご指名だぞ」
「えっ……!?」


そして、その思いを汲み取ったかのように彼は訪れた。



第一印象で言えば、確かに血の繋がりを感じる見た目だといったところ。気の強そうな目つきや肌の色、全体的な雰囲気は甥っ子なだけあって似ていた。

「改めて、私はアンドリュー・オイッコニー。スターウルフの一員であり、メイ・イルードとは昔からの付き合いです」

丁寧に言葉を選びながら真摯にカトルと向き合うアンドリューの姿勢は、彼が年上の相手への態度を厳しく躾けられたことを想像させた。

「ご丁寧にどうも。わたしはカトル・ホルスター。カトルって呼んでちょうだい。あ、コーヒーにミルクやお砂糖は必要?」
「どうぞお構いなく」

インスタントだがコーヒーを出して、歓迎のポーズを取りながらカトルは思考を回す。

アンドリューはアンドルフ軍の中だと、皇帝への忠誠心を第一とする派閥にいる。皇帝直属部隊の一員であり、なおかつ皇帝の甥っ子である彼を敵に回したら絶対に不味い。
しかし先程の彼はメイとの繋がりをアピールしてきた。なのでカトルへの要件は彼女に関係することだろうか?

ひとまずの挨拶を終えた彼は周囲をちらりと見やる。誰も他人がいないことを確認してからアンドリューは口を開いた。

「今日御訪問させて頂いたのは、私の幼馴染の件で話があったからです」
「幼馴染……、と言うとメイちゃんのことで会っているかしら?」

カトルが聞くと彼は神妙な顔で頷いた。

「……貴方はメイの過去について、どこまで聞いていますか」
「そうねぇ。過去に色々あって右手と両足を失くしてるってことぐらいかしら。色々の内訳は知らないけど」

メテオライトのメンバーは互いに過去を詮索していない。脛に傷があったのもあるし、知ったところですぐ死んでしまうことが多かったからだ。使い捨てる前提の道具なら、情が移らない方が都合良い。むしろ同じメンバーで生き延びている現在の方が珍しいくらいだ。

「……そうですか」
「それがどうかしたの?」
「今ならお話することにも関わってくるのでお聞きしました」

そして彼は話しはじめた。幼いときにテロリストからアンドリューを守るため両足と右手を失ったこと。幼い頃からメイは何かに急き立てられるような行動を度々とってきたということ。アンドリューはカトルへ包み隠さず話した。

(あぁ、あの娘にとって大事な人は彼のことなのね)

陶酔するように大事な人の存在を語る少女の姿を思い出したカトルは、静かに納得するのであった。
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