スターフォックスFree実況プレイ 帝国設立縛り   作:竹製手桶

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私がカトル・ホルスターを相手に選んだ理由はいくつかある。

一つ目。今回メイがアーウィンを撃墜するにあたって不可欠であった『デビルランチャー』を修理した人物である点。
彼とのパイプを繋いでおけば鹵獲した希少な銃でも修理して使うことが出来る。顔を売って損は無いだろうと判断した。

二つ目。カトルが元薬物中毒者であるという点。
彼が過去に使っていた薬物は依存性が高いものだった。もし薬を広げる震源地としてメイを選んだのであれば、然るべき措置を取る必要があった。

三つ目。これが最も大きな理由である。それはメイ・イルードがメテオライト内で最初に懐いた相手であること。
メイが私以外へ警戒心を緩めるのは稀であるため、一度腰を据えて話してみたかった。

「それじゃあ改めて……。わたしはカトル・ホルスター。カトルって呼んでちょうだい。あ、コーヒーにミルクやお砂糖は必要?」
「どうぞお構いなく」

白と黒のぶち模様が特徴的な、大柄な牛獣人。私がカトル・ホルスターを見て最初に思ったことはそれだった。
私自身があまり他種族の者と接したことが無いのもある。しかし、牛獣人はライラット系では少数派だ。蹄を持つ種族は戦闘機の発明によって種の優位性を大きく失い、数を減らしたというのが俗説である。
数が少ない理由はさておき、カトルがコーネリアの都市を歩けば目立つのは確実だった。

「お口に合えばいいんだけど」

コーヒーを淹れ、安物とはいえ茶請けを引っ張り出してきた彼からこちらへの嫌悪などは感じられない。薬物の臭いもしない。ひとまずは対話を試みて良さそうだと判断する。

私は念の為周囲を確認した。盗聴器やその類は目視した範囲には無い。隠し部屋なんてものがあるなら話は別だが、ツングースカにそのような設備が無いことは確認済だ。

「今日お時間を頂いたのは、私の幼馴染の件で話があったからです」

口火を切った瞬間、カトルの表情が暗くなる。

「幼馴染……、と言うとメイちゃんのことで会っているかしら?」

雄牛は努めて穏やかな声でそう口にする。だが纏う空気の質は明らかに変わった。
まるで安全装置を解除した銃を突き付けられたような緊迫感。戦場とはまた違う恐ろしさがあった。

「……貴方はメイの過去について、どこまで聞いていますか」
「そうねぇ。過去に色々あって右手と両足を失くしてるってことぐらいかしら。色々の内訳は知らないけど」
「……そうですか」
「それがどうかしたの?」
「今ならお話することにも関わってくるのでお聞きしました」

やはり彼女は自分のことをカトルにすら話していないようだ。そう確信した私は迷い無く言葉を紡ぐ。

「今から10年程前、惑星フォーチュナーにて異種族排斥派の犬共がテロ行為を行いました」
「10年ぐらい前……と言うと」
「ええ。アンドルフ様がベノムへ追放される直前のお話です」

自分にとってこの情報は損でしかない。治りきっていない傷口を晒すようなものだ。わざわざ自分から痛みを味わうような行為。

だが、私は敢えてこの話をカトルにすることにした。
メイ・イルードが一人で背負おうとしているモノがどれだけ重いのか、知ってほしかった。私以外の誰かにもその重荷を分け合えるように。

皇帝直属部隊とはいえ、私はいつ撃墜されるか分からない。万が一私が命を落とした際、彼女を支えられる人物は必ず必要となる。その有力候補がカトル・ホルスターだ。

「メイはその時テロに巻き込まれた被害者の一人です」
「そう……。それはお気の毒ね」

カトルは目を伏せて呟く。その反応から、彼は本当に知らなかったのだと悟った。

「ええ、本当に」

私はコーヒーカップを手に取り一口飲む。そして一息ついてから再び口を開いた。

「彼女はテロの犯人に右手を撃たれ、両足も使い物にならなくなりました」
「それは……」

私の言葉を聞いたカトルは目を見開いて固まる。それもそうだろう。四肢を欠損する程の大怪我をすることなどそうあることではないのだから。
だが、問題はここからだ。カトルがこの情報を知っていたなら、こんな反応はしないだろう。私は続ける。

「犯人の狙いは私でした。天才科学者アンドルフの甥であるにも関わらず警戒心は薄く、幼い万能感に酔っていた私は格好の餌だったのでしょう」

カトルは口を真一文字に結んでいる。その表情からは感情が読み取れない。しかし目の色は明らかに変わった。ちょうど銃の引き金に指をかけたかのような、殺意と敵意が滲み出ている。

「しかし、メイはそんな私を守るために犯人の前に立ち塞がったのです。結果、彼女は左手以外の四肢を失いました」
「……」

カトルは何も言わない。ただ、その目は私の一挙手一投足を見逃さないと言わんばかりだった。

「彼女は私を守るために右手と両足を失いました。ですが、私を責める者は誰もいませんでした。……彼女の両親でさえ、アンドルフ皇帝の甥を守った英雄としてメイを称えたのです。もう二度と自分の足で走れない悲しみに浸ることすら、彼女には許されなかった」
「……」

カトルは何も言わない。ただ、その目は変わらず私を捉えている。

「私はそれが……悔しい」
「今でも?」
「……っ!」

カトルの言葉に私の思考が止まる。一瞬、否定の言葉が出かかったが、それではただの八つ当たりだと悟って飲み込む。代わりに出て来たのは違う言葉だった。

「今でもです。あの日から私は自分の無力さを悔やんでいました」

今でも思い出せる。血飛沫が舞い、彼女の右手と両足が奪われていく様を。それでも私を守るために立とうとする姿を。
時折夢に見るあの光景は、私が犯した過ちを忘れさせないための戒めでもあるのだ。

「だから私はメイの手足を奪った犯人を、犯人を凶行に走らせたコーネリア軍を憎みました。そして同時に……無力な自分をも」

カトルはそんな私の言葉を受けて、ゆっくりと口を開く。

「……そう。それで? それがわたしとどのように繋がるのかしら? 言っておくけど、今のメテオライトのリーダー代理はマー・サラブレッド。わたしじゃない」
「分かっています。私が貴方に頼みたいのはこれからの話です」
「…………続けて?」
「アンドルフ様はこの機会にペパー将軍を処刑するつもりです。私はそれを阻止します。私の言葉がアンドルフ様に届くかどうかは分かりませんが」

これは私の独断で、ピグマやアンドルフおじさんにも悟られたくない話だ。

元々アンドルフおじさんは感情的な方だ。気に入らない相手を潰せるチャンスは絶対に逃さないだろう。だけど、ペパー将軍を殺すのは余りにも勿体無い。
敵ながら犬共を纏め上げ、牙を抜き取る奴の手腕は優れている。使えるところはとことん使って捨てた方が無駄がないだろう。私達を爪弾きにしたとはいえ、ライラット系に一時的な平穏を齎したノウハウを失うのは惜しい。

だから私はペパー将軍を生かそうと決めた。メイも多分似たような気持ちだろう。彼女は力技に走る傾向にあるものの、平穏な世界を望んでいるのだから。

彼女は自分の命を軽んじている節がある。それは彼女の生い立ちに起因しているだろう。両親から蔑ろにされ続けて、血の繋がらない私に依存した。
別に彼女と生涯を共にするのはやぶさかではないが、誰かから強いられてそうなったでは嫌だ。メイが自分の意志で、彼女自身が選んだ方法で幸せになって欲しい。

「だから貴方にはメイの居場所になって欲しいんです。彼女が道を踏み外しそうになったとき、その手を引いて引き戻して欲しい」

私の言葉にカトルは考え込む。顎に手を当てて数秒の間沈黙したあと、口を開いた。

「なるほどねぇ。大体の事情は分かったわ」
「……では?」
「うん。わたしはメイちゃんの味方よ? 彼女の為に尽くすつもり」
「そうですか……!」

良かった。これで当面は安心だろう。私は胸をなで下ろした。しかしカトルは言葉を続ける。

「でも、だからと言ってあなたの頼みを聞くとは言ってないわ」
「……どういうことですか?」

私はカトルの意図が読めずに困惑する。彼は一体何を考えている? そんな私に構わず、カトルは続ける。

「これは契約よ。あなたはわたしの願いを、わたしはあなたの頼みを聞いてあげる。そういう契約」
「それは一体……?」
「簡単よ。あなたがメイちゃんを死なせたりしたら許さない。彼女を悲しませるようなことをしたら命は無いと思ってね」

そう言ってカトルは私に手を差し出す。私は迷うことなくその手を取った。

「承知しました。これからよろしくお願いします」
「こちらこそ。よろしくね、アンドリュー・オイッコニーさん?」

こうして私とカトルの間に密約が交わされた。この先何が起こるかなんて誰にも分からない。
だが、この約束がメイを生かすための一助になると信じたい。私はそう願った。

「そうね。折角仲良くなったんだから、メイちゃんと話しているときみたいにタメ口でいいわよ?」
「いえ、それは流石に……」
「あらそう? 残念ねぇ」

…………本当に役に立つのだろうか。



side A.O『密約』

再びメイの病室に現れたとき、彼女は起きて通信用端末を弄っていた。おそらくマー・サラブレッドに指示を飛ばしているのだろう。

彼女は私の存在を認めると顔を輝かせて端末を閉じた。二つ折り式の旧式端末を使っているのは今時彼女ぐらいではなかろうか。

 

「元気そうで何よりだ」

「あたしはいつでも元気だけど」

「生身のまま飛行中の戦闘機に自ら飛びつき、墜落させた上にパイロットを引き摺り出したと聞いているが……」

 

報告を聞いたときは耳を疑った。多少誇張して伝わったのであってくれないかと期待するが、その期待は粉々に打ち砕かれる。

 

「ぜーんぶホントの話。あたしは嘘をつかないよ?」

「嘘だと言ってくれないか。生身のパイロットが戦闘機を撃ち落としたなんて、未だに信じられないんだが」

「ホントだってば。あたしのこと信じてくれないの?」

「貴様が嘘をつくような器用さを持ち合わせているとは到底思えんが、常識では考えられないだろう。……とはいえ、よくやった。特別に褒めてやろう」

 

前向きに考えよう。この功績をもって彼女を暗殺しようなんて馬鹿げた考えを持つ輩は一掃されただろう。生身で戦闘機を落とせる奴に喧嘩を売りたいと思うか? 私は絶対やりたくない。

 

彼女の頭や頬を撫でてやる。目を細めて享受する姿は年相応……いや、少し幼く見えた。

 

「それで、聞きたいこととは何だ」

 

ここに来る前、メイはメッセージで「聞きたいことがある」と言っていた。

一体彼女は何を知りたがっているのだろうか。残念ながらまだ私は輝かしい功績を打ち立ててはいない。土産話になりそうなことはまだない。

 

聞くと、彼女は噂になっている雇われ遊撃隊の話をしてきた。

 

スターフォックスの話はスターウルフの中ではほぼ禁止されている。禁句と言った方が良い。何せそれを聞いたウルフはしかめっ面をして話を打ち切るし、ピグマも自然と話を逸らしてくるのだ。

 

断片的に聞こえる話を纏めると、かつてコーネリア軍で英雄の如く扱われていたジェームズ・マクラウドという狐が立ち上げたのがスターフォックスという遊撃隊。その中にかつてピグマも潜入していた。ピグマは彼らを裏切って罠に嵌めた。やがてピグマは我々の同士となったがジェームズは()()()()()()()()()()()()()()()()

現在のスターフォックスはジェームズの息子がリーダーとなっているらしい。これも又聞きなので正しいかは知らない。

 

スターウルフという名前は少なからず彼らを意識しているだろう。命名したのが誰かは知らないが、英雄にあやかった名前をつけるというのは珍しくない。彼の名を拝借するほど評価しているのに、それを語るのを良しとしていない。彼らにとってジェームズという存在は憧れであり汚点なのだろう。

 

「あたし達が小惑星帯に行ってる間に会わなかったということは、ワープしてる可能性が……。フィチナを経由せずに行くには……」

 

メイは我々がスターフォックスと交戦していないかしきりに確認していた。彼らと戦うことをここまで警戒しているということは、彼らは手強い相手なのだろうか。彼女はその後私にいくつかの状況確認をするとブツブツ言いながら何か考え込んでいたが、纏まったようだ。

 

「そっか、ありがと。色々あってアーウィンのデータは取れたから、後で送るね」

「はぁ!? まさか貴様が撃ち落とした戦闘機というのは……。例の超高性能全領域戦闘機、アーウィンなのか?」

「当たり。といってもカトルが……。あぁ、あたしのチームメイトのことなんだけど、彼がデビルランチャーを拾ってくれてなかったらここまで上手くいかなかった。だから今回の隠れたMVPはカトルだよ」

 

そうでもなければあの機密の塊のようなデータを手に入れられるものか!

アーウィンについては、ピグマがかつてスターフォックスにいたときに取った最低限のデータはある。基本的な性能(スペック)のデータがあるからこそウルフェンの調整も出来たが、最新の情報があって困ることはない。まさか、奴はここまで見越していたというのか。

 

「色々と合点がいった。ピグマが貴様に会いたがる訳だ」

 

胃がキリキリと痛み始めた気がする。彼女は現状の危険性を全く理解していないのか、こてんと首を傾げた。

 

「あたしに会いたがってる? デンガーさんが?」

「そうだ。色々と話したいことがあるらしい。……ピグマは貴様を気に入ったようだ。近いうちに会いに来るだろう」

「デンガーさん、そんなにあたしとお喋りしたいんだ。もしかして……友達になれちゃったりして」

「それはない」

 

ピグマの友人は金だ。マー・サラブレッドのような協力者はいても、友と呼ぶほど信用していない。彼にとって他人とは食い物にするかされるかの存在でしかない。

だからメイには出来るだけ近づけたくないのに、この幼馴染はお友達なんてお花畑なことを……!

 

「ピグマは貴様を、自らの所有物として扱いたいだけだ」

「所有物? どういうこと?」

「そのままの意味だ。ピグマは……奴は、貴様を自分の手駒として扱いたがっている。貴様は歩兵部隊という、消耗が比較的少ない部隊で驚くほどの戦果を挙げた。奴は浪費を嫌うからな、最も少ないコストで結果を出す貴様を自分の手元に置きたがるはずだ」

 

思わずまくし立ててしまう私を、彼女は困惑した目で見ていた。その表情を見て私は我に返る。彼女からしてみれば意味不明な話をされているのだから当然か。

私が言葉を止めたことに彼女は首を傾げたが、少し考えた後に口を開く。

 

「でもあたし、デンガーさんの部下になるつもりはないよ。だって、あたしは……」

「分かっている。貴様は既に私のモノだ。私以外の誰かに尻尾を振るなんて、たとえ冗談だとしても聞きたくはない」

「うん。あたしはアンドリューの側にずっといたい。だから、他の誰かのモノになんてならないよ」

 

花が綻ぶようにメイは笑う。私はその笑顔を見て胸が痛む。

そう考えないといけないほど彼女は私に依存している。私しか縋るものが無いと、勘違いさせるぐらいに。

 

「……またそんなことを恥ずかしげもなく言う。少しは慎みを持つべきだ」

「えぇ? あたしはただ、アンドリューに好きって気持ちを素直に伝えてるだけなのに」

 

その好きだという気持ちは防衛本能が働いているに過ぎない。彼女は私を唯一の救いと信じて疑わないのだ。そうしないと心が壊れてしまうから。

私がメイを裏切ろうものなら、彼女は生きる意味を失ってしまうだろう。

 

「もういい。貴様が私に好意を抱いていることくらい、既に知っている。今更わざわざ口に出すな」

「えへへ。だってぇ、こういうのは生きてるうちに伝えないと。死んじゃったら伝えられないもん」

「……縁起でもないことを言うな」

 

メイは失った右手と両足に目をやりながら、からりと笑う。

四肢の半分以上を失って臨死体験をしたからだろうか、彼女は驚くほど自身の肉体が欠損することに抵抗が無い。必要ならば残った左手や臓器も捧げるだろう。私を生かすために両足と右手を差し出したように。それは自ら祭壇に乗るよう教育された生贄のように見えた。

 

「安心して、あたしは絶対死なないよ」

 

だから私は安心できないんだ。

 




◤ ◤ 皇帝直属部隊『スターウルフ』 ◢ ◢


リーダー……ウルフ・オドネル
皆さんご存知、狼の親分。懐がデカい。やる気のある新人が入ってきたため、内心ウッキウキで指導していた。
指導する中で技術がブラッシュアップされたためパイロットの腕は原作よりもちょっぴり上だったりする。戦争が続こうが続くまいが我が道を行く姿勢、そこに痺れる憧れるゥ!
本作における一人称は『俺』もしくは『俺様』

スナイパー……レオン・ポワルスキー
ウルフを親分と呼ぶカメレオン。弄り甲斐のある新人(玩具)が入ってきたためとっても嬉しい。
アンドリューをいじm……弄ることでストレス発散出来ているので原作より残忍さはほんの少しマイルドになっている。スターウルフへの帰属意識が高くなった代わりに、チームメイトやその関連人物以外の解像度がクッソ低い。戦争が終わったらウルフに雇ってもらおうかなと思っている。
本作における一人称は『私』

メカニック……ピグマ・デンガー
元スターフォックスでメカニックで交渉人な豚。ジェームズの撃墜を失敗してから全てが狂い始めたが、この後ノーミスならおつりが来るので続行している。
原作よりも賢くなったアンドリューを警戒するものの、脳筋雌ゴリラなメイを上手く使えたら儲けられるかもしれないと脳内でそろばんを弾く。戦争で懐が温まるので出来るだけ戦争は長引かせたい。
本作における一人称は『ワイ』や『ワテ』

新人……アンドリュー・オイッコニー
アンドルフの甥っ子な猿。メイが脳筋かつ幼馴染依存症になりつつあることに危機感を抱き始めた。
高いプライドもウルフ達にへし折られてから鳴りをひそめ、年上には敬意を払い、理知的な応対をするので好青年へ近づいたように見える。しかし内心ではコーネリア軍や他種族への憎悪がグッツグツに煮えている。それはそれとして戦争は早く終わってほしい。
本作における一人称は『私』
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