その妹であるミノトはある日、猛き炎へこう言った。
「自害してください、コウヅキ様」
「なんで??????」
猛き炎に明日はあるのか?
「自害してください、コウヅキ様」
集会所の奥。早咲きの桜が舞い散る庭園とのどかな池の傍で、
俺の命が危機を迎えている
「なんで?」
わけがわからぬ。わけがわからぬ。ミノトさんに突然呼び出されたと思えば
これまた突然に死の宣告。わけがわからぬ。未だ未熟なこの身なれど、
里の為、王国の為にそれこそ命懸けで戦ってきたつもりだ。俺が何をしたというのか
「死んでいただけなければ私が死にます」
「なんで????」
わけがわからぬ。いや本当にわけがわからぬ。
俺が知らないうちに知らない所で二人分の命が天秤に乗せられている。
何があったのか、それは命でしか精算できない事なのか
助けを求めようとゴコクさんの方に視線を向けるとこちらに気付かぬ様子で
ぼんやりと集会所の入り口を眺めている。
いや、あれは偽装だ。こちらに気が付いているが絶対に関わらんと言う意思を感じる。
ふざけやがって、ゴコクさん自害してくださいと俺が言いたい。
しかしこのままでは俺かミノトさんの命がまずい。DEAD OR DEADだ。
俺は言葉を選びながら、慎重に状況把握に努める事にした
※ ※ ※ ※
「つまり要約すると、ロンディーネさんからバレンタインデーという
日頃の感謝を込めて甘味を送る風習を聞いて、ヒノエさんが張り切っており
俺に手作りの甘味を作る為に没頭してるから、最近姉妹での時間が取れていない…と」
「そうです。わたしからヒノエ姉様との時間を奪うばかりか、手作りの甘味まで
頂くなんて。とても許せません。頑張って作った甘味をを渡そうとソワソワするヒノエ姉さま。渡してドキドキしているヒノエ姉さま。形が整わなくて…味も自信が無くて…と不安げにするヒノエ姉さま。その場で食べてくれるコウヅキ様をハラハラしながらも感想を雨に濡れたアイルーのように待つヒノエ姉さま。きっとコウヅキ様はお優しいのでたとえ戯れで作った肥沃なドロ団子でも美味しいと召し上がる事でしょう。それを見て大輪の花さえ霞む程の笑顔を見せるヒノエ姉さま。一連の流れを考えるとヒノエ姉さまが尊いけれどもそこにわたしが入れないのがとても許容できません。死にたい。
あるいはコウヅキ様、自害してください」
あのエセ行商人、余計な事ふき込みやがって。というかこの竜人おかしいよ。
人の命を何だと思ってんだ。それ以前に命そのものを何だと思ってんだ。
「待って下さい、ミノトさん。その結論を出すのはまだ早いです」
里を守る為に戦っている以上、俺の命は消耗品だ。いつかカムラの礎となり土に還る
覚悟はしている。しかし今はその時ではない。そもそもこんな事で死ぬもんじゃない
「ミノトさんは、料理の腕…自信あると伺っていますが、間違いないですか」
「まぁ…人並にはですけども…」
ここだ。畳みかけるにはこのタイミングしかない!
「ミノトさん。ここはヒノエさんの甘味作りを手伝ってはいかがでしょう」
「私がですか?」
「そう、二人で作ればヒノエさんとの姉妹の時間も増える。より品質の高い甘味を作れてヒノエさんも喜ぶ。むしろ感謝されるでしょう。もしかしたら試食として姉妹で
『あーん』して食べさせあう事も十分予想される…。これは誰の命も損なわれずに全員が幸せになれる…そうは思いませんか?」
※ ※ ※ ※
嵐は去った。「流石は猛き炎と呼ばれるコウヅキ様。狩り場での無双の働きは、
その知略も生かされての事だったのですね。感服致しました」とか早口に言って
風のように消えていったけど、もう過ぎた事だ。後日ヒノエさん基準の量で、
チョコ団子なるものが出されて命の危機を感じたけどそれももういい。もう忘れよう
しかしまたミノトさんに呼び出されたのだけど今度は一体何事なのだろうか。
「自害してください、コウヅキ様。ホワイトデイまでに。もしくは私が死にます」
春先に再度訪れた嵐が過ぎ去るのは、どうやらまだまだ先の話のようである
お読み頂きありがとうございます。
こちらはバレンタインデーの時に書き上げたSSです。
丁度葬送の何とかレンがアレな時期でもありまして、
耳長い長命種だしという事で混ぜるな危険を躊躇いなく、
混ぜまくった結果がこのお話となっております。お読み頂きありがとうございました