猛き炎がこんなにしんどいはずがない   作:誠一

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エルガドに滞在する救国の薬師
守るべきものを守れなかったタドリはある日、猛き炎へこう言った




「私が作っているのは勃起を抑制する薬品。すなわり不能薬です」





「なんて??????」



誰かの男性器に希望はあるのか?


眠れる盛りのヴィジョン

「タドリさんが…ですか?」

 

「ああ、先日コウヅキ殿がカムラからの封書を届けてから7日程か…

何やら真剣な顔で作業を始め、ほとんど寝ずに続けているようなのだが…。

何か心当たりはないだろうか?」

 

傀異化したモンスターを狩猟し帰還したところ、提督に呼び止められ、

会議室もとい、いつもの場所で話を聞いているところなのだが、

何やら雲行きが怪しい。

 

「カゲロウさんからの私信と言う事でお預かりした手紙だったのですが…

現時点でカムラの里ではおかしな予兆は…無かったはずです。」

 

「ふむ…そうか」

 

提督は顎に手をやり表情を曇らせた

 

「タドリさん本人は何か仰ってなかったんですか?」

 

「それがな…聞くには聞いたが【友の頼み】としか話してくれず。

バハリも「集中してるなら20日くらいは平気」とか言いおって」

 

「竜人族の方は時間の感覚がちょっと違いますからね…」

 

 

本当に大丈夫なんだろうか。そもそも聞く相手を根本的に間違えている気がする

 

 

「僕の方からそれとなく様子見てきましょうか?」

 

「おぉ…そうしてもらえると非常に助かる。タドリ殿には国を救ってもらった恩がある。

万一の事があってはいかんのでな。…せめてもの礼だ。このチケットを」

 

「あ、それは間に合ってるから大丈夫です」

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

 

タドリさんが籠っているらしい研究スペースに足を運んだ所、

山と積まれた殴り書きの資料、空になった瓶や丸薬の包み紙が散乱しており

調合台には鬼気迫る顔で資料を睨みながら調合をしているタドリさんがいた。

目の下の隈がすごい。顔色もひどい。でもなんか眼だけは妖しく輝いている

これはヤバいヤツだ。こんな状態のタドリさんに声をかけられた提督はすごいと思う。

正直見なかったことにしたいがそうもいかない。安請け合いするんじゃなかった。

 

 

「タドリさん…タドリさん!コウヅキです!あの…ちょっと休まれた方がいいですよ」

 

 

こちらをチラと見たタドリさんの表情が和らいでいく。

 

「これはこれはコウヅキ殿…手紙は先刻受け取りましたが…他に何かご用事でも?」

 

 

何を言っているんだこの男は

 

「いや手紙もってきたのもう7日も前なんですが…というかちゃんと寝てますか?

ひどい顔色ですよ」

 

「いやはや薬師が体調を心配されるなど…実にお恥ずかしい。

今、少々立て込んでおりまして。間もなく一段落しそうなところなのですが」

 

間が良かったのか悪かったのか。一先ずこちらの話は聞き入れてもらえそうな空気を感じる。いやまだだ。まずは状況把握してから、休んでもらう方向に話を持っていこう。

 

「ところで何を作ってたんですか?」

 

「男性器の勃起を抑制する薬品。すなわち不能薬です」

 

 

 

 

 

 

 

 

「は?」

 

「不能薬です」

 

「なんて?」

 

「私が、作っているのは、不能薬です」

 

 

聞こえていないワケではない。意味不明すぎるので聞き返しているのだ

 

「なんで?」

 

「…カゲロウから内密に頼まれた事なので本来はお話できないのですが…

相手が大恩あるコウヅキ殿であれば仕方ありますまい。貴方も無関係ではありませんし」

 

「え、僕関係ある話なんですか」

 

 

これまで必死に里の異変やエルガドの危機を何とかしてきた自覚はあるけども、

まさか誰かの生殖機能に関与した記憶はない。したくもない。

 

「最近カムラの里も以前に比べモンスターの出現も穏やかになり、

質の高い鉄を求めて行商人も増えてきているようですね」

 

「そうですね」

 

ウツシ教官や里のみんな。それに微力ではあるが僕も頑張ったので里の周辺は、

比較的安定しつつある。外からのお客さんも来て里のみんなは活気づいているし、

ヨモギちゃんも連日大入りで忙しそうに団子作りに精を出している。いい雰囲気だ

 

「ただその行商人の中で姫みこ様に親しげにしている見習い少年がいるようでして」

 

 

おっと急に良くない雰囲気だ

 

「行商人ともなればどこでどのような病気をもらっているかわかりませんから。

姫みこ様に万が一が無いよう、その少年の男性機能を少しの間アレする薬を至急用立ててほしい。これが我が友、カゲロウの頼みです」

 

 

なんて言うか…なに?この状況

 

 

「姫みこ様の御身に万が一があっては私もカゲロウも、亡き主に顔向けができません。気持ちは痛い程にわかる」

 

「いや、僕は今現在の行動が大分顔向けできない系だと思うんですけど。」

 

 

なんで痛い程わかるんだ。わからん、痛い程わからん

 

「当初は少年の生殖器を『なかった事にする』計画だったようなのですが…」

 

「僕はこの話自体をなかった事にしたいです」

 

「穏便に済ます為その少年の生殖機能を不能にする薬を…という事になったのです」

 

「生殖機能を停止する事が穏便判定なの聞いた事ないです」

 

「まぁそれでも一時的なものです。一生使用できないよりは十分穏便だと思いますよ」

 

「一時的って…具体的にどれくらいなんです?」

 

「大体…60年くらいですね」

 

「ほぼ一生涯じゃねぇか」

 

「えぇ!?竜人族なら60年なんてあっという間ですよ?」

 

「竜人族の時間概念で人間に薬盛るな」

 

「じゃあマケて半分程度ではいかがでしょうか」

 

「肉屋の量り売りじゃねぇんだぞ。「じゃあ」ってなんだ」

 

「コウヅキ殿…私はかつて姫みこ様をお守りできず後悔しておりました。

そんな私をカゲロウは許し、今度は頼ってくれた。この想いに報いたいのです」

 

「えぇ…」

 

 

なんか重たい話を出された。こう言われると正直辛い。なんかもう知らない少年が、

性の喜びを知らないおじさんになったとしても、もういいじゃないか。

それで苦難に満ちたあの二人が少しでも救われるのならば。なんて考えてしまう

 

いやよくない。きっと良くない。カムラの里に言ったら不能になった。勃たなくなったなんて噂が立つのはまずい。たたら場ではなくあそこは勃たぬ場とか話題になったり、仮に今回なぁなあで見逃したら第二、第三の姫みこ様狙い少年が現れた時、この二人は容易く青少年の夢と希望を『なかった事』にしてしまうだろう。よくない。

よくないよ。ここは僕がこの二人のインポ作成班を何とかせねばなるまい

 

「タドリさん。もうやめましょう。」

 

「コウヅキ殿…?」

 

「こういうの良くないです。ヨモギちゃんに近づいた少年がその…アレが機能しなくな

るって事は、ヨモギちゃんの作った団子に何かあったと疑われる可能性があります」

 

「!!!!!!」

 

「きっと、事実とは違ってもそのような噂が流れれば彼女は気に病むでしょう。

姫みこ様の笑顔を曇らせる。それは貴方方二人が本当に望むことなんですか?」

 

「私は…私は…ただ…あぁ…」

 

 

そういって彼は膝を付き静かに涙を流し始めた。

 

「大丈夫ですタドリさん。僕にいい考えがあります。カゲロウさんも納得できるよう、うまくやりますので。今はただゆっくりお休みください」

 

「あぁ…あぁ…コウヅキ殿…頼み…ま…」

 

張りつめていたものが切れたように、その場でタドリさんは眠りに落ちた。

さぁ…これから忙しくなるぞ…

 

 

 

 

※ ※ ※ ※

 

 

「それで…結局どうなったんだい?愛弟子よ」

 

「え?まぁああいう事ですよ」

 

 

団子の刺さった櫛を向けた先には、顔を真っ赤にした少年と『ヒノエさん』が、

団子を食べながら談笑している。

 

「ヒノエさんに、『最近行商人の方が増えてきましたね。もしヨモギちゃんが誰かに

一目惚れでもして里を出る…なんて事になったら…』と話したらね。くっつきそういなヤツをうまい事たぶらかすようになりましたよ」

 

「たぶらかすって…愛弟子よ…」

 

「僕も常にヨモギちゃん見てられないですし、ここならカゲロウさんも監視でき安心。ヒノエさんがマズそうになったらミノトさんが黙ってない。これで万事解決です」

 

「いやはや…僕はそんな事教えてないんだけどな…。あ、そうだ愛弟子よ。今回の事で礼がしたいってガレアス提督が呼んでいたよ。行かなくていいのかい?」

 

「あー…まぁ。今は…ちょっと。」

 

今度、タドリに別のチケットを渡したくなる薬の開発依頼を出そう。

そう心に決め、皿の上の団子串を更に手に取るのであった。




お読み頂きありがとうございます。
チケットのお話をしておきながら結局うまい事お話できず、
提督は塩対応になっています。それよりもタドリさんですよ
あのツダケンボイス最高ですよね。そんなツダドリを、
どうしようもねぇ感じにやらかしてしまったのが当作品です。
本当にすまんかった。

ここまでお読み頂きありがとうございました
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