いきなりですが、この先投稿頻度が下がると思います。
年度末の仕事が増えてきたので構成する時間自体が伸びるためです。
一応ちょっとずつ書くつもりではあるので半年空くようなことにならぬよう努力はしますね。
エンドフィールドタノチイ
バレエツインズ
AM 0:03
夜の帳が下がり切る街。闇夜の陰は深く、所々夜道を照らす街灯も闇の不気味さを軽減することが叶わず何処か怪しいホラーチックな雰囲気を醸し出していた。
そんな中を一人の男性が急ぎ足で歩く。彼はこの街にある企業に籍を置く一般男性だ。怠惰な上司に仕事を押し付けられただけではなく恋人との関係が破局しかけてる同僚が関係回復の為に早退し彼に残りの仕事を上乗せされた哀れなサラリーマンだ。そんな彼が残業を終えて帰れたのは今のこの時間だったのだ。
「終電間に合うかな」
やつれた顔でいそいそと帰宅していた彼だが自身が乗る電車の時間を気にして急ぎ足になる。しかし、時間が時間だ。時間ギリギリな状態で駅ホームにいたくないし、残業終わりのクタクタな状態で駆け足したくない。疲れた脳で悩んでいると彼の視線は暗い路地の方に向く。
「確か、ここ抜ければ近道になるよな」
男は街に在籍するだけあって地理は把握している。目の前の路地を抜ければ駅までの時間に数分余裕が生まれ休むことができると考え足先を別の方向に向けた。
ほとんど明かりのない路地に足を踏み入れたあと男は少しばかり後悔しかけた。男はテレビで見るサスペンスドラマは平気だがホラーは少し苦手であった。その為、最初は勇み足だった歩調は暗くなるにつれゆっくりになっていく。震える手で携帯端末の発光頼りに進んだ。たった十数メートル、慎重に歩いても2分か3分で抜けれる路地は男にとっては歩くと「ガタッ」と何かが聞こえた。
背中から首を這い次第に全体へと伝わる鳥肌。今聞こえたのは幻聴か、それとも何かいたのか。思い起こされるのは男の元カノでホラー映画が大好きな彼女。あまりのホラー好き過ぎて自殺スポットのホロウの近くまで赴くという常識外な行動力を持つ彼女の趣味についていけず男は別れた。そんな彼女が好きなホラーに今のような状況があったと今になって思い出したのだ。
暗い路地裏、単独行動する男性、背後にあるマンホールから這い出て男性を呪い殺す幽霊。
男は無意識にホラー映画の男性と同じようにゆっくり振り返る。そこには全身を赤黒く化粧し、男を見下す紅い目をした大男が佇んでいたのだ。
「わぁあああああ!!」
男は駆けた。右肩がぶつかろうとも、脛がごみ箱の角に当たろうとも構わず駆け抜けた。背後に迫り来る大男が今この瞬間にでも肩を掴み、自分をむごく呪い殺すのではないかと想像して男は足を動かした。逃げて、逃げて、逃げて、どうか明るい場所へ、あの悪鬼の手の届かない安全な場所へと無我夢中で走った。
気が付けば男は電車に乗り込んでいた。発車前に電車内を見回る駅員に肩を叩かれるまで男は放心状態だったのだ。現実を意識すると彼の胸には安堵と何か達成感のようなものが生まれ、膝から力を失い座り込んだ。
後日、あの体験が彼に何を影響を齎したのか、元カノだった彼女と縁りを戻し彼女のホラースポット巡りに付き添うようになったのだ。今でも彼の首を這うあのスリルと達成感が彼の日常に刺激を与えたようだ。
ぼんやりとした意識でアポレイアは歩いていた。銃を構えた奴らと女と向かい合い限界な体で無理矢理魔星を使って辺りを塵に変えた。
『な、なんだコイツ!? 装備がっ!』
『弾幕を張れ! 近付けるな!!』
『や、やめっ、おオぉォっ──』
『う、うわぁぁあああっ───』
ノイズがざわめき頭を掻き毟りたい衝動に耐えながら目に付いた奴から手当り次第分解して血肉に変えていった。生温い不快な感触と吐き気を誘う鉄臭さを拭う様に殴り、死角から撃たれ苛立ちを物にぶつけ、先程までニヤついていた奴等が引き攣った顔へ様変わりする姿を愉悦に感じ酔いしれる。次第に辺りから何も居なくなり麻痺していた痛みに蝕まれ意識が遠のく辺からは曖昧だ。ホロウから抜け出したと自覚してから何も考えず歩いた。
歩いて、歩いて、歩いて、歩いて、歩いた。
暗闇の中を彷徨う内に遠目から見えた街灯の光が目印となりそのまま釣られるようにひたすら歩き続けた。
グズグズな体を引き摺っていると体に冷たく遮る様な物が当たった。それが手摺だと理解するのに時間を要し、どうやら広い場所に着いたと自覚した。
これ以上進めないと分かると体から力が抜け、それまでに蓄積されていた疲労と限界が一斉に押し寄せ、崩れるように座り込む。
(手足の感覚がなく冷たい…左目もぼやけてる…鼻も耳も効かない………無茶、しちゃったな…)
ようやく意識が戻った頃にはほぼ手遅れだった。身体から伝う夥しい血、いつからか折れていた左腕、血を元に固めた触媒は右手と同化する様に張り付いている。
折角戻った意識が今度は凍える様な冷たさと一緒に沈みかける中、既に感覚のない折れた腕を動かしアポレイアは自身の胸元から1枚のラミネートされた写真を取り出す。
彼はどんな時でもその写真を大事に持っていた。アキラやリンにも見せたことの無い、彼唯一の宝物。この世界に生まれ直して最初に紡いだ絆。
それは集合写真だった。
六分街に似た景色の中に年齢を問わず男性、女性、子供、大人、老人が中央にいるアポレイアと女の子を囲うように笑顔で写真に写っていた。
懐かしそうに写真を眺めながら想起される過去の記憶。
暗い路地の中で自分に伸ばされる幼く力強い女の子の明るい笑顔。
おっとりとしながらブレず芯を貫く婦警。
豪快に背中を叩きながら炒飯を出してくれた翁。
一つずつ、思い起こされる思い出は彼にとってかけがえの無い大事な宝物であり、同時に呪いでもあった。
数多の悲鳴。誰も彼もが行き交い、大事な物を守ろうと駆け取りこぼした怨嗟の声。
目の前で届かなかった大切な人が今でも脳内にこびり付く。
(俺も、今なら皆の元へ行けるかな?)
暗暗さを帯びる視界でアポレイアはそんな弱音を考えながら意識を落とした。
失いすぎた血、奪われ続ける体温、着実に永眠へと向かう彼はどこか諦めがつくことに満足しているようだった。
しかし、
運命はまだだ、と叫び彼を捕える。
「はぁー、サイアク。また、どうしてこんなのばっかりなるのかしら」
下水道のマンホールから重い音が響き渡る。蓋がずれると黒い髪のショートボブの女性が現れた。疲労から重々しくマンホールから這い出ると周囲を見渡し素早く蓋を元の位置に戻す。
「最近綺麗にしてるみたいだけど、やっぱり臭うわねぇ。はあ、早くシャワー浴びたいわ」
女性は自身の服から漂う雨水路の埃と泥、汗の臭いに顔をしかめた。
「あーあ、有給返上してこれって、あとでボーナス割増して貰うわ」
恨めしく、それでいて楽し気に呟くと腰から伸びた尻尾が左右に揺れる。すると先端が何かに当たった。鉄のような冷たさもなく、かといって不法投棄されたごみでもない人の体温が残るソレに『ジェーン・ドゥ』は思わず飛び退いてしまった。
(やっば、目撃者いたなら何とか誤魔化さないと)
ジェーンは尻尾が当たったとされる場所に目を向ける。そこには血塗れで適当な布を頭から被った男がいた。右手には変な結晶が張り付き左腕は不自然に外向きな状態だ。被っていた布も所々血が滲んでいる。
「ちょっと、重症じゃない!?」
想像の斜め上な場に居合わせたジェーンは男に近づくとその状態を見る。
(出血は軽微ね止まりかけてる……ってか殆どの傷に皮膜が出来ているわ。傷跡は刃物と打撲に銃痕? 右手のは焼けて粘着した物ではなさそうだし、左腕のこれは骨折ね)
治安官としての知識と踏んできた経験から彼女は男の症状を診断する。
(これ以上の厄介ごとは勘弁なんだけど……一応、犯罪者、じゃないわよね? 何をするにしてもまず治療してから話を聞かないと)
普段の彼女であれば酔いつぶれた人がそこで一夜を過ごしていたとしても無視していただろう。しかし、彼女は治安官。人を救う職務を生業とする彼女にはそんな状態の男を無視することなど出来ない。ジェーンは今の時間帯で頼れそうな人間を思案し懐から携帯機を取り出すと連絡した。
「……もしもし、朱鳶? 残業の所申し訳ないんだけど、今からいう場所に来て手伝ってもらっていい? 重傷者よ。喧嘩か巻き込まれたのか、男性一名が倒れていたの。救急に連絡してもいいんだけど、一番近いこっちで応急処置だけでもしておいた方がいいと思ってね。 ……そう、お願いね」
連絡を終えるとジェーンは星も見えない夜空を見上げため息を吐いた。今日までの疲れを乗せた吐息は虚空に溶けていくと彼女は恨めしそうに呟いた。
「ホント、サイアク…」
今回もこのような拙い小説に
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このような拙い文でも一読して下さった方々に感謝を!
アークナイツ3年やってるんですが、エンドフィールドが面白くて最近オリキャラ構想しちゃってるんですよねぇ……好きなキャラ?
ミス・クリスティーンとアスベストスですねぇ…。