新エリー都に導かれる銀の運命   作:黒瀧汕

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すいません、3月色々忙しかったんであんまり筆が進みませんでした。
案件3つ同時期って会社は何考えてるんでしょうね?
あと、最近ゼンゼロ触れてないので会話に違和感ありまくりかも知れませんが、追々直していきますのでご勘弁を……。

近々他のエージェント秘話みたいなのを間幕として考え投稿するつもりなのでお楽しみに。


第4話

 ホロウ内部

 PM 12:08

 

 邪兎屋のメンバーはその行動をただ見ている事しか出来なかった。

 突如として現れた狼の覆面した人物がタナトスと対峙したと思ったら決着は一瞬。狼の覆面が何かしらの兵器を使い辺りに放ったと思ったらタナトスは倒れ伏し手に持っていた剣でトドメを刺したのだ。

 ニコ含めたメンバーは先程対峙していたタナトスが通常より強力な要警戒タイプであるとは気付いていた。そんな要警戒タイプをニコ達が多少消耗させたとしても容易く葬る事など並の調査員に出来るはずがなく狼の覆面をした調査員なんて聞いた事無い。そうなると推測されるのは自分らと同じホロウレイダー、それもその存在そのものを秘匿出来る程危険な組織。

 ビリーは愛銃に弾を装填、アンビーは破けた布を使い剣と手を固定、ニコは先程使うつもりであった煙幕弾を手に潜ませる。

 狼の覆面はタナトスが完全に塵へ還るとニコ達の方へ振り返った。

 警戒心を最大限まで引きあげその一挙動に神経を尖らせる。

 狼の覆面はゆったりとした歩みでニコ達の方へ近付く。

 

『怪我、してんのか』

 

 ニコの煙幕弾が届く距離まで近付いた狼の覆面はくぐもった低い声で一言呟いた。

 

「へ?」

 

 掛けられた言葉の意味を理解しつつも状況に理解出来ないニコは思わず素でそんな声をあげてしまった。

 

『待ってろ、姉ちゃん達は外傷だけだな。隣の兄ちゃんは、部品なんて持ち合わせてないから何もしてやれねえ。すまねえな』

 

 狼の覆面はニコ達の症状を冷静に分析し上着のポケットから小さなポーチを取り出すとビリーに向け投げ渡した。受け取ったビリーは警戒しつつ中身を見ると包帯と止血剤、消毒アルコールなどが入っていた。

 中身を見た邪兎屋は面食らっていると『他に何か欲しかったか?』と再びポケットを探る狼の覆面。十分な施しにこれ以上受け取るのが気が引けたビリーは慌てて止めた。

 

「イや、大丈夫ダ。それヨり、あんタは誰だ、何者ダ?」

 

 攻撃する素振りや隙をついてビリー達を始末しようとする意思どころかごく一般的な怪我人に対する善意すら感じられる狼の覆面。しかし、警戒は解けない。ビリーは受け取った手とは反対の手でいつでも眉間を撃てるように銃を手放さなかった。

 ビリーの質問に対し狼の覆面は戸惑う様に顎に手を当て考え込むんだ。

 

『何者か……俺については名乗る物すらないが、敢えて付けるなら『ケルベロス』とでも名乗ろう』

 

 ケルベロスと名乗る狼の覆面はぎこちなく自分に言い聞かせる様にその名前を復唱した。

 

「ケルベロス…もしかして、一昨年上映された「地獄のハティ -果ての追憶者- 」終盤で出てきた"業火の番犬ケルベロス"を意識してる。私もあの映画気に入ってるから仲間」

 

 するといつの間にかケルベロスの傍に居たアンビーが目を輝かせながら詰め寄っていた。

 映画鑑賞が趣味なアンビーは幅広いジャンルの映画を網羅しており時々ビデオ屋にいる少女とその内容を共有、白熱して語り合う程だ。

 しかし、映画の話ができる相手は数える程しかいない、その為か休日の日、暇そうにしてるビリーやニコを巻き込んで映画鑑賞会をしたりオススメのビデオを紹介している。そんな趣味仲間が意外な所で、それも中々コアな作品の仲間と感じた彼女の心は喜びが隠しきれなかった。

 

「あンビー、今はソれ良いカラ…」

「そうよ、まだ貴方が何者か私達は知らないわ。調査員か同業者なのか、せめてそこは知りたいわ」

 

 すると今度はニコが詰め寄った。短い時間だがすぐに害する存在ではないとニコは判断した。故にニコは詰めた。正体が幾らかわかれば今後に色々影響すると考えたからだ。

 

『いや、俺は…っ』

 

 ケルベロスは答えにくそうに視線を泳がせる。余程正体をバラしたくないのだろうとニコは判断すると、突然ケルベロスは呻いたと思ったらその場で膝を着いた。

 

「ちょ、どうしたのよ!?」

『すまん、少し、力を…いや、何でもない。少し疲れただけだ』

「疲れたって……(今、力がどうって言わなかったかしら)」

 

 そこでニコの脳裏に聞き流す程度だったある噂話が想起された。新エリー都では不可解な現象が幾つも起こる。それは旧都陥落時から最近まで起こった不可解なテロ事件まで様々、その現象を誰もが憶測し妄想を混じえ噂になる。それにはかつて旧エリー都で行われたと言う人体実験などの荒唐無稽な話も出た時がある。

 もし、その噂の一つが真実だとしたらと思考が進んでいく。

 

『(しくじった、星辰光使って貧血になってる。俺の力がエーテリアスを遠ざけるけど、このままリン達の常連を危険に晒す訳には)』

 

 その一方人体実験の被害者と憶測されてるケルベロスだが、本人の方では最近ビデオ屋で見かけることが多いリンとアキラの常連客をどうやって無事にホロウの外に出すか思考を巡らせてた。

 

「とりあえず、早くここから出ましょう。肩貸してあげるから」

『あ、ああ、ありがとうな、アンタ足怪我してるのに』

「私達なんて命を救われたのよ。これぐらい1ディニーすら恩返せてないわ……って訳でビリーお願いね!」

「チョ、俺かヨ!」

「当たり前よ、私は足怪我してるし、体格差考えたらアンタが一番近いんだから」

 

「仕方ネーな」と呟きながらビリーはケルベロスの肩を背負う。体格差ならばややケルベロスが高いが体格の割に軽く感じたビリーは案外痩せてるんだなと感想を呟いた。

 

「でも良いのニコ? 彼、どこか組織に居るかもしれないのに」

 

 それぞれ二人一組男女別となって出口に向け歩み始めた時アンビーがニコに耳打ちした。アンビーの懸念は尤もであるが、ニコはアンビーの予想を否定した。

 

「彼は何処にも所属してないわ。私達と同じかも知れないけど、警戒心も無いし動きがド素人過ぎる。さっきの変な力、アレを考えればどんな組織に居たって目立つ筈なのにそんな情報や噂は聞いた覚えがない。なら、普段から一人って事になるわ。今日私達がそれを見てしまったのに危害どころか治療までするお人好し、そう言った脅迫に慣れてないか、単に甘ちゃんな可能性すらあるわね。(むしろ逆手にとって協力関係まで運べれば今後の仕事が安定するわ…)」

 

 冷静な分析の元割り出された結果にアンビーは納得する。普段色々振り回す社長だがこう言った危険に直面した時の判断は頼りになる。

 

「お前、スターらいトナイと、見た事ネェのカ!? 損しテルゾ!!」

『悪いな、あんましテレビ見ない方なんだ。昔は色々見てたんだが、すっかりインターノットばっか見ててな』

「じゃア、ここ出タら、見せテやるゼ! 助けテ貰っタ礼モしたイからな」

 

 ニコとアンビーがケルベロスの素性など推測していると男共の賑やかな声が聞こえた。どうやらビリーは彼の事を気に入ったらしい。人柄故の好意か単に自分の好きな作品を布教出来ることの喜びかどちらにせよ彼には窮地だった場を救われた恩がある。人情を捨てきれないニコとしては救われた分は礼で返さなければ彼女たちとしても後味悪い。

 ただし、お金での返礼は彼女のプライドに問いかける必要があるだろう。

 

『っ待て!』

 

 出口まであと半分の距離に来た所でケルベロスから鋭い声が掛けられる。

 

「なンだ、どうカしタのか?」

 

『わりぃ、先に行っててくれ。どうやら、面倒なのが居るみたいだ』

 

 ビリーから離れたケルベロスは腰の得物を抜くと構えた。その行動に疑問を持つ邪兎屋のメンバーだが、すぐその理由を知る。

 

『GRRRR…』

『GUUUU…』

 

 建物の陰から鋭い気配をまとわせるエーテリアスが2体現れた。

 

「エーテリアス!?」

「気を付けて、あれは、デュラハンとファールバウティ! 今の私達じゃ分が悪い」

 

 歯を食いしばっりこの状況をどの様に打破するか思考を巡らせる邪兎屋一同、しかし、思考する間に怪しい色彩を放ちながら歩み寄る2体のエーテリアス。

 するとケルベロスは身を低くし足跡を残すほどの踏み込みでエーテリアスの元まで駆けた。

 

「ちょ、アンタ、戻りなさい!」

『悪りいな、コイツらはどうやら俺に用があるみたいだからデートしてくるわ!』

 

 ファールバウティが大振りな右を放つと先程の姿が嘘のような重さを感じさせない動きで避けるケルベロス。避けた先には切っ先を向けたデュラハンが待ち構え鋭い突きを放つもケルベロスは自身の得物でそれを防いだ。一合、二合と弾き背後から襲ってくるファールバウティの奇襲も高跳びし危なげなく回避する。

 跳んでいる僅かな滞空時間にケルベロスは仕込んでいた策を使用する。ケルベロスが青白く放電すると地面から砂が立ち昇り黒い竜巻になる。

 

「なに、これ」

 

 目の前に広がる戦いに思わずニコは小さく呟いた。それはその場にいる全員の心境を代弁したと言ってもいいだろう。そんな理不尽が目の前に起っているのだ。

 

「オ、おヤぶん! やばい! 引ッ張られ、る!!」

「ビリー! (私達は身に着けてる物が幾つか引き寄せられるけど、ビリー程じゃない)」

「もしかして、磁力を操ってるの(・・・・・・・・)!?」

 

 なんてデタラメなと苦言をこぼし掛けた時竜巻の中から影が飛びだす。ニコの目の前に着地したのは土埃にまみれ口元が一部欠け中身僅かに見えているケルベロスだった。

 

『…わりぃ、少し長引きそうだからアンタらはここから脱出してくれ。アイツらを片してから俺も出るから』

「アンタさっきまでフラフラだったじゃない、私たちが加勢すれば…」

『……本当にいい奴だなアンタ、そう言えば名前聞いてなかった』

「ニコよ、ニコ・デマラよ。これでも社長よ」

『ニコ、申し出はありがたいが断る。怪我人が巻き込まれたら俺が助けた意味が無くなっちまうし、アンタらも迷子でここに居た訳じゃないだろ?』

「だからって……」

 

 ニコの言葉が淀む。ケルベロスが言った言葉は正しく自分達の生活も危機に瀕している。しかし、命を救われ手当の道具まで頂いたのだ。これ以上ない恩に対し見捨てろなどとニコのプライドが最後の決断まで推し留める。

 ケルベロスは悩むニコの姿に対し声を掛けた。

 

『……なら、貸し(・・)だ』

「貸し?」

『ああ、貸しだ。さっき助けたのと渡した治療道具、今からアンタらの脱出時間を稼ぐ分の貸しだ。その貸しを返してもらうまで生きて徴収しに行くからな』

 

 ケルベロスの言葉は言外に生存の確約と再開の約束とも取れた。

 その不器用で優しい気遣いにニコは思わず笑ってしまった。

 

「あははっ、高いツケね。絶対返してやるから帰って来なさいよね!」

『ああ、利子・期限・催促ナシにしといてやるから待ってろ』

 

 黒い竜巻が収まると表面の傷が目立つ片腕を失ったファールバウティと欠けた盾を持ったデュラハンが姿を現した。

 

『行け!!』

 

 ケルベロスの鋭い声に邪兎屋一同はその場から駆けた。ビリーに背負われたニコは自分達とエーテリアスの間に立つ男を見つめていた。

 

(絶対に、生きて来なさいよ!)

 

 ビリーの肩に乗せてる手から力が籠る。黙って並走するアンビーやビリー自身も恐らく同じ気持ちだろう。

 

「おやぶン…」

 

 出口付近になった時ビリーはニコに声を掛けた。

 

「ウチに戻ッてパーつを変えタら、少シ出掛ケていいカ。ちょッと用事思イ出しタ」

「私も、ビデオ屋で借りたい物がある」

 

 ビリーの言葉にアンビーが続いた。ニコは二人の思惑を察すると口元を綻ばせる。

 

「アンタ達……そうね。私は動けないけどウチに戻ったらアンタ達に暇を出すわ。今回は特別に残ってる物全部使って良いから準備してから行きなさい。しくじったらボーナスはカット、半年は減給だから!!」

 

「おウ!!」

「わかった」

 

 三人はホロウから脱出しすぐに事務所へ向かった。自分達の恩人を救う為、三人はそれぞれ行動を開始する。

 

 

 

 3人を見送ったケルベロスは自分を狙うエーテリアスに向き直る。

 

『余所見して悪かったわ。今から真剣に相手してやるから……とっととくたばってくれ』

 

 ケルベロス…アポレイアを中心に磁場が展開される。

 軽く手を翳すと対象を絞りその力を最大にまで出力を上げた。

 

『増血剤も効いて来たし、あの3人の脱出くらい最悪時間稼がないとな』

 

 アポレイアの周囲に様々な物が引き寄せられる。砂鉄、鉄筋、タイヤ、鉄骨、重機など重量問わず全て射出する準備をしながら浮遊する。まるで何十何千ものの銃口を突き付けられるかのような状況にエーテリアスの二体は立ち竦んだ。

 

誰が(・・)俺を狙ってるのか知らんが、かかって来いよ。潰してやる

 

 

 

 

超新星(Metalnova)───』

 

 

 

 

雄弁なる伝令神よ。(Miserable) 汝、魂の導者たれ(Alchemist)




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