新エリー都に導かれる銀の運命   作:黒瀧汕

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投稿が伸びたぁ…。

とりあえずこれにて邪兎屋邂逅編は終了です。
ここまで長くなってしまいましたが、とりあえず陣営巡回一歩目。
本編に辿り着くのは何時になるのやら…。


第5話

 ホロウ内部

 PM14:25

 

 ホロウの中をとてつもない速さで一台のバイクが駆けて行く。赤い塗装に猪のマークが目立つそれに一人の機械人とその腹部にしがみつく少女、その間に窮屈に挟まれてる一体のボンプがいた。

 

『そこ、右奥ぅ!

「あいよ!」

 

『次は鉄骨の先ィ!

「任せな!」

 

『左に向かって突き当たりを右!』

「飛ばすぜ!」

『そこは普通減速!!』

 

 ボンプのナビゲーションに従っているのは先程ホロウから脱出したビリー。破損、変形したパーツは予備のパーツへ交換し銃の他にも幾つか投擲武器などを準備してきたビリー。彼は自身のツテを頼って愛車を送って貰い今も戦ってるかも知れない恩人の元へ駆ける。

 

「ところで来て良かったのかアンビー、まだ体の疲労抜けきって無いだろ」

「そういうビリーこそ、外側のパーツは良いにしても内部の方はどうなの?」

「あの時一番軽傷だったのは俺だったから心配ないぜ」

「いや、心配って言うより確認。もし動かなくなったら運ぶ人居なくなっちゃうから」

「そこはせめて心配してくれ!!」

『話はあと! 次のところショートカットすれば目的地だよ!』

 

 ボンプが目的地を告げると二人の顔つきが変わる。ビリーは一人と一体に「一番強く捕まってろ!!」と叫ぶとバイクを加速させる。空間に浮かぶ穴のような物に入ると景色が変わった。ビリーは冷静に自分達の体勢と場所を確認すると巧みにバイクを操作し地面に着地、横滑りしながら止めた。

 バイクを停めそれぞれは武装を確認、壁の影から入るタイミングを確認して突入する。

 

「な、なんだこりゃあああ!!」

 

 そこにあったのは原型も留めていない程荒れた土地だった。元は町の様な風景は更地にされ、代わりに鉄のオブジェや山が積み上がっていた。

 

『これは、自動車やバス、看板、蛇口まで…。一体ここで何があったんだ?』

「ごめん先生、これは私達でもあんまり分からないかも。ビリーから見て彼はまだ近くにいると思う?」

 

 アンビーは周囲を見渡しているビリーに確認をとるがビリーは軽く首を振る。

 

「すまねえが周囲に人らしいものも見当たらなかった」

 

 ビリーの言葉に本人も含め肩を落とす。するとビリーの近くに寄っていたボンプの目に光って反射する欠片が見えた。

 

『ねえ、アンビー。アレは何かな?』

 

 ボンプの小さな手が示す先にはアンビー達では気付きにくかった銀色の欠片が落ちていた。動物の口元を思わせる牙みたいなのが見える欠片だった。

 

「これ、彼の…」

「ああ、間違えねぇぜ。狼の旦那の物だ」

 

 ボンプはビリー達から更なる手掛かりとなりそうな特徴を聞こうと顔を上げる。しかし、彼らから漂う空気は暗い。

 

『……そろそろ君たちの適正じゃあこれ以上は危うい。後日、改めて探そう』

 

 ボンプ越しに暗い雰囲気を察した【Random play】の店長アキラは空気を切り替えようとように提案した。

 

 彼は店のたまにアポレイアが掃除しに来るモニターが並ぶ部屋でボンプとの感覚を共有しリアルタイムで周辺情報を確認していた。

 

「……よくある事、なんだけどね。出来れば間に合って欲しかったな」

 

 アキラが二人からパエトーンとして依頼を受けたのはつい十数分前だ。重装備でいつもより物々しい雰囲気だった二人に突然頭を下げ人助けのお願いをされたのだ。ただらなぬ様子の二人に軽く事情を聞きイアスを渡してホロウに侵入し今に至る。

 

「不可思議な力、か。もしかしたらあの時の事件に関して何か手掛かりになるかと思ったんだけどな……」

 

 ビリー達から大まかな特徴を聞いていたアキラはその人物が"不可思議な力"を使うと聞いて興味を抱いた。

 アキラとリン、二人は「H.D.Dシステム」を使いボンプと感覚同期したり、生身で直接機械にアクセスする事が出来る特別な能力があった。普通の人には持ってない特別な力とを自覚してる二人はこの力を秘匿しある目的の為に裏で活動してきた。今回その人物が自分達の目的の足掛かりになればと思っていた。

 

「他人の心配より、自分の事ばかり考えるなんて……僕も人の事言えないな」

 

 自分が醜く見えた。結局、僕も過去に関わった汚い大人と大差無いのかも知れない。そう自分を評価した時モニター越しにバイクの音が響いた。

 

 

 

 六番街

 PM17:02

 

 ビリー達が戻りイアスを回収したあとアキラはソファに身を沈め手足を外に向け伸ばした。手足の末端に血が通い凝り固まっていた筋肉は僅かに解れる。

 

「ふぅ……そういえば今日はレイを見かけてないな」

 

 先程ゲームセンターの【GOD FINGER】から暫くメンテナンスに時間が掛かるから先払いとして給料の入った封筒を受け取ったのだ。見てはいけないと思いつつも好奇心で軽く中身を見たがバイトと言うにはやや過ぎた金額が入っていた。下手するとボクらのビデオ屋経営1ヶ月分近くに匹敵するレベルだ。店長の好意というよりレイの活躍を考えれば相応の働きに対する評価がこの金額なのだろうけどアキラは軽く落ち込んだ。

 

「少し休む様に言っておかないといけないかもなぁ」

 

 最近の彼は働き過ぎた。先週だってバイト帰りに接客の応援として呼ばれ対処した後帰ってもいい筈なのにそのまま深夜まで働き詰めだった。その他だって誰かに頼られればどこまでも応じてしまうんだ。

 そんな働き詰めな彼をどうにかして労おうと思考していると裏口のドアが開く音が聞こえた。一定のリズムで床を叩く固い音、その音はそのままキッチンの方へ向かう。

 

「お、帰ってきた。後は本人に言わないと」

 

 少し凝り固まった肩周りを解し立ち上がったアキラはそのままキッチンへ足を進める。

 

「レイ、おかえりなさい。さっき、アシャ店長から今月の前払いが……」

 

 そこでアキラの言葉は留まってしまった。何故ならいつもそこに変わらぬ姿で居るはずの彼が血を流しながら淡々と治療していたからだ。

 

「あぁ、アキラか。すまん、でかい方の絆創膏って何処に置いてるか知らないか?」

「それは確か、こっちに救急箱が……って、その前に、何があったんだ!」

「あ〜〜〜〜〜〜、散歩?」

「真面目に答えるつもりないだろ」

「いや、ちょっと体動かすために散歩がてら出かけたら、うっかりホロウに入っちまってな」

 

 ホロウという単語にアキラは血相を変えた。

 

「レイ、今気分が悪かったりどこか体の一部が動かしにくい所はあるかい? 変な衝動とかないかい?」

「ど、どうしたんだ一体、「答えて!」わかった、わかった。今の所気分に変化はないぞ。体にしてもさっきみたいな傷以外特に動かしにくい場所も硬い場所も無い」

 

 アキラはその言葉に安堵し椅子に座り落ち着いた。アキラの反応と先程の質問内容からアキラが何を懸念していたかアポレイアは察した。

 

「もう少し後になってから君にホロウ適正検査を受けさせるつもりだったけど、その様子だと短時間の適正はあるみたいだね」

「ちなみに適正が無い人間は侵食されてるって聞いたが、具体的にどうなるんだ? まさかそのまま燃料に変換されるとかなるのか」

 

「エーテリアスになる」

「……………」

 

「ホロウで長時間エーテルに接触していると『汚染』が発生し、生物はエーテリアス化、建物やボンプなどの無機物はエーテル侵食状態になってしまう。そうなれば常に被曝状態に晒されるし寿命も減ってしまうからね」

「そう、か」

「怖いよね。ニュースやインターノットでよく話題に出るエーテリアスがどこかの誰か、もしくはつい最近まで知り合った人かもしれないなんてね」

 

 アキラは無意識に遠くを見つめる。過去、彼らパエトーンとして活躍する場面においてそういった場面はあった。人が目の前でエーテリアスに変貌する瞬間。

 

 痛み、過去(走馬灯)羨望(生きたい)憎悪(どうしてお前が)疑問(何で自分が)絶望(助けて)─────。

 

 あらゆる感情がボンプ越しに僕たちへ睨みつけられる。人の持つ負の意識が引きずり込んでやると言わんばかりに怨嗟を謡う。初めて人がエーテリアス化した姿を見た時僕らはしばらく寝る事が出来なかった。あの時は時間が僕らを救ってくれた。

 そこから少なくとも僕は決めた。もし、同じ状況になっても犯罪者だろうと助ける為に手を伸ばす。例え助かる見込みが僅かでも諦めない事を決めたのだ。

 

「だからアポレイア、僕達は君にホロウへは近付いて欲しくない。適性があって、この家の居候だとしても、知り合いに死んで欲しくないんだ」

 

 アキラの精一杯な注意と心配する感情が言葉を通しアポレイアへ流れ込む。

 

「……わかった、ホロウには近寄らんよ。お前達への恩もまだ返し足りないからな」

「別に、僕らは恩を返して欲しくて居候にしてる訳じゃないんだって何度も言ってるのに…」

「はははっ、俺が勝手に背負って返してるだけだから家賃程度に思えばいいさ」

「はぁ、全く」

 

 その言葉に肩を落とす。アキラはアポレイアの言葉を鵜呑みには出来なかった。少しだけとは言え彼と生活してると癖や考え方が自ずと分かるようになってくる。

 彼はまたホロウに行くだろう。自身の記憶を求めてなのか、私欲や金銭の為か、それとも全く別の彼の思惑か、いずれにせよ僕ら兄妹は注意出来ても止める手段がないのだ。

 

 だからせめて、君を想う一人として、引き留めるための言葉を尽くそう。

 

 

 邪兎屋 事務所

 PM20:03

 

 あれから3日、依頼は正式に達成となり潤沢な報酬から滞納してた借金の返済、アンビー達の治療費に当て引いた報酬で開いたささやかな慰安会。

 事務所の机の上にはピザやハンバーガー、酒にオイルなどそれぞれ思い思いの物を持ち寄り楽しんでいるようだった。

 すると事務所の扉をノックする音が響く。

「あれ、まだ出前頼んでた?」

「いやー、もうこれで全部の筈よー。まさかビリー、また何かグッズ注文したー?」

「俺じゃないぜ? もしかしてパエトーンの旦那がきたんじゃないか?」

「ともかく出てくる」

 

 アンビーは言葉とは裏腹に警戒しながら扉を少し開きノックの主を確かめる。するとそこには誰もおらず気配すらなかった。

 

「いたずら? こう言う時、参考だと扉に手を掛け侵入してくるって相場が決まってるけど何も無い……あれ?」

 

 そこでアンビーはドアノブに袋が掛けられていることに気付く。中にはお酒と機械整備用のオイル缶、炭酸飲料とスナック菓子が入っていた。その中の一つにアンビーは目を奪われる。袋を持って事務所に戻るとアンビーの様子にニコ達は怪訝な表情を浮かべる。

 

「どうしたのよアンビーやっぱビリーのグッズとかだった?」

「違う。ニコ、彼が、ケルベロスから差し入れが来てた」

「えぇぇえええええええ!?」

 

 ニコはアンビーの持ってきた袋を受け取ると中にメッセージカードが入ってるのに気付きその内容を確かめる。書かれていたのは生還した事への祝い言葉と彼が連絡用として使ってるインターノットのアカウント名義だった。急いでケルベロスのアカウントに直接連絡をかけると数分後に返事をした。

 

『よう、元気そうでなによりだ』

 

 低く、反響するくぐもった声。気草な軽い雰囲気を纏わせる彼らしい挨拶が電話越しに届いた。

 

「ちょっと、アンタ何処にいたのよ! あの後ビリー達を向かわせても居ないし連絡も無かったのよ!」

『わりい、わりい。あの後アイツらにじゃれ合ってたらマスク壊れちまってな。割と大事な物だから修理してたんだ。しかし、まあ、一回しか会ってねえのにそんなに思われてたなんてな』

「あったり前よ、アンタには借りもあるし。ビジネスパートナーとして今後もやって行くつもりなんだから」

『ビジネスパートナー? 俺そんな約束してたか?』

 

 失言した。ニコの中では彼の出自を揺さぶりに契約を持ち掛け協力関係、あわよくば社員にしようとしていた。その為に雇用契約とかの書類も準備していたのだ。

 

「あ、いや、待って。その話は追々ね。ともかくアンタが無事でいるなら良かったわ。ウチの社員も結構心配してたんだから」

 

 話題転換のためにニコは己の失言を逸らすべく社員に受話器を向ける。

 

「狼の旦那! 今度空いてる時に約束のスターライトナイト見ようぜ!」

「ビリー、その前に私の映画が先。昨日地獄のハティのシリーズが発表されたから予習の為に見返さないと。その時は勿論ケル先輩と感想会」

「ほら、丁度以来達成のパーティー開いてるから来なさい。ツケも今なら返してあげるから」

『わりぃが、これから用事が入ってるんでね。ツケの件はこっちが助けて欲しい時にでも取っておいてくれや。そんじゃ…プツ』

「あ、ちょ……くっ、逃した…まんまと来た所理由付けて書類にサインさせるつもりだったのに…」

「姉御ぉ、流石にそれはどうかと思うぜ」

「まぁ、今回はアカウント先が分かっただけでも良いとしますか。後日パエトーンに頼んでリア割れして問い詰めてやるんだから…」

「流石ニコ、ブレない」

 

 受話器を置き、少し温くなった飲み物を持ってニコは気持ちを切り替えた。

 

「変な始まり方だけど、絶体絶命だった山場を乗り切れたしこの事務所も差し押さえられなくて済んだ。明日からもキビキビ働きなさいよー! 乾杯ー!!」

 

 陽気な声が事務所に木霊する。普段夜になると静かになるその建物からは安堵と喜びが感じられる賑やかな声が夜が更けるまで続いた。

 

 

 六分街

 PM 21:00

 

 六分街で人気の少ない公衆電話の隣で男は紫煙を吐き出していた。

 

「フゥー……とりあえず生存報告はこれでいいか」

 

 煙草のから立ち上る煙を目で追いかけながら男…アポレイアは今後の予定を脳内で整理する。

 

(あの日の戦いで分かった。どっかの奴が俺の能力を嗅ぎ回って見つけようとしてる。もし、俺の存在が明るみになったら、俺はリン達の前から消えなければならない。そんな状況の時、独りになった後の誰か頼る存在を作らなきゃならん。その為に、まず、邪兎屋と交流して色々知らねば)

 

 アポレイアは自分の状況を思案しホロウレイダーに目を付けた。ホロウレイダーは非正規なホロウ徘徊者、その手の繋がりや身を隠す先、ホロウの抜け道なんか熟知していると考えた。非正規な分スラムな環境だが、下手な組織だと自分の能力を利用する連中が現れるリスクがある。そこで偶然出会ったのが邪兎屋だ。彼が店番で見かけた程度だが、リン達との関わり方からして人なりは良い方だろうし、何より少数でいる辺り噂なんて特に流れる事は無いだろう。

 

(電話した感じだと向こうも俺の武力を当てにするだろうからこちらも生存確率を上げさせてもらおう)

 

 煙草の灰が風に流れ塵になる。体を伸ばし咥えてた煙草を手の平に乗せ握ると煙草は跡形もなく塵にとなる。

 

 アポレイアはそのまま裏路地に姿を消した。

 

 

 

 

 

 

「レイ、もしかして煙草吸ってた?」

「ああ、ちょっと考え事してたら久しぶりにな。昔吸ってたけど今じゃあんま吸わんな、一応気にしたんだが匂い付いてたか?」

「うえ〜~、店長命令! 今後煙草は禁止!」

「いや、まだ残りあるしせめて「 禁 止 ! 」……はい」




グダグダな終わり方ですが、ここまでが邪兎屋との邂逅編です。
今後の展開について、アンケで選択する陣営から優先してアポレイアと絡ませもとい、顔合わせを書いていこうと思ってます。
どの陣営でも良いんですが、今の所それぞれ書き出しで流れが決まってないんですよね。(モチベの関係上)

今回もお気に入り登録して下さった方、評価して下さった方このような拙い文でも一読して下さった方々に感謝!

※ちょっと一部文章修正。6/23

7/2時点でヴィクトリア家政のエピソードで決定しました。
投稿は少々時間かかりますのでお待ちを

邪兎屋の次はどの陣営と彼は絡む?

  • 白祇重工
  • ヴィクトリア家政
  • カリュドーンの子
  • 特務捜査班
  • エージェント秘話「かつて__だった者」
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