新エリー都に導かれる銀の運命   作:黒瀧汕

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ここからメイド執事達との交流です。

今住んでいる環境から引っ越ししたので下手すると投稿が延びるかもしれません。
ご了承ください。


第6話

 バレエツインズ

 共生ホロウ内部

 PM 14:17

 

 薄暗いホロウに呑まれた高層ビル。その建物内の広いフロントで二人の狼が対峙する。

 方や軍服の様な意匠に滲み出る凶暴な気配を秘め一本の(なまくら)を携える銀の狼面を被った長身の男、方や姿勢正しく身嗜みを整える清潔さを持ちながら無骨で相手を制圧する事に特化した義足を着けた狼のシリオン。

 この瞬間、いつでも弾けそうな張り詰めた空気は風に煽られ流れ着いた一枚の記事が合図となった。

 

 

 カサッ

 

 

『創生せよ、天に描いた星辰を──我らは煌く流れ星』

「僭越ながら、ダンスのお相手を務まらせて頂きます」

 

 次の瞬間火花を散らし合う(なまくら)と義足、数分と掛からずその場にあった施設は瓦礫に埋もれるのであった。

 

 

 事の発端は一週間前の事───。

 

【COFF CAFE】

 AM10:23

 

「ティンさんなんて?」

「コーヒーの講習を受けてみてはどうです? と、まあ、講習と言っても料理教室みたいなものですがね。貴方のコーヒーの淹れ方も様になってきましたが、やはり一度きちんと基礎から学んでも良いかと」

 

 それは朝から【COFF CAFE】でコーヒーカップを拭いていた時だ店長のティンさんからそんな提案を頂いた。なんでもティンさんの知り合いが講師を務める講習だそうで以前久々に会った時、俺の話を出して興味が湧いたとか。

 

「貴方の都合が合えば是非このチラシに載ってる日に行ってみて下さい。手続き等は私の名前を出せば免除してくれれると思いますよ」

「なるほど、確かこの日は……わかりました。丁度その日は休みなので行ってみます」

 

(最近色んな人から休みを言い渡されて暇になる事が多い、最近アキラ達から見張られてる感じからするとこの間の怪我した件から少し警戒してるのかもなお陰で練習に行けないから筋トレ位しかしてないんだけど……)

 

「色んな人の淹れ方も見れて参考になりますし、コーヒー豆の種類なんかも味わえるそうなので楽しんで下さい。それと、これは期間限定で出そうとした貴方発案のお茶請けの試作の余りですどうぞ」

「色々ありがとうございます。いつもすいませんね」

「私こそ貴方が作ってくれたお茶請けに助けられてます。最近は女性からのリピーターが増えましたし、私でも作れるレシピも考えて頂きありがとうございます」

「俺は知っていた事を教えただけに過ぎませんよ」

 

 その日の業務を終わらせ帰り夕方食材の買い出しに出た所でリンに捕まり大量のビデオの運搬を手伝わされた。

 

 3日後

 

 ルミナスクエア

 駅構内

 AM 07:42

 

 ルミナスクエアの駅を降り小さく折り畳まれたチラシに書いてある場所へ俺は向かっていた。今日はティンさんに勧められた講習の日だ。目的地の建物へ入り指定してある階へ登って割り振られている番号の部屋へ入室した。部屋に着くと入口から漂っていたコーヒーの香りが通り抜ける。

 

「おや、君で最後かな。ようこそ」

 

 出迎えたのは物腰の柔らかそうな初老の男性だった。講習の部屋は教室位の広さだったが座る席の後ろに見覚えのある道具や前世でテレビ位にしか見た覚えの無い物、全く知らない物が鎮座していた。確かこの男性に見覚えがあった。六番街で様々なバイトをしているが他の街にも足を運んだりお使いで訪れたりする。その際、ルミナスクエアでコーヒー豆や道具売ってた専門店の店員さんだった記憶があった。

 

「よろしくお願いします。ティンさんから話を伺い今回参加させて頂きました」

「彼の言っていたのが君か。なるほど、姿勢も悪くないし身嗜みも気を遣っているね。聞いていた通りの好青年だ」

「そこまで言われると恥ずかしくなります」

「ははは、謙遜することは無いさ。最近の若い子はそこまで気を遣わない子が多いからむしろ関心ものさ。恥ずる事は無い、むしろその心構えを誇りたまえ」

 

 おっとりとした口調にどこか重みを含んだ言葉が鼓膜を通して自分に染み込む。「ほら、君の席はあそこだよ」と背中をバシバシ叩かれると空いていた席に着席すると講習が始まった。先程の初老の男性が講師らしく名前の紹介から始まった。彼の名前は「タシバ」、なんと有名コーヒーメーカーのCEOだった。

 

(ティンさんどんな機械人生歩んだらそんな人とコネが生まれるんだ? ってか、そんな人に俺の事言ったの?)

 

 そんな衝撃を受けながらタシバさんの講習が始まった。コーヒーの歴史と発明された道具、コーヒーに関する知識と注意点などわかり易く子供にも受けそうな話はとても面白く今後人に教える参考になりそうだった。次にコーヒーの淹れ方を実演してお互いに注意し合う事をやるそうだ。

 自分の隣の席には全体的に白い綺麗な毛の犬? 狼? のシリオンの男性がいてその人と実演をする事になった。

 

「よろしくお願い致します。私はライカンと申します」

「よろしくお願いします。自分はアポレイアです」

 

 互いに握手、背丈はほぼ同じ位だが僅かに自分の方が高かった。

 

「…アポレイア様は普段はどのような仕事をしているのでしょうか」

「自分はもっぱらバイト生活ですね。色んなバイトしてて、今回の講習も喫茶店の店長から推薦してもらって受けました」

「なるほど、不躾な質問申し訳ありませんでした。私から実演しますので確認をお願いします」

 

 その後、互いの淹れ方を実演し合い所々雑談を挟んだが、ライカンさんはその立ち振る舞いから完璧と感じる所作をしていた。今回の講習もタシバさんのような人から教えを乞う機会など滅多にない為参加したそうだ。

 

「アポレイア様の淹れ方はとても丁寧で素晴らしいですね。豆挽き方、温度、カップの種類、全て相手を思いやってる。動作一つとしても教えた方がとても素晴らしい御仁であると伺えます」

「そう言って貰えると自分も嬉しく思います。ライカンさんなんてとても堂に入っていて指摘する所なんて何も無いじゃないですか」

「いえ、私が目指す完璧な理想像までまだ練習が必要であると感じています。お恥ずかしい話、この間も客人をお迎えする時、コーヒーを出すのに僅かばかり時間が掛かってしまい、あの様な惨劇を…」

 

 ライカンさんは少し遠い目をした。そこにはとても苦労が滲み出て何かしらの大変さがあったのだと想像できた。

 

「すみません、余計なお話をして脱線してしまいました」

「まあ、部外者が聞いていいなら簡単な愚痴程度聞きますよ。コーヒー通して知り合った仲ですから」

「お心遣いありがとうございます」

 

 その後も講習は続きとても充実した一日を過ごした。

 

「本日の講習はこれで終了となります、皆さんお疲れ様でした。ここで一つ言いたい事があります。私はコーヒーが好きです。奥深く、知れば知る程楽しい趣向の一つ。しかし、傍から見ればたかがコーヒーと思われるでしょう。でもね、そのたかがコーヒーでも色々な事を私はお伝えしました。それは人の生活において価値の少ない知識かも知れません。ですが、そんな小さい事でも今回の講習で楽しさや何かを感じましたら、それだけでも私にとって価値のある意味のある事です。コーヒーだけではなく、皆さんが抱く好きな事は無駄では無い事を忘れないで下さい」

 

 タシバさんはそう締めくくると一礼をし解散の宣言をした。

 彼の言葉にどこか俺は胸を突かれた気がした。




タシバ→TASIBAR→BARISTA→バリスタから生まれたオリジナルキャラです。

今回もお気に入り登録して下さった方、評価して下さった方このような拙い文でも一読して下さった方々に感謝!

※7/11店名を書き忘れている所があったので追記。
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