ヴィクトリア家政編2話目です。
気が付けばお気に入り150近くまで…思わぬ多さにマジかとなりました。
多少怪しい文章なのにこんなに読んでくれる方がいて嬉しい限りです。
では続きをどうぞ
ルミナスクエア
広場
PM 18:02
講習も終わりリンに連絡を入れた後、俺は帰路に向かっていた。電車が来るまでまだ早すぎるが先に駅へ入り込めば待つだけだと思ったからだ。そう考え歩いている時だった。
「すみません、この辺りで女の子見ませんでしたか?」
「え?」
進行方向からふらふらと疲れた様子の女性が来た。俺はその女性がぶつかると予想して歩きタイミングをずらし、接触するのを避けたつもりだったが俺の目の前に女性が立ち止まると声をかけられたのだ。
思わず面食らったが、よく見れば女性は疲れている所か髪は乱れヒールから血が出ているのが見えた。目からは何かに縋るように望んだ答えを待っているのが伺えた。
「女の子というと、どのくらいの? 高校生くらいしか見てないですが」
「そう、ですか、ありがとうございました。もし、どこかでサメのぬいぐるみを持った10歳位の子を見かけたらどうか、治安官の所までお願いします」
そう言い残すと女性はまた歩き出した。俺はリンにまた電話すると帰りは遅くなることを伝え歩き出した。
ルミナスクエア
??? 共生ホロウ
内部
PM 19:48
建物の影で少女はぬいぐるみを抱き締めて泣いていた。
ルミナスクエアで母が治安局で書類の手続きを行っている間暇をしていた少女は何か面白いものが無いか探検を始めた。綺麗な花屋の店員から飴を貰ったり、ニューススタンドのおばあちゃんとお話したり、にゃんきち長官からスタンプカード貰ったり、隅で動けなくなったボンプに話し掛けてたりと短い行動範囲だが少女は自分で始めた冒険を満喫していた。好奇心が止まらない少女は色んな場所に足を向け歩き、走りった末ホロウに辿り着いてしまった。
テレビでしか見た事のない場所、映画とかでも映される不思議で危険と教えられる空間。彼女は人気の無い場所から黒い壁に触れ呑み込まれてしまった。
「ママ…どこ…」
ホロウの中を歩いて数分、少女はすぐにその空間の不気味さを感じ取った。生気のない死した街並、エーテルに適応しない生物を拒絶し続けるその感覚に生理的な不快感が込み上げてくる。早く戻らねばならないと察した少女はそこで聞いた事のない獣の声を聞く。それも一つや二つじゃなく複数の雄叫び、建物に反響した声が少女に浴びせられてゆく。少女は心を恐怖に染められると走り出した。少女が考えることは何よりも早くその場から去り安全な場所へ隠れる事であった。
そして現在、廃工場の受付窓口の机の下で少女は震えていた。走る際聞こえた自分とは違う何かが走る音、獣の様な息遣い、人からかけ離れた呻き声。少女は想像した、己が巨大な怪物の餌となり丸呑みにされると。
少女を苛む時間が過ぎてゆく。1分か、10分か、1時間か、心臓の鼓動がまるでカウントダウンのように内から大きな音を立てる。
バリンッ───。
来た。来ちゃった。
コツ──コツ──コツ──。
来ないで、こっちに来ないで。
コツ──コッ。
目の前に、化け物がいる。私は、もう……。
「お嬢様確保ー」
「え?」
気の抜ける間延びした声が聞こえた。見上げるとそこには飴を食べながら私を見下ろすメイドのお姉さんがいた。
「おね、ちゃん、だれ?」
息を殺し抑えたから上手く呼吸が整わない。それでも素性も知れない不審なメイドに警戒した少女は問いかけた。
「味方。アンタを探して来た」
ぶっきらぼうに言い放つそのお姉さんは振り返ると耳に手を当てて誰かと話し出した。
「ボス、迷子の子発見しました。それじゃ、外に出ますね…はーい」
お姉さんはまた私の方に振り返ると手を出した。
「そんじゃ、行くよ」
「うん、あっ、れ? 立てなっ…」
足に力が入らなかった。何度も立とうと勢い付けても足は震えて力が入らない。まるで膝から先に足が無いような感覚だった。
お姉さんはため息を吐くとメイド服の後ろから太くて黒い尻尾が私を巻いた。それはサメの尻尾だった。
「…早く出るよ」
「うん。ありがとう、お姉ちゃん」
尻尾に巻かれて浮かんだ私はそのままサメのお姉ちゃんに連れて行って貰った。
その安堵は次の瞬間恐怖に塗り替えられた。
ルミナスクエア
??? 共生ホロウ
内部
PM 20:20
アポレイアは疾走していた。並の人間やシリオンすら凌駕する速度を維持しながらホロウという迷宮をしらみ潰しに
あの母親と別れた後アポレイアは何人に聞き込みをし、ルミナスクエアを探し回った。そこで彼はホロウという一つの答えに行き着いた。その後の行動は素早かった。子供の体力を考え得物を取りに行く時間を省略、単身で捜索を始めた。彼自身触媒となる得物無しでも星辰光は使えたので索敵に適した《振動》の星辰光を用いて探し回ったのだ。
探索を始めて十数分、アポレイアは物陰に身を潜めると喉から迫り上がる血溜まりをそこら辺に吐き捨てる。いつもであればその程度で星辰光の副作用は終わるはずだった。しかし、次第に彼の中の異常が鋭く襲い掛かった。
「あっ、がっ」
激しく劈く耳鳴り、体内から響く心音、全身の筋繊維が緊張して千切れる寸前ではないかと錯覚する程の痛みと痒み、燃え上がる様な熱が襲ってくる。
「はあ、はあ、はっ、がはっ、ごほっ」
視界が赤く染まったかと思えば白黒になり色彩を失う、それ所か世界が右へ左へと斜めに傾く。
「ふざけんな、まだ、見つけて、ね、んだ」
気も狂わんばかりのあらゆる痛み不調を不屈の意思で堪えるがそれに反し体の各所はオーバーヒートの危険信号を絶えず送り続けた。
それもその筈、彼自身が触媒の役割を兼ねて星辰光を発動させているという事は体外のエーテルを体で直接取り込み処理も調整もされていない過剰エネルギーが全身を駆け巡っている。つまり、いつ割れてもおかしくない風船を何処までも維持してる様な物だ。それを彼は意思だけでこなしている。
「また、繰り返すのか」
脳裏に過ぎるのは初めてこの世界に来た時の過去。
「また、約束を破るのか」
掛け替えのない恩人が最後に残した
「また、救えないのか」
自分の腕の中で力なく溢れ落ちる小さな手。
「っっっざ、けんな!!!」
胸に灯った怒りと憎しみの炎。体の痛みが遠のき熱を持った血潮が更に燃え盛る。赫怒の決意が彼の体を無理矢理に立たせた。
「
強い踏込みにより砕けるコンクリートの地面。アポレイアを中心とした音や衝撃の振動が周囲に広がり僅かな波として返ってくる。その中に自分が発した波とは違う連続的に発する波、つまり音が彼に届いた。
僅かな手掛かりを希望に彼は音のする方へ駆け出した。自身が発する足音の振動を0に近いレベルまで調整し無音を再現する。
そうして駆け付けた先にはメイド服を着た少女が身丈もあるハサミのような武器でエーテリアスと対峙していた。
「この、邪魔!!」
武器を大きく振りかぶると何も無い地面から氷の杭が何本も出現しエーテリアスに噛み付く。飛び出した2体のエーテリアスはそのまま串刺しにされるがその後ろに控えていた「デュラハン」はそんな氷を簡単に砕き少女に迫る。
「ちっ」
肉薄してきたエーテリアスを斬り払うと高く跳躍、得物を構え全体重を乗せた一撃を放った。
「めんど……押し流されろ!」
暴発する冷気と氷のエネルギーがエーテリアス達を呑み込んだ。全てを凍てつかせた氷の華は幻想の様にすぐに散るとエーテリアス達も塵と還した。その光景に場違いな美しさを感じるもそんな呑気な事が言える状況でも無いようだった。あの技は彼女にとっても大技であったのだろう、ため息をついたと思ったら「さいあく…」と零しその場で伏せてしまった。その光景に慌てたアポレイアは最低限の身バレ防止としてフードを被り血塗れな口元も襟元で隠し少女に駆け寄った。呼吸と外傷を確認したが規則正しい呼吸と袖やスカートの切れ目以外何処も接触した様子が無い所を見るに外傷ではなく、空腹か過労によって寝落ちしたようだ。
「お姉ちゃん!!」
建物の影からサメのぬいぐるみを持った少女が駆け寄る。近付いた時突然現れた男の存在を警戒しその歩みを緩める。しかし、サメのシリオンの娘が心配なのか再び駆け傍に寄り添った。
「お姉ちゃん! お姉ちゃん!!」
「大丈夫、疲れて寝てしまったんだ」
アポレイアは出来るだけ安心させるように柔らか口調を意識して語る。
「おじさんは、だれ? お姉ちゃんの知り合いなの?」
少女は警戒しながらアポレイアを問い詰める。それもそうだろう見知らぬ危険地で異性の不審者を簡単に心許す存在など相当温室な環境で育った者くらいだろう。
「俺は通りすがったおじさんだ。このお姉ちゃんの事は知らないけど、君を見つける為に探しに来たんだ。君のお母さんがね、ずっと君の事探して回ってたからそのお手伝いだ」
「お母さんが……」
「まだ捜してるかもしれないから早く帰って安心させないと」
「うん……ごめんなさい」
俯きながら少女は涙声で謝った。反省の色は深いだろう。少女の頭に優しく手を乗せて割れ物を扱う様に撫でた。
「君の謝罪は俺にじゃなくて、お母さんに言ってあげて。それから助けてくれたお姉ちゃんにはありがとうって言ってあげよう」
「うん、う"ん"」
母親を思い出したのか少女の嗚咽が止まらなかった。
サメの娘はアポレイアが背負い、少女とは手を繋いで歩いた。この時、異常体温の為手袋越しに少女と手を繋いだ。
少女のペースに合わせ歩く事数分。探索範囲に2種類の反応を感知したアポレイアは足を止めた。
「どうしたのおじさん?」
「…ごめん、ちょっとおじさん疲れちゃったから休んで行くよ。君には悪いけど、大人の人を呼んで欲しいんだ。俺達がここに居るって教えてくれればいいから」
「え、でも」
言い淀む少女の反応から察した。恐らくこの少女は感知する直感が鋭い。アポレイアがアレコレと捏造した言い訳を見抜いた上でエーテリアスが近くに居ることを察したのだろう。
実際アポレイアが感知したのは自分達の元へ向かう巨体が一体、更に遠くで慎重に近付いてくる複数の生きた存在。それらを察知してからアポレイアが行う行動は決まった。
彼がこれから行おうとしているのは自身が囮となって少女を逃がしサメの娘を守り耐えるという耐久戦だ。ぶっちゃけもっとマシな作戦があったろうに己の融通の効かなさに彼は腹を立てる。本音を言えば全員で逃げるか自身が守れれば文句は無いが、迷子だった少女の耐性時間があとどれ位残ってるか、それが分からない以上下手に少女を留ませる訳には行かないし、あんな小柄な子がサメの娘を背負うのも無理な話だ。それにこのサメの娘の戦闘技能からして彼女はそう言った活動が出来る人員なのだろう。並の人よりは活動時間が長い筈だから少女だけを行かせると言う理由もある。
故に決断せよ、腹を括れ。
「ここを真っ直ぐ走れば出口だから、その近くにいる大人に俺達が居る事を伝えて外に出ればいいんだ。それじゃ、頼んだよ」
少女の後ろ姿を見送った後、サメ娘を目立たない場所に隠す。すると大きな音が背後で轟く。土煙を上げながら現れたのは大型の機械。それにはマシンガン等の武装が施されていた。
アポレイアはフードを外し、溜まった血塊を吐く。
「あの子が援軍と合流して説明から来るまで、ざっと10分弱くらいか? アキラ達には謝らないとな……」
貧乏くじには慣れてるけど、誰かに泣かれるのは慣れないな。
「創生せよ、天に描いた星辰を───我らは煌めく流れ星」
だからせめて、これ以上彼らに泣かれない為に祈りの星を紡ごう。
「
誰かの為に、大事なものを守る盾となる為に、この命を焚べよう。
ゼンゼロ投稿しておいてなんですが、最近ログイン出来てないな…。
水着?新キャラ?復刻?
財布がタヒんじゃう…。
今回、お気に入り登録して下さった方、評価して下さった方このような拙い文でも一読して下さった方々に感謝!
8/12 ルピ振り忘れた箇所と書き忘れた箇所があったので修正しました。