転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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疑惑

グランベルが治めるシルトロッゾ王国は取引相手だ。

それに、七曜といえばルミナスの国のお偉いさんでもある。

軽々に判断しかねるし、復讐が妥当かわからない。

こういう時は片方の話だけではなく両方の話を聞かねば。

そもそも何が故にだよ、俺関係なくねえか。

こう考えたリムルは、前世でのサラリーマン経験も合わせ、リムルは一旦回答を保留。

「ルミナスかグランベル本人から正式回答が来ると思う」とその場を一度逃げ、グランベルにも直接話を聞くことにした。

 

「……ってことなんだけど。グランベル翁としてはどういう見解なの?」

 

したのだが。

 

「……アダルマンの件であれば、他の者の陰謀をあえて見逃したのは事実ですな。他の者での似た事例も山ほど」

 

この回答にリムルは頭を抱えた。前々から後ろ暗いところがありそうだと智慧之王(ラファエル)さんが指摘していたが、リムル個人としては「こちらもきちんと立ててくれる、話しやすい茶目っ気のあるおじいちゃん」として頼りにしていたのだ。それが真っ黒だった。

 

「なんでそんな事しちゃったんだよ……」

「不本意ではありました。しかし腐肉竜(ドラゴンゾンビ)ごときで苦戦していては、人の世を任せることが出来なかったのもまた事実……アダルマンが乗り越えていれば、"七曜"入りしておりましたな。代わりに神の正体は魔王ルミナスであったという点で、彼の信仰を裏切っていたかもしれませんが」

 

腐肉竜(ドラゴンゾンビ)ごとき、という言葉は断じて人の口から出ていい言葉ではない、と思いながらも反論ができないリムル。実際のところ中位竜(ドラゴン)ぐらい倒せないと上位悪魔(グレーターデーモン)も倒せないというのは間違いではないのだ。ただその要求水準が普通人としてはおかしいだけで。

 

「……どうすればいいと思う?」

 

見学させてもらったヒナタ相手の訓練で、全盛期よりも落ちるとはいえヒナタに対してずっと指導役をしているこのおじいちゃん。この人にあのガドラが勝つのはちょっと難しいのではないかとリムルは判断している。

グランベルは智慧之王(ラファエル)さんの推定ではディアブロといい勝負をし、ベニマルとシオンでは7〜8割負けるという話である。

 

「ワシは七曜を辞し、残り(・・)は差し出しましょう」

「いいのか?」

「アレらはもはや権力欲と魔王ルミナスからの褒美だけを目的として動いております。ワシの望むのは人の平和な世。人を裏切り、欲のみにて有望な者を蹴落とそうとするものは負の感情を多く呼ぶ。さすれば平和は遠のきますのでな」

 

グランベルの表情を見たリムルは、王様ってこんな顔しなきゃいけないのかな、と思いながらグランベルの提案を受け入れた。

 

 

 

「で、他に何か俺に言ってないこととか、ある?

「心当たりがありませんな」

「そっか、またな」

 

 

《……ってことがあったらしいのよ》

「コ、コワ〜! え、ガドラって人はそれで納得したの!?」

 

週一度の(マリアベル)神託(通信)の時間、グランベルおじいちゃんの過去のやらかし(陰謀)の後始末とリムルからの謎の追求の話になった。

え、丸くおさまったのか? おさまったからこの話してんだよな?

 

《アダルマンが『日曜師(グラン)殿は当時から苛烈な方でしたからな、言っていることも間違っているわけではありませんし、今の立場に満足している我としては結果オーライなので実は特にガドラに何かして欲しいわけではありません……ま、他の連中は恨んでおりますが』って言ったらしいのよ。当事者同士が納得してるからお爺様とアダルマン-ガドラ間の恨みは綺麗さっぱりなし、けど残りは生贄に捧げる、って話。ガドラは魔国連邦(テンペスト)に寝返ったし、政治的に大問題になりかけたけど、魔王ルミナスとお爺様もあえて現場に立ち会うことで『個人的な復讐』、表向きは七曜は解散、と言う形でケリがついたのよ。》

「そ、そっか、ならいいけど」

 

謎の追求の方も怖ええんだよな、何があったんマジで。絶対俺絡みだと思うんだけどそうじゃない可能性もあるな?

 

《魔王リムルの謎の追求については詳しく調べてないわ。調べようがないのよ》

「あー」

 

そりゃそうである。何に対してのカマかけか現時点では全く何にもわからない。

というか、調べると逆に罠が張ってある可能性すらある。気にはしないといけないところがもどかしい。

 

「あそうだ、魔国連邦(テンペスト)の開国祭で魔法によって遠隔地の情報を表示する技術、あっただろ」

《ええ、あったわね。カメラ中継みたいな……え? もしかして》

「頭の回転が早くてたすかる……そう、そろそろ『望んだ場所を映す』、監視カメラと、あと衛星写真みたいなのが実用化に入ると思う。地上の施設は全部危ない」

《わかった、バレたくないものは早めに地下に移すのよ……まったく、魔王リムル、本当にデタラメね》

「あ、わかってると思うけど全部移すんじゃまずい、バレても問題ないけど言ってないやつを少し残そう、謎の追求はこれのことでしたーってのにも使える」

 

リムル、本当にめんどくさい相手だよ。

なんで敵にならなきゃいけないんだ………

 

《……ふふっ》

「ん? そっちでなんか面白いことが起きたか?」

《なんでもない、なんでもないのよ。それじゃあまた今度》

「……んんー? まあいいか、またな」

 

 

そして、リムルの謎の追求から一ヶ月と十日後。

戦争は終わった。

変わった、ではなく、終わった。ひとまず、ではあるが。

やっぱり持ってた『森羅万象』でおおまかな戦況を把握していたマリアベルから、週一神託(マリアベルニュース)とは別に、戦闘がひとまず終結したようだ、との連絡が来たのだ。いまは大規模な戦勝会を行なう予定だそう。

 

《ガゼル=ドワルゴが、『人類は決して魔王に手を出してはならぬ』って仰ったんですって》

「あー。原初勢の本気でも見たのかな」

 

めちゃくちゃ手出す気だけどな俺ら。経済で。

 

《あとは魔王リムルが出て終わり、ではなく全戦力満遍なく使用したらしい、ということがひとつ。もう一つは魔王リムルがかなり危なかったらしいわ。

"ひとけた数字(ダブルオーナンバーズ)"という名の帝国の精鋭が民間人に紛れていたそうだけど、私も隠れておいて、その連中に力を貸しておけば良かったのよ》

 

マリアベル、ガチで悔しそうでこまる。

でもちょっと待って欲しいんだよな。

 

「それはちょっと、なあ。魔国連邦(テンペスト)は入国制限もあったんだろ? その日その時に民間人に紛れるなら俺がレオンと修行を始めた時くらいからもう馴染んでないといけないじゃん」

《……そうね、そうなのよ》

「何よりリムルを殺した後の連中の動きが読めない。だから前にも武力でどうこうはやめとこうって言ったろ」

《……》

 

通信の返事が返ってこなくなった。マズいな、うっかり正論パンチを放ってしまった。

正論は時に正しいだけのお互いを傷つける武器になるのみだというのに。

 

「……すまない、悪かった」

《私も同じことを二度言わせてしまったのよ。ごめんなさい》

 

おたがい謝ったからこの話終わり! いいね!

 

「まあ、話を戻すが帝国戦はほぼ(・・)終わりだ。あとは残党、それに天使勢力に気をつけなきゃいけないんだが……今回の戦勝会で戦力が増えるからな。魔国連邦(テンペスト)としちゃそんな問題ないはずだ。ま、周辺諸国の反応はわからんけどな」

《増える……そう、増えるのね。肝に銘じておくのよ》

「ああ。もう武力で対抗とか考えるのは無知なやつしかいないレベルだ。それか、同レベルの戦力を持っているか」

 

戦勝会で戦力が増える、不思議な話だがそもそも魔国連邦(テンペスト)は不思議な国なので何も問題はない。マリアベルも飲み込みきれてないようだがどうせことが起きればわかる。

 

そこでふと気になったことがある。

 

「そういえばユウキって何してんだろうな? ちょっと気になるんだが」

《ユウキ……ああ、ユウキ=カグラザカ。 確認しておくのよ。》

「助かる。それじゃあまたな」

《ええ、また今度》

 

いやーマリアベルが有能で助かるオブ助かる。

帝国で潜伏するうちにリムルの戦力強化に追いつかなくなっちゃってるとかだと愉快なんだけどな。そんなことないんだろうな。俺はユウキがラスボスだと思ってるからよ……。






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