転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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変化+点火

時は一度魔国連邦(テンペスト)開国祭の終わった時期まで遡る。

 

自由組合を追放されたという名目でラプラス、フットマン、ティア、そしてカガリと東の帝国に赴くことになったユウキだが、ごくわずかに自由組合に手駒を残していた。

 

ユウキは"三巨頭(ケルベロス)"の総帥でもある。"三巨頭(ケルベロス)"は帝国をはじめとし全土に股をかける巨大な闇組織であり、帝国所属だが自分の手駒である人間を西側諸国に潜入させるために、

自由組合(ギルド)の冒険者登録の仕組みを利用していた。

自由組合(ギルド)がどう考えても偽名、どれだけ胡散臭くても登録できるのは、何よりユウキが身分偽装を行いたいがためであった。それを利用できなくなるのは惜しいと、自由組合のごく下部の方には手駒を残さないとならなかった。

 

さておき、東行きの道行きはカガリの転移によってあっさりと成し遂げられた。

それがユウキにとってさらに(・・・)不利に働く。

世界のレシピ(転スラ書籍版)の通りであれば、徒歩での(・・・・)東行き道中でユウキはギィに遭遇し、一方的にやられ、『帝国を内からかき乱す』という取引をし、さらにマリアベルから奪った『強欲者(グリード)』を『強欲之王(マモン)』に進化させる契機を得る。

 

だがしかし、転移を使用したせいでギィに遭遇せず、それ以前に『強欲者(グリード)』すら持っていないのがこのユウキだ。

 

他方、ギィはこの時点で世界のレシピ(転スラweb版)の、ユウキの狙いと末路に関する知識をソウゴから与えられ、ユウキはギィの要警戒対象となっている。

ギィが直接ユウキの元に赴かないのは、帝国所属の人間はルドラのコマ扱いであり、それをギィが一方的に処断、勧誘するのはルドラとのゲームのルール違反となるからだ。と、ギィが信じているからである。

 

そしてユウキはその才覚で、帝国でも異例の成り上がりを見せた。

それ自体は世界のレシピ(転スラ書籍版)通りの結果なのだが、

『帝国を内からかき乱す』というギィとの取引が存在しない。

一方でユウキの野望は、この時点では「この世界を自らの手で導き、自分と中庸道化連(仲間)の理想郷を築く」、すなわち世界征服である。

そのためクーデター(帝国を内からかき乱す)は狙っており、結果的に、奇跡的に、ユウキの関連する事象は、大枠では世界のレシピ(転スラ書籍版)通りに収まっていた。

 

ここまでは(・・・・・)

 

 

《じゃあ、あとは好きにしていいのよ(・・・・・・・・・・・・)。》

 

ユウキにとって予想外だったのが、ユウキが支配されたフリをしていた、マリアベル=ロッゾとのさきほどの通信の内容である。

 

ドワルゴンに対して軍を展開させ、しばらく睨み合いをさせていた時、マリアベルから連絡が来た。

簡単な社交辞令、そして魔国連邦(テンペスト)が他の帝国軍をほぼ無傷で撃退したという情報共有、その感想の言い合い。それはまあ、いい。

予想外に戦力差があった、けれどもユウキは自分が本気を出せばならなんとかなると考えていた。

その他の活動について報告を求められ(命令され)た。クーデターを目論んでいる旨、これも伝えなければならなかった。ガドラが魔国連邦(テンペスト)に付いた以上、もう知られているかもしれないが、だ。

 

しかし最後の、好きにしていい、とはなんだ?

 

「仮にも支配した相手に使う言葉じゃないんじゃないか?」

 

自分なら、「その通りに進めなさい」だ。

となると、となると。

 

ユウキは衝動的にティーテーブルを蹴倒す。

帝国から与えられている、帝都にある混成軍団の本拠地。軍団長に与えられていた豪奢な部屋に、高価な茶器が粉々になる音が響いた。

 

「僕が支配されてなかったことに、とっくに気づいてたってことかよ……!」

 

舐められていた。侮られていた。嘲られていた。

いつからだ、いつが一番怪しい?

 

瞬間、閃く。

リムルさんの国の開国祭の知らせがきたあの時だ。

突然遠ざけられたあの時だ。

あの時にはもう、気付いていた。

支配しているフリをして(・・・・・・・・・・・)僕に命令してきやがった!(・・・・・・・・・・・・)

 

「マリアベル=ロッゾ……ッ!」

 

ユウキは激怒した。

いつか殺すとかつて語った、もう猶予は与えないと。

 

しかし、大きな物音(茶器の破壊音)に驚き、こちらに向かってきているであろう中庸道化連(仲間)の事を考えると、その怒りは急速にやわらぎはじめた。

そういえば、昔の自分とは違って自分には仲間がいるじゃないか、と。

仲間と相談してやってきた。それでうまくいっていた。

そうだ、一人で思い悩むことはないのだ。

ひとりではなく、みんなでやればいいと。

 

ドアを開けて自分を心配そうに見てくれる中庸道化連(仲間)の姿を見た時、怒りはすっかりやる気に変わっていた。

 

 

マリアベル=ロッゾは、ユウキ=カグラザカを始末(・・)する気でいた。

マリアベルは、ソウゴのことを「放っておくと世界の被害が大きくなるもの」に優先的に口を出すと理解していた。ならばソウゴが気にしたこのタイミングが一番いい、そう判断したのだ。

 

「世界はけしてあなた(ユウキ)のためのものではない……」

 

マリアベル=ロッゾはユウキ=カグラザカを前々から敵と見做していた。

ソウゴの語った未来において、ユウキは自分を殺すと聞いていたから。

これまでユウキに明確な敵対宣言をしなかったのは、今以降(・・)は確実に勝てると踏んだから。

 

マリアベル=ロッゾは。

よほどの理由がなければ勝てる戦いしかしない女である。

 

「世界は   のために」

 

 

「俺の行動原理は前から変わってない。生きたい、そんでもって可愛い女の子にも生き残ってほしい、だ。しかしなあ、魔国連邦の強化が止まらないんだよなあ。もう天使しか残ってない、終盤も終盤だろー?」

 

こつこつこつとノックの音がする。

ソウゴは空いてますよ、と返事をする。

 

「ソウゴ」

「レオン様、ご機嫌麗しゅう。すみません、もう稽古の時間ですか?」

 

ソウゴの暮らす客間に訪れたのは魔王レオンだった。

付き合いの長い相手が見れば、心配そうな表情をしているのがわかるだろう。しかし付き合いの浅い人間からすれば、何か機嫌を損ねたかと不安になる表情でもある。

 

「敵意が妙に強まっているな? 私が来るべきだと判断した」

 

その点、ソウゴはレオンとは付き合いが浅いが、顔色を気にしない。

「見かけ通りの人間ではない、口ぶりが怪しくても気にしなくていい」と原作知識で知っているから。

普通に対応すれば普通に返してくるヤツだ、と思っている。

 

「えー? なんでだ……? 俺にはなんもないですよ、でもちょっと気晴らしもしたいかな、早いんですが稽古付けてくれます?」

「わかった」

 

結果、二人は仲良くなりつつある。

 

二人は稽古のため、闘技場に移動した。

魔国連邦(テンペスト)の闘技場が賑わっているのを知り、羨ましくなったレオンが作らせたものだとソウゴは聞いている。

なお、黄金郷エルドラドに観光客は基本来ない。そのためソウゴは「観光客誘致の政策が先じゃねー?」と思っている。

 

「ソウゴ、本当に悩みはないか?」

「悩んでないから大丈夫ですよ」

「では、この稽古が終わったらその敬語をやめてくれ。ムズムズする」

「めちゃくちゃ急!?」

 

ソウゴはいまの生活が続けばいいのに、と思うものの、そううまくはいかないよな、と諦観していた。




大変申し訳ないのですが言わせてください。
感想欄での展開予測(ネタ潰し)ご遠慮ください(やめてね)
それは『感想』じゃないです。続きを書きづらくしてるだけです。
心当たりのある方、謝罪とかは不要です。
予想するのはいいんです。気になると思います。むしろ気にして。

ここで言いたいのは、連載してるプラットフォーム(本作であればハーメルン)の感想欄で展開予想を書かないでいただきたい、ということです。
展開予測したい場合、Twitter(現X)とかのSNSでやっていただけると助かります。

アンケート「実際1話2500文字ってどうですか?」は13日23:59に締め切りました。

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