転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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※誤字と改稿前の記述が残っていたので12/14 12:35に修正しました。


転換点

マリアベルは自らユウキを始末するつもりではあったが、

どちらかといえば帝国に始末される可能性が高い、と読んでいた。

 

そして実際に、ユウキを殺めたのはマリアベルではなかった。

 

世界のレシピ(書籍版転スラ)と異なり、ユウキは究極能力(アルティメットスキル)強欲之王(マモン)』を持たない。

世界のレシピ(書籍版転スラ)で行われたルドラの支配は、極端に言えばユウキの用いる『奪命掌(スティールライフ)』がヴェルグリンドやヴェルザード、ヴェルドラの"竜の因子"獲得に最も適していたからであり、

さらに先では『権能奪取(スキルスティール)』によってフェルドウェイに危険視された。

スキルのために、ユウキは支配され、危険視されるのである。

 

しかし、『奪命掌(スティールライフ)』『権能奪取(スキルスティール)』、どちらも『強欲之王(マモン)』を前提にしたモノ。それを持たないユウキは、ルドラ――正確にはミカエル――にとって利用価値がない。

そしてその利用され、危険視される前段階。

敵国情報局の近藤によって操作されたダムラダに一歩及ばず、ユウキは志半ばでその命を散らすことになった。

 

この世界のユウキはクーデター計画を進め、帝国戦力を掌握した返す刀でマリアベルを殺す、と考えた。

しかし、マリアベルに目が行ってしまった結果、帝国勢力の分析を誤っている。

この時点のマリアベルはまだ、帝国の総力よりも(ヴェルグリンドを含むので当然なのだが)弱かったというのに、

マリアベルを過大評価し、帝国勢力を過小評価した。

 

ユウキとダムラダの戦闘は、終始ダムラダが優勢だった。

能力殺封(アンチスキル)』は、理論上ダムラダの支配は解除できたはずではある。

しかし、ユウキの総合力が、ダムラダのそれにわずかに及ばなかったのだ。

――究極能力(アルティメットスキル)所有の有無による知識量の差、精神的余裕(マリアベルに気を取られた)

そして格上との一度分の対戦経験(ギィとやり合っていなかった)、その差によって。

 

世界は大きく変わっていく。

 

 

まず、ユウキの直接の影響下にあった中庸道化連とヴェガの運命が変わる。

紆余曲折あって(書籍版15巻中盤の流れで)ラプラスとヴェガは、カガリの元に向かった。

そこで立ちはだかったのはフェルドウェイ。

ユウキがいない分、隠していた暴威を振るい、ラプラス、そしてヴェガを制圧してしまった。

先程まで従っていたラプラスよりも強いと見て寝返るヴェガ、ラプラスに追撃を仕掛けようとするフェルドウェイ。それらから、リムルに命じられたディアブロが救う。

ディアブロとフェルドウェイが睨み合いになり、双方合意の上で一度フェルドウェイが撤退した。

 

ヴェルグリンドの力が奪われる顛末もまた、少々異なっていた。

本来『奪命掌(スティールライフ)』によって行われていたヴェルグリンドの魔素と竜の因子の奪取は、それに比べると大幅に劣化していると言える、エクストラスキル『生命奪取(ライフドレイン)』によって行われた。

 

対帝国戦第二戦、魔国連邦(テンペスト)の真なる敵がミカエルとフェルドウェイであることが発覚するまでについては、大きな違いはその二つと、ダムラダがユウキをやむを得ず殺めた事を、心底後悔しながら逝ったことだった。

 

 

さておき、ソウゴである。

 

「なんでギィ様が俺の部屋で寛いでるんですか」

「ちっと話があってな。あ、敬語はやめていいぜ。めんどくせぇ」

 

客間なので別に全然これっぽっちも全くソウゴの部屋ではないのだが、そこにツッコミを入れる人物はこの世界に存在しない。

ソウゴはギィが現れた事で、「束の間の幸せはもう消えてしまうのか……」と思っていた。それはそれとして敬語は投げ捨てた。

 

「フェルドウェイとミカエルがヴェルダナーヴァの復活を目論んでる。オマエ、コレは知ってたのか?」

「……そもそもフェルドウェイって名前が記憶にないな。ミカエルはぼんやり。天使操るスキルはミカエルのでしょ? ヴェルダナーヴァの力の利用を目論む存在ならそれはユウキ=カグラザカぐらいだと記憶してるんだが、自信がない」

 

ソウゴにとってはユウキはラスボスだ。

が、ギィがそれを切って捨てる。

 

「ああ、ユウキなら仲間割れみたいな感じで死んだぞ。オレも警戒してたが無駄だったな」

「死んだァ!? アイツがァ!? 死んだフリじゃなくて!?」

 

ソウゴは心の底から驚く。

自分の知っているユウキは弱くない。

リムルが倒すまで延々と粘った男であり、それがリムル以外が死因で死んだと言われても「格闘技世界チャンピオンが路傍の石に転んで死んだ」と言われたようなもので、到底信じられるモノではなかった。

だが、ギィは言葉を続ける。

 

「状況的に死んでないとするにはいくらなんでも無理がある。オレは悪魔だぜ? 最後の瞬間までずっと存在を気にしてたヤツの死が、魂がどうなったかわからないわけないだろ?」

 

そう言われると、ギィのいうことが真実なのではないか、とソウゴは認識を改める。

元々web版とは違った要素がいくつもあったし、スピンオフ含めたコミカライズでも見覚えのない国が存在したのだ。

 

真っ直ぐに、ギィが、ソウゴを見る。

 

「なあ、オマエの知る未来とはもう完全に違ってるんじゃないか?」

「……だとしたら?」

 

見る。見られる。お互いの目を。

ギィは目を離さない。

ソウゴも、事ここに至っては、目を離せない。

 

「覚悟を決めろ。お前は今改めて、未知の世界に放り出されたんだ」

 

それは、激励だった。

 

「……なんでそんな事を?」

「いや何、オマエ全然似てねえけど、似てんだよ。人を信じてるところ、人を愛してる所がな」

「ハァァ〜〜〜? 全然信じてねえですが? 愛してないですが〜〜〜?????」

 

誰に、はあえて問う事なく。

ソウゴは否定する。そこまでの人間ではないと。

だがギィはそれを否定する。

 

「オレが似てるつったら似てるんだよ! そんで喜べ!」

「過大評価〜〜〜!!!!!」

 

褒めても平行線だった。

 

「まあそこは置いといて、覚悟だ。腹を括らなきゃならん、って話だ、わかるか」

「……いつかこういう日が来るとは思ってたよ」

 

ソウゴは今の状況の原因が判っていた。

マリアベルだ。

ソウゴとしては、web版に存在せず、書籍版では死が確定している人物に対して生存するよう介入を行なった。

その時点で、自身には予測の付かない未来(オリジナル展開)が現れる事は確定していた。

結果がユウキの早期退場につながるとは全く思っていなかったのだが。

 

そして、あるいは故に。

ソウゴは、未来に予測が付かないというのなら。

 

「ギィ。俺、前に『自我を持つスキルに気をつけろ』って言ったよな。気をつけるべきスキルを言うよ。」

「ああ」

 

爆弾(・・)を、今公開しても大差がないと考えた。

 

「リムルのスキル、智慧之王(ラファエル)だ。

いやもう"神智核(マナス)"シエルかな。演算能力に全力を振ってる。解析魔で、究極能力(アルティメットスキル)や魔法の解析が趣味。リムルの相棒を自認してるな」

「オイオイオイ待てよ」

「魔法・アーツ・スキルの最適運用が常時できる能力を持ってる、思考するスキルと言ってもいいかな。リムルの情報分析とか、ヴェルドラと知り合う前からレベルでシエル任せだぜ? 更にリムルの眷属、あのシオンとかディアブロ、まあ幹部級ほぼ全員のスキルをアップデートして究極能力(アルティメットスキル)を新たに作り出したりもしてる。それをリムルは知らないことすらある。事後承諾は得てるはずだが」

 

ソウゴは全部ぶちまけた。いや、全部をぶちまけてはいない。"やってる"事が多すぎて言い切れないのだ。

 

「嘘だよな?」

「俺が嘘ついたことないの知ってるだろ」

「嘘であってくれよ……」

 

ギィは胃が痛そうだが、ソウゴはそれは無視している。

伝えるべきことだから伝えたまで、と言う表情だ。

 

「でもまあ、性能面はどうでもいい。

問題なのはリムルが判断のいくらかをシエルに頼ってるってことなんだよ。

表面上はリムルが一人で考えて答えを出してる。

だが、本当はそうじゃない。

リムルが"相談"したときに、世界を滅ぼす選択にそれとなく誘導していたらどうする?

俺が知っている限り『リムル大好き』が強くて、そこまでリムルの意に反する事はしなかったが、今後しないとは限らない。

みんなリムルの心変わりだけを懸念してるが、実は気にしなきゃいけない相手は二人いるんだ」

 

ギィはみっともなく頭を抱えたが、

ソウゴは晴れやかな表情だ。

 

「……クソッタレ、オレが生まれて以来の特大の厄介事じゃねえか……? なんでこんなこと伝えやがった」

「最初からリムルを敵に回した上でこれを一人で抱えるのは大変だったよ?」

 

ソウゴの発言を聞いて一瞬ギィがなんとも言えない顔をするが、

すぐに「冗談だなこれ」とみなした。

 

「はー……。オレ、これから魔王達の宴(ワルプルギス)開催するんだが。どんな顔してリムルと会えばいいんだよ?」

「え、初耳」

「オマエが爆弾を落とさなければ言ってたんだよ!」

「そりゃ申し訳ない。じゃあ八星魔王(オクタグラム)で水入らずで話してくれ……」

「オマエ連れてこうかな、リムルと会わせてやるよ。 多分シオンも来るぜ?」

「たいへんもうしわけございませんでした……」

「わかればよろしい」

 

そうしてギィは居城に帰っていった。

 

 

ガドラは、悪魔族(デーモン)となってからようやく思い出した。

原初の悪魔と引き分けた一騎士。

その危険性を。

 

《ディアブロ様》

《なんです? ガドラ》

《お伝えせねばならぬ儀がございます。ラーゼンについてなのですが》

《忘れなさい》

 

しかし、悪魔としての長であるディアブロからもたらされたのは、拒絶。

 

《……失礼を承知で申し上げます、何故ですかな?》

それ(ラーゼンへの精神操作)は私です。リムル様には機を見て話すので、気にしないでよろしい》

《……かしこまりました》

 

絶対的上位者の考えることなら仕方ない、それでさっぱり忘れた。

ガドラは自分にとって最大限都合のいい思考のできる身であった。

 

他方。

一度自分の手で逃してしまったあの騎士は、この手で捕らえ、リムル様に引き渡す。

ソウゴについて、ディアブロはずっとそう考えていた。

自らの失態を自らで挽回し、汚名を返上したいと。

それに、「また挑む」と言われた点がどうしても好感触で。

あの騎士については、自分で決着をつけたいと思ってしまっていた。

 

裏ではソウエイに頭を下げることまでした。

見つけたとしても、すまないが譲って欲しいと。

諜報・隠密活動を常に行なっているソウエイが、最も見つける可能性が高かった。

だが、ソウエイの探索能力が上がった今でも、杳として消息が知れない。

 

(……あの騎士はギィにでも匿われているかと思っていましたが、

 しかしこの白氷宮にもいない。となると……)

 

ソウゴを追うディアブロが、正解に辿り着きつつある。






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