模擬戦会場に選ばれたのは見渡す限りの草原。
あと遠くに壊れた城が見える。
七十階の面積を十倍に広げたコピーで、ここがダンジョンの中で一番広いそうだ。
ラミリスには苦労をかけるなあ。心の中で手を合わせておく。今度ジュースを奢ってやろう。
「なー、ほんとにやるのかー?
ソウゴはシオンとゴブエと二対一で渡り合ってたけど
シオンに有効打なかったじゃん? 俺、シオンやゴブエより強いよ?」
リムルが念のため確認、と言う感じで声をかけてくる。
まあそうだよな、普通に考えたらシオンを倒せないのにリムルには勝てない。
けど、『
「そう言うって事はまだ俺のスキルの解析は終わってないんだろ?
未知のスキルを使われて、この後余裕ぶっこいてられるか?」
……
これで俺はリムルと
「……何をした!? 『管制室』からの通信が阿鼻叫喚なんだが!?」
あっそれこっちにバカ正直に言っちゃうんだ。いいけど。
「じゃあ私も。ええと……
『
『
「えっ」
「えっ」
聞き捨てならねえ言葉が聞こえた。
えっマジ? たしかにリムルや俺と同格になってるっぽい?
でもちょっとそれは聞いてないけど?
「ま、確かにこれ、ソウゴにも言ってないのよ」
「説明! 説明を求めます!」
「同じく!」
俺につづいてリムルも説明を求める。当然の帰結。
「じゃあ順を追って説明するわね。
私とソウゴは同じ名の
その
基本性能として、相手が『神』に相当する
それは俺も知ってる。
リムルのスキルのうち一つが『
「だ、大分やばくないかそれ」
「神に逆らうのに神が誰かわかっていないなんて事、あっていいと思う?」
「ないですね、はい」
リムル殿がレスバに負けておられるぞ。
「次、『
前者は『"神"の敵』としてふさわしいレベルまで、つまり対峙する相手と同レベルまで自分の戦闘能力の"格"を引き上げる権能。
格が大きく劣ってるのに敵対者を名乗れないってことね。
後者は相手の防御の無効化ができるわ」
「オイオイオイオイ!?」
リムルがオイオイって言っちゃう気持ちはわかる。
わかるけど、できるのは事実なんだよな。すまんリムル、諦めろ。
お前だって『捕食者』と『大賢者』ってインチキで食ってきただろうが。文字通り。
この二つ、ギィとか竜種とか創造神レベルになったリムルにも"格"の上では同格になって、あとは技量面次第で勝てる目が出てくるってのはヤバい。
その技量面でまるで勝てる気しないのがギィとか竜種なんですけどね。
「そして最後。私が『神敵』『抹消』を使えた理由。
これは……そうね、
それと私は、元々の私の
「インチキくせー!」
俺は思わず叫んだ。初耳よ。そしてインチキよそれは流石に。
進化後の昼ご飯のときに「私は今も『
しかし進化と変質の経緯まで考えるとそういうのがあってもおかしくないな、むしろ"燃え"だな、とも思っちゃうんだよな。
名前が同じだけの繋がりじゃなくて安心した。心がぽかぽかする。
ていうかそうか、『神敵』の効果を知ってた上で『権能共有』で「自分も使える」ってわかってたからリムルに模擬戦ふっかけたってコト……!?
「あら、二人で一つの『
「……ありがとな」
「どういたしまして」
「……なあ、総合性能、マリアベルの方が強いのでは?」
リムルは訝しんだ。俺もそう思う。
俺の方にもくれよ『権能共有』。
いや、なくても強いんだけどさ『
「ちなみに
「俺はいーけど、リムル的には良くないんじゃないですかね」
ちら、とリムルをみる。言葉と表情を失ってるな。
でも解説も終わったし、始めよっか?
●
「俺、逃げっから!」
「ちょっ、おまっ!?」
戦闘開始直後。
俺は全力でリムルから逃げつつ無詠唱
無様な引き撃ち戦術をお見舞いしてやるぜ。
誉れ?
そんでマリアベルは俺とは逆に突っ込む。素手で。
ああ見えて近接戦闘は決して苦手ではない、むしろ得意。
ましてノーカラテ、ノーニンジャの教えも伝えている。
カラテを増したマリアベルは……無敵だ!
「行くのよ。『
カラテisどこ? 後でくるのか? ならヨシ。
…
……
………
さて。
『
しかし、それは
本来の所有者がスキルを使用した場合、スキルは所有者の
結果は。
「はぁッ?! 『
「私は
ほんの少しだけ格上の相手の、相手の魂に根差した
………
……
…
カラテ以外も強いわ。本当に無敵か?
「でもどうせ! スキルの再生成とか出来るんでしょう?!」
「チッ! そこまで読まれてたか!」
いやリムルもぶっ壊れだったわ。
しかしおそらくマリアベルが奪ったスキルの再生成のせいで、
リムルに隙ができたところは見逃せない。
「れいしほうかーい」
神聖魔法扱いされていながら精霊の加護も信仰もいらず、詠唱と魔素・霊子操作ができれば使えるというところが気に入っている。
俺、信仰が必要な
で、詠唱は『
隙の追撃の
光の速さで即着弾の筈なんだが、普通に『未来攻撃予測』かなんかで避けられてるぽいな。
やはり光では遅い。ラグ死すべし。
まあ、そのかわりマリアベルがさらに距離を詰める。
完全に格闘戦の間合いに入り込んだ。
「わわわわわ!?」
「油断してると死ぬぞー」
「二対一挑んどいてよく言うよ!」
「瞬殺されてなくて良くそんなことほざけるな! 戦力比はこれで真っ当だよ!」
練度的にはたぶん転生してからこの世界にいた年数の差で「マリアベル>リムル>俺」なんだよな。
そんで真っ当な戦闘訓練の経験を加えると「マリアベル>俺≧リムル」、だといいなあと思ってる。
若輩ながら騎士やってて
その上で二対二仕掛けてるのに差を突ききれずに凌がれてるのはシエル先生の面目躍如ってことか。それか俺の役立ち度が微妙。
ていうかリムルはさも当然のように二対一って言いますね。シエルさん含めたら二対二だろうがよ。
ま、隠してるからしょうがないんだろうけど。
……あれ? そういえば。
「その生まれた時から秘匿してる件、ギィにはもう言ってあるから」
「は?」
それで近接戦において決定的な隙が生まれ、マリアベルは隙を逃さず、リムルの剣を蹴りで弾き飛ばした。
ちょっととんでもないことしとる。
……マリアベルのスカートの中リムルに見えてないよね?
●
リムルの逃げる先を俺が無詠唱
グランベルとの訓練の時も感じたが、やはりマリアベルは連携に慣れている。
俺の一撃を布石として自分の手を組み立てるのが上手い。
「くっ、そ……」
「シッ!」
そして、ついにマリアベルの手刀、というか貫手がリムルの右腕を
「
「……チッ!」
「そう、ソレが正解。でも、腕一本分不利にはなるのよ?」
リムルがめちゃくちゃ嫌そうな顔をしてマリアベルの攻撃が掠った右腕を左の手刀で切り飛ばす。
よし、これで俺たち有利に傾いた!
「今まで私が攻撃に乗せていたのは、相手の
同レベルの戦いにおいてそれがどれだけ致命的か、リムル陛下はよくお分かりね」
「お褒めいただき、どーも……!」
お喋りの間も無詠唱
リムルは防戦一方から劣勢に傾きつつある。そう見えている。
「続けるの? このままだといつか四肢がなくなって終わりだと思うけど?」
「……俺は諦めてないよ!」
マリアベルが煽るが、そうだよなあ!
腕を切り飛ばしただけで終わるわけがないよなあ!
「マリアベル!
「……ッ!」
俺が言った時にはもう遅い。
リムルの失ったはずの右腕が、マリアベルの腹に突き刺さった。
ないはずのものが襲ってくる、実に有効な手だ。
ていうか思い出した、リムル『無限再生』もあったはずだから本来すぐ治せたなアレ?
「が……ぐっ……」
マリアベルが呻き声をあげる。
「油断したな……ッ!?」
リムルは「油断したな」と言った。
しかしこう返そう。
腕がマリアベルの体を貫いて、リムルの体の動きが完全に止まった瞬間、マリアベルがリムルの胴にしがみ付く。
それでリムルの拘束が完了した。
俺が無詠唱
マリアベルもここまで隠していた
やがてその身体がキラキラとした粒子となり崩れ落ち、消え去った。
ラミリスの権能による死亡判定と蘇生だ。
勝った。
……ほんとにー? まあ死体なくなってるから間違いなく勝ちなんだけどさ。
●
腹に大穴の空いたはずのマリアベルの肉体はもう修復されていた。
これは
グランベルと
「やっぱりこれ一瞬で治るとはいえその瞬間がすんごい気持ち悪いのよ……」
「まあ腹に大穴開けるのはそうそうやらないよな、多少の切断はあるけど」
内臓が急速に再生される感覚、普通に気持ち悪いんだよな。
で、リムルが転移で戻ってくる。
「羽織れるタイプの上着の予備とかない? マリアベルのおなかが丸出しなんで……」と問うと、リムルはどっからか出したダッフルコートを貸してくれた。
優しいじゃん……。ソウゴポイントを二点あげよう。
マリアベルにコートを着させたあと、感想戦に移る。
「やっぱ動きが止まる攻撃はだめだよな、普通に殺された……どこからあれ狙ってたの?」
「私はリムル陛下の剣を払うところから
「マジかよ早いな。俺リムルが腕自切したとこからマリアベルの狙いに気付いた」
「完全に油断してたように見えてたよ……」
「女の演技力を甘く見てはいけないのよ?」
「コワ〜……」
マリアベルには、リムルがスライムであること、人型が擬態であることは事前に教えてある。
姿形は変えられるものと
つまりマリアベルの攻撃が当たってから、こちら側の言動は全部
戦う相手に『未来攻撃予測』のような予知に近いスキルがある場合、単純な不意打ちでは効果がない。
故に相打ち狙いで暫く動きを止めさせ、そこに必殺の一撃を合わせる必要があった。
今回はマリアベルが囮になるような動きをしてくれたので勝った、という理屈。
あとシエルさんがこんなマヌケな負け方をマジでやってる時に許すはずはないので、まあ100%わざと。
あと魂ごと消しとばしちゃうはずの
リムルが事故って当たりどころ悪かったらワンチャンラミリスの権能貫通して死んで転スラ終わっちゃう。
まあ当たんないと踏んで乱打してたけど。
……しかし待てよ? 次戦があるとしてどうするかにあたって思ったが、
リムル、負けてもいいからって
今回
うーん、
ちょっと調子乗ってたわ、反省。マリアベル的にはどうだったんだろう。
まあまだ『
シエルさんの『
多分、なんとなーくの感覚だと、シエルさんでも『
そんなことを考えていると、マリアベルが爆弾発言を落とす。
「たぶん制御しきれなかったり、使った結果復活の腕輪でリムル陛下が再生できない懸念があったから不採用だったのだけれど、"神"のスキルを奪うプランもあったのよ?」
「……なあソウゴ、マリアベル
「コメントしにくい」
本当にコメントしにくい。
確かに『虚空之神』の『虚無崩壊』? だったかのスキルが「人間に操作できない」とか書いてあった気がするもんな……勘で回避したのか? 神か?
……後でギィに相談しようかなあ。いや、やめとこ。
「あと、
俺とリムルは顔を見合わせる。
「……戦闘中、持って行ったきりで使わなかったのは不思議だなーと思ったんだけど」
「単に欲しかっただけ……?」
マリアベルはふふふと笑って、それ以上何も言わなかった。
どこ目指してんのあなた?
みんな嘘つき。得したのはシエルさん(リムル)とマリアベル。
ご覧の通り「
『
『
あんまり
「rimuru」「maribel」は転スラアニメのキャラクターページのURL表記に準じていますので誤表記ではないです。
評価、感想、お気に入り、ここすきお待ちしております。励みになります。
特にここすきはよく効きます。
本作で一番好きなキャラは?
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ソウゴ
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シオン
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ゴブエ(シオンが庇ったゴブリンの子)
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ディアブロ
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リムル
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マリアベル
-
グランベル
-
ユウキ
-
ギィ
-
レオン
-
ルミナス
-
ガドラ
-
ラーゼン
-
アダルマン
-
ガゼル
-
シエルさん