転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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因縁の決着

ベニマル、ソウエイ、シュナ、ハクロウ、それにクロベエ。

大鬼族(オーガ)組とも呼称できるメンバーは、

その時現場にいたシオンを除き、揃って『管制室』に詰めていた。

 

理由はもちろん、シオン・ゴブエの仇である相手がどのような人間だったか見定めるためだ。

 

現れた時ははらわたが煮えくりかえっていた。

裁きの前に観光などふざけているのかと。

しかしリムルに当日その時まで手出し無用と言われたために手出ししなかった。

 

シオンとゴブエとの戦いが終わった時は困惑していた。

こいつはいったい何なのだ、と。

 

更にその後のリムルによる詰問が、ギィ=クリムゾンの襲来でいきなり終了し、「三人で話す」となった時にはさらに困惑が深まった。

 

その後話し合いの内容は分からずとも、三人は妙に仲良くなったように見受けられた。

さらに「見ておいてくれ」とリムルに言われ始まった一対二の模擬戦に至っては、敵対する二人の存在値が急激に増したことで管制室一同が大パニックになった。

直後に権能によるものというネタバラシがあったため、戦闘開始時には一旦「リムル様も突飛なことをするのだから、リムル様以外の相手がそういうことすることもある」で飲み込んだ。納得はしていなかったが。

 

ただ、模擬戦結果については。

 

「リムル様が……」

「負けた……?」

 

ベニマルとソウエイが驚愕し。

 

「なにか……体の調子が悪かった、とか……」

「……それはあるまいよ、リムル様に限って」

 

シュナの心配をハクロウが否定し。

 

「……」

 

クロベエは絶句していた。

 

全員、全てを見ていたのに、聞いていたのに、

見たものが信じられなかった。

 

ベニマルが問う。

 

「……ラミリス様、模擬戦とはいえ、リムル様の敗北は間違いないのですか?」

「……アタシも信じられないけど、権能が働いたのは確かなのよさ」

 

ヴェルドラもこれには驚いている。

 

「……我もにわかには信じられんな。わざと負けた(・・・・・・)ようにすら見える。

しかし、存在値の測定にも間違いはなかったのだよな?」

「うん師匠、そっちも間違いない。いきなりリムル並みの相手が二人増えるなんてありえないと思ったけど」

 

ラミリスの返答は、問いの肯定。

 

「……ならば、一旦認めるしかあるまいよ。

我らがリムルも負けること、死ぬことはある、と。

聖典(マンガ)にもある、『ありえないなんて事はありえない』、とな」

 

『管制室』の空気は重い。

 

 

その『管制室』にリムルとディアブロ、シオンとゴブエがやって来た。

 

「みんなどうした、辛気臭い顔して! ほら笑顔笑顔!」

「笑えませんよ!」

 

ベニマルが叫ぶ。

 

「……俺たちの王が模擬戦とはいえど部外者に負けて、なんで笑えるっていうんです……」

「……スマン、悪かった。けどな、俺だって無敵じゃない。そこは覚えておいてくれ」

 

「無敵でいてくださいよ!」

「私たちは、三度目の喪失なんて、嫌です……」

 

これは珍しくリムルの前で感情を露わにしたソウエイとシュナだ。

無茶苦茶を言っているのは自分でもわかっている。しかし二人としては、吐き出さずにはいられなかった。

 

「……もちろん、努力はする」

 

リムルは参ったな、という感じで頭を掻く。

 

「けどな、ミカエルやフェルドウェイと戦う時、不測の事態で俺が負けないとは限らない。

その時には、後を引き継いでちゃんと戦えるか?」

「それは……ッ!」

「俺がいなくなったらそれで終わり、そんな風になってもらってちゃ困る。

お前たち、俺に頼りすぎてちゃだめだぞ! 俺を超えるくらい強くてもいいんだ!」

「おお、リムル様がその愛が故に我々を千尋の谷に突き落とそうとしている……!」

「大体あってるから始末に悪いな……」

 

リムルの言葉にベニマルが言い淀み、ディアブロが陶酔する。

 

「それで? あの者達は敵なのですかな?」

 

ハクロウの問いにも、リムルが答える。

 

「いや、そういうわけでもない。こっちが攻めていくとか、あえて戦う理由がないのなら、戦う気はない、って話だ」

「クアハハハ! 奴らは我が相手してやろう! 相手にとって不足はない!」

 

ヴェルドラが気炎を吐くが、リムルはそれを否定する。

 

「ヴェルドラ。こっちからしてもあの二人とは戦う必要がないんだ。

それに模擬戦でお互い命を気にしなくて良かったとはいえ、俺が負ける(殺される)相手だぞ? ヴェルドラも危ないかもしれない」

「……そんなにか?」

「そんなにだ。それに言ってたろ? あっちは存在値が上げられるって。ヴェルドラ並みの存在値が二人に敵になるって考えると、下手に敵対するのはまずい。

だからみんな、あの二人とその仲間に、こちらから手を出すな。ミカエルとフェルドウェイとの戦いにも参加・協力してくれるって話だしな」

 

リムルの言葉に、そういうことなら、と矛を収める各員。

リムルは内心「あっちは表面的な敵対っていうが、こっちに血の気が多くて本格的に敵対しそうじゃないか……?」と冷や汗ものだ。

そして、クロベエがようやくリムルの持っている剣に気付く。

 

「リムル様、それは……?」

「ああ、これは鬼殺刃(オーガイーター)ってモノらしくてな。

あの男、ヤマスが俺たちの国を攻めた時以来ずっと使ってた武器だそうだ。

……自分の罪の象徴、これは魔国連邦(テンペスト)に委ねるってさ」

 

「……私は、この剣で殺されました」

 

まだ重い空気の中、ゴブエが。

ヤマスに、ソウゴについて語る。

 

「ファルムス王国の騎士に、庇ってくれたシオン様が殺されて。

怯える私に剣を振り下ろす。その光景はまだ忘れません。

アイツは笑いながら、喜悦に浸りながら私を殺した。

……でも今日は、さっきのあの人(・・・)は、そんなことをする人には見えなかったんです。

私たちが死んでいた時、リムル様は『人間にもいいヤツはいる』ってお話しされたと聞いています。

さっきのあの時、あの人が流した涙は、本物でした。

(ゆる)しはしません。してやるものですか。

……けれど私は、あの人、"ソウゴ"が『いいヤツ』に変わろうとしたのだと、変わったのだと、信じてみようと思います」

 

辛そうに。認めたくなさそうに。けれど、覚悟を決めて。

ゴブエは、ソウゴを認めた。

 

「シオンは?」

「ゴブエと、同じですね。赦しませんが、変わろうとしているのも認めましょう。そして、次は勝ちます」

 

それが、魔国連邦(テンペスト)の結論だった。

 

「あ、武力勝負はしたくないから、勝つのは武力以外で頼むな? 料理の腕とか」

「ええっ!? ……いえ、頑張ります!」

 

 

「俺とリムル、シオンとゴブエ立ち会いのもと、鬼殺刃(オーガイーター)を鋳潰してインゴットにして一旦因縁は終わり、か」

 

流石俺の推す(テンペスト)、ここから「やっぱ何がなんでも殺す」とかはやってこなかった。鼻が高いぜ。

ずごごごご、と青色(リムルブルー)のクリームソーダの最後の一滴を啜りながら、ディアブロをメッセンジャーとして送られてきた連絡に思いを馳せる。

リムルが俺の処遇を持ち帰るというので、喫茶店で時間潰しにケーキを食べて、食後のドリンクタイムだったのだ。

ちなみにマリアベルは紅茶を飲んでいる。

 

「音がきちゃないのよ」

「すまん。でもクリームソーダ頼むとやっちゃうんだよな……」

 

やっちゃうというか、なっちゃうというか。

 

「ソウゴ、そのインゴット、どうなると思う?」

「うーん、魔国連邦(テンペスト)が権利を持つがファルメナス王国が管理、って感じだろうな。

元の鬼殺刃(オーガイーター)がファルムスから下賜されたもんだったんだよ。

で、それを俺が所有権放棄して魔国連邦(テンペスト)に引き渡した。

インゴットの形に変えたら、経緯を書いた解説テキストを添えてファルメナスの美術館所蔵でもすればあとは勝手に歴史的意義が出来て魔国連邦(テンペスト)に得なんじゃねえかな」

「ん、まあ合格点をあげるのよ」

「なんで採点されてんだ……」

 

()せぬ。

 

「なんでって、シルトロッゾを二人で繁栄させるんでしょう? 

野良の元騎士なんて立場じゃどうにもならないから、私と名目上だけは婚約、ゆくゆくは結婚してもらって、シルトロッゾの次期王として表裏両面、世界を牽引してもらうわよ」

「そっかー」

「……久しぶりに会った時もそうだったけど。もう少しこう、何かないわけ?」

 

せやな。当たり前のことすぎて(・・・・・・・・・・)いつも通りの対応をしてしまった。

えー、ごほん。

 

「マリアベル、結婚しよう。幸せは必ずしも約束できないけど、人生の重みは分かちあっていけるだろう」

「……ま、それでいいわ。貴方はそういう人だし、私から言い出してるもの。

まずは婚約をきちんと成立させるところからね。

それで、採点は国を導く立場で考える練習。才能はあると思うから、頑張って欲しいのよ」

 

まあ採点の理由は解せたけど、まだ解せぬわ。

なんでこうなった?

 

「私が声をかけたからじゃない?」

「やっぱりそれかぁ」

 

それだとすると、今一つだけ思い浮かんだ疑問がある。

 

「なあ、マリアベル」

「なあに?」

「お前、二周目(・・・)じゃない?」

 

なんのこと? とマリアベルが笑う。

まあ、思いついただけだし、真偽は不明。

俺みたいな凡夫にはそのほうが数々の不自然に説明をつけやすいってだけで、

マリアベルなら計算だけで至れそうな領域といえばそうなんだよな。

 

ま、俺が殺される心配はしばらく(・・・・)無くなったと思うし、

マリアベルが一緒にいてくれるっていうから、いいか。




ここまで読んでいただきありがとうございます。
シオン&ゴブエ殺しがひとまず決着をつけられたので、いくつかの要素を残して(色々投げっぱなしにして)第一章完、です。

そう、終わったのは第一章です。第二章をやるつもりです。
もうちっとだけ続くんじゃ。

ただ、第一章は相当行き当たりばったりで書いてたせいでやたら苦労したのでそれの反省として第二章はプロットをよく練りたく、そのため開始までしばらく時間をいただきたいです。
そしてアンケートで需要があるとわかったifルートも、アンケート結果を踏まえて第二章以降の本編完結後に書く予定です。

それで、第二章の前に、幕間(本編に関係ある1.5章)をちょっと挟む予定です。
本作はいまのところ作中時系列が書籍版でいう18巻2章半ばぐらい。
ミカエル&フェルドウェイの侵攻再開あたりを二章開始時期としたいのですが、
そこまで作中時間で五ヶ月の猶予時間があるので、そこの時間を幕間に当てたいのです。
内容としては原作改変した結果原作まんまじゃなくなったところとか、ソウゴの五ヶ月間(正確にはもうちょっと短いはず)の足取りの描写のつもりです。
ただ、こっちも進捗は芳しくなくてェ……。

つまり何が言いたいかというと、22巻発売(2024/1/30)までに
幕間(1.5章)が終わらず、第二章は始まらない可能性が高いです。
なので、のんびりお待ちいただけますでしょうか。
……第一章で終わっとけばよかったって言われかねないですが、頑張りますね。

あと、第一章を終えて語りたいことを2024/12/22 19:00までに活動報告の方で出します。
→2024/12/22 11:45出しました。
こちらからどうぞ
重要なことは基本的にない(本編読む上で必要、みたいなことは何も書かない)ので、読まなくてもかまいません。

また、アンケート「本作で一番好きなキャラは?」は12/23 21:40に投票終了しました。

評価、感想、お気に入り、ここすきお待ちしております。励みになります。
特にここすきはよく効きます。

本作で一番好きなキャラは?

  • ソウゴ
  • シオン
  • ゴブエ(シオンが庇ったゴブリンの子)
  • ディアブロ
  • リムル
  • マリアベル
  • グランベル
  • ユウキ
  • ギィ
  • レオン
  • ルミナス
  • ガドラ
  • ラーゼン
  • アダルマン
  • ガゼル
  • シエルさん
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