転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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ルベリオスにて

さて、俺は今ルベリオスに来ている。

ルミナス相手に「そういやダグリュールが敵に回るの思い出したけどどうします?」と聞いたら「ダグリュールが裏切るというなら攻めて来るのはルベリオスじゃろう、兵力はいくらあっても困らぬから来い」と言われて来ることになった。

グランベルおじいちゃんも動員すればいいと思うのだが、荒事を引退すると言う話が伝わったのか、おじいちゃんの呼び出しは無しだそうだ。

 

さておき、今ルベリオスにはシオンとアダルマンがいる。

シオンは完全に割り切ったのか普通に話しかけて来る――リムルを倒した件も気にしてなさそうなのはすげえと思う――のだが、アダルマンがなんとなく距離を取ってるように思えて気になる。

いや、主君を模擬戦とは言え殺されてれば隔意があるのが普通だとは思うんですけどね? 

でもそういう感じじゃなくて、なんかそわそわしてるというか……。

 

 

で、とある日、アダルマンから話しかけてきた。

隣におへそ丸出しふりふりスカートの美少女を連れて。

あーいけませんえっちすぎます。なんて子を連れてるんですか。

アダルマンから紹介されたが、ウェンティちゃんというらしい。名前まで可愛いね。

でっかい赤と黒の鎌はウェンティちゃんの得物? へえ、ギャップ萌え!

冥霊竜王(ゲヘナ・ドラゴン)って種族名なんだ……ギャップ萌え!

えっ、俺に美少女を紹介しにきてくれたんですか? 嬉しいけど俺にはマリアベルって相手が既に居て……。

冗談(三分の一本気)はさておき、要件はなんだろう。

 

「我が神……リムル様がわざと(・・・)とは言え負けた相手、興味がないとは口が裂けても言えませんな」

「あー、そうじゃないかと思ってたけど魔国連邦(テンペスト)でもわざとって周知されてるんですね?」

 

ていうか、わざとじゃなくてガチ負けという認識だったらこんなに和やかに話しかけてきてないな。

神聖視されてるリムルさんも大変だあ。

 

「さらに迷宮では大層な活躍を見せているではないですか。

市井では貴公、『至高拳ヤマス』とも呼ばれておりますよ」

「なにそれしらない」

 

マジで初耳なんだけど。何その恥ずかしい二つ名。

ぜってぇ至高なんかじゃねえよ。酒の勢いで付けただろ。

 

「故に、ですな。一手お手合わせ願いたく」

 

アダルマンがぐっと拳を握り込む。

いや、ジェスチャーとしては、わかるんだけど。

 

「……拳を? 骨で?」

 

まあ広い世界(知ってるファンタジー)には格闘する骨も居なくはないんだけど、アダルマンはそういう骨には見えないんだよな。

 

「おっと、そうでした。手合わせいただくのは私ですが、このままでは不都合。というわけでウェンティ、体を借りますよ」

「はい?」

「よし、同意もいただきましたし、早速」

 

いや疑問の聞き返しであって絶対同意じゃなかったと思いますが、言うが早いか、アダルマン……いや、先程までアダルマンだった骨が崩れ落ち、何かが抜けてウェンティちゃんに入り込む。

え、何? 高度なプレイを見せられてる?

気付くとウェンティちゃんはどこへやら、崩れた骨と漆黒の司祭服を纏った黒髪の青年がそこに残った。

 

「え、美少女の体乗っ取って受肉ですか?」

「これぞ我が秘儀、依代の精神を残したままの憑依。

ああ、ウェンティの意識は残っているので、分離すれば元に戻れます」

 

たぶん、と小声で付け足したのを俺は聞き逃さなかった。

ウェンティちゃんかわいそ。

かわいそうなのをおいとくと、実際問題肉体を得たアダルマンはかなりやる(・・)ように見える。

 

「私、"聖拳導師"という僧侶と武闘家の上位職だったのですよ」

魔導師(ウィザード)ではなく……?」

「現在は魔導師(ウィザード)でもありますな」

 

魔導師(ウィザード)、ヤマス知識によると三系統以上の魔法を使える魔法職。ざっくりいえば魔法系最上位級でありながら神聖魔法と徒手格闘も使うってことですか。

バカみてえなスペック、驚くより先に笑うからやめろ。

で、魔法は封じて格闘のみでやると言ってくださっているのだが、その格闘も技量面で確実に俺より上なので、小賢しくやろうとすると逆に勝てないだろう。

力技(パワー)を押し付けて技量で捌ききれなくさせる、というのが推定勝ちパターンだが……うーん、近距離パワー系の敵役の発想。負けそう。

 

「あ、崩魔霊子拳(メルトブロウ)とやらはなしでお願いしますぞ。あれを出されたら受けもクソもないですし、何より死んでしまいます。お願いしたいのは拳術の手合わせですからな」

「アッハイ」 

 

パワーを封じられた件について。

 

 

ドラゴンのパワーと達人の技量を合わせる、ふざけた足し算である。

だが有効だ。

とりあえずまともに受けたくはない。万一を考えると回避なり受け流しに専念するしかない。

 

「捌きの技術は超一流のようですが、攻め手がありませんね?」

「見え見えの隙を晒して誘ってカウンター入れようとしながらいう台詞じゃねえよなあ……!」

 

グランベルが付け入る隙のなさで敵を寄せ付けないなら、こっちはあえて敵を引き寄せ、肉を切らせて骨を断つタイプ。

自分より先に相手が倒れればいいってことで、つまり脳筋だな?

嫌いじゃないけど敵としてはやだなあ!

 

手が出そうになるのを必死に堪えてチャンスを待ちたいとこだが、そもそも攻撃せずに待っててもジリ貧なわけで。

どうやったら殺せる(・・・・・・・・・)かなあと頭を回す。

 

……うん、いや、殺したらあかんよ。全然ダメよ。

またスキルの意思か、おめでてーな。

崩魔霊子拳(メルトブロウ)使う気マンマンになってたわ。害悪すぎる。

 

しゃーない。相手がこちらに打たれることを前提にしてるんなら、もう足も止めちまって殴り合いと洒落込もうじゃないか……!

受けたくはないが、クリーンヒットさえしなければいける! と思いたい!

 

行くぞアダルマン!俺たちの戦いはここから第二ラウンドだ!

 

 

負けました。ええ……?

ここは覚悟を決めて挑んだ側が勝つ流れじゃないのお……?

やっぱドラゴンパワーってすげえわ。技量は完全に負けてたし。

 

「惜しいですな、崩魔霊子拳(メルトブロウ)という技を持っていながら、格闘技術全体で見れば未だ途上にある……実に惜しい!」

 

いや途上っつーか、三桁年四桁年の差があるはるか高みから言われても困るんですわ。

バランス考えろヴェルダナーヴァ。初心者に優しく!

あとそもそも。

 

「俺の本分は剣なんでぇ……」

「今持ってないではありませんか」

 

うぐー。それを言われると辛い。

というわけで、お互い暇なときにアダルマンに格闘術の稽古をつけられることになった。拒否権はなかった。

さては格闘術の弟子が欲しかったなあんた?

なんか「今は仲がいいかもしれませんが、グランベル氏のお孫さんと殴り合いの喧嘩になった時に勝てる方がいいでしょう?」とか言ってるし、代理戦争もさせる気なんじゃねえかこの人。恨んではないが一泡吹かせたい感じか?

俺たちは夫婦喧嘩なんかしませーん。たぶん。

 

あと、ウェンティちゃんは無事に元の美少女に戻れた。よかったね。




新成人の読者の方、いらっしゃいましたらおめでとうございます。

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