転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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推し活ビジネス

ファストファッションはあくまで一の矢。

二の矢、三の矢の準備も怠ってはならない。

というか、商材同士が相互影響を与える形が望ましいのだ。つまり、ファッションに関連の深い分野・文化を掘り下げる。となれば二の矢は……

 

「アイドルってどう思う?」

「テンペストにはそりゃもう全世界的人気の方がいらっしゃるわね」

「いや、そんなにデカく当てなくていいんだ。親目線、手のかかる幼馴染、そういうくくりで見られるアイドル」

「属性としては国民的アイドルとそう変わらないわよ、それ。……察するに、強い感情を持った、限られた特定顧客から収益を吸い取るから、認知度は上げすぎなくていい、という話かしら?」

「話が早くて助かる」

 

まあメジャーになるようにプロデュースはしていくんだが、初期の活動としては地道にやることになる。だって全世界に伝わる広域放送がないもんね。

宣伝の方向性としては街宣看板を出したり商品パッケージでコラボしたりして、「こういうアイドルがいる」ということはゴリゴリに押し出していくつもりだ。漫画雑誌の表紙にだってなってもらうもんね。

アイドル誰しも最初は「あれ誰?」だが、そこは宣伝力で認知させる、というゴリ押しだ。

ただし、ある程度の認知を得たらそこで宣伝は緩やかにストップさせていく。

これは「インディーズ時代から知ってたグループがメジャーデビューして遠くに行っちまった感」現象を避けるためだ。まあ、宣伝ストップと言っても、コラボ・モデルの類を止めさせるわけではない。ほら、売れっ子も一時期からメディアの露出が減って、いつのまにか地方で番組持ってるような感じ。ああいうの。そういうのも、追う人は追う。

問題は、宣伝される事に抵抗がなくて、一方で宣伝されなくてもへこたれない強さを持つアイドル候補を見つけなきゃならないというところだが。……めちゃ難しくない?

 

----

 

「というわけでアイドルやらない? ほら、声もいいし」

「やらねえ。それにお前の陣営への肩入れになるだろ」

「ほら、やっぱりダメじゃないの」

 

手のかかる幼馴染とは全然違うが、アイドル活動させたらビジュも声も強くて儲けられそうなギィをマリアベル同伴で誘いにきた。だめだった。

 

「えー。俺たちダチじゃないのー」

「ダチでも無理な願い事はあるだろうが」

「……ダチは否定しないのね」

「"世界最古の魔王を見せモノにして売ろう"って度胸だけは買うけどな」

 

楽しそうに笑うギィ。まいどあり。原初レインボー!売れると思ったんだけど、センター候補のギィがだめならしょうがねえや。

 

「となるとやっぱり支えてあげたい系になるのかなあ」

「なんだよその支えてあげたい系ってのは」

「うーん。一人で立てなさそうな人。あるいは、思わず手を貸したくなるような、面白い人」

「……なるほどな」

 

ギィがなんかわかったような顔してますけど。昔支えたかった人でもいるんですか?

 

「しかしそれを商売にするのか? えげつねぇな」

「まあ売る側としても『ほどほどにね』とは繰り返しアナウンスするつもり」

「……そこに『人の欲望には限りがないのよ』って顔で座ってる女がいるが?」

「ははは。」

 

愛想笑いするしかねえ。ちょっと調停者の真面目な顔出てるよ。いかんな、アイドルは世界を破壊するか? しないとは言い切れない。

 

「まあアイドル本人は、その辺で見かけるちょっとかわいい・かっこいい、レベルの人でいいんだけどね」

「そうなのか?」

「そうなのよ」

 

ド極端な話、アイドルというのも「観測者がその価値を見出せるかどうか」が大いに影響する。これはファストファッションのカラーリングと同じく「自分で選んだ」というバイアスがかかることでより強烈になる。

 

「まず第一印象でどの子がイケてると思いますか?ってアンケート取るんだよ」

「外見で人を判断するのか?」

「まま。それが嫌な人のために簡単なプロフィールも添えるんだよ。ラーメンが好き、とか強い相手とのバトルが好き、とか」

「……自分との共通点があると、好印象になるやつか?」

「そうそう。それでもって選ばせる。そしたら執着心も出るだろ。その先の『応援したい』がために『お金を使う』となれば売り手の勝ちよ」

「やっぱ邪悪じゃねえか?」

「邪悪じゃないラインに下げるためにギィに相談だよ」

「その発想がだいぶアウトだな」

「アレェ?」

 

そういうギィも笑ってるが。

 

「……まあ、危ねえ事にならねえように努力するってんなら、見逃してやる」

「ほんとに?」

「良いか悪いかでいえば、悪いだろ。けどな、悪い事全部を予め排除してたら、人の発展にも限界がくる。だから、最大限譲歩して、許してやるんだからな?」

 

そう言うギィに感謝を伝えようとしたところ、

 

「あら、楽しそうな話をしているわね。私も混ぜて?」

 

と、ヴェルザードが現れた。

いやあ、あなたには強いて用事はないんですけど、とは思うものの、世界が平和になった今、ギィに会いに行ったら絶対出張ってくるよな、とも考えていた。

つまり、避けられないボス戦である。

 

「これはこれはヴェルザード様。はじめまして、ソウゴと申します」

「堅苦しいのはなしでいいわ。……でも、ギィをとっちゃ嫌よ?」

 

ヒェッ。なんか元から低い気温が更に下がった気がする!

 

「そんなことはしませんよ」

「ほんと? でも、念のため、お願いするわね」

 

こわいこわいこわい。これが竜種(恋する乙女)の圧? シャレならんでしょマジで。

 

「ヴェルザード様、私の恋人をあまりいじめないでほしいですの」

「あら、貴女は……」

 

助太刀に入ったマリアベルをヴェルザードが興味深げに観察する。

え、何、なんか起きるのこの二人。流石に予想外なんだけど?

 

「可愛いわ!」

 

……? いや、確かにマリアベルはかわいいけど。

言われたマリアベルも宇宙猫している。ギィもだ。

え、ヴェルザードさんあなたそういうキャラでしたっけ……?

 

「ねえギィ! 私たちの子供ができたら、こんな感じの子になるのかしら!?」

「そりゃちょっと違うんじゃねえか」

 

なるほど、わかったぞ! これはよその家の子供を見て自分も子供が欲しくなる現象! ホントかよ。

ヴェルザードさんにひょいと持ち上げられたマリアベルがぷくーとふくれている。なんだこのカオス空間。

 

「えーと、ヴェルザードさん?」

「あ、ごめんなさいね。つい幸せな未来を想像してしまって……」

「離してくださいません……?」

 

なんだこれ。ギィを見ると、首を振られた。

いや、あんたの女だろうがよ。

 

《ねえソウゴ、竜種が我を失うくらいなんだから、私アイドル向いてるかもしれないわね?》

 

おお、思念通話でカオスを加速させないでくださいマリアベルさん。そのアイデアには根本的な問題があるでしょうよ。

 

《彼氏持ちのアイドルはダメです》

《ええー?》

《ダメです》

 

マリアベルは理解してないみたいなのだが、これは男として、いや、人として譲るわけにはいかなかった。いやだって、ダメだろ、良識として。

 

カオスが落ち着くには少々時間を要した。

 

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ちなみにルミナスもダメだった。「神そのものが偶像(アイドル)やってどうするのじゃ」と怒られました。そらそう。





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