転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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邪悪なテレビ番組たち

アイドルデビューか、夢破れるかの100日間を密着取材!

推しを応援したい人は、ベルペイを持って近くのUB店舗へ!

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目標得票数に達したアイドル候補生は、デビュー確定!

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※投票権の獲得は一人につき10票までに制限させていただきます。

※投票されたポイントの50%はアイドル候補生の収入になります。

 

……という、じゃあくな企画をマリアベルが思いついた。思いついたと言うより、前世のイケてそうな番組を思い出した、の方が近いかも知れないけど。

 

「アイドル候補はどうするの?」

「私が直々にスカウトするわ。ロッゾの顧客データベースから虚栄心か向上心の強い娘を探し出して、平均以上トップクラス未満の顔面偏差値の子にアプローチするの。たとえば学園の中の存在だとしたら、『クラスの中では三番目』ぐらいが理想ね」

 

それなんてフランシスコ・ザビエル。

 

「エグくない?」

「自己投影できるほどほどの容姿、一方でほどほどに美しいだけに画面映えもするし、未完成な美は化粧品を使う事でさらに化ける。すっぴんでも可愛いなんてウソよ、『お前の化粧下手くそ』でしかないわ。その点、プロのメイクアップアーティストを採用したアイドル候補生は完璧に近い美を体現するはずよ。化粧品のメイクアップ効果を目の当たりにした視聴者は、こぞって私たちの商品を買い求めるようになる。どう?」

 

完璧なプランニングだわ。しかも化粧品販促までしやがって。

 

「……UBでは投票できるけど、化粧品ブランドショップは対象外なの、反発が来ないか?」

「くるかも知れないわね。だから、一期生シーズンはUBだけにして、二期生からはロッゾ資本の店舗であれば可、ぐらいにしちゃっていいのよ。応援に紐つく購買力そのものよりも、少額でもいいから決済させてベルペイを浸透させるが目的だもの、これ」

「その踏み台にされるアイドルたちかわいそう」

「あら、全員デビューさせるわよ?」

「は?」

「最終日に必要得票数に足りたことにする、のよ」

 

激悪い顔してる。

 

「詐欺じゃねえか」

「詐欺じゃないわ。そもそも得票目標数を公開しないもの」

「……じゃあ何か?見えないゴールに向かって走らせて、最後の最後に『あなたはゴールしました』って褒める、と?」

「そのとおりよ」

 

じゃあくすぎるだろ。

 

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で、そんな話をしたしばらく後のある日。

俺は書類の山を前に軽くめまいを覚えていた。

 

「……候補こんなにいるの?」

「あなたはどんな女の子が好きかなと思ったのよ」

「俺はマリアベルが一番好きだがー?」

「それは前提よ」

 

とかいいながら、ちょっぴり顔を赤らめるマリアベル。かわいいね。

 

「まだ実際には声をかけてないけど。一応商品価値の高い女の子たちを選んだつもりだけど、あなたの目を通してもらおうかと思って」

「ふーん……」

 

ぺらぺらと書類をめくる。

 

人間、人間、また人間。まあそうだろうなと思ったら、しれっとエルフが混ざり込んでいたり、ドワーフやゴブリナがいたりする。なんならオークまでいる。

 

「……どっから見つけてきたんだよ?」

「あら、ロッゾの手はもはや大陸全土に伸びてるわよ。ほら、その子、帝国から出たことのない生粋の帝国人よ?」

 

うわマジだ。現住所帝国やんけ。……どうやってシルトロッゾまで来させるの?

 

「成人であれば当人の、未成年であれば加えて保護者一名の旅費と宿泊費を負担するわよ?」

「大盤振る舞いするな」

「だって実質的には広告費だもの。そこでケチって大魚を逃す方がもったいないわよ」

「どういう……あー、もしかして、あらゆる国から最低一人出させる気?」

「御名答」

 

つまりは、テレビ視聴者に最低限「同じ国の子」というフックを用意するつもりだということだ。

 

「実質的な国家間の代理戦争じゃね?」

「そうよ?」

 

「うちの国の子」を「うちの金で勝たせる」んだもんなあ。

マリアベルさん、悪い笑顔で笑ってるわ。

 

「戦争が私たちの作ったベルペイというフォーマットの中で行われ、世界から『この子をデビューさせたい!笑顔が見たい!』と資本が集まるの! 素敵ね、素敵だわ!」

 

「あのー、一個いい?」

「なにかしら」

「それまでに全国にベルペイを普及させなきゃならんよ?」

「……(ぽかぽか)」

 

叩かれた。当然実現のための事務コストがやばいのはわかってるようである。何年後に実現するんだろうね、この番組。

 

----

 

そしてそういった事務コストをほぼかけない番組がこちら、旅・グルメ番組である。

カメラ持って出掛ける、撮って出しをするだけ!(大嘘)

まあとはいえベルペイの宣伝も兼ねてるわけで、ベルペイが使える店しか行かないけどね。

 

おいしいごはんも、ダイナミックな景色が見られる宿も、魔道列車に乗る切符代だってベルペイで!

身軽な旅、しよう!

 

しかし。問題はあるもので。

 

「……旅番組のレポータースタッフになりたがる奴ばっかりになってる?」

「それはそうね、会社の金で飲み食いし放題なわけだもの」

「まあべつにいいんだけど……旅番組ばっかり増えることになるな」

「良いんじゃない? 旅番組チャンネルでも。どこかに行きたいという欲を煽って、実際にテレビで見た場所に旅させれば良いのよ」

「うーん」

「ソウゴ、いい? 私たちが作るのはその実『番組』じゃないの。『ベルペイを使わずにはいられない、新しいライフスタイル』そのものなのよ。

旅に出て、美味しいものを食べて、可愛い子を応援して……そのすべてに『べるぺい』という決済音が寄り添う。これって、とっても平和で幸せな世界だと思わない?」

「邪悪で不埒な世界だなあ!」

「作っておいて!」

 

あはは、と笑い合う。

 

《ちょっといいですか》

 

うわびっくりした。なんだよヤマス。

 

《早めに死んだ方がいいんじゃないですか、貴方たち二人》

 

でも世の中は便利になるからさあ。必要悪必要悪。

 

《うーん、魔物より邪悪だったかもしれない》

《なんだっけ? 人類の得である限り何もしない、だったっけ? まあ見てなって、俺たちがリムルとシエルさんを出し抜くところを》

《既に大差つけて圧勝してる気がするんですがね……》

 

気にしない気にしない。土下座して詫び入れてくるまで殴るよ。




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