転生したらスライムの敵だった件   作:一宮 千歳

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訓練! グランベル=ロッゾ

ととと、とマリアベルが小走りで寄ってくる。かわいい。

マリアベルはサポート役ということで、完全に隣とかではなくは3,4歩離れた後方で俺とグランベル両方の様子を伺う立ち位置に立つようだ。

 

「状況の見立てとしてはそうだな、宝物の防衛をしていた君たちと闖入者、闖入者は2人を始末して宝物を強奪しようとしている、といった形でよいかな? まあ、宝物がわりの特質級(ユニーク)装備はすでに失われているが」

「それで構いません」

 

頷く。まあ、そんな筋立ては飾りだ。

殺し合いの体で殺し合う(・・・・・・・・・・・)のがこの訓練に必要なこと。その間も眼は離さない。訓練はもう開始済みなのだ、下手は打てない。思考加速もフル回転。

 

「では、」

 

来……ッ!?

 

終わりだ(・・・・)

 

来る、と思った瞬間にはもう俺の隣にグランベルが立ち、俺の喉元には皮一枚ほどの隙間を空けてグランベルの握る細剣(レイピア)の先が添えられている。

嘘だろ、全神経集中してたんだ、まばたき未満の時間で細剣(レイピア)を抜いて距離を詰めて俺の首に首の皮一枚で添えたってのか? その一連の行動が思考加速一千倍の補正がかかってなお認識できない? 早すぎるし正確すぎる……!

 

「……聖人を目指す、と言うのであれば、この訓練中にこの程度は反応できるようになって貰わぬとな?」

 

にこり、と微笑まれる。

義祖父(おじい)ちゃんがスパルタ教育すぎる件について。

 

(義祖父になった覚えはないが?)

 

こころをよんだうえにねんわをたたきつけないでいただけますでしょうか。じょうだん、じょうだんですから。

あっくびがいたいのですが! たいへんもうしわけございませんでした……!

ちょうしにのっておりました! こんごきをつけさせていただきます! はい! ほら! マリアベルさんもごらんになっておりますので! ごようしゃたまわりたく!

 

ゆ、許された。

 

 

「少々差があるようだな」

「少々どころの騒ぎじゃないですよグランベル翁……」

「ちょっとかわいそうになったのよ」

 

追加で三度ほど同じ動きを手加減して繰り返してもらったのだが、回を重ねるごとにスピードががくーんと下がっており最終的に視認だけはできたのだが、"反応して体を動かして防ぎきる"までに至らなかった。うそ、私の反射速度、遅すぎ……!? ちげえよおじいちゃんがターボおじいちゃんなだけだよ。

 

「あと私がサポート役もなにも、すぐに決着するから何もできないのよ」

「それは確かに」

「まあ、現状の強さの見極めはできた。予定通りのものを模擬戦に使う」

 

予定通りのものis何……? と思っていると、地下闘技場に人が十数人ほどやってきた。なんだなんだ、ロッゾの手のものか? ……いや? 人種が転スラ世界でよく見るタイプじゃないのが混ざってるな。年齢もバラバラ。するってーと……?

 

「"異世界人"。"呪言"で縛ったうえで自由意志も奪ってある、お爺様の手駒なの」

 

ド厄ネタじゃねーか! そうだよこの人ら元は敵勢力! 悪いことやっててもなんも不思議じゃねえ!

 

これら(・・・)は素性が悪い人間でね、召喚直後に召喚者を殺傷しようとした者や重大な命令違反を行うため意思を奪わざるを得なかった者達だ。訓練中に事故(・・)が起こってしまっても構わない」

「ちなみにこいつらが自由意志を取り戻した場合は?」

「ワシ直々に処分せざるを得なくなる事態をまた(・・)勝手に引き起こすだろうな」

 

ああじゃあおっけー、気にする必要ないわ。

俺もうすでに(シオンとゴブリンの子)殺しだしな。我々の糧になっていただこう。俺の手のひらは光よりも早く返るぜ。でもさっきのグランベルより遅いかも。

 

「運用方法はどういうのを想定してるので?」

「まずは二人一組でそちらにけしかける。なんでもいいから撃退したまえ。操作をワシがやる」

 

そう言ってグランベルは観客席に移動した。

 

「さて、準備が良ければ再開するが」

「ああ、その前に一つマリアベルに確認したいことが。『相手に死を求めさせるスキル』の発動機序が知りたいんだが、教えてもらえるか?」

「……敵意の反転、もしくは敵意をなすりつけて同士討ちを狙ってるのよ?」

 

できたらめっちゃ強くないか、と思ってるんだが。

 

「……『強欲者(グリード)』での方法論の転用は無理ね。私の『死を渇望せよ』はあくまで元々できる『欲望の対象のすり替え』をベースにした運用方法。ソウゴのスキルは『ソウゴ自身がこちらに対して強い敵意を発している』と認識させるもので、それ以上でもそれ以下でもないようだから」

 

だめか。本当にいらんぞ『敵対者(このスキル)』。

 

 

グランベル操る"異世界人"……人形でいいか、人形は前衛役二体。どちらも直剣を持っている。ショートソードってやつですね。

 

動きはグランベルより遅く、さらには原初の黒より遅い。まあ比較対象が悪すぎるだけで早いは早いのだが、上の方を見てると対処可能な早さのなんとありがたいことか。

鬼殺刃(オーガイーター)での受け流しや鍔迫り合いで攻撃を防ぎきることは余裕を持ってでき、マリアベルが狙われた時にフォローしにいくことも可能だ。

 

「姫様への接触(タッチ)はご遠慮願いまーすッとぉ!」

「礼は言わないのよ!」

 

しかしこれマリアベルがフォローされやすい(・・・・・)動きを教育されてるな? 騎士の記憶と合わせて戦闘してるけど異常にフォローしやすい……幼女に(戦闘訓練)やらせてんだグランベル……と思ったけど転生者ならメンタル的にギリ平気か。ヨシ!

 

「ではここに魔法使い役を一名追加する。ああ、実際に魔法を使うのはワシだが魔法使い役を止めれば使用は停止しよう」

 

ちょっと何してるのおじいちゃん!? 2人なら余裕だが3人に勝てるか!?

 

どん、という音とともに前衛の片割れが吹っ飛び、魔法使い役にぶつかって倒れる。動かない。ワンショットツーキルゥ……え、マリアベルがやった? もしかしてマリアベルさん俺より強い? まあそういうこともあるか。……サポート役とは?

 

「ふむ、次は8人だ。役割を入れ替え、"動ける魔法使い"を増やす」

 

難易度曲線がおかしくないですか!?

あーでもそんくらいしないと強くなれなさそう! やるしかねえな!

あとごめんマリアベル! さっきのどん!のこと教えてもらっていい!?

 

……なんでも、自身の持つ強い"欲"の力をエネルギーとして変換、放出して物理的な破壊力を持たせる大技、強欲の波動(グリードフレア)……の威力と消耗を抑えた(バージョン)だったらしい。あと、『敵対者(俺のゴミスキル)』では同じことは不可能だと言われた。知ってた。

 

 

 

多分昼になったぐらい。8人戦で5,6人倒して敗北、というのを繰り返していたら、世界の言葉さんからの告知がきた。

 

《確認しました。『魔力感知』を獲得しました》

 

よーしよしよしよし、何度かの戦闘(訓練)中に

魔法をじっくり(発動予兆から残滓まで)観察することで、想定通り『魔力感知』を獲得できた。攻撃バリエーションにちょっと希望を出すことで、『魔力感知』の他にも戦闘に有用そうなスキルをまとめて獲得する試みが順調に成功しているのだ。

 

前からあった耐性系が『物理攻撃耐性』『魔法攻撃耐性』に統合され、新たに『解析鑑定』『予測演算』『思念伝達』を得ている。

改めて『魔力感知』で見てみると魔素量は人形たちの方が上なので、そこがスキル習得の要因だったと思われる。格上との戦闘(訓練)、最高〜!

 

半日訓練しただけでこれだけ成果が出たとはいえ、目標は遥か遠くなんだよな。

 

「伝えていなかったが、この訓練はここまでしか行えない」

 

なぜどうしてホワイ。

 

「ワシは今回、魔王達の宴(ワルプルギス)の開催中を狙って動いている。ワシはヤツらの警戒対象、魔王達の宴(ワルプルギス)が終われば貴様の存在など気にしておらんかのように常どおり動くしかないのだ。マリアベルも同様にな」

 

え、そしたらマリアベルと俺で訓練したい、って話したのはどうなります?

 

「マリアベルの訓練は折を見てワシが担当するが、貴様の訓練相手は自力で探せ。すまぬな」

「『思念伝達』を使えるようになったみたいだけど、平文は盗聴の危険があるのよ。多重暗号化ができるようになるまで私とお爺様相手の使用はしないで欲しいのよ」

 

いや警戒するならしょうがないんですけどもぉ! えっ今日でお別れぇ!? 攻撃用アーツまだ覚えてないですけどぉ!

 

ぎゃりん(・・・・)

 

「この訓練中に、反応できるようになったな?」

 

笑うグランベル。

俺は、前触れなく(・・・・・・・・)俺の首を狙って振り抜かれた細剣を(・・・・・・・・・・・・・・・・)

鬼殺刃で防ぐことができていた(・・・・・・・・・・・・・・)

 

グランベル=ロッゾ、指導力ヤバくね? あるいはスキルの有無の差ヤバくね? まあ別にリムルに戦闘で勝とうと思ってないんでこんなことできてもあんまり? ですけど?

 

うそ。だいぶうれしい。




いつまでも訓練してられると思ったか! 相手は肩書たっぷりの王族で忙しいんだぞ!

なお、できた時間で鍛えられるだけ鍛えた模様。


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