とあるアストル(厄災の黙示録)の女神創造 作:ネシエル
厄災復活より半年。
始まりの台地、精霊の森の中。
アストルは草むらにひっそりと身をひそめ、銃を構えた。
一瞬の静寂を破って、彼はトリガーを引いた。
「……!」
短く息を飲み、静かにトリガーを引く。
銃弾が発射され、まっすぐ飛んだそれはイノシシの頭を見事に貫通した。
「きゅん」
銃弾が空気を切り裂き、垂直に飛んだ。それは見事にイノシシの頭を貫通し、
獣は短い悲鳴を上げて倒れた。
血が地面に染み渡り、草むらに美しい血の花が咲いた。
アストルは静かに近づき、
動けなくなったイノシシを見下ろした。
「ふむ、初めてにしては上出来だな。
構造上の欠陥もなし。我ながら完璧だ」
満足げに独り言を漏らすと、
彼は猪の体を持ち上げ、森を抜けていった。
▲▲▲
木でできた小屋の前。
アストルはプラスチック製の青い椅子に腰かけ、
手際よく猪の解体を始めた。
「知識があっても、実際にやるとなると難しいものだな」
彼はそう呟きながら解体を終え、焼いた猪の肉を手に取る。
その片手でパンを生み出し、肉と一緒に口に運んだ。
しかし、一口かじるなり眉をひそめる。
「……獣臭い。せっかくのパンが台無しじゃないか。
素人がやっていいことじゃないな。ゲームとはわけが違う」
それでも肉を完食し、口元を手で拭った後、
焚き火をじっと見つめた。
『しかし、長かった。あれから半年。
アストルの日記によれば、厄災復活は私が目覚めた時期の
わずか一週間前の出来事だったらしい。
ということは黙示録ではないのか。ここは……』
炎のゆらめきを見つめながら、彼は自分の内面に思いを巡らせた。
『私も随分、変わったものだ。言葉遣い、口調――恐らくアストルの影響だろう。
微かに彼の気配を感じる。残骸のようなものか』
ふと手を焚き火の上にかざすと、指先から水が現れ、
炎を包み込むように落ちる。火は瞬時に消え、静寂が戻った。
『母から受け継いだ能力は主に二つ。
一つ、情報具現化――自分のイメージや記憶、情報を魔力で具現化し、操る力だ。
イメージや情報に欠落、あるいは魔力不足だと再現できない。
イメージや情報は自身の記憶に依存し、自動的に記録できない。
簡単に言えば、ブループリントの劣化版。
そして、もう一つは』
アストルは手を広げ、銃を具現化する。
『母星の加護――情報具現化の弱点を補う能力。
地球の記憶や魂を記録した「アカシックレコード」へのアクセス権限を持つ。
地球上のあらゆる情報を閲覧し、切り取りも可能。
しかし、制限も存在する』
椅子から立ち上がると、彼は小屋のドアを開けて中に入った。
『そういえば、アストルはなぜ始まりの台地に来たのか。
まあいい――黙示録で登場したオリジナルキャラクターだし、考えても仕方がない』
▲▲▲
部屋の中、机に向かい合うアストル。
彼は防護眼鏡と防護服を身につけ、巨大なダイヤモンドを慎重に触っていた。
その表面に怪しげな光が差し込み、まるで魔法陣のような文様が浮かび上がる。
『情報具現化の弱点……空想上の存在――つまり、存在しないものは再現できない。
だが、それは「肉体」というハードウェアがないからではないか?』
彼は一息つき、手元の作業を再開する。
『データさえ存在すれば、空想だろうと再現できる。
肉体――ハードウェアが必要なだけだ。
光が止み、ダイヤモンドには複雑な文様が刻み込まれていた。
アストルはその完成品を見て歓声を上げる。
「成功したぞ、ついに!」
彼は飛び上がると、輝く宝石を高く掲げた。
▲▲▲
精霊の森の中、アストルは奇妙な生物、
ボコブリンたちを発見した。
彼の手には、先ほどダイヤモンドを縫い付けた杖が握られている。
アストルはゆっくりと杖を持ち上げた。
「雷よ。」
彼の言葉に応えるように、杖が黄色い光を放ち始めた。
次の瞬間、稲妻が杖から飛び出し、ボコブリンたちを直撃する。
「ギャアアアッ!」
「ギョエエエッ!」
絶叫を上げる間もなく、ボコブリンたちは灰となり、
その場に崩れ落ちた。残されたのは、奇妙な素材だけ。
「何度見ても、不思議な現象だな。」
アストルはそう呟きながら素材を手に取るが、
その顔色が青ざめる。
「ふむ……やはり、生理的に無理だ。
薬になると聞いたが、これを飲むのか?」
彼は素材をその場に放り出し、
興味を失ったかのようにその場を後にした。
杖を片手に森を歩きながら、
縫い付けたダイヤモンドをじっと見つめる。
「力が増幅されているのは感じる。
だが、何か物足りない。材料に問題があるのか?
それにしても、秘石を付けられるのが一つだけという制約か。
なるほど……ラウルも分けずに複数個つけていれば、ガノンなど簡単に倒せたはずだ。
ガノンもまた、一個だけでなく全てを奪い尽くせばいいのに。」
森を抜けた先に、崩れかけた時の神殿が姿を現した。
その廃墟は朽ち果てた様子を見せながらも、不思議な威厳を漂わせている。
『やはり、他の作品ではダメだった。
この世界の影響か、ゼルダの伝説で登場したアイテムしか再現できないようだ。
理論上、生物も可能だろうが、制約が多すぎる。』
やがて太陽が沈み、彼自身が設置した街灯が光り始める。
神殿はその光に包まれ、神秘的な雰囲気を帯びていく。
アストルは女神像の前で祈りを捧げ始めた。
『何故か最近、こうして祈ることが増えた。
アストルの影響だろう。あれほどガノンを崇拝していたというのに……。
もしや、初めからガノンに信仰したわけではなく。
女神ハイリアを信仰していたのか。
過去描写がないことが情報に拍車がかかる。
ニンテンドーも彼の過去についてまったく情報がない。
いや、書いていないか。』
祈りを終えると、彼は神殿を後にし、
考え込むように森の道を歩き始めた。
「私は何をすればいい……何の偉業を達成する。
時間なら腐るほどある。
だが、この百年で私に何ができる?
長命の者たちが蔓延るこの世界で、たった百年の時間で何を成せる?
運だけで特別な力を手に入れた凡夫に……」
家に戻ったアストルはベッドに倒れ込み、天井を見上げた。
「世界を支配する?……興味がない。ありきたりの設定だ。
世界を救う?……論外だ。いくら素晴らしい栄光を得ても、
いずれ忘れられるだけだ。そして、決してリンクに勝てない。」
彼の視界に、ふと女神像の姿が思い浮かぶ。
「女神ハイリアか……」
『神を作る……なぜかこれが一番しっくりくる。
恐らくアストルの影響だろう。微かだが、彼には女神ハイリアへの信仰があったはずだ。
魔王も勇者もやらず、大偉業を成し遂げる……これが一番理に適っているかもしれない。』
アストルはベッドから身を起こし、窓の外に輝く星を眺めた。
『「神に近い力を手に入れる」や「神を超える存在になる」……そんな野望を持つ者は数多くいた。
しかし、「神を創造する」……野望を持つ者はいない。誰もが己のこそ最強になることに拘る。
だか、私は違う。
最強にはなれなくても、最強の存在を作り出すことは可能だ。
任天堂のデータを利用し、再現可能なハードウェアを手に入れれば、
女神ハイリアを復活させることも理論上可能だ。』
しかし、彼は少し考え込み、呟くように自問した。
「それは本当に、俺が望んでいることなのか?
私ではなく、俺が。」
星明かりを浴びながら、アストルは再び目を細めた。
その青く輝く星をじっと見つめながら、心の奥底に引っかかる感覚を探っていた――。
アストルは深く星空を見つめながら、静かに呟いた。
「星を作る。」
その言葉が口から漏れると同時に、
彼の顔は青ざめた。
『何を考えている、俺……それはダメだ。母が言ったではないか。
「神が星を作るとは、何たる愚行だ」と。
例えそうだとしても、必要な情報がない。母が許可するはずがない。
閲覧禁止と……書いて……』
彼はそこで言葉を切り、瞳孔を大きく見開いた。
目の前に現れたのは、青い光を放ち、眩しく輝く情報体だった。
それはまるで小さな天体のように宙に浮かんでいる。
『……何だ、これは……星の設計図?』
その構造が理解できたことに、
アストルは驚きを隠せなかった。
『閲覧できる……だが、何故だ?
あれほど閲覧禁止の情報が多かったというのに……』
額に汗をにじませながら、
彼は口元に手を当て、深く思案した。
『母は星を作ることを認めたのか?……
だが、何故だ。なぜ俺にこの情報を与えた?』
思考が巡る中、
彼の脳裏には答えのない問いが幾重にも浮かび上がった。
『アカシックレコードで閲覧できる情報は、基本的に俺が死んだ時点までの過去の出来事に限られる。
しかも、多くの情報が閲覧禁止になっている。
それなのに、この一番大切な情報――星の設計図、
それも母自身の魂や構造そのものが明け渡されるなんて……』
彼は静かに立ち上がり、呟いた。
「最初からわかっていたのですか、母よ。
これがあなたの恩恵というのならば、作ろう。
星を。俺の思い、そして私の思いを……」
少し黙り込んでから、彼は続けた。
「アストル、俺は君のことを知らない。けれど、女神ハイリアに対する感情が確かにある。
なぜ、ガノンを崇拝しながらも女神ハイリアを信仰するのか。
俺は知らない。
だけど、ならば、俺は私の全ての思いを引き継ごう――」
決意を固めたアストルは机に向かい、ノートを取り出した。ペンを手に取り、文字を書き始める。
「女神ハイリア……ゼルダの伝説において、非常に位の高い神だ。
ハイラル王国において国教に指定し、神の力と不老の肉体を持つ者。
だが、終焉の者を倒せなかったり、黄金の三女神のパシリとして描写されている。
これが問題だ。女神ハイリアを復活させても、それでは物足りない。
たかが神では俺を満足させない。」
彼の手は止まらない。熱を帯びた思考が次々と紙の上に記されていく。
「星はこの宇宙で最も素晴らしい生命体だ。
そう、この星の設計図を利用すれば、女神ハイリアを神を越える生命体として作り直す。
ただの神ではない。完全な、完璧な、最強の神だ。
死という概念を超越し、単体でこの星の生命体全てを滅ぼすことも可能な存在にする。」
その想像に満ちた計画に、アストルは興奮を抑えられなかった。
「いい……いいぞ。これだ。これなんだ。
これが我が大偉業だ。」
プロジェクト名――
彼はノートを閉じ、顔を上げて窓の外を見た。
星明かりが静かに降り注ぎ、夜の空を深い青色に染めている。
その光を受け、彼の瞳は強い決意に輝いていた。
『母よ、見ていてください。
私はこの星で、あなただけが許した奇跡を成し遂げます――』
アストルの胸には、
静かでありながら揺るぎない炎が燃えていた。
主人公はFateの設定厨です。
次回投稿12/8です。
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