とあるアストル(厄災の黙示録)の女神創造 作:ネシエル
草叢の中、アストルは身を潜め、
音を立てないよう慎重に移動していた。
呼吸を抑えながら小屋に到着し、
壁に背中を預けて身を隠す。
彼の視線は焦りに満ちている。
「はぁ…はぁ…。間違いない、ライネルだ。
なんでこんなところに…ここ、マスターモードだったのか?」
アストルは荒い息を整えつつ、
そっと壁から顔を出し、彼を追い詰めている存在を確認する。
その視線の先には、鍛え抜かれた体を持つ異形の獣、
ライネルの姿があった。
白銀のたてがみを持ち、
紫の縞模様が白地の体に刻まれている。
全身には獣神シリーズの装備が輝き、
威圧感を放っていた。
「しかも、白銀のライネル…。
ノーマルモードでの最上位種のライネルだって…?」
恐怖に震える自分の手を見つめ、
アストルは現実離れした光景に息を呑む。
「ゲームとは大違いだ。
こんなに迫力があるなんて…」
そのときだった。ライネルが弓を構え、
赤い閃光を放ちながらこちらに向けた。
アストルは思わず声を漏らす。
「あれ、なんで…?」
矢が放たれる。咄嗟に地面に伏せるアストル。
その数秒後、小屋は爆音とともに木っ端微塵に吹き飛ばされた。
▲▲▲
小屋があった場所は煙が充満し、瓦礫の山と化していた。
アストルは手で口元を押さえながら立ち上がる。
「げほっ、げほっ…。
今のは、爆弾矢か…」
無残に破壊された小屋の跡を見つめ、
アストルは絶望の息をつく。
そのとき、煙の中から重い足音が響き、
ライネルが姿を現した。
「GOOOOOOOO!」
吠え声を上げながら迫りくるライネル。
アストルは必死に杖を構え、雷を放つ。
「来るな! この化け物!」
雷は直撃したように見えたが、ライネルは盾を構えて防ぎ、
そのまま突進してきた。その勢いに圧倒され、アストルは呆然とする。
『早く、次のイメージを!?』
突進したライネルが片手に握る獣神の剣を振り下ろした。
アストルは反応しきれず、剣は彼の右腕を切り飛ばす。
「え…?」
自分の腕が地面に転がり、血に染まった杖を握ったまま
横たわっている光景に目を奪われるアストル。
その腕とともに砕けた秘石が、
彼の目に現実を突きつけた。
「嘘だ…嘘だ…、秘石が・・・」
彼は左手で額を押さえ、呆然としたまま後ろを向く。そこには威厳を放つ白銀のライネルが、じわじわと距離を詰めていた。
『早く、早くしないと…死ぬ。
イメージだ、情報を具現化しろ…!』
アストルは震える手をライネルに向けたが、
力が入らない。焦りばかりが募る。
『あれ…できない…。頭が回らない…。
落ち着け、落ち着くのだ…!」
ライネルが迫る中、
アストルはとうとう背を向けて逃げ出した。
「うわあああ!」
だが、足元がもつれ、すぐに転倒する。
自分の足を見て愕然とするアストル。
右足は膝下から切断されており、そこから血が勢いよく噴き出していた。
「死にたくない…死にたくない…なんで、こんなことに。
あんまりじゃないか。
こんな、こんなに簡単に」
彼は地面を這いながら必死に逃げようとするが、追い詰められた虫のような姿だった。
「死ぬ何で。」
ライネルは容赦なくその胴体を剣で切り裂き、
まるで虫を潰すように静かにとどめを刺した。
そして、冷たい空気の中に沈黙だけが残った。
▲▲▲
血塗られた大地
『そうか、まだ、死ぬのか』
アストルはかすれた声で呟いた。
彼の体はすでに胴体から切断され、
地面に転がった上半身だけが残されていた。
彼はライネルの姿を薄く開いた目で見つめる。
『結局、こうなったのかよ…』
ライネルは何の感情もなく、大地を踏みしめている。
アストルの視界に映るのは赤く染まった大地、
そして、彼を殺した白銀のライネルの禍々しい姿。
「ああ、きっとアストルもこんなふうに死んだんだろうな…
あの小屋が『ブレワイ』のときになかったのも、
ライネルに吹き飛ばされたからか…」
彼の体に雨が降り注ぎ始めた。冷たい滴が血に混じり、
アストルの傷口を濡らしていく。
『世界が、遅く見える…。
これが走馬灯ってやつか…』
アストルは、自分の行動を思い返していた。
無謀な挑戦、自堕落な日々、
そして、無意味な死。
『生きていくだけで必死になるこの世界で、
なんで神を作ろうなんて、考えただろう。俺・・・
バチが当たったんだな…。
でも、まさか、こんなにも無意味に死ぬなんて…」
彼の脳裏に浮かぶのは、過去の自分の言葉だ。
『俺、いつか絶対に有名人になるんだ。
病気が治ったら…いつか…』
『そうだ。俺には覚悟がなかった…
病気を理由に、何も行動しなかった。いつかを言い訳に、
親のせいにして、自分のせいにして…。
動けるうちに何もしてこなかった。
だから、こんなふうに終わるんだ』
アストルは苦しげに呟く。
『俺は絶対に有名人になる。
大物になるんだ…。
そう思っていたのに、結局、始まりの台地から一歩も出なかった…怖かったんだ
そして、死ぬ寸前もまるで、小物みたいに。
俺は何で生まれてきたんだ。
第二の生を得て、何のために』
思考が止まらない。そのとき、ふと、別の声が脳裏に響く。
『嫌だ…死にたくない…
まだ、何もやっていない…お助けを、ガノン様…!』
それは、アストルの最後の叫びだった。
彼の恐怖、後悔、そして絶望。それらが重なり、
アストルは力なく笑った。
『やりたかった。そうだ、俺は何かを残したかったのだ。
甘かった…。覚悟が足りなかった。
だから…俺は!?』
ライネルが振り返り、死体と化したアストルの体を見下ろす。
だが、アストルの目には光が宿っていた。
『なぜ秘石が砕けたのか、やっとわかった…。
強度の問題でも、素材の問題でもない。
俺が最初から間違っていたんだ。
そうだ。遠回りしていたのは俺だった。』
ライネルが剣を振り上げ、
アストルの体に向けて振り下ろす。
その瞬間、周囲は爆発の炎に包まれた。
ライネルは微笑み、灰燼に帰した大地を見渡す。
だが、そこに響く声があった。
「どうした? そんなに微笑んで」
「!?」
驚愕するライネルの前には、立ち上がったアストルの姿があった。
ないはずの腕と足が再生し、
彼は力強く立っていた。
「私の敗因は自身の能力を把握しなかったこと。
そして、圧倒的な戦闘経験の不足。」
「・・・」
「お前の敗因は俺の頭を叩き潰さなかったことだ。
あのとき、胴体ではなく、首を切れば俺の負けだった。
だから!?」
「GOOOOOOO」
ライネルは吠えたが、その動きはアストルの指先の動きで封じられた。
周囲に現れた鎖が、ライネルの肉体を締め上げる。
「GUOOOO」
「最初からこうすればよかった…。
現存する素材じゃない。
魔力で再現するのだ。
魔力で核を作り、そこで情報を入力し、
核は情報を再現するため莫大な魔力を消費し変化する。
だか、その代わりに強度、能力、外観、感触、設定、構造
その全てを空想から現実へ出力する。」
ライネルは鎖を砕き、再びアストルに向かってきた。
しかし、アストルの目には迷いがない。
アストルは自身で生み出した秘石を見詰める。
外観、能力、強度。
その全ては再現された。
秘石には所有者の力を高める以外に、
他の使い道がある。
禁術「龍化の法」。
巨大な力を持つ秘石を体内に取り込むと、
その力によって龍へと進化し長生不老を得るというもの。
しかしそんな上手い話があるわけもなく、
龍化にはある対価を必要とする。
それは、龍になった者は自我を失い。
人間をやめ無理矢理龍へ進化する事で心が消え去る。
そして、ただ空を漂う存在になってしまう。
通常、龍になったものは二度と戻れないとされる。
だか、例外はある。
それは、勿論。
ゼルダだ。
とはいえ、彼女が龍から人へ戻ったのは例外中の例外。
だか、例外があるなら、かけるしかない。
『そうだ、覚悟が足りなかった。
偉業を成すためには、恐怖を知り、それを乗り越えなければならない。
勇者のように。勝算はある。
凡人のままで偉業を成し解けない。
人のままでは何も残せない』
彼は秘石を手に取り、それを口に運んだ。
「うおおおおおおおおおおお」
秘石を飲み込むと、アストルの体は光を放ち、宙に浮かび上がった。
ライネルの攻撃を軽々とかわしながら、彼は空を翔ける。
「父さん、母さん、見ててくれよ」
アストルの決意の声が、大地に響き渡った。
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