とあるアストル(厄災の黙示録)の女神創造 作:ネシエル
闘技場跡地
始まりの台地から遠く離れた場所に、
古く廃棄された闘技場が存在していた。
かつて栄華を誇ったハイラル王国が運営し、
多くの勇敢な戦士たちで賑わった場所だったが、
今では無数の魔物が巣くう危険な地と化している。
その闘技場の中心――そこに立ちはだかるのは、
魔物の王者ライネル。
巨大な獣王の剣を握るその姿は、
圧倒的な威圧感を放っていた。
「!?」
ライネルがわずかに動揺する。
振るわれた剣は人間の半身ほどもある巨体と重量を誇るが、
相対する勇者リンクは、それをいとも容易くかわしていた。
「はあっ!」
リンクの声が鋭く響く。
剣を振り抜くライネルの隙を逃さず、
リンクはマスターソードを握りしめて斬りつける。
刃はライネルの右腕を捉え、
剣を握るその腕を断ち切った。
「GOOOOOOO!」
ライネルの咆哮が場を揺るがす。
しかしその直後、全身を炎で覆い隠し、
自らを中心とした爆発的な炎を巻き起こす。
「はっ!」
リンクは即座に左手のハイラルの盾を構え、
爆風を正確に受け止めた。爆炎の中、揺るがず立つリンクの姿に、
ライネルの目は驚愕の色を宿す。
「!!」
再び炎を吐こうとしたライネルだが、
リンクの素早い動きがそれを許さなかった。
疾風のごとく接近したリンクのマスターソードは、
ライネルの喉元を正確に狙い撃つ。
盾で防御しようとするライネルだが、
その盾ごとマスターソードは貫通し、
喉と左腕に風穴を開けた。
「GUuu…」
声を失ったライネルは、最後の力で盾を構えるも、
それも砕け散る。
輝くマスターソードがライネルの瞳を照らした次の瞬間――
バン!
爆音と共にライネルの頭部が吹き飛び、
下半身だけが地面に崩れ落ちた。
▲▲▲
闘技場跡地の入口
遠くからその戦いを見つめていたアストルは、
呆然とした様子で呟いた。
『ナニコレ……』
リンクは血に濡れた顔を軽く拭いながら、
次々と襲い来る魔物を倒していく。
その姿は伝説の勇者そのものだった。
『これが、リンクか。ハイラルを救った勇者リンク。
コイツこんなに強かったけ・・・
ゲーム上で強い強いともてはやされたけど、まさか、ここまでとは。
しかも、いつの間に、あれほどいた魔物がもう全滅している。
ゲーム上とはいえ現実に出すとここまで違うのか。
いい意味で。』
背後に気配を感じ、アストルは振り向く。
そこにはボコブリンが迫っていた。しかし――
リンクが既にそれを斬り伏せていた。
「……もう驚くのは疲れた。」
無言のリンクが隣に立つ。アストルはため息をつきながら提案する。
「それでは、リンク。
友好を示すために私と一緒に魔物の素材を集めよう。」
リンクは頷き、2人で闘技場跡地を回る。
アストルがライネルの素材を集める間、
リンクは他の魔物を次々と倒して素材を集めていった。
ポーチにすべてを収め終えた2人は、
闘技場跡地を後にした。
▲▲▲
歩きながら、アストルはリンクを一瞥する。
『リンクは鏡だ。我々の、プレイヤーの鏡。
自我は無く、ただ言われた通りに動く人形。』
リンクは変わらず無言のまま歩いている。
『私、プレイヤーの分身でプレイヤーの命令でしか動かない。
恐らくはリンクの仕様だろう。
リンクはプレイヤーの分身として喋らず、
プレイヤーを世界観に引きずり込む舞台装置。
私が言われた通りにしか動かない。
私は右といったら右に行き、左といったら左といく。
だが、事前に命令をすれば後は自分で考えて動く。
例えば……』
アストルの目の前に十匹のボコブリンが現れた。
武器を構えた瞬間、その首は次々と刎ねられた。
『このように私を護衛しろと言うと、
私に襲い掛かる全ての魔物や敵対するものを瞬時に切りつける。
このときのリンクは完全にオートモードになる。
自分で考え自分で戦う。
まさに、最強の護衛。この活躍をすると、
私一人にハイラルの勇者を付けるのは
流石に過剰戦力になるのでは。』
ボコブリンを全滅させ、
リンクは消えるようにアストルの隣に戻った。
「うわあ!」
アストルは突然現れたリンクに思わず声を上げる。
「お前……その瞬間移動じみた方法で
私の隣に現れないでくれるか。
心臓に悪い。」
リンクはただ無言で首を傾げるだけだった。
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メリークリスマス!