とあるアストル(厄災の黙示録)の女神創造   作:ネシエル

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第八話 カカリコ村

カカリコ村

 

 山々に囲まれた険しい道を越え、

ついにアストルたちはカカリコ村に到着した。

 

木々の間から見える村は、

どこか懐かしさを感じさせる日本風の建築で統一されていた。

 

 

『ほう、ここが100年前のカカリコ村か。

ゲームとは若干違うが、100年も経てば元に戻るだろう。

いや、戻るという表現は間違っているな。』

 

 

 アストルは村の様子を眺めながら隣に立つリンクを見つめる。

リンクは周囲を興味深げに見回していた。

 

 

『リンクが珍しく周りに興味を持っている……護衛のために周りを警戒しているのか。

こうしてみると、僅かながら感情を帯びているように感じる。

最初の方はまるで生きる人形みたいだったのに。』

 

 アストルは小さく息を吐いた。

 

「成長を喜ぶべきか、否かが……」

 

 そう呟きながら村の中を歩き出す。

村人たちは農作業に勤しむ者、警備を巡回する者と、

活気にあふれていた。そんな中、彼らに一人の老人が話しかけてきた。

 

「珍しいね、こんな時期に客人とは。

また、厄災が終わって間もないのに。」

 

 

「ええ、確かにそうですね。

しかし、厄災のおかげで命の尊さと世界の美しさをご拝見することができました。

悔いのない人生のため、少しでもこの世界を見ておきたいと思いまして。」

 

 アストルは穏やかな笑みで答えた。

 

「ほほほ、それはいい。ワシもかつてハイラルを旅してきたが、

なかなかいいものぞ。

空を飛ぶ龍、暗闇の森、迷いの森に海上で浮かぶ大迷宮。

このハイラルは未知で満ちている。

お二人共は旅人かい。ようこそ、カカリコ村へ。」

 

「はい、私の名はアストル。

こちらは私の相棒リンク。」

 

 リンクは老人の言葉に応えるように、

頭を縦に二度振った。

 

「彼は少し、不運の事故で言葉を話せなくなりましたので、

どうか、大目に見てあげてください。」

 

「ほう、そうかい。それは不運だったのう。

どれ、これうちの畑でとれた野菜じゃあ、食べてみるかい。」

 

 老人が差し出したのはりんごだった。

リンクはそれを見つめ、匂いを嗅いだ後、口に入れた。

 

「!?」

 警戒していた様子が消え、りんごをむしゃむしゃと食べ始めるリンク。

 

「お行儀が悪いよ。」

 アストルがたしなめると、老人は微笑んだ。

 

「どうやら気に入ったみたいじゃな。」

「すみませんね。」

 二人の穏やかなやり取りの中で、アストルは話題を切り出した。

 

「耳にした話ですが、カカリコ村には大妖精の泉があると聞きまして、

本当のことでしょうか。」

 

 

「ええ、本当ですよ。とはいえ、森の奥地にいるため、

村人のほとんどが知りません。」

 

「わかりました。ありがとうございます。」

 アストルは礼を言い、リンクを伴いその場を去る。

 

『大妖精……。致死量の攻撃が頻発する。

ブレワイおよびティアキンにて防具の強化を行ってくれるありがたき存在。

最初は力を失い、ルビーを要求してくるが、

一度解放すれば素材さえあれば防具を強化できる。

妖精は警戒心が強く捕まえるには隠密行動が必要だ。

リンクの規格外の移動速度なら可能だろう。』

 

 アストルは歩きながら思考を巡らせていた。

 

 突然、女性の声が響いた。

 

「リンク!?」

 

 アストルは足を止め、声の方向を見た。忍び装束をまとった白髪の美女、

インパがそこにいた。

 

「なんで、あなたがここに!?あと、100年必要じゃあなかったの!!」

 

 

インパ

 

『ゼルダの伝説』シリーズに登場するシーカー族の女性で、

王家を守る忠実な従者です。

 

シリーズごとに役割が異なり、今からおよそ100年後の

『ブレス オブ ザ ワイルド』では年老いた

カカリコ村の村長としてリンクを導く役割を果たす。

 

 

 

若い頃の姿はブレワイの外伝、厄災の黙示録で描かれている

 

 インパはリンクの服を掴み問い詰める。

 

「……」

 リンクは沈黙したままだ。

 

「ねえ、なんで黙っているの。

いくら、あなたが無口で無愛想で何を考えているのかわからなくても

返事の一つもしなさい。」

 

「あの、すみません。」

 インパの背後からアストルが声をかける。

 

「!!」

 インパは振り返り、怪訝な表情でアストルを見た。

 

「誰、あなた。」

「自己紹介はまだのようですね。私の名はアストル。

ただの旅人です。リンクと一緒に旅をしています。」

 

 

「旅人ねぇ……

そんな怪しい服を着て何しにカカリコ村へやってきたの。」

 

 インパはアストルの外套を睨む。

 

「ただの観光です。この村の近くに大妖精の泉があると聞いてここに来たのです。

それに、私がどんな服を着ようと私の自由です。

この村には着る服装を限定にするルールは無いでしょう。」

 

「それは、そうだが……」

 

 リンクはアストルの言葉に賛同するように、首を縦に振った。

 

「あなたはリンクと一緒に旅をしているのは本当か?」

 

「そういう、あなたはリンクとお知り合いか。」

 

 アストルがリンクを見やると、リンクは首を横に振った。

 

「リンクはあなたのことをご存知ないみたいです。」

 

「うそ!?」

 

 インパは驚き、リンクを見つめる。

 

『確かに顔のパーツは少し違っている。

だが、誤差の範囲だ。でも、この感じ……』

 

 インパはしばらく考え込んだ後、小さく息をついた。

 

「すみません、本当に人違いのようでした。」

 

「いいえ、問題ありません。」

 

 それでも、インパはリンクの隅々まで見渡す。

 

『だとしても、何だ、この強さ。

感じる、この人からただならぬ気配がする。

今は自然体だか、私がどんな方向から攻めても倒すことはできないだろう。

本物のリンク、否、それ以上の実力を感じる

それに、背中に背負うマスターソード。

あれはいったい。』

 

「すみません、その背負っている剣を見せてもらいませんか。」

 

「ええ、問題ありません。」

 

「・・・」

 

リンクは特に反応せず、

背中に背負うマスターソードをインパに渡した。

 

 

「ありがとう」

 

インパは表面は落ち着いているが、

内心は驚愕していた。

 

『剣士にとって命の次に大事な剣を渡した!?

期待はしていなかったけど、

こうも簡単に渡したということは

剣なしでも私を殺すことができる意思表示か』

 

インパは受け取った剣を見詰める。

 

『!?これ、剣じゃなく。

高圧で圧縮されて魔力が剣の形で収まってできている。

でも、聖なる気配が感じない。

切れ味と耐久値もカカリコ村で制作された刀と大差がないだろう

おそらく退魔の剣としての能力は無いはずだ。

このような代物。

いったい、どこから』

 

「どうかしましたが」

 

アストルが質問をすると

 

「いえ、ありがとうございます。」

 

インパは剣をリンクに返す

 

 

『怪しい、怪しさの化身でしかない。

今すぐにでも拘束したいけど、客人相手に無粋な真似はダメだ。

もしかしたら、イーガ団なのか。

いや、変装の跡も無いし、いくらイーガ団でも

こんなバレバレな潜入はしないだろう。

もしかしたら、本当に人違いかもしれん。』

 

 

「すみません、私たち、ここの地形には詳しくはありませんので、

もしよかったら、案内をしてくれませんか」

 

 

「はい、いいですよ」

 

インパは二人を案内する

 

『本当にいい人かもしれない。

これも、私の勘違いかもしれん』

 

 




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