「クソ怪物があっ」
蒼白い光弾が飛翔し、そして爆発。傍目に見れば赤い点の浮かび上がった隊員が突然爆散したような光景。
血と肉片が土ぼこりに混じって飛散、近くにいたブライアントと数名の隊員が吹き飛ばされる。爆発による耳鳴りと目眩に昏倒し平衡感覚を失い、他の隊員は予想外の事態が起きたと理解した。
光弾が飛んできた木々の奥で、ソレは動き出す。
姿を透明にしたまま、木々を飛び交い部隊の背後へ回り込む、そして後ろからまたプラズマ・キャノンの照準を背を向けてたじろぐ一人に向ける。
そして迷うこと無くもう一度光弾を撃ち放った。
「 う あ あ あ あ あ 」
2度目の爆発、飛び散る赤の混じった土煙、動揺は混乱に変わった。隊員達が平静を失い、恐怖とプレッシャーから出鱈目な銃撃を開始する。
「おい止せっ、闇雲に打つなと言われただろうがっ、落ち着いて狙って撃つんだ」
「姿が見えないのにどうやって狙うんだ!」
「向こうはコッチが見えてるぞ……あっ」
「えっ」
「なにっ」
何かに気付いた隊員、攻撃が来るという確信。しかし実際にはもう全て終わっていた、隊員が見たのは自分へと飛来し、そして等に切り裂いて通り過ぎた円盤状刃物のきらめく軌道だ。
シャッと血の噴水が首から噴き出したかと思えば、やはり恐ろしく鋭利な断面を見せてその首から上が体から離れて足元へ落下していった。
「うあああっ 首が、首が!」
厳しい訓練と実践を重ねた筈の部隊だが、余りにも突然かつ悍ましい死地へと落とされた恐怖は大きい、本格的に瓦解しかけるその前にブライアントは号令を出す。
「撤退しろ!撤退だあっ」
「麓の車両を待機させた地点まで撤退するぞ!」
酷い耳鳴りと点滅する視界の中で叫ぶ、手にした自動小銃を構え後退、そうすれば他の隊員もその様に動き出す。
しかし二度の爆撃の影響で隊員達の陣形は崩れ、混乱の中その状態でそれぞれが麓へと引き返す為に後退すると近くにいた数名を除いて離れ離れとなってしまう。
「クソみてぇな状況だな!」
「ついて来い、お前ら!」
「は、はい〜っ」
だがそれでも全滅だけは避けなければならない、ブライアントは近くにいた数名の隊員と共に、既に退却した者達に続いて後退を始める。
全速力で山の険しい坂や泥濘を走り抜ける。
「ブライアント捜査官、どう言うことです!?奴から武装は確かに押収したはず…」
「クソ怪物の仲間だっ、あのクソ野郎、森の中にお仲間を待機させてやがったんだっ」
「そ、そんな事が…そんな事があって良いのか」
「ならば退却してはせっかく捕らえたターゲットにも逃げられてしまうのでは!?」
「向こうにはクソプラズマ・キャノンとクソ光学迷彩がある!この森の中でやり合うのは無理だ!全滅するより情報や装備を持ち帰る方がマシだ」
「逃げ切れるでしょうか!?」
「捜査官!」
「知るかクソ野郎!何処にいるか分かんねぇんじゃ牽制も援護も殿も意味がねぇ、死にたくなきゃ死ぬ気で走るんだよっ」
「麓に着いたらその後は!?念の為、強力な重火器は持ち込んではありますが…」
「捜査官」
「…クソッ、確かに森の中で待ち構えられちゃ反撃するにも…まぁ今はいい!とにかくまずは逃げ切るぞっ」
「捜査官」
「捜査官」
「あーっ、クソしつこいぞ、クソ野郎がっ」
「今はいいからとにかく走れと……」
極限状態の中で走るブライアント、背後から部下に何度も質問を投げかけられた事で遂に怒りを発露させ、足は止めずとも振り返って怒鳴り叱責する。
「あ?」
しかし、見えた光景にその足も止まってしまう。
「 捜査官 捜査官 」
「 ブライアント 捜査官 」
そこに全速力でついて来てる筈の部下の姿は無かった、代わりに虚空に黒い何かが浮いていた。
人間の頭部だった、防具に包まれた人間の頭部が切断され浮いている、つい十秒前までブライアントと会話していた部下の生首が血を滴らせ浮かんでいる。
「 逃げ切れるでしょうか? 」
「 ブライアント 捜査官 」
部下の声が聞こえた、冷たく無機質で、まるで録音した音声データから再現された様な声。そして虚空から迸る青い稲妻、その後にソレが姿を現した。
「……クソが…」
光学迷彩を解除したソレが前に突き出していた手を離す、切り離された生首が地面にゴトリと落ちる。
間違いなくターゲットと同種の怪物だった、無機質な鉄仮面、胴体のアーマー、ガントレットにブーツ、そして肩のプラズマ・キャノン。
完全武装した怪物が、追い縋り、走る部下を一瞬の間に惨殺して採取した音声データでブライアントに話し掛けていたのだ。
怪物は気付いていた、命令を下していた目の前の男が指揮するリーダーに当たる存在だと見て取り、散り散りになった獲物の中で真っ先に追い掛けた。
「 クソみてぇな 状況だな 」
そして王手をかける、絶望の程を見せつける様に姿を現した怪物のプラズマ・キャノンの砲身に、人体を粉々にするエネルギーが迸る。
そしてレーザーサイトの様な照準が向けられる、あの死の宣告の如き赤く小さい点の三角形がブライアントの胸元に浮かび上がる。
「おおおっ、クソ怪物が!タダでは死なねぇぞっ」
「 知るか クソ野郎 」
啖呵と共に背後に隠した後ろ手で装備していた手榴弾のピンに手を掛ける、すぐさま抜き放てるよう隠して構える。
(撃つ瞬間に飛び込んでやる、クソプラズマ・キャノンが俺に当たっても手榴弾の誘爆でお前ごと吹き飛ぶ位置まで飛び込んでやる…)
(クソ下劣なクソ怪物が…クソの詰まった脳味噌とクソ臭せぇ内臓をばら撒いてくたばりやがれ)
緊張が極限まで高まる、致死のエネルギー砲弾と決死の自爆突撃、その瞬間が訪れようとしたその時、低く重い傲岸な声が割って入る。
「止めておけ、ブライアント」
「!?」
「!!」
「どれだけ覚悟を決めて命を捨てても爆弾一つで殺せるような相手ではない」
そして現れた黒のロングコートの偉丈夫、ブライアントも聞き覚えのある声の主は勿論、 鬼 龍 !
怪物を超えた怪物が、本物の怪物の前に堂々不遜に姿を現し、練り歩み寄っている。
「てめぇ、どうしてここが…」
「なに、不穏な気配を察するのは得意でね」
「憙一と戦ったあの個体、その装備の違和感に気付いたのもそうだが…始めから何かざわつきの様な感覚をずっと覚えていた」
「そしてこれは俺の直感だがな、コイツはお前達がターゲットにした個体の仲間ではない」
「あぁ…?どういう意味だ、どう見ても同じクソエイリアンの同種族だろうがっ」
「 …… 」
「過去の報告を見る限り恐らくこのエイリアンにも人間同様個々の個性がある、狩りに対するスタンスだ」
「それがコミュニティによる思想の違いかあくまで個人によるものか…そこまでは知らんが」
「兎も角、狩りを純粋な戦いと捉え、相手と対等な命のやり取りを誉れに感じる者もいれば…」
「逃げ惑う獲物を追い詰めて一方的に狩り殺す事に快楽を感じる残虐で冷酷な奴もいる」
「 ……… 」
鬼龍がニィとニヒルな笑みを浮かべ、しかし目は鋭く相手を射抜く顔付きで怪物の前に立つ、怪物も乱入者である鬼龍を無言かつ無動で観察していた。
興味深げか、或いは値踏みでもしているかの様に。
「さぁ選手交代だ、俺が遊んでやるよ、怪物」
話は終わったと言わんばかりに鬼龍がまた一歩、怪物の前に歩み寄る。そしてその前進から暴力的な殺気を放ち怪物に浴びせかけて行く。
「 クソ野郎が 」
怪物の方もブライアントに向けていたプラズマ・キャノンを停止、右腕のガントレットからブレードを出現させる、互いにとって戦闘開始の意思表示だ。
思いがけず命を拾ったブライアントは、しかし忌々しげな面持ちで両者の戦いを見守る。
(クソが…クソ過ぎる、クソ怪物がまだいたのもそうだがよりにもよって最低最悪のクソ鬼龍なんぞに助けられる形になるなんて余りにもクソだ)
(だが…このクソはどうしようもないクソ人間だが強さだけは人類最高峰だ、クソエイリアンがこのまま暴れまくるよりはまだマシか…)
戦いの火蓋が切って落とされようとするその時、ブライアントの無線に散り散りとなって撤退した他の隊員から通信が入る、焦燥に駆られたその声。
「ブライアント捜査官!こちら生存者8名、3番エリアを通過し退却場所の麓へ向かう途中!」
「! 上手く逃げ出したか!ならそのまま…」
「現在、怪物に追われています!」
「なんだとっ」
「このままだと麓まで怪物を引き連れてしまう恐れが…あわわっ、もう近くに来たあっ」
「おい何を言ってる、怪物なら此方にいるぞ!」
「ほう…」
無線から聞こえてきたその報告、予想外のその報告の後に聞こえる悲鳴、そしてその後はノイズだけが聞こえてくる。それは怪物と向かい合う鬼龍にも聞こえていた、目線は逸らさぬまま、興味深いと呟く。
屍山の森の奥、もう一つの戦場が存在した。
・
・
・
【もうすぐそこだと思われるが…】
ブライアントの部隊が新手の怪物と遭遇し襲撃を受ける数分前、迫りくる敵影が近い事を目視ではなく直感で感じ取り、静かに最後になるであろう闘志を燃やす、傷付いた怪物。
自然物を利用した風景との同化により、自然の中に溶け込みながらその時を待つ。
【体力を失った今、突破するのも素早く通過するのも不可能、身を隠し通り過ぎるのを待つ】
【戦うのは装備を取り戻した後だ】
余計な消耗を防ぐ為に静かに呼吸を整え身を隠す、そして訪れる静寂、屍山の冷たい冷気が辺りに満ちる、その中に不吉な気配が混じり始めたのを傷付いた怪物は察知した。
【………】
【何か、妙だ】
【何かが…】
その時、怪物が潜んでいた草藪、その背後からヌーッと影が差す、冷たく見下ろす目がそこにはあった。
【無様だな…】
【!!】
声が聞こえた、人類のものでは無い。怪物の惑星で使われる言語による声が、隠れていた場所の背後からハッキリと聞こえた。
痛む体を無視しすぐさま隠れるのも止めて飛び引いた、自分が先程までいた草藪へと骨のナイフを構える、そして現れたその姿。
【お前は…ま、まさか…】
【無様すぎてもう殺してやりたくなってくる】
同族だった、そのマスクもガントレットもアーマーもブーツも全て馴染みのある物、網目状になったアーマーの帷子の下の表皮を見ても間違いなく同族。
マスクには斜めに走る傷跡が大きく刻まれている。
【!!】
しかしその所々の装飾や趣の違いから、どうやら怪物と同じ氏族ではないと遅れて気付いた。
【士族の粛清者…ではないようだな】
【そうだ、俺はお前の士族の生まれではないからな】
【最も…敗れた上に装備を奪われ、死ぬ事もできず生き恥を晒すなど、俺の同郷であったならば粛清の命を受けずともこの手で始末してやる所だ】
【酷い言われようだな、事実だから仕方ないが】
【…それで、お前もこの星に狩りに来ていたのか、同じこの場所を選んだと】
【いいや、“俺達”だ】
【そうか、どちらにせよ私には関係ない、これから追っ手を掻い潜り奪われた装備を取り戻す】
【そんな無いも同然の装備でか、意気込みだけはある様だがお前を追う者達は此処には来ない】
【なに?】
その時、遙か先で大地を震わせる大爆発の衝撃と音を怪物は感じ取った。それがプラズマ・キャノンの爆撃によるものだということもすぐに分かった。
【成人はしていないが血の気が多い連中だ、先に行かせてやったがもう始めたようだな】
【……私の獲物を、戦いを奪うというのか?】
【獲物?戦い?】
その言葉でずっと冷徹な雰囲気だったもう一体の怪物が初めて感情を見せる、それは好意的なものとは真逆、冷たく侮蔑する嘲笑だった。
【笑ってしまう、自分から有利な武装を捨てて相手に合わせた結果敗北し、たまたま生き残っただけの分際でまだ戦士を気取れると思っているのか】
【私がどの様な闘争の末にどんな末路を迎えようとお前達には関係ない筈、何よりも他人の狩りを妨げるような行いは…】
【ふん、知らんな 所詮はお前達の掟だ、それこそ俺達には関係ない、それに意味ならある】
【なに?】
【敗北し装備を奪われた惨めなお前からは挽回する機会さえも奪ってやる】
【これ以上の無様はない、相手が何よりも優先する尊厳の全てをぐちゃぐちゃにしてから殺すんだ、これはもう何にも勝る快楽だ】
【……貴様は本当に名誉ある我が星の戦士なのか?】
【戦士の名誉か…そんなもの俺達は欲しがらない】
【狩りの名誉だの誇りだの、そんな戯言はどうでもいいんだよ、弱き者を強き者として狩る、それだけが狩りであり闘争なんだよ】
【名誉不要ッ この虐殺の愉悦さえあれば良い!】
もう一体の怪物が手を上げて合図する、すると隠れ潜んでいた二体目の怪物が光学迷彩を解き、傷を負った怪物の背後へと降り立った。
【!!】
【ばあーっ】
敵意があるのは明らか、すぐに即席の武装で迎撃しようとするが相手のほうが速かった。片腕で首を掴み、そのまま腕の力だけで投げ飛ばした。
【な、なにっ】
失われた体力の差は大きく、殆ど抵抗できずに地へと投げ出される、そして敵は二体。
【戦士長、俺が楽しんでしまっていいですか】
【新入り、手加減したら俺がお前を殺す】
最初に現れたマスクに傷のある怪物は部下らしき他の個体にそう命じると後ろに下がり木々にもたれかかって観戦する、代わりに命じられた個体が前に出る。
【ククク、一度は同族を殺してみたかったんだ】
そしてガントレットからブレードを飛び出させて傷付いた怪物へと躙り寄る、その目には滾る闘争本能ではなく相手を加虐する愉悦だけがあった。
【私と戦うつもりか…?】
【戦う?戦いになんてなる訳がないだろう】
【!】
躊躇無く円盤状の刃物を展開して放つ怪物、その切れ味と殺傷能力は傷付いた怪物もよく知っている。
すぐさま自作の骨のナイフで受け止めにかかるが止められる筈も無く、ナイフは簡単に両断され構えていた右腕と右肩を斬りつける、また真緑の鮮血が舞う。
【…! やはり頼りないか】
【当たり前だ、脆弱な生き物の脆弱な骨なんかで作られた武器で戦える訳が無い、勿論コッチはお前と違って完全武装だしな】
【だがまぁお前の様な弱き者にはお似合いかもなあ】
そして今度はブレードを展開して斬り掛かった、横振りの一撃、そこから二撃目、三撃目と続く、傷付いた怪物もそれを躱しいくが振り抜いた体勢から移行したタックルを受けて蹌踉めいた。
【うぐっ】
【しゃあっ】
そしてふらついた片足をブレードで突き刺す、岩の様な外皮も貫通し、その下の肉と血管を損傷させる。
【はうっ】
そして力を込めた前蹴りを腹部に叩き込む、踏ん張る事の出来ない傷付いた怪物は後ろに大きく吹き飛ばされた。
【ただ殺すだけでは済まさない】
【死の直前まで苦痛と恐怖と屈辱を与えてやる】
【対等な戦いなんて微塵も興味がない、弱き者は強き者に嬲られ殺されるのが当然】
【……後ろの奴も全く同じ事を言っていた】
【なに?】
【先程…まだ成人していないと言われていたな、それで狩りの何たるかを語るなど…】
【何が言いたいんだ】
【お前の言葉は全てその戦士長の言葉、ただ自らの考えを放棄して迎合しているに過ぎない】
その言葉に有利な筈の怪物の心の均衡は乱れる、一瞬にして怒りが燃え盛り発露する、まるで勝っている筈の自分が未熟で愚かな劣った存在だとでも言われた様に思われたからだ。
【舐めるなあっ、そんなに早く死にたいのかあっ】
激昂の叫びのままにブレードを振り抜いて斬り掛かる、また真緑の血が飛散し屍山の大地を濡らした。
【ふん、反応があるのは図星の証…】
そして三体目の怪物はそれを特に感情らしい感情を見せず眺めていた。冷笑的な視線は傷付いた怪物だけでなく、仲間であり部下であるもう一体の怪物にも向けられていた、そしてふと別の思惑に意識を向ける。
【さて…向こうの“奴ら”の様子はどうかな】
傷付いたマスクの個体、現れた新たな怪物達のリーダー格の個体は先行した他の部下が進んだ方角に顔を向けて呟いた。
・
・
・
屍山、3番エリア
「うあああ、怪物が此方に練り向かってきている!」
突然の襲撃から逃げ延びて麓を目指す隊員達の前に怪物が追い縋る、もはや光学迷彩さえも使用せず堂々と姿を現して追従。
「うおおおっ、俺は元SWATだぞうっ」
一人の隊員が反撃を試みる、自動小銃の連射は防弾アーマーの上からでも相手を問題なく殺傷できる破壊力を誇る、しかしそれが当たることはない。
怪物が地へとスライディングする様に限界まで低姿勢になると銃弾はその上を通過するのみ、回避と同時に怪物の反撃も始まる。
「あっ」
ヒュンという風を切る音と鋭い光、あの円盤状の刃が噴出された、それは目に留まらぬ速さで迫る。
「ひゃんっ」
気付いた時にはもう遅い、その恐ろしい残光が通過し、その軌道に合った隊員の頭部が横に真っ二つとなって赤い断面を見せ切断される。
「ひいいいい!何たる切れ味と速さだよ!」
「ほ、報告だあ!」
無線の先の上官に事態を報告する、その間も怪物は全速力で逃げる隊員達に難なく追いつこうとしてくる。
「ブライアント捜査官!こちら生存者8名、3番エリアを通過し退却場所の麓へ向かう途中!」
「現在、怪物に追われています!」
「このままだと麓まで怪物を引き連れてしまう恐れが…あわわっ、もう近くに来たあっ」
恐怖する隊員達の前に遂に怪物が到達、プラズマ・キャノンの照準を向けながらガントレットよりブレードも出現させる、もう次の瞬間には攻撃に移ると誰もが理解する。
「あううっ、アレを撃とうとしているゥ」
「ウワーッ、助ケテクレーッ!」
照準が一番後ろを走っていた一人の背に向けられる、そしてプラズマ・キャノンからエネルギー砲弾が放たれようとしたその時、一人の隊員が突然振り向いた。
「私が行こう」
「えっ」
ただ一言だけを残し、怪物目掛けて駆け出した。
【!?】
先程まで逃げていた獲物が突然方向転換して向かってくる、しかもそれは逃げていた時とは比べ物にならない速度で向かってくる。
驚愕する一瞬の間に間合いへと侵入されかける、怪物はすぐさま照準をその向かってくる隊員に合わせ、発射した。
そして大爆発、着弾したエネルギー弾が土煙を巻き起こす。仕留めたと確信する怪物にフッと影が落ちる。
【!!】
「ほう…超文明兵器ですね…!」
怪物の頭上に隊員はいた、重たい装備に身を包んでいながら着弾よりも先に高く跳躍、爆風さえも利用して飛翔し怪物の上まで到達、頭上に位置取った。
そして鋭い蹴撃、跳躍と飛翔、その力の全てを加えた超高度の回し蹴りが迫る。
【…!】
怪物の優れた動体視力と身体能力を持ってしても躱しきれない、肩に装着したプラズマ・キャノンにその蹴りは命中、一撃の内に破壊した。
「しかし破壊されれば使えないのは道理」
音も無く着地する隊員、軽やかかつ力強い跳躍と飛翔、そしてそこからの変則的かつ日本刀の如き鋭さの攻勢、それはまるで人間と言うよりも猛禽類が獲物を狩る様にも似ている。
【………】
「許せなかった…!人間の頭蓋骨を奪い去る悪魔の正体が異星人だったなんて…!」
かと思えば怒りの言葉を口にするその隊員、怪物は実力者の出現にその隊員をじっと見つめている、そしてその隊員は顔を覆い隠すヘルメットをゆっくりと脱ぎ捨てていく。
「その事を鬼龍が知っていたなんて…!」
ヘルメットを脱いだその顔は特徴のない平凡な顔、しかし男は何を思ったかなんと突然自分の顔を握り拳で殴打し始めた。
ゴッゴッゴッと鈍い音が鳴り、信じられない事に男の顔の骨格が変化していく、そしてその後、頭頂から毛髪を取り外した。
茶髪の髪は変装用のウィッグだった、一息に素早くアーマーと隊服さえも脱ぎ捨てたその身に纏うは古風な武道着。
「異星の者よ、私と立ち会ってもらおう」
男が顔を上げる、顕になったのはただならぬ雰囲気の初老の男。長い白髪を一房に纏め、その目は猛禽類を思わせる鋭さ、その肉体は年齢にまるで見合わず研ぎ澄まされた刃の様に無駄無く鍛え抜かれている。
当然の出現、仲間だと思っていた者の別人への変貌、変身を目の当たりにして唖然とする隊員達、ただならぬ雰囲気を感じ取り警戒する怪物。
そして隊員に変装していた男は堂々と名乗った。
「我が名は尊鷹」
また一人、屍山に戦いを求める強者が現れる。