TOUGH ハンティング・ファイト   作:ポジョンボ

9 / 14
9,圧巻の尊鷹

 

 

 

「我が名は尊鷹」

 

 

突然別次元の動きを見せた隊員の正体は別人へと変装しブライアントのチームに何故か潜り込んでいた灘神影流の使い手である現宮沢一族長男、宮沢尊鷹。

 

鬼龍の兄であり喜一の叔父、勿論そんな事を知るはずもない他の隊員にとっては、仲間の一人が突然全く知らない老男性に変身したようにしか見えない。

 

 

「誰アレ?ねえーっ、誰なの、アレ!」

 

「いきなり変なオッサンが…怪物に反撃したあっ」

 

 

助かったという安堵と感謝よりも困惑しかない、尊鷹はお構い無しに怪物のみをその鋭い両目で見据える。

 

 

「かつてナバホ族のチャベスだった頃に聞いた…」

 

「人間を惨殺しその頭蓋骨を奪い去る悪魔の存在を…過去には部族の戦士も幾人か犠牲となったと言う」

 

「悪魔が残した邪遺物と壁画の絵は、今お前が身に着けている装備と酷似していた」

 

「そしてその実在を今、この目で確認した…だが許せなかった…!その正体が宇宙人だったなんて…!」

 

 

怒りに表情を凄惨に歪ませ震える尊鷹、スッと懐から取り出したのは目元を隠す謎のマスクだった、それを装着した尊鷹の姿は完全に変質者のそれ。

 

 

「マスクをつけてた方が残酷になれるんだ」

 

【……】

 

「異星の悪魔よ、覚悟してほしい」

 

「お前の肉体が確実に変形することを」

 

 

尊鷹の全身からゾッとする様な鋭さの殺気が放たれる、抜身の日本刀を幻視させるような洗練された闘気が辺りに満ちていく。

 

怪物もすぐさまブレードを展開し、すぐにでも飛び掛かりそうな尊鷹を迎え撃つべく対峙する。

 

 

「しゃあっ」

 

【…!】

 

 

そしてその瞬間はすぐに訪れる、尊鷹が先に駆け出して怪物へと高速の接近を図った。

 

その瞬間、また空気を裂く音と鋭利な煌めきが怪物の振り払った手から放たれる、人体を容易く切断する円盤状の刃物の投擲だ。

 

 

「あーっ!アレはっ」

 

 

それが尊鷹に迫る、その殺傷能力を知る隊員達は青ざめる、尊鷹はその機動が見えている、しかし一切留まらず駆け抜ける。

 

その刃が尊鷹の身体に確かに触れた、切断される胴体、遅れて吹き出す血、避けられぬ絶命、しかしそうはならなかった。

 

 

「灘神影流 “弾丸滑り” 」

 

【!?】

 

 

円盤状の刃物は尊鷹の身に触れた途端に真っ二つどころか薄皮を裂くことさえなくその軌道が逸れていく。

 

灘神影流に伝わるスリッピング・アウェーの技術は音速を超える弾丸も達人の刃も拳も、名の通り滑るように全身で受け流し無効化してしまう。

 

尊鷹ほどになれば目隠しをした状態で迫る幾本もの矢を全て身一つで逸らしたこともある、走りながら速度を落とさず、迫る致死の斬撃を無効化するのも尊鷹にしてみれば可能。

 

 

「その武器でどれだけの命を奪ってきた」

 

【ッッ】

 

 

二枚目の刃を放つまもなく尊鷹が間合いに侵入、迎撃の為にブレードを振るう、それもまた尊鷹の身体を切り裂いた、かに見えたが違う。

 

 

【!!】

 

 

今度は弾丸滑りではない、尊鷹の身にブレードが触れると姿はそこにあるのにまるで実体が無い様にすり抜けてしまう、遅れて尊鷹の姿が空に消える。

 

灘神影流の技ではない、幽玄真影流に伝わる目の周辺視野を利用した残像を残す技法、かつて幽玄の一派にも教えを請うた尊鷹もまた、その残像を残す回避を習得していた。

 

残像が消え入る頃には尊鷹の攻撃は終わっている。

 

 

「灘神影流 “塊蒐拳” 」

 

「……!!」

 

 

怪物のアーマーの上から尊鷹の両拳が穿つ、鋼鉄を超えた強度のアーマーだが、浸透系に位置するその打撃を最も得意とする尊鷹の技の前では無意味。

 

鬼の異名を冠する尊鷹の必殺の技が怪物に炸裂した。

 

 

【…よ…】

 

【弱き種族の分際で…!】

 

 

怪物はマスクの奥で怒りに目を剥く、ジリジリと内側から焼く様な痛みが広がってくる、火傷かはたまた毒物か、アーマーの上からどうやってダメージを与えたのか。

 

そんな疑問よりも嬲られるべき弱者であり獲物からの反撃で、強者であり狩る側である自分が手傷を負わされたという事実が我慢ならなかった。

 

 

【殺す…】

 

 

怒りのままにブレードを振り上げる、それに対して尊鷹は回避らしき回避はしない、ただスッと身を横に逸しただけ。

 

 

「怒りは判断を鈍らせる、どれだけ優れた肉体を持とうとも驕り、怒り、感情に飲まれた者ほど戦いやすい相手はいない」

 

 

身を逸した尊鷹の背後、先程まで尊鷹の背があった空間から何かが光を反射して飛来した。

 

 

【!!】

 

 

それは最初に怪物が投擲した円盤状の刃物だった、それがブーメランの様な軌道でまた戻ってきた、しかしそれは手慣れた筈の怪物にとって予想外の軌道で。

 

 

「弾丸滑りの際に軌道を変えたのだ」

 

 

そして尊鷹の手が加わったその刃は吸い込まれる様に怪物の振り上げたブレードの伸びる腕へと。

 

 

「……ッッッ!」

 

 

声にならない叫び、鳴き声一つ上げないのはこの種族にとって人間で言うところの絶叫に当たる。

 

怪物の振り上げた腕に円盤状の刃が接触、切断こそされなかったが大量の血を撒いてその傷は骨にまで達する、筋も切断したのか制御を失った様にだらんと力を失う。

 

 

【こ、この蛆虫が…】

 

 

さっと残る片手でガントレットに搭載された電子機器を操作しようとする、だが尊鷹の動きが速かった。

 

 

「いいや、それはさせない」

 

 

尊鷹が残る片腕を両腕でロック、その体勢のまま憙一の物とは別系統に先天的に発達した強靭な両足で跳躍した、尊鷹の身体が怪物の頭部よりも上の位置へと一瞬で到達。

 

 

「灘神影流 “飛翔・猛禽返し” 」

 

 

相手の手首をロックした状態で軽やかに高く跳躍、上下反転した姿勢、そして重力に引っ張られて落下は始まる、怪物もそれに釣られて地へと倒される。

 

 

【オォッ…】

 

 

そして落下と地を揺らす衝撃、自分の体重と落下の重力の全てを相手の関節に負荷として集中的に掛ける技、尊鷹ほどの達人が使えば、人外の者の関節を破壊するのも可能であった。

 

 

「灘神影流、飛翔・猛禽返し…本来ならば相手の投げ技を利用する形で行うカウンターだが、工夫すれば自ら技として仕掛けることも可能だ」

 

「異星の悪魔よ、肉体的に劣る無手の相手だとして油断したか、私は決して無策でもなければ準備を怠った訳でも無い」

 

「ブライアントのチームに潜り込んでからというものお前達の装備、戦闘データを把握し考えられる攻撃の全てを予測予想して戦術を組み立てている」

 

「勿論、敗北を確信した際の広範囲の隠滅自爆には何よりの警戒を抱いている、もうガントレットの装置を起動させることは出来ない」

 

 

【……!!】

 

 

「圧倒的な優位も時には一時の慢心で覆される、相手を弱者と侮り悪意を持って加虐せんとした、己の悪因悪果を呪え」

 

 

片膝をつき見上げる怪物、両足で立ち見下ろす尊鷹。方や両腕を破壊され内臓を蝕む技を受け、方や全くの無傷、誰が見ても詳細は明白、戦闘開始から十秒と経たぬ間の決着だった。

 

 

「よくわからないオッサン…すげぇ」

 

「感動するくらい強い…!」

 

 

屍山で同時に起きた戦い、そのうちの一つが終結。そしてここから森の奥へと進んだ先の戦いも終わりを迎えようとしていた。

 

 

 

 

屍山奥

 

傷つきながらも装備を取り返し反撃の機を探る怪物の前に更に二体の怪物が現れる、同種族にしていわば別流派、決して相容れない両者の戦いは始まった。

 

方や傷を負った身体とあり合わせにもなるか分からない装備、方や万全の肉体に強力無比な完全武装。

 

 

【な…】

 

【なぜ…?】

 

 

勝敗は考えるまでもない、強者であるのは己であり加虐し勝利するのもまた己であると完全武装の怪物は確信していた。

 

流れ出た真緑の大出血が血を濡らす、それは、完全武装しているはずの怪物から流れていた。

 

 

【なんで弱り切った雑魚なんかに…!】

 

【……】

 

 

戦いに勝ったのは、傷付き弱った怪物だった。

 

完全武装の怪物のブレードが、あろうことかその怪物自身を貫いている。ブレードのある片腕の関節が破壊され、相手ではなく自分の胴体へと向けられていた。

 

そしてそれを行ったのは当然、相手をした傷付いた怪物、片腕をロックと同時にへし折った。

 

 

【あ、あれだけ切り刻んでなんで倒れない…】

 

【その動きはなんだあっ】

 

 

 

時は戦いの最中へと遡り─

 

 

 

【舐めるなあ、弱小種族にも劣る弱きものがあっ】

 

 

侮られたと感じた怪物が怒りのままにブレードを振るう、その度に躱そうとするも躱しきれず、裂傷と出血が傷付いた怪物の肉体から流れ落ちる。

 

 

【自分の意思がないだと?俺は自らの意思で下らない一族の掟を捨てて狩りの本分を見定めたのだっ】

 

【戦士長は偉大な強き者、一族の誰よりも狩りに優れた戦士、その言葉に従うのは名誉なんだあっ】

 

【おおおっ、俺を愚弄するなあっ】

 

 

その後も連続で傷は刻まれる、方や傷つきながら少しづつ後退していき、方や雄叫びを上げ少しづつ前進。

 

そして遂に傷付いた怪物の身体から力が抜け落ちてガクンと崩れ落ちる、その様に攻める怪物には見えた。

 

 

【はーっ、弱き者よ死ね!】

 

 

だからこそこの胸に目掛けてトドメの一刺しを放った、それは弱りきった獲物の胸など簡単に刺し貫いて絶命させる筈だった。

 

 

【……タイミングは掴んだ】

 

【力の流れが見えた】

 

【なにっ】

 

 

しかし突き出した刃に異変、胸の中央を捉えた筈の刃が逸れていく、伝わる筈の破壊力が相手の身体の表面を滑るかの如く流される。

 

傷付いた怪物が攻撃に合わせて肉体を脱力からの半回転、一瞬だけ攻撃の方が避けたと錯覚して見えるスリッピング・アウェーの回避。

 

一度見た灘神影流の技、弾丸滑り。脳裏に焼き付く己を驚愕させた未開の技を、実戦の中で再現した。

 

 

【は、はうっ】

 

 

そしてその勢いを加えて反撃、突き出した腕を掴み取る。そして最適な角度で関節に一瞬で負荷を加えへし折る、これも先程その身で味わった技。

 

へし折った腕から飛び出すブレードを己の武器へ、相手の怪物の胸へと突き刺した。

 

 

 

そして現在─

 

両者共に血を流し、しかしその差は歴然として決着。

 

 

【な、なんなんだその動きは…】

 

【狩りの中で学んだ…この星の戦士の技だ】

 

【そんなもので俺が…】

 

【あががっ】

 

 

突き刺した腕が引き抜かれるとそこから更に出血、放置すれば死は免れない致命傷、幾度も切り裂かれた方の怪物も当然出血はあるが、その傷一つ一つは軽微なものだった。

 

 

【無様だな】

 

 

そんな両者の背後から聞こえたのは残る一体の怪物の声、傷付いた仲間を慮るものでも、勝利した強者を讃えるものでもない、ひたすらに冷たい侮蔑の声。

 

 

【せ、戦士長…】

 

【愚弄され血が上りそんな簡単な事さえ気付かない】

 

【え?】

 

【お前がつけた傷なんてどれも命を奪うには浅すぎる、紙一重でソイツが躱しているからだ】

 

【それも脱力からの最低限の動作で行う肉体そのものの受け流し、お前は都合よくその技の練習相手として弄ばれていたに過ぎない】

 

【ば、バカなっ】

 

【もう一度言うが簡単な事だ、手傷を加味してもお前よりソイツの方が数段優れた戦闘力を持っている】

 

【武器を使っても覆せない程、経験、発想、技術、精神、そして万全ならば肉体、そのどれに置いてもお前が劣っているのだ】

 

【そ、そんな事が…そんな事があるわけ…】 

 

【無様だな、余りにも無様過ぎる】

 

 

傷跡のある仮面の怪物がゆっくりと背をもたれかけた姿勢から同胞の怪物へと近付いていく、それを見た怪物も蹌踉めきながらも歩み寄る。

 

 

【せ、戦士長…】

 

 

だがそれは傷付いた仲間を助けるつもりなどでは毛頭ない、その全くの真逆の行動の為。

 

 

【惨めで無様な蛆虫など必要ない】

 

【あ゙っ】

 

 

戦士長と呼ばれた怪物のブレードが、近寄った怪物の胸を別の角度から貫く、その位置には心臓がある。

 

 

【俺について来たいと言うからそうしてやったが…同時に無様を晒すなら殺すとも言った】

 

【どうしようもなく許せないんだ、無様な奴が俺の視界に入る事が、無条件で殺したくなる】

 

【負けて生き延びる奴も勿論無様だがまさかそれより下がいるとはな、それも仮にも俺の部下が】

 

【お前は俺の狩りに同行するには弱すぎる】

 

【…ゥ……】

 

 

ブレードが引き抜かれると大量出血と共にゆっくりと倒れる怪物、マスクの下のその目の光は完全に消失し二度と灯ることは無い。

 

 

【さて…無様な奴がもう一体…】

 

【!!】

 

 

リーダー格の怪物が近付いてくる何かを察知する、数秒後に木々を飛び交い、大きく蹌踉めきながらその場に着地したのは、また別の怪物だった。

 

 

【……戦士長】

 

【…奴らは…!!…なにっ】

 

 

片腕を切り裂かれ、もう片腕はへし折られて破壊され使い物にならなくなった怪物が現れる。それが仲間の死体を、そして自分達のリーダーの武器から流れ落ちる血の意味を認識した。

 

 

【おいお前、喜べ】

 

【負けた上に生き延びた虫けらがお前の他にもここにもう一匹いるみたいだぞ】

 

 

リーダー格の怪物はその場の全員を冷笑し愚弄する、勝利した者も死した者も逃げ帰ってきた者も全て。

 

 

【あううっ…せ、戦士長…】

 

【応急処置セットを渡してください、か?】

 

 

現れた怪物の言葉を先んじて話す、やはりその言葉には強い侮蔑と冷笑、そして嫌悪があった。

 

 

【違うだろう、両手が使えなくなったから代わりに自爆コードの操作をお願いします、だろう】

 

【…!…あううっ】

 

 

その言葉に恐怖と動揺が走る、人間でいう所の脂汗をかくような状態になる。

 

 

【知ってるぞ】

 

【このマヌケの幼稚で未熟な戦いごっこを見ながら、お前の位置情報と戦況も分かっていた】

 

 

自ら手を下した仲間の死体を侮蔑する目的で踏みつけにし、マスクに搭載された機能により仲間の位置と情報を把握していた。

 

 

【プラズマ・キャノンは壊され、内臓に損傷、左右の手は破壊、しかも片方は自らの武装による傷だな、逆手に取られたか…】

 

【成人の儀さえ終えてない奴は未熟者だが…お前達はその中でも最底辺の存在だ】

 

【そして何よりも無様なのは…お前が片腕を破壊された際に行おうとしたガントレットの操作】

 

【お前がやろうとしたのは自爆の操作コードではない、光学迷彩の起動操作だ】

 

【!!】

 

【何処までも無様な奴め、負けて自ら痕跡を滅するのではなく逃げ帰る事を選ぶとは】

 

【このクズにも言ったが、俺の前で無様を晒すやつは許さない、誰であろうと殺さねば気がすまない】

 

【ま、待ってくれ…】

 

 

現れた怪物はリーダー格から殺気が滲み出し始めたのを感じ取り弁明を口にしようとするが、リーダー格の怪物が動き出す方が速かった。

 

 

【お前が気に入っていたのはコレだったな】

 

【最後に俺が教えてやる、レイザー・ディスクの使い方と言うのは…こうっ】

 

 

リーダー格の怪物がその腰から光を反射する円盤状の刃物を放つ。その動作の無駄の無い速さ、正確さは狙われた怪物のものよりも遥かに優れている。

 

 

【はうっ】

 

 

咄嗟に身を屈め、壊された両腕を前に出して防御の姿勢を取る。だが放たれたレイザー・ディスクはその動きも予測して放たれている。

 

それに合わせたように軌道を描いて向かう、大きく弧を描き、視界から外れ、なけなしの腕の防御さえ通り抜け、横の側面から迫る。

 

そして狙われた怪物の首を正確に捉えた、首が勢いよく身体から離れ、遅れて緑の鮮血が吹き上がり、更に遅れて身体が崩れ落ちる。

 

 

【お前達は戦士と呼ぶには値しない】

 

 

短い間で二体の同胞を呆気なく殺害、それでも何の感慨も無い、何処までも冷たく凪いだ心。

 

 

【こんな不快な思いをするのなら奴の言う通り若造なんて置いてくればよかった、それで…奴はどこだ】

 

【ほう…交戦中か、活きのいい獲物を見つけた様だな】

 

 

リーダー格の怪物は仲間の最後の一体、唯一見下してはいない仲間の一体の居場所をマスクの装置で確認する、近くには他の生体反応、身体データには興奮状態を表す数値、戦いの最中を意味する。

 

 

【さて此方ももう終わらせる、次はお前だ蛆虫】

 

【装備を拾え、そのクズの装備をな】

 

【無論、そんなものがあっても結果は微塵も変わらんが…最後に戦士らしく抵抗してみろ】

 

 

そして冷徹な狩人の最後の標的は残る一体、傷付いた怪物もその冷徹な殺意に立ち向かう。

 

 

【いいや、武器はもう必要ないことになっている】

 

【なに?】

 

【この星では戦いの儀式において武器を使うのは悪しき事らしいからな】

 

【この星の流儀でお前を倒す技を見せてやる】

 

【ふん、バカバカしい、好きにしろ…どのみち何をしようがお前はすぐに死ぬ】

 

 

二体の怪物の戦いが始まる。一方、時を同じくしてブライアントの部隊がいた3番エリア、腕を負傷した怪物が逃げてきた方角では─

 

 

 

 

「我が名は尊鷹」

 

「いや…それはもう知っとるんやが…」

 

「こんなところで何してんねん、尊鷹」

 

 

3番エリアで突如として姿を現し、怪物を退け隊員達を助けた尊鷹は駆け付けた憙一と合流していた。

 

 

「実は米国の特殊部隊に潜り込んでいたんだ、そうしたら今回の任務のメンバーに選ばれた」

 

「なんの為にそんな事を…?」

 

「あの怪物の存在については前々から聞いてはいたが実在したと確信はできなかった」

 

「それがまさかお前や鬼龍までが関わっているとは」

 

「てことはあの会議の最中とかもずっと近くにおったんか?相変わらず予測出来ない事をしでかすのお」

 

「あぁ、奴とお前が戦闘する映像も見たぞ、見事な物だった、初見の人外相手にあそこまで優勢に立ち回るとは」

 

「私とて事前の情報がなければどうなっていたかは分からなかった、灘・真・神影流の当主として不足はないというわけか」

 

「ん?私とて?尊鷹、まさかアンタももうあの怪物と戦ったのか?」

 

「あぁ、装備を付けていたからお前が戦ったのとは別の個体だろうがな」

 

「追い詰めはしたがあと一歩の所で逃げられた、だが自爆の操作はもう出来ない筈だ、両腕を破壊した」

 

「流石は尊鷹、もう一体倒してるとは」

 

「それにしても鬼龍の予想通りか、他にもエイリアンがこの国に来ていたとはのぉ」

 

「道元達が仕掛けた監視カメラの映像を見とったらブライアントのチームが奇襲されてワシも鬼龍もすっ飛んで来たんだが…」

 

「そう言えば鬼龍は一緒ではないのか」

 

「それが鬼龍の奴、一人で勝手に進んで行きおってあっという間にはぐれてしもうたんや」

 

「ワシは爆発の音を聞いて此処に来ただけや」

 

「成る程、では森の中に敵を深追いするよりも先ずは鬼龍と合流した方が良さそうだな」

 

 

「あ、あのう…」

 

 

これからの行動を決めている憙一と尊鷹にブライアントの部下たちが戸惑いながら、主に尊鷹の出現とその強さに戸惑いながらも話しかけてくる。

 

 

「ん?どうした」

 

「たった今、ブライアント捜査官との通信が繋がったのですが向こうもエイリアンの襲撃を受け…」

 

「それでその鬼龍?とか言う人がもう一体現れたエイリアンと交戦中との事です」

 

「なにっ」

 

「そうか…もう出会っていたか」

 

「よし分かった、私達がその場に行こう、ブライアント捜査官を救出し連れ戻す」

 

「お前達は当初の予定通り麓へ戻り態勢を整えて待機しているんだ、麓には大会関係者や憙一の知人達がまだいる、万が一に備えて警護も頼みたい」

 

「は、はい!」

 

「いやなんで尊鷹が指揮とってんねん」

 

「では行け、すぐに私達も合流する」

 

「はい、お気をつけください、なんかよくわからないけどめちゃくちゃ強い人達!」

 

「あぁ、そちらも気を付けてな」

 

「…いやちょっと待てよ、なんか今ワシまでこの仙人みたいなオッサンと同類みたいに言われてなかったか?」

 

「よし憙一、私達も向かうぞ」

 

「……まぁ、何でもええけど」

 

 

尊鷹と憙一は隊員達から伝えられた場所まで移動する、ブライアントからの通信によればそこでエイリアンと遭遇、鬼龍が現れ交戦を始めたとの事。

 

屍山の鬱蒼とした木々を走り抜ける、尊鷹はまるで重さを感じさせない跳躍で木々から木々へと飛び移り移動する。

 

憙一も幽玄の体重操作や瞬間的な高速移動の技術を駆使してそれに追いついて移動している。

 

 

「相変わらず人間離れした跳躍力やのぉ、それだけならエイリアンにも負けてないんちゃう?」

 

「フッ、お前の方こそ、苦も無く付いてくるとは、修練は怠ってはいないようだな」

 

「当たり前や…それにしても尊鷹、鬼龍の奴に援軍なんて必要か?着いた頃にはアンタみたいに勝った後かもしれん」

 

「ウム…確かに鬼龍は強いが、懸念がある」

 

「懸念?」

 

「私が戦ったあのエイリアン、肉体的スペックと装備の性能は人間をはるかに超えていたが…ソイツ本体は闘争に置いては未熟だった」

 

「未熟?」

 

「あぁ、戦う前からこちらを侮っている態度、反撃を受けて強く動揺し立て直せないと言った様子は実戦と呼べる様な経験がない証」

 

「ふぅん、そうか…ワシが戦り合ったアイツはそんな感じはしなかった、まぁ装備は付けてなかったが」

 

「米国が掴んだ情報によれば奴らは多くの星々で他種族との戦いを繰り返すらしい、憙一が戦ったのは経験はあるが装備の無い個体、私が戦ったのがその逆」

 

「つまりもしも…経験を積んだ上で装備の性能を十全に活かしきれる様な個体だったのなら…」

 

「…鬼龍であっても不覚を取るやもしれん」

 

 

深刻そのものな尊鷹の横顔を見た憙一は額から冷や汗が一滴つたるのを感じた、これから向かう先、山の奥から不気味な気配が漂ってくる気がした。

 

冷気を錯覚させる不穏な気配がより強まっていた。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。