先生、トラブルに巻き込まれる。   作:竜田揚げ丸

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こんにちは。

思いついたので投稿します。

ところで猫耳が生えた先生ってにゃんこ先生と呼ばれたりするんですかね?

こちらの作品は、Pixiv様にも投稿させていただいています。


先生、猫耳が生える。

「…えぇ、なにこれぇ…」

 

朝の澄んだ空気で目覚めて顔を洗おうとした私は鏡に映る自分自身の姿を見て自分でも驚いたことに、焦ることもなくただ困惑の声を上げた。

なぜかと言えば、昨夜眠ったときにはなかったはずのものがそこにあったからだ。頭に生えた黒い三角形、どことなく触り心地のよさそうな毛並み。

 

猫耳、である。

 

今もぴくぴくと動き続けるそれは、しかし今の私の「なんだこれは…」という困惑に呼応しているかのようになんとなく力が無いように見える。

試しに自分で触ってみたところ、触り心地はいいがくすぐったい。その感覚に私が思わずびくりと身体を少し跳ねさせると猫耳は一瞬ぴんと立ち、そしてへなへなと再びちょっと垂れる。

…ちょっと可愛いかもしれない。私はそう思ったが、猫耳から下の寝起きの成人男性の顔を見て即座にそれを撤回する。

その後しばらく私は猫耳をいじりながらどうするべきかを悩んでいたのだが、出勤時間が近づいてきたために一旦それを棚上げして出勤の準備を行った。

準備の最後に猫耳への対処をどうしようか悩んだが、時間もなかったので帽子を被って隠すことにし私はシャーレへと向かうのだった。

 

──

 

私が帽子を被って仕事をしていると、今日の当番の子がやってきた。白と黒の髪、誤解をよくされる吊り目ながらも優しさを湛える赤い瞳。

一応ゲヘナ学園に籍を置いている生徒でありながら、ゲヘナを離れて仲間たちと共に便利屋を営んでいる生徒。それが今日の当番生徒を務める生徒、鬼方カヨコだ。

 

「先生、おはよう。…今日は帽子被ってるんだ、珍しいね」

 

いつも通りの冷静で、聞いていてどこか落ち着く声で彼女は私に問いかけてくる。いつもとは違う格好をしているので当然と言えば当然だ、同じ立場なら私もそうするだろう。

それに対して私は、内心申し訳ないと思いながら誤魔化すことにした。

 

「えーっと…。ただのイメチェンだよ、気にしないで」

 

…我ながら絶望的に誤魔化すのが下手くそだとは思う。…あぁカヨコの目が訝し気に細められた、どこからどうみても怪しんでいる。

自分のことながら飾り気のない人間が突然イメチェンなんてことを言い出したら当然怪しむだろうし、その内容も帽子を被っただけなのだから不審にも思うだろう。やってる私だってカヨコの立場ならそう思う。

 

「…先生、なにか隠してるよね」

 

「………えー、っと……」

 

「…言いたくないなら別に言わなくてもいいよ、私も無理には聞かないから。だけど、先生が私たちを心配してくれてるように私たちも先生を心配していることは覚えておいて」

 

そう言ってカヨコはシャーレの書類の一部を取ろうとするが、しかし私はそれを一旦制止した。

 

「どうしたの、先生? なにか私に見られたらよくない書類とかあった?」

 

「そういう訳じゃないよ。でも、カヨコのさっきの言葉を聞いたら隠し事するのも違うなって思って。…その…実はね…」

 

そう言いながら私は帽子を外す。そこに秘されていた猫耳がぴょこ、と飛び出したのが感覚でわかった。それと同時に「え…」とカヨコが思わず息を漏らしたのがはっきりと聞こえてしまった。まぁ、それも仕方のないことではある。誰が好き好んで成人男性の猫耳姿など見たいのだろうか。

 

「…先生、体調は大丈夫? どこか痛かったりしない?」

 

「うん、体調は大丈夫…。朝起きたらなんか生えてて…とりあえず体調とかは大丈夫そうだったから出勤してきたんだけど…」

 

「…仕事じゃなくてまずは病院にいくべきじゃないかな。…まぁこれを診てくれる病院なんか無いと思うけど…」

 

そう言いながら静かに溜息を吐くカヨコ。気持ちは限りなくわかる。

 

「うん、事情は分かった。教えてくれてありがとう。もう一回聞くけど、体調が悪いとか体に変なところとかは無いんだよね?」

 

「ないよ。心配してくれてありがとう」

 

「お礼はいらないよ。それにしてもどうしようね、それ…」

 

私の顔の少し上を眺めながら、カヨコは渋い顔をする。恐らく私も同じような顔をしているのだろうことは想像に難くない。恐らく猫耳もぺたりと垂れていることだろう。

それを見て、カヨコは興味深げにそれを眺めたあと。

 

「…ねぇ先生。触ってみてもいい?」

 

と訊ねてきた。その視線は相も変わらず私の顔の少し上に向けられているが、その視線は先ほどまでとは違いどこか目が据わっているように見える。

そういえばカヨコはこう見えて猫が大好きだった。カヨコがいつも頑張っているのは私も知っているし、これくらいはいいだろう。むしろ安すぎるくらいだ。

 

「どうぞ。…あ、でも」

 

「でも?」

 

「ちょっと敏感みたいだから、優しく触ってね?」

 

そう言って私はずいと顔を前に出す。私の言葉にカヨコは何故か少し硬直していたが、深呼吸をしたあと優しく私の猫耳を触り始めた。

…くすぐったいが、でも心地よい。なるほど、猫はいつもこういう感じで撫でられているのかと思いながらカヨコの優しい手つきを堪能していたのだが。

 

「…先生、気持ちいい?」

 

「まぁ、うん。確かにカヨコの手つきは心地良いけど…」

 

「喉、鳴ってるよ」

 

「えっ」

 

そう言いながらカヨコは薄く笑みを浮かべながら私の喉を優しく撫で始めた。力加減は完璧でかなり心地良いのだが、これは…ちょっとまずいのではないだろうか。私が無意識かつ本格的に猫に引きずられているというのもそうだが、何よりもこの絵面がまずい──。

そこまで考えた瞬間、扉が開いた。

 

「カヨコ、先生、いるかしらー? ごめんなさい、二人に少し確認したいこと、が…」

 

入ってきたのは陸八魔アル。カヨコの所属する便利屋68の社長で、形式的にはカヨコの上司だ。

アウトローを自称してはいるが、その行動はそれとは逆に人情に溢れており、比較的常識人である。

そんな彼女がこの絵面を見かけた、ということは。

 

「…お、お邪魔したわね!? ごめんなさい、出直すわ。二人とも、バレないようにやるのよ!? 二人の関係は黙っておくから! 安心しなさい、私口は堅いのよ!?」

 

そう言いながら凄まじい勢いでぴゅん、とシャーレを飛び出すアル。それを見たカヨコと私はというと。

 

「待ってアル、違うよ!? 」

 

「誤解、誤解だから! お願い社長、一回止まって!」

 

とアルを追って飛び出すことになった。その後なんとかアルを捕獲して説明には成功したのだがその過程で私の頭に猫耳が生えていることが世間に目撃されてしまい、挙句それがキヴォトス全域に拡散されてしまった結果、シャーレに押しかけてきた生徒たちによって私は頭を撫でられたり喉を撫でられたりと猫扱いされてしまうのだった。




読了ありがとうございます。

あらすじにもありました通り、こちらはPixiv様にも投稿させていただいています。



ところで猫耳が生えた先生ってにゃんこ先生とか呼ばれたりするんですかね?
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