Archives   作:彼岸花ノ丘

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No.02 電子メール

 やぁ、エレン。元気しているか?

 西暦2027年4月、要するに先月の海底調査、お前交通事故の怪我で入院してて行けなかったな。酷く悔しがっていたお前に、更に悔しい事を教えてやろう。

 あの調査で、これまでの生物学の常識を覆す発見があった。

 フロリダ沖の水深六百メートル地点で、直径二メートルもある卵を発見したんだ。二メートルもあるんだぜ? これまで発見したどんな生き物の卵とも比較にならない大きさだ。

 卵は透明なゼラチン質の卵嚢に覆われ、黒いものが中心に浮かんでいる構造をしている。セキュリティの問題で画像を貼れないが、まぁ、ほぼカエルの卵と思えば良い。人間よりもデカいがな。

 当然、調査のためその卵は回収した。潜水艇のアームで慎重に抱えて持ったんだ。あの時の緊張と興奮ったら、もう言葉では言い表せられないぜ。

 回収した卵は、驚くべき事に陸上でも形を保っていた。そしてもしかしたらと思い、冷凍保存せず、海水に浸すだけで陸まで運んだ。まぁ、あれを保管出来る冷凍庫もなかったしな。

 そうして運んだ卵は研究室で水槽に入れられた。そして陸地に上げた一週間後、なんと分裂したんだ。

 信じられるか? 深海の卵が、陸地の水槽に入れてもまだ生きていたんだ! おまけにゆっくりとだが今も発育が進んでいる。分裂は週に一回ぐらいの遅さだが、卵がそれだけデカいんじゃあ時間も掛かるだろうさ。

 あと何回分裂したら育ち切るかは分からんが、一年ぐらいで孵化するんじゃないかとは言われている。一体どんな生物が孵化するんだろうな。俺は今から楽しみだ。

 ただ、一部の奴等はそうじゃないらしい。

 なんでも最近、といっても一週間ぐらい前からだが、親が卵を取り戻しに来るんじゃないかって噂が飛び交い始めたんだ。

 まぁ、あり得ない、とは言えないな。深海から引き上げても生きてる卵だ。親が上陸出来ても不思議はない。あれだけ大きな卵となれば、親はさぞデカいだろう。百メートルはあるかも知れねぇ。暴れ回ればフロリダなんて壊滅だな。

 ……笑えるだろ?

 俺達人類がクジラを狩り始めたのは紀元前3000年前とからしい。銃も大砲もない時代だ。命懸けではあっただろうが、やる価値がある程度には確立された産業だ。だから色んなクジラが絶滅危惧種になった訳だが。

 地球最大の生物すら、紀元前の頃には俺達人間の獲物だったんだぜ? それから五千年か六千年経った今、高々体長百メートルの生物にやられると思うか? 落ち着いて考えれば分かる事だろうに。

 ただ、そうだな。最近フロリダ沖で海難事故が相次いでるのは不気味な感じはする。ただの偶然だとは思うが、何かありそうだとは感じさせるな。

 それにあの卵は、魅力的な一方、酷く不気味だ。何がと言われると困るが、心を掻き乱される。全く科学的根拠はなくて、だからこそ不安がる連中の気持ちも少しは分かっちまう。巨大怪獣が現れるじゃなくて、異界から魔物がやってくるとかなら、ちょっと信じていたかもな。

 要するに、そういう興味深い卵なんだ。

 お前の意見も聞きたい。早く退院して、こっちに戻ってこいよ。

 じゃ、また今度大学で会おう。

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