11話 護衛は武偵にお任せあれ
ハイジャック事件から1週間、今日無事に退院することができた。
医師からは「こんな早く回復するなんてあり得ない!」と言われた。まぁただ過度な運動はまだ出来ないけどな。
車に乗って俺は姉さんが指定したビルへと走らせる。秋葉原とは聞いている。秋葉原は車が通りにくいから好きじゃないんだよなぁ…
そんなこと考えてたら目的地へと着いて車から降りたが
「…廃ビルか?」
元々は雑居ビルだったのだろうが今では看板には店名すら貼られてない。それに入り口には[立ち入り禁止!]と書かれている。
姉さんからはこのビルに来てくれとだけしか言われてないから電話をしてみる。
『着いたみたいだね』
「あぁ。だがなんでこんな廃ビルに案内したんだ?入れないぞ」
『理由があってね…とりあえず2階の勝手口は開けてるからそこから入って。話はそこでするから』
言われるがまま2階の勝手口から入った。そこには姉さんがいた。
「平一、退院おめでとう。早速で申し訳ないけど依頼があるんだ」
「依頼?」
姉さんが合図をすると暗闇から人影が出てきた。その人影が段々と明るくなってきたせいで誰かがわかった。
「理子…!?」
「そう。理子・峰・ルパン4世だよ。3日前に保護されてね。依頼というのはルパン4世を護衛して欲しいんだ」
「断る。俺はこいつに殺されかけたんだぞ!なんで俺が理子の護衛をしなければならないんだ!」
俺は理子に近づいて胸ぐらを掴んだ。
「理子!ハイジャックをしておいて逮捕されて挙げ句の果てには守ってくれだぁ!?虫がいいにもほどがある!」
理子は反撃するどころからひどく怯え出した。
「ごめんなさい…ごめんなさい…!殴らないで…!理子は悪いことしてないです…何も知らない…知らないんです……」
俺は理子から離れた。理子なのに、理子じゃない。まるでハイジャック事件の時みたいに性格が豹変した時とは違う。
「なんだこれ…どういうことだ!」
「峰理子さんは記憶喪失なんだ。保護された当時激しい怪我だったみたいだ…恐らく暴行されたんだろうね…その時ショックで記憶を失った可能性があるんだ」
「暴行された!?誰にだ!?」
「……峰理子さんが所属してたイ・ウーだよ。神崎さんと平一をハイジャックで仕留めなかった罰としてか…最も記憶喪失だから憶測だけどね」
イーウー…またこのワードが出てきた。理子も言ってたが一体イーウーとは何なんだ?
「イーウーってのは何なんだ?」
「……平一、それは言えない。これは国家機密にあたるからね。話せる範囲で話せるなら秘密結社みたいなもんだよ…」
話せない?秘密結社?つまり武偵殺しはその秘密結社からの指令ってことか…?姉さんに聞こうにも国家機密と言うなら話してくれないだろうな。
「ともかく、それなら警察で保護しておけばいいじゃねぇか。こいつは武偵殺しをした極悪人だ。さっさとムショにぶち込んじまえば楽じゃねぇか」
「それが記憶喪失だと出来ないんだよ。起訴しようにも記憶喪失の状態じゃ供述もできないしましては裁判すらできるか怪しいからね。さらにいえば神崎かなえさんの無実を証明するために証言が必要だけどできなくなる。このままじゃ神崎かなえさんの刑が確定してしまうんだよ」
「だったら記憶が戻るまで留置所に入れればいいだろ」
「それも難しいね。起訴するまでにはタイムリミットがあるから長くは拘留できない。それに……警察内部にはイ・ウーと繋がってる人間もいる。そんな中で警察の管理下におけば峰理子さんが殺される可能性がある。実際峰理子さんは暴行されてる。もしかしたら殺されるのから命からがら逃げてきたかもしれないしね…」
任務に失敗したら殺す…なんだよテンプレの悪の組織みたいだなイーウーは…
「つまりそのイーウーってのから記憶が戻るまで護衛しろってことか?」
「その通り。私は平一しかこの依頼はできないと思ってるし、こんなのは平一にしか頼めないんだ…どうか、お願い!」
姉さんは深々と頭を下げた。しかし、護衛するのは俺を殺してきた理子だ。いや、イーウーとやらの入団テストのために大怪我したんだぞ。
しかし、今断るということはできない。理由は姉さんが頭を下げてここまでお願いしているからだ。
「……わかった。引き受けるよ」
「本当に!?ありがとう!」
姉さんと別れてから車に理子と乗る。オドオドした様子や「すみません…」と控えめな感じでいるのは1週間前のあの理子とは全然違う。まるで別人だ。
エンジンをかけて車を走らせる中車内は沈黙であった。
「……確認するが本当に記憶がないのか?」
「はい……私何も覚えてないんです…気づいたら街の中にいて、銭形さんに助けていただいたんです…あの、お名前をお伺いしたいのですが…」
この様子だと本当に記憶がないみたいだな…
「銭形平一、武偵をやってんだ。お前さんと同じだよ」
「私が武偵ですか…?私みたいなのが武偵なんて信じられません…」
人に大怪我させておいてよく言えるな。
「聞きたいがイ・ウーって組織は覚えているか?」
「イーウー…すみません、私何も覚えてないのでわからないです…」
やはり覚えてないか…イ・ウーについて聞き出したかったが覚えてないんじゃしょうがない。
聞き出すことを考えていると「グゥ〜」と腹が鳴った音が車内に響いた。
「腹減ってるみたいだな」
「……すみません…贅沢ですよね、護衛してもらって食事に行くなんてできないですよね…」
「何言ってんだ?行こうぜ。記憶をなくす前のお前の馴染みの店に」
「「「「おかえりなさいませ!ご主人様!」」」」
以前理子と一緒に来たメイドカフェに来た。理子は帽子とメガネをかけて変装させてるせいか店員は理子だと気づいてない。
理子は記憶がないせいか物珍しく店内やメイドさんを見る。
「すごく可愛らしいお店ですね…ここの使用人さんも可愛らしくて…」
「ここにメイドを見に来たわけじゃないぞ。さっさと食ってここを出ようぜ。お前さんは狙われてんだ。あまり外出歩いてたらよくねえしよ」
料理を注文してからしばらくしてから注文したオムライスが来た。
「料理には私達メイドからの愛を注入します。ご一緒に!萌え萌えキュン!」
「も…もえ、萌え萌えキュン…!」
めちゃくちゃ恥ずかしそうにやる理子に不覚にもキュンと俺も来た。クソ…
それからしばらく理子は料理に手をつけなかった。
「食べないのか?」
「…本当にいいんですか…?」
「は?いいよ」
そう言った途端理子はオムライスを美味そうに頬張った。
「美味しい…美味しいです…」
目に涙を浮かべて食う姿を見て俺はびっくりした。
「そ、そんなになって食うほどか…?」
「普段私はこんな美味しいものは食べてないので…」
普段何食ってんだ…?いや、記憶を失ったと言ってるがいつまでの記憶があるんだ…?
「理子が覚えてる範囲でいい…お前の話が聞きたい。普段何をして、どこに住んでたかを教えてくれ」
そういうと理子は口を重たそうにして話し出した。
「私は……普段外には出れないんです…檻の中で暮らしてます…食べ物は腐った肉やパンしか与えられなくてこんなものを食べたのは幼少期以来です……」
「おいお前、親は……ルパンはそんなことをしてたのか!?」
「違います…!お父様やお母様は……私が幼少期に…殺されたんだんです…!」
殺された…?何?
「お父様とお母様は仕事でよく家を空ける事がありました…でも、家にいた時は必ず私と一緒にいました。お父様が手に入れたお宝を見せたり、色んな話をしてくれました…そんなある日お父様とお母様は…殺されました。ルパン家はそこから没落していき、身寄りのない私は…親戚と名乗ったアイツに引き取られました……そこから…そこから…ウゥ…!」
「わ、わかった…わかった!わかったからそこまでは喋るな!」
つまり親戚に虐待されてたのかよ……理子にこんな辛い過去があったとは…
しかし、ルパンは理子が小さい頃には死んでただと……それだとあの時のルパンは何だったんだ…?いや、ルパンは…死んで…いや、じゃあどういうことだ…?
「っ………!?」目眩が激しく来た。なんだ…?
「あ、あの……大丈夫ですか?」
「いや……ちょっと、な…ともかく食べたら出よう…」
俺達は食事を終えて会計を済ませた。その時に電話がかかってきた。
『遅い!あたしが電話をしたら1コールで出なさい!』
電話の主はアリアだった。
「むちゃ言うな。今俺は取り込み中だ」
『今すぐ学校に来なさい!あんた今日退院したんでしょ?』
「そうだ。色々あるから学校には来れないんだ。キンジに頼みな」
『キンジはもういるわ。あとはあんたが揃えばいいのよ。しのごの言わずにさっさと学校に来なさい!私達のパーティとして仕事をするのよ!』
「おいだから来れないって…もしもし!?……切られたのか…」
今から学校なんて無茶だ。行くにしても理子を連れて帰れば大騒ぎになる。行かなかったら行かなかったで帰って何されるかわからんぞ…
「あの…どうしましたか…?」
「………ちょっと野暮用だ。すぐ戻る。その間の護衛は俺の友達に任せるからそいつらに着いていきな」
学校に着いてアリアとキンジに合流した。
「白雪の弱みを探るために教務科に潜入するぅ?」
「そうよ!あの凶暴女は恐ろしいのよ!盗聴されてたり吹き矢が飛んだり落とし穴に落とされたり、あとピアノ線まで仕掛けられたのよ!」
俺が入院してた間白雪が合宿から帰ってきたらしい。そこからアリアと大喧嘩してるとのことでそれにキンジと俺は巻き込まれたらしい。今白雪が教務科に呼び出されて何かあるんじゃないかを探るために潜入するというものだ。たく、お前ら俺の心配もせずにそんな馬鹿馬鹿しいことしてたんかよ…てかそっちの都合よりこっちは護衛の仕事中だぞ。
しかしピアノ線ってかなりガチじゃねぇか。
「教務科に潜入なんかごめんだ。あんなところに入るのは命がいくつあっても足りねえよ。ごめんだが帰るぞ」
武偵高には3大危険地域と言われる場所がある。強襲科、地下倉庫、そして教務科だ。教務科が危険な理由は先生達が元特殊部隊、元傭兵だ。噂だと殺し屋、マフィアなんかもいるだとか…
「だからこそキンジやあんたが必要なのよ。てかなんであんたそんなに帰りたがってるのよ。電話でも言ってたけど色々やってるとか取り込み中ってなんなの?」
正直に話すとマズイ…理子の護衛をしてるなんて言えば大騒ぎするだろうしな。
「姉さんと話してたんだよ。アリアのお母さんの裁判で証言が必要だから調書が必要だったり現場検証に立ち会ったりな」
「あら?ママの武偵殺しの証拠はもう銭形管理官が全て揃えたし終わったからあとは裁判だけって聞いたわよ?」
しまった!アリアは姉さんと繋がってるから準備してるなんて嘘はバレるぞ!てか姉さんアリアにも理子の件は秘密にしてたのか!
「あ、あー…そうだったのか…」
何か言い訳を考えようとするが
「じゃあ用は済んだわね!行きましょう!」
アリアは強引に俺を巻き込んできた。
結局俺はアリア、キンジと一緒に教務科へ潜入することになった。ダクトから侵入してるため狭くて敵わない。
しばらくダクトを通り、通風口から下を覗くと目的地に着いた。白雪と綴先生が話していた。
「星伽ィ…最近お前成績下がったらしいじゃん…?」
タバコ吸いながら白雪と話している。こいつこのご時世でよくそんなことできるよな…
綴先生は尋問科の先生だ。ダウナーでラリってるような先生だが尋問に関しては超一流。どんな犯罪者も自白するという凄腕だ。
「まぁ…そんなことはどうでもいいんだけどさ……やっぱヤツからコンタクトがあったのか?」
「
「デュランダルだと…?」
「知ってるのか平一?」
「あぁ。最近ウマ娘に実装された新しいウマ娘だ。金髪の可愛いウマ娘でタイプなんだ。あぁ馬はかっこいいぞ」
「真面目に聞いた俺がバカだったな…」
「冗談だ。超偵を狙う誘拐魔だろ?学校からの通知メールで聞いたよ」
とはいえ
「それは…ありません。仮にいたとしても私じゃなくて他の人を狙うと思います…」
「と言っても
何度も忠告してるんだな…しかし白雪は色々大変なんだな…
そんなことを考えていたら
ガァコォンッ!!!
アリアは通風口を殴って破壊して教務科へと入った。
「そのボディガード!あたしがやるわ!」
俺とキンジはその穴に落ちてそれに釣られて入ってしまった。アリアを下敷きにしてしまった。
「イタタタタ…っ!?」
俺とキンジは綴先生に首根っこを掴まれて壁に投げつけられた。
綴先生は続けてアリアのツインテールの髪を掴んで持ち上げた。
「誰かと思えばハイジャックのトリオじゃん………神崎・H・アリア、欧州のSランク武偵、自らの功績を他人に譲りまくった結果全部ロンドン武偵局の実績にした……協調性ゼロでつねに一人…あと確か泳げ」
「浮き輪があれば泳げるわよ!離しなさい!」
アリア…泳げないんか…まぁそれはともかく友達が目の前で痛い目にあってるのは見過ごせないな。
「綴先生、生徒に暴力はこのご時世よくないですよ」
立ち上がって俺はそう言った。すると綴先生はアリアをパッと離して俺のところに近づいた。次の瞬間綴先生の拳が飛んできた。俺はそれを避けようとするが
「………ッアッ!!!」
胸の痛み、ハイジャック事件の際の傷が疼いた。俺は避けれなかったが拳は俺の顔の前で止まった。
「銭形平一、強襲科のAランク武偵。警察一家で姉は警視庁最年少で警視になったエリート警察官。性格は明るくて、交友関係も良好、空手5段に柔道4段。欠点は女に弱いことか…ハイジャック事件を神崎と遠山と解決したんだっけ…」
胸の痛みに耐えながら綴先生の説明を聞く。が、今度は左脚を軽く小突いてきた。そのせいで事件で怪我してた左脚に痛みが走って膝をついてしまった。
「ハイジャック事件じゃ身を挺して犯人と戦った……その怪我で入院し今日退院したものの傷はまだ治ってないようだな……あれぇ?病院からは完治と聞いてるんだがなぁ…?」
「病院からそう聞いてますがね……まぁ激しい運動しなけりゃ大丈夫ですよ…」
綴先生はふぅんと一瞥して次はキンジを見た。
「お、俺はアリアに言われてここに来ただけで…」
俺もそうなんだよなぁ…
「遠山キンジか…Eランクの武偵で性格は非社交的。だが一部の生徒からは一目置かれてるし強襲科じゃかなり尊敬されている…確かM92Fの違法改造つかってるんだっけ?」
「あ、あれは壊れたんです!今は米軍の払い下げを…」
「装備科に改造依頼出したんだろ?」
綴先生は何でも知ってるな…伊達に尋問科で教鞭をふるってるわけじゃない。
「で?ボディガードやるってどういうことだぁ?」
「そのままの意味よ。あたし達がボディガードをやるのよ」
「だそうだ星伽ィ…Sランク武偵の神崎やAランク武偵の平一がタダでボディガードしてくれるってよぉ?」
おい。俺はやるとは言ってないぞ。理子のボディガードしてるからな。
「あ、あのぉ俺は」
「嫌です!アリアに護衛されるなんて嫌です!穢らわしい!」
白雪喧嘩してるとはいえ言いすぎじゃね?てか俺はやらないからな?
そう白雪が言い放った瞬間アリアはキンジに銃を構えた。
「あたしにボディガードさせなさい!させないとキンジを撃つわよ!」
マジかよ…てかなんでアリアがそこまで白雪のボディガードをやりたがるんだ?弱みを探るためにここに来たはずだが?
「そ、そんな!キンちゃん!」
「やめろアリア!白雪もさっきのは言い過ぎだ!てか平一助けてくれ!」
いや…俺関係ないし早く帰らなきゃダメなんだよ…てかアリアがキンジ撃つことはあり得ないぞ。
「ともかく白雪がそのデュランダルって奴に狙われてるんだろ?真偽はともかくボディガードつけるならアリアとキンジでやったらどうだ?」
この場を収めて俺は理子の元へ帰らねばならんな…
「……それなら構いません。アリアと平一くんがボディガードするというならキンちゃんもつけてください!24時間体制で!私も…私も…キンちゃんと暮らすんだからぁー!」
「いやだからアリアとキンジで」
「決まりね!さぁキンジ!平一!白雪のボディガードをするわよ!」
こうして俺は白雪と理子のボディガードをすることになった。
ここから魔剣編に入ります。
色々話を詰めたせいで長くなりましたがどうか最後までお付き合いお願いします。
沢山の閲覧ありがとうございます。