学校行きのバスを乗り遅れた。
キンジは先に言ってくれと言ったので、俺は白雪と一緒に出て、バス停で財布を忘れたことに気づいたため一度部屋へ戻った。しまいにはバスに遅れると思い急いで階段を降りたら足を滑らせて転けたりするわで散々な目に遭った。
白雪から占いがよくないと言われたがここまでツイてないとなんとも言えなくなる。
トボトボと歩いて学校を向かう。モノレールの駅の下をくぐるとビル群がそびえる学園島へと着く。今の時刻は8時、ここからは体育館へ向かう道が学校への最短ルートになるためそこへ向かうと
ピロロロロロン…ピロロロロロン…
スマホから着信が鳴った。こんな時間から電話とは珍しいなと思い、出た。
『ゼニガタヘイイチダナ?』
最近YouTubeでよく聞く合成音声が聞こえた。
「俺には機械の友達はいないはずなんだがな。誰だ?」
少し間を置いて相手は話し出した。まるでラグが発生したみたいな感じだ。
『エミリーオブライエン、ソウナノラセテモライ、ヤガリマス』
その名前に少し反応してしまった。父さんの元部下であり、実はテロ組織ブラッディエンジェルスのボスだった女だ。ルパン3世に射殺されたと聞いた。
「……ブラッディエンジェルスのボスかい。地獄からわざわざ出てくるとはご苦労なこった」
軽くからかってみたが反応がない。電波が悪いのかと思いスマホを見るが電波は正常だ。そこからスマホを耳に当て直すと
『ッカラ、トオヤマキンジヲ、コロシ、ヤガリマス』
相手は何か最初に話してたが耳から離してたせいで聞いてなかった。あとその後の言葉を聞き間違いをしたと思った。
こいつはキンジを殺すと言った。語尾がおかしいせいでそれに気を取られたが確かに言った。
『デハ、ダイニグラウンドガ、バクハツシ、ヤガリマス」
電話相手がそう言った刹那、グラウンド方向から大きな爆発音が響いた。驚いた俺がその方向を見るとビルの向こうから煙が出ているのを見た。
間違いなくこいつは冗談は言ってない。
「お前!一体何者なっ!」
『トオヤマキンジノシタイ、カクニンスルヒツヨウガアリ、ヤガリマス』
俺の話を遮り話し出した。これは恐らく事前に音声を作成してたものを流してるだけだ。だから最初みたいにラグが生まれたり反応がなかったり、さらには俺の話を無視して喋り出した。あまつさえこんな変な語尾をつける喋りをするのも普通じゃない。生身の人間とは思えない。
目的は不明だがこいつは計画してこの犯行に及んでる。わざわざこんな会話を事前に作成しない。でも何故こいつはキンジを殺すのだ?何故俺にこんな電話をする?色々と謎が出てきて考えがまとまらなくなった。
しかし、今考えても無駄だ。もしこいつの言うことが本当ならキンジはヤバい。あいつが、こんなんで死ぬとは思えない。いや、思いたくないのだ。俺は走り、グラウンドへ向かった。
走ってグラウンドに着いた。全力疾走したせいで息がかなり乱れてるがグラウンドに出来たデカい爆破跡を見て、不思議と息がぴたりと止まってしまった。
「キン、キンジ……キンジ!いるのか!?いたら返事をしろ!」
辺りを見渡すが誰もいない。まさかと思いグラウンド内を走って探す。
「おい!キンジ!誰でもいいから返事をしろ!」
見渡してあるのは爆破した際に出た残骸だけだった。さらにその残骸の中にはキンジの自転車と同じボディの破片があった。それを見たせいでさらに不安が広がっていく。
頼む、無事でいてくれ。キンジを呼びかけながら探していると
「アンタ!早くこっちへ逃げなさい!」
甲高い女の子の声が聞こえた。その瞬間聞いたことないモーター音がグラウンドの入り口から聞こえた。その方向を見るとマシンガンを乗せたセグウェイがこちらへ向かって走ってきた。
本能で察知した。こいつはヤバいと、そう感じた次の瞬間
ズダダダダダァン!
空気を切り裂くような発射音と銃弾の雨が俺に迫ってきた。
間一髪でそれをかわしてダッシュで逃げる。
「こっちよ!早くこっちへ来なさい!」
俺は声のする方向を見た。そこは体育倉庫だった。
藁にもすがる思いで背中から飛んできた弾丸が左右にすり抜けていくのを尻目に走り、体育倉庫の物影に飛び込んだ。
「アンタも応戦しなさい!武偵でしょ!」
跳び箱の中から身を乗り出しながらピンク色の髪の女の子は言った。両手には拳銃、コルトガバメントを持ち、それを反動気にせずに撃っていた。
「なんなんだよあれ!」
「説明は後!アイツらを片付けてからよ!」
物影から外を見ると倉庫の入り口を取り囲むようにセグウェイ達は俺に銃口を向けていた。その数は6台ぐらいか?
俺はリボルバーでどう戦え言うんだよ…しかも女の子は2丁拳銃といえどガバメント、装弾数はそこまでない。しかも向こうはマシンガン…多分ウージーだしそれが6台だ。火力が違いすぎるだろう。
ともかくやるしかないと考え手錠を取り出した。ただの手錠ではない、父さんが使ってた伸縮性抜群の縄を取り付けた手錠だ。
「そこの君!頼みがある!」
「何よ!」
「君はセグウェイ共の注目を集めてくれ!まぁそのまま銃を撃ってくれ!」
「今やってるわよ!で、アンタはどうする気!?」
「それなら俺は……あいつらを一網打尽にする!」
ウージーの斜線が女の子に向いているのを確認して、物影から勢いよく飛び出してセグウェイ共の前に躍り出る!後ろから女の子が危ないと叫ぶが気にしない!
縄手錠を一番右のセグウェイにめがけて投げる、すると見事にバーに手錠がかかったのを見て
「行くぞぉぉ!」
ハンマー投げのように右から左へ一気に回す。手錠先端のセグウェイを利用して一気に残りのセグウェイを弾き飛ばした。
「フゥゥン!」
手錠をかけたセグウェイを投げ飛ばしてこれで完了だ。残りのセグウェイは弾かれた衝撃でバーが曲がったりタイヤが取れて立つこともできないしもはや移動もできない。勝ったな。そう思い回転した体をグラウンド方向へ向けると
手錠をかけたセグウェイが俺に銃を構えていた。
パァン!
破裂音のような銃声がこだました。その瞬間セグウェイに着いていた銃は爆発した。
何が起きたかわからなかった。しかし、俺が後ろを振り向いて全てが理解できた。
キンジが銃を構えた姿が見えた。そうか、キンジが銃を撃って助けてくれたのか。いや、それ以上に
「き、キンジィ!生きてたのか!」
キンジが死んでないというのが最大に嬉しかった。安堵と喜びとかがグシャグシャになって泣きそうになりながらキンジの元へ駆け寄りダイブした、が、
キンジは体育倉庫へと踵を返して歩いて行った。ダイブした先は茶色い地面であったため思いっきり頭から突っ込む形になった。
地面と激突した一瞬目の前が真っ暗になりずっしりした痛みが頭を襲ってきた。痛みでしばらく地面に突っ伏した状態になった。
「っ……いったぁ…」
痛みが引いて、頭についた土を払い顔を上げてみるとそこではピンク髪の女の子とキンジが何やら言い争いをしている。
「アンタのやったことは、きょ、キョーセー猥褻なんだから!現行犯よ!」
「アリア、それは悲しい誤解さ。残念ながら俺は中学生に欲情したりする趣味はないよ」
「あたしは高校生だ!」
女の子はキンジの足元目がけて撃つが軽々と避けた。
普段のキンジと違う何かキザったらしい言い回し。そして一発でセグウェイを仕留めた実力とあの立ち振る舞い。あぁ間違いない。あいつヒステリアモードになったな。そんなキンジに喧嘩を売るとは…ターミネーターに素手で喧嘩売りにいくようなもんだぞ。
その後女の子は思いっきりひっくり返り、キンジは一目散に逃げた。
「絶対に許さない!風穴開けてやるんだからぁ!」
そんな断末魔をあげながら女の子はパタリと倒れた。俺は立ち上がり女の子の元へ向かうため体育倉庫に入った瞬間
「うわぁ!」
情けない声をあげて転けた。床を見ると銃弾が転がっている。なるほど、逃げるために一瞬の隙にこれをばら撒いて転かしたのか。流石キンジ、いやヒステリアモードのキンジだ。
立ち上がって女の子の元へ再度寄ると気絶している。跳び箱に隠れてたため気づかなかったがまぁ小さい子だな。中学生に間違う理由がよくわかる。
こんな子がよく大口径の拳銃2丁撃てるとは、この子は只者ではない。
女の子は起きる気配がなさそうだし、無事そうだからとりあえず爆破があった件を警察に通報した。
電話をしながらふと女の子の胸にある名札を見た。
神崎・H・アリア
アリアとは可愛らしい名前だなと思った。