週末になった。
待ち合わせ場所で俺、キンジ、アリアは理子を待っていた。理子が約束の時間になってもこないのだ。
「理子はいつまで待たせる気かしら…」
アリアは腕時計をわざとらしく見て言った。にしても依頼してきたのはそっちなんだから遅刻なんか御法度だろうが…
「みんなー!お待たせー!」
理子の声がしたので見ると……変装していた。かなりの美人だ。三つ編みにまとめた髪がたなびく、優しくて、穏やかそうな美人だ。
「カナ…?」
キンジがポツリと呟いた。カナってキンジのお兄さんだったはず…理子の変装した姿がお兄さんなのか…?女の人なのにお兄さん?
「理子…なんだよその姿!?カナに変装する必要はないだろ!」
「だって理子はブラドに顔が割れてるから変装しなきゃならないし〜あとカナは世界一の美人さんでキーくんにとって大切な人だよね?大切な人の姿ならキーくんがやる気出るかなーなんて考えたから」
キンジは声を荒げて理子に言った。理子はそんなのお構いなしに普段の猫を撫でるような声で説明してる。
「き、キンジ…カナって」
俺はアリアの肩を叩いて遮った。今キンジにカナさんの事を聞くのはまずいと感じたからだ。
「……子供のいたずらに怒るほど俺の心は狭くない。行くぞ」
怒りを押し込めたようにキンジはキャリーケースを引き行った。
状況はイマイチ掴めないが…あの反応を見るとカナさんはキンジのお兄さんで理子がそれに変装したから怒ったってことだな…理子のやつ面倒な事になるなら違う奴に変装しろよ…
しかし今更変装変えろと言えば時間もかかる…仕方がないがこのままになるな…
「ねぇキンジ!理子の変装してる子は誰なの?ねぇ…」
アリアはキンジにカナさんの事を聞こうとしたため同じく肩を叩いて止めた。なにぶん家族の死が関わってる分かなりデリケートは話だ。触れてもあの感じだとキンジを尚更不機嫌にさせる。
アリアも俺の顔を見て、言わなくてもある程度何かを察したのだろうか不満そうにキンジを見た。
キンジが機嫌を損ねてるのと、アリアが不満そうにしてるせいか車内はかなり空気が重かった。お陰で道中はかなりしんどかった……目的地である紅鳴館に着いた時はホッとした。
にしてもこの館…なんというか陰湿だな…呪いの館みたいというか…
「…そういやバイオハザード新作出るのを思い出したな…」
「何よそれ?」
「ゲームさ。ゾンビが出てくるホラゲーでシリーズかなりあるんだ。個人的には7が…あ」
理子はムスッとした顔でこちらを見たため俺は口を注ぐんだ。そうだこいつナンバリングにコンプレックスがあるためそういうのを理子の前で話すのは御法度だ。キンジにアリア、理子みんな不機嫌になったらやりにくい事この上なくなる。
不気味な館に重い空気といやになってくる。屋敷に向かう足取りも釣られるように重たくなった…
屋敷の入り口につき、ノックをすると重たそうな扉は開いた。
「本日より家事手伝いにき……きまし…た…」
理子が言葉に詰まり出した。当然だ。何せ中から出てきたのは…小夜鳴だったのだ。
「………チッ…」
こいつと顔を合わせるというのが憂鬱なのとイラついてしまい舌打ちが出てしまった。
「いやぁ…武偵校の生徒さんが来てくれるとは心強いですね」
屋敷の応接間に招かれて座ることにした。小夜鳴は頭を掻きながらそう言った。相手が顔見知りと知って安心してるみたいだ。
そんな奴の顔とは対照的にイライラしている…なんかマジでムカつく。
「私もビックリしました……小夜鳴先生がこんな立派なお屋敷に住んでるなんて…」
「いえいえ神崎さん…ここは私の屋敷というわけではありません。ここは私の研究所としてお借りする代わりにハウスキーパーとして屋敷にいるという契約をしています」
「にしてもご主人様が帰ってきたら話のネタにはなりそうですね。そういえばいつ頃戻られますか?」
「…彼はしばらくは戻りません。彼は今遠くにいますからね」
「遠く?どちらにいらっしゃるのですか?」
「お恥ずかしながら詳しくはわからないです。彼とは親密なんですが直接話したことないんですよ…」
その一言に少し違和感を感じた。
「……へぇ。先生は一度も話したことない相手の家にいるんですかぁ?しかもこの屋敷の持ち主さんはそんな人に家を貸すとはかなりなお人好しかね?」
少し自分でも嫌味ったらしく言ってしまったなと思った。しかし疑問に思ったんだから聞いてもいいだろう。
「いえ…言い方が少し悪かったですね。彼とは研究の過程で知り合いまして。その時メールでやり取りしたんです。彼は私の研究に興味を持ってくれたおかけで屋敷をお借りすることになったんです。それで直接は会ってないって言ったんですよ」
へぇ、そうですかと俺は軽く返事をした。研究がなんなのかわからないがこいつと喋りたくない気持ちが勝ったので俺はこの件をこれ以上は追及しなかった。
その後俺たちは理子と別れて小夜鳴に屋敷を案内されながら仕事の説明を受けた。
「では今後の仕事についてですが…こちらに資料として纏めてますので目を通してください。制服は居室にありますのでそちらに着替えてお仕事を進めてください。私は研究が多忙なのであまり皆さんとお話しできないんですよ…すみませんね…」
その話を聞いて少し気持ちが和らいだ感じがした。こいつと顔を合わせなくてすみそうだな。
「にしてもお前本当に小夜鳴の事嫌いだよな…」
部屋に入り執事服に着替えている途中にキンジが言った。
「嫌いなもんは嫌いだ」
「なんか恨みでもあるのか?」
「生理的に受けつけん。あいつはなんか無理なんだよ。それにあいつ、爽やか系イケメンみたいなツラしてるが裏は違う。噂じゃあいつ女子を保健室に呼び出してるらしい。しかもその後その女子は出て時はふらふらしながら出てきたらしいぞ。中で何してるか知らんがそんなことしてるような奴なんだぞ」
「俺も聞いたことはあるがそれは噂だろう…」
「ふん、どうだかな。てかネクタイが中々結べないんだよ…手伝ってくんないか?」
「自分でやってくれ。俺はもう出るからな」
キンジは着替え終わり部屋から出た。薄情な野郎だ。ため息つきながらネクタイに苦戦しているていると…
バァダァダァン!!!!
ものすごい音が聞こえたため部屋を出るとそこには倒れているキンジと
「次覗いたら……脳天風穴天国!!」
メイド姿で怒ってたアリアがいた。何したんだか……
あれから仕事をしていて早くも3日経ち夜になった。
小夜鳴の飯が終わり、料理を担当した代わりに皿洗いをキンジに任せて休憩している。あいつ肉料理しか食べないが飽きないのかね…
今はやる事がないから雨が降る外を眺めながてる。ボーっとし、意識が遠のくような感覚に浸ったその時扉が開いた音で一瞬で現実世界に引き戻された。
「おかえり。今日も悪いね」
「いいさ。平一は小夜鳴と会いたくないだろうからちょうどいいだろ。それより例の十字架がある地下金庫は?」
「アリアも調べてるが……事前に聞いた情報よりも厳重だ。指紋、声帯、顔、さらには磁気カードによる認識、その上で鍵がないと入れないときた。中はわからないが……まぁ理子が言ってたが赤外線の類があるんだろうな」
「なんだよそれ…そこから十字架を盗むなんて不可能じゃねぇか…」
「いや……そうでもない」
「何…?どうやって?」
「どんな堅牢で厳重な牢屋も必ず扉が開く瞬間がある。それは…」
「囚人が…死んだ時か…?」
「囚人が死ねば遺体を片付ける必要があるから開ける。その時はどんな牢屋でも開く…簡単な話だろう?」
「だけどそれは牢屋だろ?あくまで相手は金庫、中に囚人なんていない」
「いや、いるさ。十字架っていう名前の囚人がな。話は同じさ。つまる話……十字架に何かを起こさせれば絶対に扉を開けなければならない…いや、開けざるを得なくさせればいいだけさ」
キンジはここで俺の言いたい事を察したようだ。
「キンジ、俺と協力しよう。アリアや理子を含めず、俺たちでやろうじゃないか。泥棒の腕を見せてやろうじゃねぇか」
気分が気乗りしないせいか完成が遅れましたね…
ペースを上げて行きたいです…